「コナミくん、まだかなあ」
愛理くんが、アカデミアの屋上の縁に座り、誰に言うでもなく天に向かって言っていた。
彼女は俺──三沢大地の横で足を投げ出していた。最近はいい天気が続いており、学園でもっとも太陽に近いこの場所は暖かな日差しを感じられる最高の場所の一つだった。
──おかしい
「そうだ! コナミくんが帰ってきた時のためにお洋服の準備をしなくちゃ。そうだなあ、ドレスなんて着たら驚くかしら。どう思う三沢くん!」
コロコロと表情を豊かに変化しながら愛理くんは手を叩いていいことを思いついたと言わんばかりに俺を見ていた。その顔には一点の曇りもない無邪気な顔を浮かべていた。
──妙だ。
「別に、普段通りでもいいと思うが……」
「ダメよ! 1週間も会えなかったのよ。1・週・間!! あ〜寂しいわ。早くコナミ君に抱きしめてほしいわ! そうだ、帰ってきたらキスもしないと。会えなかったんだもんね。いいわよね、うん!!」
愛しのコナミの腕に抱かれる妄想でもしているのか、目の前の愛理くんは頬を朱色に染めて体を自らの両腕で抱きながら震わせている。
そこに写っているコナミは果たして俺の知っているコナミなのだろうか。すさまじく理想像に脚色されてそうだ。
──はて、俺の知る水無月愛理はこのような恥ずかしげもない言動をする女性だったか?
俺は努めて冷静に彼女を観察していた。南国の海を思わせる透き通るような蒼い長髪。見るもの全てが見惚れそうになるほどの整った容姿。
出るところは出ながら、女性らしいしなやかさと柔らかさを感じさせる体つき。なるほど、見た目においては水無月愛理そのものだ。
俺の記憶とも合致する。
見た目に違いがあるとすれば服装か。万丈目がそうしているように、彼女の制服も真っ白に染まっていた。万丈目が変わった行動をとるのは今に始まった事ではないが、彼女までともなるとそこに疑問を感じざるを得ない。
さらに付け加えるなら──これは俺の勝手な印象に過ぎないが──目元が与える印象が違うように感じる。
俺の知る愛理くんからは海のような深い思慮と優しさを感じさせる目であった。だが今目の前で恋人との逢瀬に思いを馳せている少女からは無垢と純粋。心の幼さからくる欲と短慮といった印象を俺に与えていた。
「……少し、調べてみるか」
ボソリと呟いて俺は彼女から背を向けた。この水無月愛理の名と姿を騙る少女の正体を。そうなった原因を──。
「あっ! 三沢くん。また明日ねー!」
「ああ、また明日」
無邪気にこちらに手を振る彼女に俺も返しながら寮への道を歩き始めた。
*
カタカタとパソコンのキーボードを澱みなく叩く音がする。指は絶え間なく動いており、止まることを知らなかった。
画面に表示されているのは島内の人物の簡易的なプロフィール画面であった。画面を見る三沢はその中で最近白い制服を着るようになった生徒をピックアップし、その関連性を洗い出していた。
(俺の知る限り、あの白い制服が流行り出したのはごく最近、コナミが島を離れた直後だ。最初に着始めたのは……)
そこで、三沢の指は止まった。画面に表示されている人物は万丈目準。よく知る友人の1人であり、度々おかしな影響を受けて珍妙な行動をする人物だ。
当初、彼が制服を白く染めたことに対して俺は何の違和感も感じてはいなかった。ぞろ、いつもの調子で何かに影響でも受けたのだろうと楽観視していた。
だが、奴の言動や行動を思い返してみると些か限度を超えているとも判断できる。確か奴は──。
──この世界はもうじき白く染まるのだ。一点のシミもない真っ白な世界にな!
と、このようなことを言っていたはず。具体性も何もない。いつもの世迷言と切り捨てて当然の言葉であった。
だが仮に、仮にだが、奴の世迷言が真実であると仮定して、それは何を意味するのだろうか。
(真っ白の世界か。それが意味するところとはなんなのだろうか。世界中の物質の色を白く塗り染める。単純に考えればそんなところだが、どうにも違う気がする。なんの確証もないが)
そこで三沢は考えるのをやめた。いくら考えても答えは出ないと早々にわかったからだった。それは、視界の端に捉えた情報から脳裏に浮かんだ恐ろしい答えから目を逸らすためでもあった。
視界の端にとらえた情報。パソコンのニュース速報に映る記事にはとある王国がレーザー衛星「ソーラー」を宇宙へと打ち上げたという内容だった。
(真っ白の世界。それが意味するところが、極端な話、この世に何物も存在しない世界を作り出すことしたら……)
荒唐無稽な想像。そんなことをして誰が得をするというのか。この世から全てを消し去る。そんなことはあり得ないと思考を切り上げて愛理くんの変化の原因を探る作業に戻った。
「──ダメだな。いくら調べてもそのような影響をもたらすようなテレビや流行りの事象は見つからない。なら、他にあるとしたら、この島にいる誰かが万丈目、ひいては愛理くんに接触し、何かをした。そうとしか……」
だが、万丈目はともかくとして、愛理くんがああも変わるなど普通のことではない。顔と名前が一緒の別人に入れ替わっていると言われた方が納得できるくらいだ。
だが、別人だとしてあれほど見分けがつかないほどに瓜二つの人物など探して見つかるものでもないだろう。まして愛理くんは超がつく美少女だ。容姿や体型が見分けがつかないほどともなると難易度もひとしお。現実的ではないだろう。
それに愛理くんに姉妹はいない。そう聞いているゆえ双子説も考え辛い。コナミほどではないにせよ8年以上の付き合いだ、家族情報くらいは共有している。
とすると、やはり中身が入れ替わった、或いは性格が変わるほどの何か……催眠術のようなものを受けているか、というのが自然だろうか。
これも非現実感を感じざるを得ないが、闇のゲームや吸血鬼と言った超常現象を体験した身からすればあり得ないと一蹴することもできない。
「やはり、何者か……闇のアイテムや超能力をもつ人物によるものと暫定してみるのがいいだろうか…………?」
俺は自分でもあまり信じられないあやふやな根拠のもとに出た結論を疑問符をつけて口に出した。
………それからしばらくその線を考え、考え、考え続け、続けた先に馬鹿馬鹿しくなってやめた。
「アホらしい。こんなこと机の前でいくら考えたところで答えなど出るわけがない。超常現象や超能力など、そんな力を持っているなんて話、この学園の生徒から聞いたことがない。そんなもの持っているのならもっとはやく噂になり俺の耳にも入っているはずだ」
俺は煮詰まった頭をスッキリさせるため、一度画面から離れ渇いた喉を潤すことにした。
頭を効率よく潤滑させるために1番いいのは糖分だ。だが、俺はあまり甘いものが好きではなかった。なので、ケーキやお菓子の代わりに果物や砂糖を入れたコーヒーで接種することにしていた。
俺は椅子に座り直し、コーヒーを一口飲んで最近の出来事を振り返った。なにか、いつもとは決定的に違う出来事はなかっただろうかと。
「──そうだ。エド・フェニックスがいたな」
この島に新入生として最年少プロとして活動しているエドが入学してきた。それは一時期話題になっていた。
一時期、というのはこのエドという後輩はあまり授業や自分たちの前に姿を表さなかったからだ。
一体何のために入学したのか、さっぱりわからないと噂になっていたのを思い出した。
なぜ真っ先にこの件を思い出さなかったのか。エドは十代とデュエルし、彼を一時期デュエルのできない、カードを認識できない状態にしていたではないか。
さらには、これは関係ないかもしれないがエドと対戦したカイザーが不調をきたしている。
可能性はある。接触してみる価値はある。俺は見出した変化の兆しに勝利の予感を感じ口元をほころばせるのだった。
*
その日はあいにくの曇り空だった。風も強く灯台近くの波止場に吹きすさぶ風は波を荒いしぶき上げさせていた。
波打ち際に佇んでいると、雨も降っていないのに体が軽く濡れていくのを感じていく。
私は湿り気を帯びた荒々しい風と打ちつける波によりしっとりとしていく体表に気をよくしてつい軽やかに踊り始めていた。それはさながら台風という非日常に子供がワクワクと心を弾ませ身を任せはしゃぐのと同じようなものでしかない。
そして踊ると言っても足を踏み外して落ちるわけにはいかないために本当に軽く、そしてパートナーはいないためスッと腕を伸ばして僅かなステップを踏みながら回転するだけの簡単なものだ。が、あまり不満はなかった。
「あーあ、コナミ君がいたらよかったのに。2人で踊ると気持ちいいんでしょうねえ」
訂正する。不満はあった。大好きなパートナーと身体を寄せ合い踊れたらどれほど心地よいか。
きっと彼はダンスの作法なんて知らないでしょうから私が手取り足取り引っ張っていくだろう。それを想像するだけで心が弾んでいく。
今はいないパートナーを幻想し、2人で踊るイメージを目の前に作り出し、私は軽やかに踊っていた。
そんな私に離れたところから話しかけるものがいた。
「そのようなところで踊っていたら落ちますよ」
「……今楽しんでいるところなの。邪魔しないでくれる」
私は横から話しかけてきたその無粋な男を半眼で睨みつけて止まりかけた踊りを再開した。
「邪魔と言いますがね。私を呼んだのはあなたでしょう。私も暇ではないのです。要件があるならお早めに済ませて欲しいのですが」
「………」
憮然とするその男に私は何も答えない。満足するまでトットットと脳内に流れる音楽のリズムに乗って踊り狂うのみだった。
その男は最初に話しかけた後はじっとこちらを見ていた。斎王という名前だったか。あまり興味もないので忘れたが、ともかくその男を呼び出したのは私であった。
斎王を私の情動が終わるまで待たせることに躊躇いはなかった。私の中の優先順位は自身とコナミくんが同率一位。それ以外は木端である。つまるところ、私が斎王を気にかけることはないのだ。
──と、そこに新たな乱入者が現れたようだ。斎王とは別の硬い足音が聞こえてきた。
「君は…………」
「初めまして。三沢大地と言います、斎王琢磨さん」
斎王の背後から歩いてきた少年。青年に差し掛かる直前と言った風体をしながら彼に話しかけたのはラーイエローの秀才、文武両道と品行方正を体現し、全校生徒の中で総合力を評価するならまず間違いなく1番に選ばれる。そう断言して問題のない男であった。
──まあ、私にはどうでも良いことなのだけど。
「三沢大地君ですか……。ご存知のようですが、私は斎王琢磨という者です。なるほど、ここに呼ばれたのは貴方の要望のようですね。それで、私にどういったご用件でしょう」
斎王は一瞬、彼に気づかれないほど僅かな一瞬だけ私に険のある目つきをしたが、それも三沢君の方へと目線を向けた時には柔和な、いかにも無害ですと言った表情を彼に見せていた。
「天気も悪いので簡潔に聞きます。最近、ここ1週間ほど前から制服を白く染めた生徒が増えてきていまして、それに伴い世界は白く染まるなどといった不可解な言動をとる生徒もいる。これについて何か知ってはいませんか?」
「さて、私にはなんのことやら。学生の間で流れる流行りというモノではないですか。思春期の子供、流行には聡いでしょうし、時にはおかしな流言も出るでしょう」
「ええ。その可能性は考えました。ただ、その場合何が原因でその流行が流行り始めたか。その出所がわからないのです。それに……」
「それに?」
三沢くんはチラッと私を見て言葉を溜めた。2人が話している間も私はダンスを止めていない。その動きに見惚れてっというわけではない。
「愛理くんのように、制服が変わるのと同時に明らかに以前とは人格が変わったのではないか。そう感じさせるほどに性格に異変をきたしている人物もいる。これはいくら思春期の子供といっても限度を超えている。そうは思いませんか」
「あり得なくはありません。以前の彼女の様子は知りませんが、この特殊な環境による生活。押し込められたストレスが暴発、なんてこともあるでしょう」
「そうでしょうか」
「ええ、そう心配なさらなくてもよいと部外者ながら思いますよ。一過性のものでしょうとね」
落ち着いた声で諭すように三沢くんに話す斎王に慌てた様子はない。ただ、自らが疑われている。この一件に関与しているのではないか。
そう思われていることに焦燥感を感じているのか、彼の問いに精査することなく素早く終わらせようとしている気配を感じる。
私は、その斎王の必死な様子に笑いが漏れでないよう口をつぐんで蓋をしていた。
「では、もう一つ。私が調べたところによると、どうにもこの変化。デュエルをきっかけに起こっているようなのです。あなたは最近、彼女と、ひいては万丈目準という男とデュエルをしましたか?」
それは半ば確信を持った問いのように私には聞こえた。念の為に本人に聞いておく。その程度のニュアンスを込めた問いのように。
斎王も同じように聞こえたのだろう。一瞬だけ、息を呑んだように、答えに窮していた。
「なぜ私がその2人とデュエルを?」
「どうにもこの2人だけがタイミングが可笑しいのです。他の白い制服の生徒は皆万丈目に負けたキッカケで起こっている。が、この2人は違う。愛理くんは万丈目とデュエルしてはいないにも拘らず変化した。では万丈目は? 愛理君は? 2人は一体誰とデュエルして変化したのか」
彼の中では既に答えが出ているのだ。その眼差しは一点に斎王に向いていた。視線に射抜かれる斎王は少しずつ眉間に皺を寄せながら彼の推理もどきを聞いていた。
「最初はエドを疑ったんです。遊城十代という生徒がいるんですがね。そいつがエドとデュエルし、敗北した結果、カードが白くなって見えなくなったそうなんです。はじめに言った世界が白く染まる。どこか共通点を感じるものがありましたので。
しかし、エドは違う。知っていますか。デュエルディスクには対戦した相手との履歴が残るんですよ。いつ、誰とデュエルしたのかという。
万丈目と愛理君の履歴にエドの名前はなかった。堂々と皆の前で十代とデュエルしたあいつが隠れて2人とデュエルするとは思えない。すると……」
「まさか、それに私の名前が載っていたとでも?」
それはない。背後で打ち上がる波飛沫をBGMに聞いている私が内心で答えた。
「いいえ。誰の名前も載ってはいなかった。アンノーン、不明。つまるところ登録のない誰かと、誰も歩かないような場所で、時間に、2人は誰かと戦った」
「ふう、要領を得ませんね。貴方はその誰かが私であると思っているのでしょうが、それは思い違いです。私はデュエルができません。デュエルディスクの扱い方も知らない。そのため、デュエルによる変化、その推理対象から私は外れるのです」
半分はあっているなあ。斎王はデュエルディスクの扱いを知らないって点は。だけど、チェックメイト。
言うならデュエルはできないではなく、下手と言うべきだったわね斎王。だから……ここまでね。
「実は、ここに愛理くんが変化をきたす直前のデュエルの様子を記した映像がある。そう言ったら、あなたはどうします?」
「なに……映像!?」
三沢君が手に持つビデオカメラ。そこには私の視点から流れる斎王とのデュエルをしている映像が流れていた。
デュエルディスクの仕様を斎王は知らなかったでしょうし、聞かれなかったから私も答えなかったが、実は一部のデュエルディスクには録画機能をつけることができる。
「女の子は結構つけてる子は多いのよねー。ほら、犯罪やら揉め事の際に記録をきっちり撮っておきたいじゃない」
「水無月愛理!?」
振り向き様、斎王は押し隠していた本性を露わにするように柔和な笑みから反転、苛立ちと焦燥が入り混じった顔をしながら私を見た。
「この映像は愛理くんに聞いたら快く見せてくれたものです。あなたが彼女に何をしたのか、また、愛理くんがどうなっているのかは教えてくれませんでしたけどね」
「えー、私は水無月愛理だってば。信じてないのー?」
三沢くんは私の言葉には反応を示さず、じっと冷や汗をかき必死に頭を働かせる様子の斎王だけを見ていた。
「さて、あなたはデュエルができないと言っていた。なのに映像では見事な腕前で愛理くんとデュエルしている様子がある。なぜ嘘をついたのです?」
「ぬっ、ぐっ」
返す言葉に窮している様子の斎王が何かを言おうとして、詰まり、そして口を閉ざした。そんな彼に畳み掛けるように三沢くんは言葉を続けた。
「それだけではない。俺はあなたが何か催眠術のような類の力で皆の精神に干渉したと見ているが、ではその最終的な目的は何か。白く染まるとはどういう意味か。俺なりに考えたのです。
白、つまり余計なものが何も存在しない世界。それはどんな世界なのだろうか。何もない世界とは一体…………。
そういえば、つい最近ニュースでとある王国の王子が宇宙に世界を破壊しうる衛星兵器を打ち上げたそうなのです。知っていますか?」
「!?」
今度こそ、斎王の顔から表情が消えた。衛星兵器の話が出た瞬間、これまでにないほどの驚愕を浮かべ、そして、それ以上に感情を閉した表情に切り替わった。
それはなによりも斎王という人間の過去と未来の行動を克明に表明していた。
「ここまで言えば十分でしょう。斎王琢磨、皆に、そして彼女に何をした!」
「………………ふっ、ふふふ。大したものだ三沢大地。よもやこれほど早く、私に辿り着くものが現れるとは想定外にも程がある。そして水無月愛理、お前もだ。まさか、探りを入れてくるやつに教えるとはな」
「えー、だって教えるな、なんて言われてないんだもの。それに、私の目的はコナミくんであなたが私を呼んだのもコナミくんが狙いでしょ。だったらそれ以外で協力する理由がないのよねえ」
私の踊りは終わっていた。目を伏せ、肩を震わせながら、何かを決断するように斎王は顔を上げて三沢くんを睨んだ。
「一つ、勝負をしようではありませんか。ここにいる水無月愛理とあなたがデュエルをするのです。あなたが勝てば私は全てから手を引きましょう。今後一切関わらないと誓います。無論、今私の手にある生徒たちも元に戻します」
「ふむ…………俺が負けた場合は?」
「その場合は、光の洗礼を受けてもらいます。言わずもがな、彼女たちと同じようになるということです。どうですか?」
2人が私を見る。正確には私は他の皆んなとは根本的に違うから三沢君が洗礼を受けた場合、ただの洗脳で終わる。
私のようにはならないんだけどね。
「いいだろう。どの道、あんたが犯人だとしてもデュエルでけりをつける以外の方法は思い浮かばなかった。俺に異論はない。その勝負受けてやる!」
「え〜なんで私がデュエルしないといけないのよ! あなたが自分でやればいいじゃない!!」
腕を振り上げ意気揚々と斎王の提案を受け入れた三沢くん、私はなぜ自分がデェエルをしなければと言う想いで斎王に不満を言った。
そんな私を叱りつけるように斎王もまた私に怒鳴った。
「水無月愛理ィ! この事態を招いたのは私の無知もあるが、お前がそもそももっと協力的なら起こらなかった事態だ。お前自身の願いのためにもここは戦ってもらわねばならんッ!」
「だからーあなたが戦えばいいじゃない。私、三沢くんに勝てる自信なんてないんだけど」
「我が運命力は最近の度重なるデュエルで消耗している。ここは私よりもお前が適任だ。これは賭けなのだ。運命がどちらの味方をするかというな」
私の願いのため、それを言われたら協力しないわけにはいかない。そして、消耗しているというのも本当だろう。
その顔に余裕はなく、叶うならば自分の手で運命の天秤を転がしたい。そう顔に書いてある。
「はあ、まあいいわ。やるだけやるけど、敗けても文句を言わないでよね」
「その時はその時だ。運命がそう定めたのだと受け入れるのみだ」
「はいはい。それじゃあ始めましょうか三沢君。お手柔らかにお願いします」
うやうやしく頭を下げる私に三沢君はデュエルディスクを構えて私を睨むのみ。本当に私を水無月愛理とは思っていないようだ。
ちょっと悲しいような、けどどうでもいいような気もする複雑な思いだ。私は自前のディスクを構えてデュエルの準備をした。
「最後に一つ聞いておきたい。お前たちはコナミをどうするつもりだったのだ。それぞれ、目的があったのだろう」
「運命の歯車を回すものにあてる。その結果を知るために」
「愛し合うのよ。それでずっと、ずーっと一緒にいるの。好きな人と一緒にいる。幸せってそういうことでしょ?」
斎王が、私が、それぞれの目的の回答に「そうか」とだけ呟いて鋭い目で私を見つめてきた。
風は、一層激しく吹き荒れ始めていた。それはこれから始まる運命の行く末を決めるデュエルの振り子がどちらを味方するか悩んでいるように感じていた。
全身でそれを感じながら、私は自らの愛と願望のために勝利を目指すデュエルを開始した。
「「デュエル!!」」
なんか無駄に長くなったなあ。正直三沢くんがガチで調べ始めたら逃げられないと思ったのでこの展開にしました。