初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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デュエル描写のためにバトル系の小説読むべきだよなあと思いつつ恋愛方面の小説読んじゃってます。


エメラルドブルーの君

 愛理と斎王がデュエルした時から少し戻り、アメリカへと舞台を移し、今、アメリカのとあるレストランでコナミは丸藤亮と会っていた。

 

「お久しぶりです丸藤さん。お元気でしたか?」

「ああ、お前こそ学園の生活はどうだ。順調か?」

 

 レストランは有名店の昼間ということもあり、混んでいた。席は全席満席、机の上にはアメリカの文化……そう表現していいのかわからないが丸藤さんが置いたチップが置かれていた。先輩は流石に数か月過ごしているだけあり慣れたもので、さも当然のようにオーダーの際に渡すためのお金を出していた。

 

 オーダーは僕がビーフステーキを、丸藤さんはオーソドックスなパンを注文していた。ステーキは昨日も夕食に藤次郎さんに連れられた高級店で食べたが、このアメリカという舞台、貴重な機会に存分に食いまくるつもりだ。

 お金は藤次郎さんが出してくれるって言われているからね。奢ってもらえるなら遠慮はしないのが僕だ!!

 

 しかし、丸藤さんは翔くんから聞いてはいたが、本当に質素で味の薄いものが好みのようだ。僕のようなジャンクフードとかが大好きな人間とは真反対な食性をしている。

 こう言ってしまうと彼には悪いが、正直理解しがたい味覚をしている。味の薄い物ばかりで飽きたりしないのだろうか?

 

「しかし、丸藤さんがアメリカにいることは知っていましたけど、会えるとは思っていませんでしたよ」

「ああ、俺の方こそお前から連絡が会った時は驚いたぞ。まさか資格試験をアメリカで受けるつもりだったとはな」

「いやーあはは」

 

 僕は曖昧な笑みを浮かべて返事をした。常識的な考えで言えば、アメリカまで来て試験を受けるなど正気の行動とは言えないからだ。

 

「と、ところで今日来てもらったのは試験についてアドバイスなんか貰えたらなあと思いまして、丸藤さんが受験した時ってどんな感じだったんですか?」

「俺の時か。試験が明日であることを考えるとあまり有意義なことを伝えれるとも思えんがな」

「それでもこれはっていうのはありませんか。なんでもいいので」

 

 試験は明日。つまり今上がっている太陽が落ちて、再び登っているころに試験を受けることになる。だから正直、ここで丸藤さんにアドバイスを受けるより、ホテルで机に向かって勉強した方がいいのかもしれない。

 しかし、試験とは違うある理由から僕は丸藤さんと会いたかったのだ。アドバイス云々はその理由からくるもののついでだ。

 

「試験は筆記、面接、そして実技に別れる。このうち筆記に関しては何も言えん。前日に何を伝えたところで身にはならんだろうからな……そういえば英語は大丈夫なのか。俺は日本で受けたから日本語だったが、アメリカの試験だと……」

「あっ、それは大丈夫みたいです。一応外国人向けに言語は選べるみたいですので」

「そうか、それなら問題ないな」

 

 丸藤さんは調理過程が少ないために僕よりずっと早くウェイターが置いたパンを千切っていた。僕はそれを見ながら大皿にジャムとかバターとかあるのにパンに何もつけないんだなと見ていた。

 

「なら、面接についてだが基本的には聞かれたことに素直に答えればいい。その中でもプロとしてどう活動していきたいか、どのようなデュエルをするかなどを答えればそう悪くは見られんだろう」

「なるほど、素直に……」

 

 僕の目指すプロとしての活動は簡単だ。勝率を競うプロリーグをメインに活動してチャンピオンを目指す。そしてその先のデュエルキングへ、そう伝えればいいだろう。

 プロの活動の中には勝率以上に見てくれるお客さんを楽しませる方面を主軸に置いたショーデュエルを行うエンタメプロデュエリストの方々もいるが、生憎そっち方面は目指していない。

 

 デュエルの内容については、星に選ばれたデュエリストとしてデビューして、プラネットモンスターをエースにE・HEROをメインでいくつかのデッキを切り替えて使うと言えばいいのかな?

 僕はうんうんと頷きながら一つ一つ面接場面をイメージして答えていた。

 

「面接はよほどおかしなことを言わなければ問題はない。最後にデュエルについてだが、奇妙なことを言うようだが勝敗は気にしなくてもいい」

「気にしなくていい? それはどういうことですか?」

「試験官が見たいのはお前がどのようなデュエルをするかを見たいからだ。無論勝つにこしたとこはないし、弱くては試験に合格はしないが、勝敗そのものはそこまで重要視はされていないんだ」

 

 丸藤さんが言うには、必要なのはプロとして活動するだけの実力があること、そしてそのデュエリスト自身の光るものが見れればいいらしい。

 その点、僕はいつも通りしていればいいとのことだ。

 

「なるほど〜。つまり、普段通りしていればいいってことですね」

「ああ、あまり気負わず試験を受けるといい。お前なら受かることができる」

「わかりました。ありがとうございます」

 

 試験についての話が一区切りつくと同時に僕の料理が運ばれてきた。鉄板に乗せられたステーキは熱々に熱されており、僕の意識は丸藤さんから目の前の料理にシフトしていた。

 ステーキをナイフで切り分け口に運び、溢れる肉汁が僕の舌を打った。

 自然、綻ぶ口元に頬を緩ませていると、食事をとりながら丸藤さんがこちらを見ていたのに気づいた。

 

「えっと、よかったら食べます?」

 

 もしかして僕は質素な食事が好きな丸藤さんも目の前でジューシーな食事をされると食べたくなるのかなと思い、切り分けられたステーキの乗った木の皿を名残惜しそうに差し出した。

 

「いや、いい。そうではなく、本題は何かと思ってな。あるんだろう、もっと聞きたいことが」

 

 丸藤さんがパンの横に置かれた水を一口飲んで言った。

 

「あー気づいてましたか」

「ああ。試験のためにアメリカまで来るとは思えん。ましてや前日にアドバイスをもらいたいなど尚更だ」

「あーんーまあ、そうですよねー」

 

 僕は若干まごつきながら曖昧な返事をした。本命の話があるのは事実だが、試験のためにアメリカにきたのは藤次郎さんの意思もあり事実なのだ。

 なので、丸藤さんの疑念は半分は当たっているということだった。

 

「ゴホン、丸藤さん、その………言いづらいなら答えてくれなくてもいいのですが、最近調子はどうですか?」

「……心配はいらない。俺は俺のデュエルをしている」

「でも、このままだとスポンサー契約も打ち切られたりとか……」

「コナミ、それはお前が気にすることではない。これは俺の問題だ。それに何より今お前が気にすべきことは試験に集中することだ。俺のことは気にせず明日の試験のために準備をしておけ」

 

 にべもなかった。丸藤さんはそのままこれ以上話をするつもりはないと言いたげに、らしくもなく早々に食事を切り上げて試合があるということで帰ってしまった。

 僕はその様子に嘆息し、見送ることしかできなかった。

 

「藪蛇だったかなあ。でもな〜〜!」

 

 僕はステーキを一切れ口に運びながら背もたれに背中を思いっきり預けた。

 もぶもぶとステーキを食べながら思う。最近、というよりエド・フェニックスとのデュエル以来、丸藤さんは連敗していた。誰がどう見ても不調を来しており、スランプにでも陥っているのかと心配していたのだ。

 

 あの様子だと、本人的には問題視していない風を装っていたが、内心ではどうだか。いや、自身でも気づいていないのかもしれない。

 あれは相当不調を片しているという事実を……。

 

「アメリカにいるうちになんとかしてあげたいけど、丸藤さん相当頑固そうだからなあ。余程じゃないと認めないだろうし、どうしたものか……」

 

 僕は信念の名の下に固く閉ざした心を解かすにはどうしたら良いかと考えながら最後の一切れを噛み締めながら、横を通ったウェイターにおかわりを頼むのだった──。

 

 

 

 

 僕が丸藤さんと食事した翌日、つまり試験当日。僕はホテルのレストランでバイキング形式で皿に並べたベーコンエッグを食べ、ハンバーグを食べ、バターをたっぷり塗ったクロワッサンを3つ食べて準備万端。

 体調良好、絶好調で試験に臨めると体をほぐしながら確認した僕は試験会場で時間が来るのを待っていた。

 

 試験会場は一階に体育館を思わせる巨大なフロアが一つ。2階、3階にはそれぞれ筆記試験と面接を行うための大部屋と小部屋が用意されていた。

 試験はまず筆記と面接を行い。最後に実技試験のデュエルを行う。対戦相手はまだわからない。

 

 僕は筆記試験が行われる大部屋で長机が三列8段に並んだうちの後ろの方に頬杖をついて座っていた。そうして試験までの時間を筆記試験対策用の資料を広げて待っていると、上から影が差し込んだのに気づいた。

 

「ん?」

 

 僕が上に顔を向けるとエメラルドグリーンの澄んだ瞳をした少年が僕の資料を上からのぞき込んでいたのだ。

 

「………えっと、何か?」

「よう、俺はヨハン。君はコナミだろ? 星に選ばれたっていうさ」

 

 少年はヨハンと名乗り、片手を上げて僕を見ていた。どうやら、プラネットモンスターの紹介の動画を見て話しかけてきたようだ。

 アメリカでもあの動画を見てくれている人がいたのかと、僕は思いながら彼の言葉に肯定を示した。

 

「うん、そうだよ。ヨハンくんもこの場所にいるってことは試験を受けに来たのかい」

「ああ、俺はアメリカにあるアークティック校の2年だ。あの動画を見てさ、一度話してみたいって思ってたんだよ」

「アークティック校…………」

 

 聞いたことがある、たしかアカデミアの兄弟校で外国に建てられている学校だ。そして2年ということは僕と同い年か。

 僕はかつてどこかで聞いたことのある校名を側頭部を指で押さえながらなんとか思いだしていた。

 

「アメリカ校の生徒かあ。僕は日本のデュエルアカデミアの2年生だよ。よろしく、今日はお互い頑張ろうね」

「ああ、お互いプロを目指して受かろうぜ!」

 

 僕は手を差し出してヨハンと名乗る少年と握手をした。それから彼が何かを話そうと口を開いたが、試験官が入室してきたためにお互いに指定されている席へと戻ることになった。

 ただ、去り際に彼が言った言葉が、僕に彼のことを気にならせた。

 

「じゃあなコナミ、この後デュエルすることになるけどそん時はよろしくな!」

「えっ、デュエルって………?」

 

 彼は僕の疑問に答えることなく席へと向かった。彼の最後の言葉のデュエルとは、試験の実技試験をお互い頑張ろうと言う意味だったのか、それともデュエルしようとの誘いだったのか、この時の僕にはわからなかった。

 

 

 

 

 夜、長かった試験が終わり順調にプロ資格を手にした僕とヨハンくんは藤次郎さんを交えてレストランで合格祝いも兼ねた食事をしていた。

 

「へー! じゃあ藤次郎さんが紹介したいって言ってた少年ってヨハンくんのことだったんですね!」

「ああ、君の例の動画を見て彼の方から君に合わせてくれないかとメールが送られてきたんだ。それで、アメリカで試験を受けるタイミングで会おうという話になったんだ」

 

 僕はそうだったのかと納得してヨハンくんに目を向けた。彼はまっすぐとこちらに目を向けていて、その目には今すぐににでも僕とデュエルがしたいという意思が見え隠れしていた。

 

 そして、その肩にはネコのような紫の体表に赤い目をした精霊が四足の足で立っていた。

 僕はその見覚えのある精霊に瞠目して目を瞬いた。

 

「そうか、その子は君の精霊だったんだね」

「ああ、こいつはカーバンクルのルビー。伝説上の生き物さ」

「へー伝説って?」

「ああ、それってゴラ・タートル?」

「ゑ?」

 

 僕がルビーと呼んだ精霊を見ているようにヨハンくんも僕の右肩あたりを見ていた。そこに目を向けるといつの間にいたのか、僕の肩に登って顔を突き出していたゴラ・タートルがいた。

 

「うおっ!?」

 

 僕は思わずといった具合に驚いてしまった。

 赤く小さな目にのっぺりした表情、そしてカメ特有の大きな甲羅を背負ったその姿は紛れもなく僕のデッキの守りを担っているゴラ・タートルであり、いつから、というより精霊が宿ってたんだという驚きも混じった声を上げた。

 

「い、いつの間に……」

「……へーコナミって随分沢山の精霊に愛されてるんだな。俺も負けてないけどな!」

 

 そういうヨハンくんの周りには沢山の精霊がいた。どのモンスターも見たことのない美しい宝石のような結晶を宿した動物、いや彼の言葉になぞるなら伝説上の生き物たちだった。

 

 それに対抗するように僕の周りにも僕のカードに宿る精霊たちが出てきていた。僕の左右を挟むようにアウスやヒータ、肩にはゴラ・タートル。それに背後にはジ・アース含むプラネットモンスターたちまでいた。

 

『ほう、これが星に選ばれた少年か。まっすぐないい目をしている』

『星々の精霊。なるほど、わかっていたが凄まじい力を宿している』

 

 ふと、ヨハンくんに憑いている彼の目と同じ色の結晶を甲羅から生やしている老いた亀と深く濃い青の角を額から伸ばし純白の羽を生やした白い馬──ペガサスが僕を、そしてプラネットモンスターを見て喋った。

 

『君たちの方も、いいマスターに出会えたようだね。彼の瞳からは純粋さを感じるよ』

 

 アウスが彼らに応えるようにヨハンくんを見て言った。純粋さ、そうか僕が彼の目を澄んでいると感じたのは純粋さをだったのか。

 彼からは十代くんを思わせる清らかさがあった。

 

「君たち、精霊が見える者同士通じ合うものがあることはわかるが、私を置いてかないで欲しいな。私には精霊が見えないから何を話しているのかさっぱりなんだ」

「あっ、藤次郎さん、すみません」

 

 困ったように苦笑している藤次郎さんに僕とヨハンくんは揃って謝った。

 

「それで…だ。コナミくん、食事を終えたらヨハンくんとデュエルしてみないかい?」

「ヨハンくんとですか。それはもちろん断る理由もありませんし、是非と言いたいぐらいですけど」

 

 僕はチラリとヨハンくんを見た。今日は試験もあり、疲労している。僕としてはそれでも全然構わないが、彼はどうなのかわからない。

 だが、それは無用の心配だった。彼もまた僕を見て不敵な笑みを浮かべていた。

 

「俺は構わないぜ。以前からデュエルしてみたいって思ってたんだ。今すぐでもいいくらいだ」

「うむ、そういうことならいい場所がある。食事を終えたらそこへ向かおう」

「はい!」

 

 

 

 

 そこは大きなスタジアムだった。スポットライトで照らされた地面は芝生で覆われ、どこかスポーツの試合でも行われていても不思議には思わない場所だった。

 観客席には藤次郎さん1人。どうやら、夜ということもあり空いている試合場を借りたのだろうと僕は推察した。

 その中央に僕とヨハンくんは向かい合い、お互いのデッキをシャッフルしてデュエルの準備をしていた。

 

「この日が来ることを待ち望んでいだぜ」

「うん、君とのデュエルはすごく楽しいものになりそうだ。きっといいデュエルになるよ」

 

 僕たちはシャッフルを終えたデッキを相手に返しディスクに締まった。

 

「へへ。全力で楽しもうぜコナミ!」

「うん、最高のデュエルにしようヨハンくん!」

 

 太陽が暮れた闇の中、人工の光が強く照らすスタジアムの中で僕たちは声を合わせてデュエルを開始した。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 




 精霊が宿っててもあまり使われないことはよくあるよね。ハネクリボーとか相棒枠だけどデュエルであんまり使われてないし。ゴラ・タートルもカードが強くなってくるとあまり出番がない。プロ試験は書こうと思ったけど飛ばします。いまいち気分が乗らないので。
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