「へへ、やってくれるなあ。俺のターン、ドロー!!」
美しい光の粒子を出しながら彼の場の魔法ゾーンに宝玉が現れると同時にヨハンくんはデッキからカードを引いた。
「俺は手札からフィールド魔法 虹の古代都市ーレインボー・ルインを発動!!」
「古代都市!?」
デュエル場であるスタジアムの様相が変わっていく。スタジアムのような形式そのものは変化していないが、時代が現代から古代の石造りの形式へと変容した。
「このフィールドは俺の場にある宝玉の数に応じた効果を発揮することができるぜ!」
「宝玉獣専用のフィールド魔法ということだね」
「ああ、さらに宝玉の恵みを発動! 墓地にいる宝玉獣を2体まで宝玉として俺の魔法ゾーンへ置く。俺は宝玉割断で墓地へ送ったコバルト・イーグルを選択!」
彼の場に4個目の宝玉が設置されていく。現在、彼の場にはサファイア・ルビー・アメジスト・コバルトの4種類の宝玉が存在していることになる。
虹の古代都市は宝玉の数に応じた効果ということは、単純な考えで今ヨハンくんは4種類もの効果を扱えると言うことなのか!?
「よっし、俺は虹の古代都市ーレインボー・ルインの効果を発動! 俺の場に宝玉が4つある時、デッキからカードを1枚引くことができる!」
「手札増強効果…………!」
単純にして極めて強力な効果。手札を増やす効果か!
コバルトを置くまでの3種類の状態では発動しなかった効果でもある。つまり、4つ目の効果ということ。この系統の効果が増えるタイプは条件を満たすごとに強力な効果を発動するのが基本だ。
恐らく、このフィールド魔法もそれから外れることはないはず。
あと3つ、どんな効果を発動できるのだろうか…………。
「お前の出番だぜ! 俺は宝玉獣 トパーズ・タイガーを攻撃表示で召喚! このモンスターは攻撃するとき攻撃力を400ポイントアップさせるぜ!」
「でも、いくら400ポイントアップしても攻撃力2000では僕のジ・アースには届かないよ!」
《宝玉獣 トパーズ・タイガー》 攻撃力1600 守備力1000
僕のジ・アースは黒いペンダントの効果もあって攻撃力は3000もある。トパーズ・タイガーの攻撃力がアップしても2000では倒せない。
ヨハンくんがそれに気づいていないとは思えない。だから、何かあるはずだ。攻撃力を上げるナニカが!
「へへ、わかってるさそんなことは。だから俺はトパーズ・タイガーに野生解放を発動するぜ! この効果により、トパーズ・タイガーの攻撃力は守備力分アップする!」
「そういうことか!!」
黒柄に白い体表をした虎であるトパーズ・タイガーが勇ましく吠えながらその攻撃力を上げた。その攻撃力は2600!!
自信の効果も合わせればジ・アースに並ぶ!!
「行くぜ! 俺はトパーズ・タイガーでジ・アースに攻撃! トパーズ・バイト!!」
「迎え撃て! アース・インパクト!!」
飛び掛かってくるトパーズ・タイガーにジ・アースも合わせるように殴り掛かり、フィールドの中央で大きな爆発を起こしながら僕たちに衝撃を与えてきた。
「攻撃力は同じ、ダメージはない。だけど──」
「黒いペンダントの効果は発生する。俺は500ポイントのダメージを受ける、だろ? ………ぐぅううう!!」
《ヨハン》 残 LP 1700
うめき声を上げながら黒いペンダントの効果ダメージを受けるヨハンくんを見ながら思う。
お互いの場にはもうモンスターはいなくなった。宝玉獣とそれを扱うヨハンくん。惜しみなく上級モンスターを召喚した僕と違い、彼は低レベルのモンスターだけで僕のモンスターたちを対処した。それを見て思うのはただただ強いと言う感想だけだ。
下級だけで僕のプラネットモンスターをすべて破壊するタクティクスに尊敬の念すら抱くほどだ。僕はヨハンくんと出会えたこの奇跡に感謝したかった。
そんな思いを抱きながら彼の次の一手を待っていると、そこで起こった予想外の変化に僕は唸り声をあげた。
「…………んんん!!?」
「いってー、ジ・アースとMARSを倒せたのはいいけど、ここまででだいぶライフを削られちまったな。だけど、これで俺の場に新たな宝玉が置かれたぜ!」
「バカな! トパーズ・タイガーの宝玉を置くって言うのか! そんなことをしたら君の魔法・罠ゾーンは埋まってしまうと言うのに!!?」
目を見開いて驚愕した。彼の場に置かれた黄色く輝く5つ目の宝玉。それは今倒されたトパーズ・タイガーのものに他ならない。
しかし、そんなことをすれば彼はもう魔法も罠も発動できない。ライフが2000を切っている状況でそんなことをするのは自殺行為だ!
「へへへ、そうさ。これで俺はもう魔法も罠も発動できねえ。だけど、この状況が欲しかったのさ。虹の古代都市の5つ目の効果を発動するためにな!!」
「はっ! そうか、5つ目が揃うことで発動できる効果。そこに何かあると言うことか!!」
「ああ! 俺は虹の古代都市ーレインボー・ルインの5つ目の効果を発動! 俺の場に宝玉が5つある時、その宝玉のうちの一つを特殊召喚できる! 俺は宝玉獣 ルビー・カーバンクルを特殊召喚するぜ! こいっルビー!!!」
古代都市の空から虹の線が紅い宝玉にあてられる。そこから現れたのは迷子になった僕を藤次郎さんの元まで案内してくれた紫の体表に紅い宝玉が身についたネコにも似た形状をしている伝説上の生き物、カーバンクルだった。
《宝玉獣 ルビー・カーバンクル》 攻撃300 守備力300
『キュイ!!』
「へへ、頼むぜルビー。お前の力が必要だ。ルビーが特殊召喚された時、俺の場の宝玉を可能な限り特殊召喚できる!!」
「ナニィ!! 全てだって!!?」
可愛らしい、甲高い鳴き声を発しながらルビー・カーバンクルの尻尾の先についている丸い宝石から4つの紅い光がヨハンくんの宝玉に伸びる。
それを機に、ひび割れていく4種類の宝玉から宝玉獣たちが飛び出してきた。
《宝玉獣 トパーズ・タイガー》 攻撃力1600 守備力1000
《宝玉獣 アメジスト・キャット》 攻撃力1200 守備力400
《宝玉獣 サファイア・ペガサス》 攻撃力1800 守備力1200
《宝玉獣 コバルト・イーグル》 攻撃力1400 守備力800
僕は圧倒されていた。宝玉獣のポテンシャルの高さとカードたちを使いこなし下級モンスターだけでここまでやれるのかという彼の高いプレイングに感動すら憶えていた!!
「さらに俺はサファイア・ペガサスの効果でエメラルド・タートルの宝玉を置くぜ。さて、俺の手札は0枚。もうできることはないな。これで俺はターンエンドだ!!」
「………すごい。なんてすごいんだ君は…………!!」
「いやー、そう褒められちまうと照れちまうぜ。でも、お前もまだやれるだろ?」
「当然、君の全力に僕の全力で応えて見せる! 僕のターン、ドロー!!!」
僕の惜しみない賞賛に頭を掻いて照れているヨハンくんを見ながら僕は強く、強くカードを引いた。彼の見せてくれた全力、その強さに敗けない強さを僕も見せるために!!
その思いがカードに通じてくれたのか、最強のHEROを呼べるカードが来てくれた。
「僕は手札からE・HERO クノスペを攻撃表示で召喚! このモンスターは他にE・HEROがいる時このモンスターを攻撃できず、また直接攻撃ができる!」
《E・HERO クノスペ》 攻撃力600 守備力1000
「攻撃力600のモンスターを攻撃表示で…………。他のHEROを召喚するつもりだな」
「うん! 君の全力に応えてくれる最強のHEROを呼べるカードが来てくれたよ」
「最強のHERO、ジ・アース以上のHEROがくるのか!?」
目を見開き驚きながらワクワクとしいた笑みを見せる彼の期待の応えるために僕は自信満々でカードを発動させた。
「僕は
「除外されているモンスター……MARSの素材にしたやつらか!」
「そうだ。僕は除外されているフォレストマンとオーシャンを融合し、E・HERO アブソルート・Zeroを融合召喚!!!」
除外ゾーンというどこにも存在しない場所、その異空間から召喚されるためにひび割れ歪んだ空から鋭利でありながら純白の鎧とマントを着た戦士が召喚された。
「おおっ! これがお前の最強のHEROってやつか!!」
《E・HERO アブソルート・Zero》 攻撃力2500 守備力2000
そう、6属性同様6種類いる属性HEROの中でも恐らく抜きんでて強力な効果を持ったHERO。それがアブソルート・Zeroだ。
プラネットモンスターをエースとしている僕のデッキという意味ならジ・アースを最強と呼ぶべきなのかもしれないが、ステータスと効果を合わせた総合力という単純な指標で見るならやはりこいつが最強と呼ぶべきカードだろう。いや最恐か?
最強と僕が自信をもって呼ぶこのカードの真価を発揮するためのカードが現状手札にないのが残念だけど、このカードが召喚されたことで僕の勝利の道は極めて近くなったと言っていいと思っている。
それくらい強力な効果を持っているんだ。
「バトルだ! 僕はクノスペで君にダイレクトアタック!」
「ぐっ………!」
《ヨハン》 残 LP 1100
アブソルートのマントに隠れて守られている小さきHEROであるクノスペがその両手から種をマシンガンのように飛ばしてヨハンくんにダメージを与えた。
「クノスペがダメージを与えた時、攻撃力を100ポイント上げて、守備力を100ポイント下げる。そして………僕はこれでターンエンドだ!」
「新しいHEROで攻撃はしないのか?」
「君のモンスターは全て守備表示で、破壊しても宝玉に変わる。古代都市もある今、破壊しても君に利を与えるだけだからね。不用意な攻撃はしないよ」
ましてや、サファイア・ペガサスの効果で既に1つ宝玉がある。古代都市の残り3つの効果がわからない上に、専用サポートを引く可能性がある以上、アブソルートがいても攻撃は自殺行為に変わりかねない。
今は、クノスペでダメージを与え、アブソルートの効果を使う時を待つのが賢明だ。
だから今のアブソルートの役目は宝玉獣を素通りできるクノスペを守る騎士としての役目だ!
「ちぇ、攻撃してくれた方が嬉しかったのにな。そうこっちの都合のいいように行動はしてくれないか。俺のターン、ドロー!」
ヨハンくんの、そして宝玉獣のデッキの傾向はだいたい見ることができた。
その認識から言うと、宝玉獣が5体も場に出ているとはいえ、今の状態からアブソルートを抜いてクノスペを倒すところまで行くのは難しいと──。
「いいカードが引けたな、強欲な壺で2枚ドロー! そして………へへ、コナミ、とうとう来てくれたぜ。俺が今日お前に会いに来たのはこいつがお前に会いたがっていたからだ。こいつが、俺とお前を結びつけてくれたんだ!」
「僕に会いたがっているモンスター?」
思考を中断させる自信と信頼が混ざった笑み。何か来る、何か、この局面で信頼できる強力なモンスターが!!
「見せてやるぜ、コバルト・イーグルとルビー・カーバンクルを生贄に、現れろっ! The big SATURNを攻撃表示で召喚!!」
《The big SATURN》 攻撃力2800 守備力2200
「これは、プラネットモンスターをヨハンくんが!!?」
背後から巨大な黄金の渦が生まれそこからぬるっとフィールドに現れてきたモンスター、The big SATURN。
その姿は白銀の機械の体に2本の腕、噴射機が背面についた球体上の身体の周囲を包む光の輪を持ち、その名の通り土星をモチーフとした機械型モンスターであるプラネットモンスターの姿であった。
彼は宙に浮かびながら、その双眸でこちらを威圧するようにじっと見つめていた。
「The big SATURNと出会ってから、俺はずっとこいつが誰かを求めているのを感じていた。そして、お前を見て確信したのさ! お前が、コナミがこいつが求め続けていたデュエリストだってな!」
SATURNが機械音を上げてヨハンくんに同意するように腕を上げていた。
「そして今日、こいつを出すことができた。こいつは強いぜ、俺はSATURNの効果発動! 手札を1枚捨て、さらにライフを1000払うことで攻撃力を1000ポイントアップする!!」
《ヨハン》 残 LP 100
《The big SATURN》 攻撃力3800 守備力2200
The big SATURNの表面が赤く光り輝いてその攻撃力を上げていた。
「くっ、攻撃力3800!!」
「これでお前のHEROの攻撃力を超えた。バトルだ! SATURNでアブソルート・Zeroを攻撃、END OF COSMOS!!!」
ヨハン君の宣言と共に赤い光を纏ったSATURNの強力な両腕がロケット発射をするが如くアブソルートに向かって飛んできた。
僕はSATURNの登場に驚きながらも、アブソルートが破壊される瞬間を不適な笑みを浮かべて見ていた。
《コナミ》 残 LP 3800
「よし、これで……ライフが回復している!?」
「ふっ、僕はアブソルート・Zeroが破壊される瞬間、エレメンタル・チャージを発動していた。それにより僕の場のE・HERO一体につき1000ポイント回復していたのさ」
SATURNが召喚され、その攻撃力がアブソルートを超えているのを見た瞬間、このカードでライフ回復を図ることは決めていた。
「くっそー、やるなあ」
「ふふん、だけど、それだけじゃないよ。僕がなぜアブソルートを最強のHEROと呼んだのか。それはこのモンスターの隠された効果があるからさ」
「なに、隠された効果!?」
「このモンスターがフィールドから離れることで発動する効果さ。アブソルートは去り際に相手の場のモンスター全てを破壊する!!
「バカな!? 俺のモンスターだけを破壊するってのか!!」
アブソルートが消えたことで、地面を這うように冷たい風が吹き抜けた。それは場に残っていた宝玉獣たちとSATURNを包み込み、氷でその全てを凍てつかせた。
「これで次のターン、クノスペで攻撃すれば僕の──なんだ?」
凍てつき、あとは破壊されるのを待つだけのSATURNの体の端々から光が貫いていた。
それはまるで爆弾が破裂する瞬間をスローで流しているようであった。
「へへ、実はお前のHERO同様、SATURNにも破壊されると発動する効果があってよ。このモンスターが相手のカード効果で破壊されると、その攻撃力分のダメージをお互いに受けちまうんだ」
やっちまったなあと言うように諦め気味に言うヨハンくん。破壊されると発動すると言うことは強制効果で止められないのだろう。
僕は呆然としながら、SATURNが破壊され光にフィールドが包まれる瞬間を見つめていた。
SATURNを中心にゆっくりと光に包まれていく光景は、どこか陶然とした美しさを心に与えていた。
「ぬぁあああ!!!?」
「ぐぅううううう!!!」
僕とヨハンくんを包んで巻き込んでいく破壊の光の中で、デュエルの終わりを迎える僕たちは叫び声を上げながら光の先を見つめ続けた──。
《コナミ》 残 LP 1000
《ヨハン》 残 LP 0
宝玉の氾濫をよしとするか一瞬悩みましたけど、ちょっとパワー高すぎるなあと止めました。あとヨハン使うかなあってカードだと思ったので。