正直全然気づいてなかったんですがこの小説書き始めてもう1年経ってたんですね。自画自賛するようで嫌ですが流石に書き始めた頃よりは面白く書けてると信じたい。
「ぐっ……ここは……?」
デュエルの終わりと同時に強烈な光に包まれた俺は気が付けば見覚えのあるどこかの施設の廊下に立っていた。
床は一面緑に塗装され、通路にはそれぞれの部屋の入り口が長い通路の合間合間に存在していた。
「ここは…………学校なのか?」
部屋の入り口上部にはその部屋を表す番号が書かれた表札がつけられており、3-1から3-5まで連番になるように配置されていた。
そこで俺は気が付いた。この景色には見覚えがあると。そう、ここはかつて俺がまだ幼い小学生の頃に通っていた校舎だと気が付いた。
「なぜここに……斎王は、愛理くんはどこに行ったのだ……!?」
窓が風で響いている。外を見ると曇り空の下、木の先の枯れ葉が舞っている。吹き荒ぶ風は大気を揺らし、室内の温度も下げているようだ。少々肌寒かった。
「──あれが最近噂になっているコナミってやつか。さて、どんな腕前なのかな?」
背後で少年期特有の変声前の高い少年の声が届いた。
「──ふふーん。もしかしたらみんなのいう通り今の僕は学年でも1番かもね♪」
「──学年一か、それは聞きずてならないな」
振り向いた先、いつのまにか背後にいた少年は教室内の別の少年の声に抗するように俺が確認する前に室内へと入っていった。
「今のは……まさか……」
次いで、俺も後を追うように教室内へと入った。室内では2人の少年が熱中するように机の上にカードを広げてデュエルをしていた。
明らかに部外者である高校生である俺がドアの前に立っているのに誰も気づかなし、反応もしない。どうやら、目の前で行われているデュエルに誰もが夢中、というわけではなく俺という存在は認識できないものとして扱われているらしい。
ここがなんなのか。斎王と愛理くんがどこへ行ったのか。何もわからなかったが、一先ずは目の前で行われているデュエルを見ることにした。
1人は戦士族に装備魔法を中心としたデッキのようだ。もう1人は、磁石の戦士をメインに使用している。
なるほど、双方とも、見覚えのあるデッキでありデュエルの内容だった。そこでデュエルしている2人の少年を見てみた。
するとやはり、予想通りというべきか、そこにいたのはかつての少年期であった俺とコナミの姿だった。
「これは8年前の光景だ。かつての俺とコナミの出会いの日。俺たちの仲はここから始まったんだ」
「──そう。君たちの全てはここから始まったのだ。そして、君にとっての苦境となる道も」
「──斎王!?」
机の上から顔を上げ、今見ている光景がいつのことなのかを把握した矢先、背後からこれまで影も形も表さなかった斎王が立っていた。
「斎王、ここはどこだ。俺に何をした!」
俺は奴を逃さないために掴みかかりに行ったがそれは空を掴むように彼の体をすり抜けた。
「無駄なことはよしたまえ。ここは過去であり君の心の中だ。私たちに実体はなく、ここに映るものをただ見ることしかできない」
「心の中? なぜそんなところに俺が、お前がいるんだ! これがお前の力なのか!!」
「そうとも言えるし、そうでないとも言える。私元来の力か、それとも与えられた力によるものか。私自身、定かではない」
まるで煙に巻くように斎王は答えた。そして、良きライバルになれると握手を交わす2人の少年を見ていた。
「この日が君の運命の転換期であった。ここから、君の不幸が始まったのだ」
「俺の不幸だと? 何をおかしなことを……」
「まあ、先に行こうではありませんか。まだ見るべきものがあるのですから」
コツコツと教室を出ていく斎王に、俺は過去の俺たちをチラチラと見ながらついて行った。そして、教室を出た時、その舞台は変わっていた。
「ここは運動場か」
「そう、そしてこれが2度目のあなたの転換期。2度目の不幸の時です」
「……」
変わらず俺が不幸であると告げる斎王に不快感も隠さずに憮然とした表情を向けながら、俺は運動場で周囲で見守る人混みの中心にいる2人を見た。
そこにはやはりと言うべきか、俺とコナミがいた。2人はデュエルをしている。それは6年生になった俺たちが運動会のイベントとしてデュエルをした時のことだった。
「このデュエルで君は彼に勝利をもぎ取った。君の叡智が、彼の運命力を超えた。数少ない勝利の瞬間でした」
「気に入らない言い方だが、俺が勝利したと言うのは事実だ。………ふっ、若いな」
そこで行われているデュエルは今の俺からすれば荒削りもいいところの未熟なデュエルだった。
自画自賛になるがこの年頃にしては、大したデュエルをしていると評価できるが、あくまで子供にしてはという評価だ。
俺は当時のコナミに勝とうと必死になって頭を働かせていた自分を思い出し、そして勝利を飾れた頃の気持ちが蘇ってきて自然笑みが生まれた。
「しかし、この勝利が君を苦しめる一因となった。酷な話ですが、君は勝つべきではなかった」
「どういう意味だ。俺が負けるべきだったとでも言いたいのか」
「希望は時に毒へと変わる。聡明な君なら私の言いたいことがわかるはずです」
「ふざけるな! 俺はコナミに勝ったことを後悔などしていない! 奴のドロー力を知恵が上回れると信じたこともだ!!」
俺は斎王が何を言いたいのか正確に理解していた。だが、それを認めるわけにはいかなかった。俺はその事実を不幸だと感じたことはないし、辛いと感じたこともない。
たとえ、時が経つごとにコナミへの勝利が遠ざかっているとしてもだ………。
「運命力というものは人知を超えたもの。彼が幼く未熟な時は勝てるでしょう。しかし君も感じているはず、彼が星と出会うことで高まっていく運命力の増加を。遠くなっていく背中を」
「…………」
「強い運命をもつ者に並べるのは同じ強さをもつ者だけ。そう、例えば遊城十代のように」
「十代…………?」
「そう、遊城十代。あの闇に愛された少年。彼にもまた君は勝てない」
「くっ…………!」
コナミ、十代、二人とも類まれなドロー力に恵まれた二人。追い詰めることはできる。あと一歩というところまで行くことはできる。だが、勝ち切ることができない。ここぞと言う時のドローがあいつらを勝利に導く。
それが、運命だとでもいうつもりなのかこいつは。
俺は否定することはできず、かといって認めることもできないために、押し黙り目の前の光景に集中することしかできずにいた。
「──ここは…………!」
「そして、君が諦めを受け入れ始めた場所。才能という壁に膝を屈し始めた。この場所で…………」
唐突に景色が変わる。瞬きをした瞬間に切り替わったそこは巨大なドーム状のデュエル場だった。階下に目線を下げると少しだけ若いコナミと、カイザーがデュエルをしているのが見えた。
俺は観客席でそれを愛理くんたちと応援していた。
「ここが君の心の分岐点。常に1番であることを心掛けてきた君が、彼に譲った、諦めた場所。君は永遠に1番にはなれない」
斎王の言葉は不思議とすんと俺の心に響いていた。永遠に1番にはなれない。反論しなければならないその言葉に、俺はどこか納得している自分もいたのだと今知った。
「彼は全てを手にしている。心の底から夢中になれるデュエル。そしてデュエルにおける才能。自分を支え愛してくれる美しい女性。いやはや、ここまで恵まれた少年というのも珍しい。彼はよほど天に愛されていると見える。君は、どう思う?」
「俺は…………」
恵まれている。その一言がどうしても口から出せなかった。それを言ってしまうと、自分と比べてしまう気がしたからだ。
「君は優れた人間だ。眉目に優れ、運動神経もいい。特にその優れた頭脳で言えば並ぶ者はそうはいない。そんな君だが、彼に劣等感を抱いている。そうだろう。それは何故だと思う?」
俺は背中に流れる汗を感じていた。これ以上こいつの言葉に耳を貸してはいけない。そうわかりながら、この場から動くことはできずに聞き入っていた。
それは、こいつの言葉に真実性があり、俺が押し殺してきた感情を切開しようとしていると、それが開けた時の自分がどうなるのか興味があったからだ。
「そう、君はただ一点、デュエルという道にだけはすぐそばで勝ちえない存在がいたからだ。もし、彼がいなければ愛理という少女は君に惹かれていたかもしれない。いや、そうでなくとも、君は一番であると言う自負を維持することができていただろう」
「──ッ! 何が言いたい!!」
浸食されるように心の膿を暴こうとする斎王の誘惑を振り払うように俺は声を荒げて斎王を見た。彼は柔らかな聖人のようにさえ見える優しげな顔と声で諭すように俺に手を差し伸べていた。
その手を見ながら懐疑的な視線を向け、そして僅かな期待が籠った声で聴いた。
「私の手を取るがいい三沢大地。君が1番になれる機会を与えよう」
「何を…………お前の手を取れば、俺は1番になれるとでも言うのか?」
「ああ、今のままでは君は永遠に1番には届かない。君には決定的に運命力が足りない。それを私が与えよう」
差し伸べられた手を見る。これをとれば、俺もあいつのように強く、もてはやされる立場に…………。だが、その代わりに俺は万丈目のように、愛理くんのように人が変わってしまったようになってしまうかもしれない。それは…………。
「想像するといい。この手の先には君の望む未来がある。誰もが君を賞賛し、輝きを放つ君が欲しかった未来がそこにはあるのだ。勝ちたいのなら手を取りたまえ」
この手の先に俺が夢見る世界がある。俺はもう一度輝きたい。その衝動に身を任せるように斎王の手を取った。
瞬間、視界が光に染められゆく中で、これまで沈黙を保っていた会場から万雷の拍手が俺へと降り注いだ。
誰もが俺を祝福していた。忘我するように俺はその光景に破顔して喝采を全身で受け入れた──。
*
荒潮が飛沫をあげる灯台近くの波止場で斎王は膝をつき息を荒くしていた。その姿は疲労困憊、今すぐにでもベッドで横たわりたいと息絶え絶えにいっているようだった。
その場にすでに三沢はいない。光の洗礼を受け入れた彼は自寮へと帰っていった。いるのは自分である斎王自身とここまで消耗する原因を作ることになった水無月愛理の二人だった。
斎王はデュエルが終わったことで疲労感を流す様に潮風を全身にうけている愛理を睨むように見つめ、次いで大きく呼吸を吐きながら緩慢な動きで立ち上がった。
「愛理くん、私は船にもう戻る。君も今日は帰りたまえ。そして、二度とこのようなことがないように私のことは誰にも教えるな。映像も消すんだ、いいな!」
「いいわよ。でも、随分とお疲れね。私の時はそこまでじゃなかったと思うんだけど、三沢君にはそこまで大変だったの?」
私の姿を見てもわからないのかと言って無視して帰りたくなるが、ぐっとこらえて質問に答えてやることにした。
この娘は本質的に私の味方ではない。あくまで協力者。それも一時的な。故に、下手に機嫌を損ねてまたぞろ面倒な事態を引き起こされてはかなわない。
「三沢大地にはこちらに引き込むために強引な方法をした。デュエルで運命に干渉したのも、彼の心の奥底まで私の現身を入れ彼の内に秘めた願望を引き出す。そのどれもが本来必要のないことなのだ。そのようなことをしなくとも、運命に導かれてデュエルするため、通常の人間は我が力に惹かれて内に取り込めるのだ。
だが彼は違う、予定外のタイミングに確実にこちら側に引き込む必要があった。ただでさえ消耗していると言うのに、私に限界まで力を使わせおって………くっ」
改めてここまで自分が消耗している原因が興味がなさそうに聞いているこの未成熟な娘のせいだと思うと苛立ちがこみあげてくる。
へそを曲げられて敵対はなくとも邪魔されても困るという厄介な女。かといって切り捨てることもできん。この女は星をこちらに取り込むための鬼札なのだから。
「まったく、厄介なものだ…………!」
つい漏れ出てしまった言葉にわずかに目線を愛理に向けるが、どこ吹く風、すでに話は終わったと言う風に頭に両手を組んでこちらに背を向けていた。
「どこへいく」
「帰るの。三沢君も帰ったし、お腹すいてきちゃった。潮風でぬれたからお風呂でリフレッシュしなきゃ。斎王も早く帰りなさいねー」
「…………」
なんて身勝手な女だと内心で愚痴を語るにとどめ、斎王もまた自らが島へとやってくるための船へと足を急ぐことにした。
疲労からもつれそうになる足に力を込めて急ぐ。
「はぁ……はぁ。急いで戻り、エネルギーを摂取しなければ。今後に差し支える。エドのマネージャー業も…………」
だが、三沢大地、あの優れた頭脳を持つ男を早々に引き入れることができたことはある意味では僥倖であっとも言える。現状に自分を納得させるためにそう思うことにする。
「問題はない。過程はどうあれ、最終的には我が目的に収束する。全ては運命に定められているのだから…………」
天を見る。曇天に覆われた天上はその先の眩い光を映すことはない。しかし斎王の眼には見えていた。
遥か大宇宙にて輝く他を排する光の世界が…………。
「今はまだだ。まだ、表で活動することはできん。雌伏のときだ………今はまだ」
足どり重く、しかし確かな目的に近づいている実感を胸に斎王は帰路を歩み続けた──。
三沢の時だけやけに色々と画策して洗脳してたから、純粋にデュエルで洗脳は斎王自身でも難しいくらいには頭脳がやばいんだろうな思い、強引に取り込む形にしました。