「俺の先行だ、ドロー!」
十代君がカードを引いた。
愛理ちゃんのあまりの積極性に戸惑い十代君に誘われ勢い余り引き受けた彼とのデュエル。
元から強い彼だが、僕がアメリカにいるわずかな間に超強くなったとまで言い切ったデッキ。どんなカードが出てくるか楽しみだ!
「へへ、早速来てくれたぜ! 俺は手札からフェイク・ヒーローを発動、手札からE・HEROを一体特殊召喚できる。俺はE・HERO ネオスを特殊召喚!!」
「これが君の新しいHERO………ネオス………!」
《E・HERO ネオス》 攻撃力2500 守備力2000
白く筋肉質な体に胸の中心には青く小さな球体状のボッチが付いている。その姿はどこか僕のジ・アースを連想させる姿をしたモンスターであり、通常モンスターである点を除けばそのステータスも含めてそっくりなカードであった。
「こいつは宇宙から来たHEROなんだぜ。お前のプラネットモンスターと一緒だな!」
「宇宙から!? それはすごい…………!!」
僕のプラネットモンスターも宇宙にある惑星が生んだカードであるが、十代君の新しいHEROも同じように生まれたと言うことなのか。
それがE・HEROを扱う十代君の元にやってくるなんて、どこか運命めいたものを感じるなあ。
「だろ、だけど俺はまだこいつの本当の力を見せていないぜ。俺は手札から
「………ネオスペーシアン?」
《N・アクア・ドルフィン》 攻撃力600 守備力800
新しいHEROの隣に召喚されたネオスペーシアンという初めて聞く名称を持つカードの登場に僕は疑問の声を上げてそのモンスターを見た。
イルカを思わせる頭部に成人男性的な体を持った不思議なモンスター。ネオスもそうだが、このモンスターも初めて見るカードだ。
ステータスは下級モンスターらしくあまり高くない、だというのに攻撃力で躊躇うことなく召喚した以上、何かあるのだろうなと推察することができた。
「………そのモンスターも、君の新しいモンスターなのかい?」
僕は初めて見るモンスターに肩眉を上げてアクア・ドルフィンとネオス。そして十代くんを見た。
「おうっ! ネオスとネオスペーシアン。それが俺の新しい仲間たちだ。こいつらの力、すぐに見せてやるぜ!」
ぐっと拳を振り上げて自信一杯に言う十代君に僕もワクワクしていた。
ネオスとネオスペーシアン。一見関わり合いのなさそうな2体だが、一体どんなことをしてくるのか。
「俺はアクア・ドルフィンの効果を発動! 手札を1枚捨てることでお前の手札の中から俺のモンスターたちより攻撃力の低いモンスターを破壊して、500ポイントのダメージを与えるぜ!!」
「なにっ!?」
「エコー・ロケーション!!」
クケケケケと口から奇怪な超音波を上げながらアクア・ドルフィンが僕の手札に向けてはなったことで、手札の内容が十代君に筒抜けになってしまった。
「見えたぜ、俺はお前の手札からTHE tyrant NEPTUNEを選択、パルス・バースト!!」
「ぐっ!」
《コナミ》 残 LP 3500
筒抜けとなった手札へとアクア・ドルフィンから放たれた閃光が放たれ貫かれる。
僕のエースの1体であるNEPTUNEが破壊され、僕は呻き声をあげた。
「NEPTUNEが………初ターンから手札破壊にダメージまで、なるほど1ターン目にやられると厄介な効果だ。やるね、アクア・ドルフィン。だけどそれからどうするんだい。フェイク・ヒーローで召喚されたネオスはこのターンのエンドフェイズに手札に戻る。アクア・ドルフィンを攻撃表示で終わるつもりかい?」
まさかそんなミスはしないよねと思いながら彼を見ると、当然というように笑みを浮かべながら次の行動をしようとしていた。
「そんなわけないだろ。見てろよ、こっからがネオス達の本領の発揮だぜ。俺はネオスとアクア・ドルフィンをコンタクト融合させる!!」
「なっ、そんなバカな! 融合も使っていないのに!?」
彼がその手を振り上げると同時にフィールドのネオスとアクア・ドルフィンが飛び上がり宙高く飛び上がっていく。
それはあり得ない光景だった。融合も発動せずにモンスターたちが融合しようとしているなんて、いくら精霊の付いているカードは自由度の高い行動をしてくれるからと言って、カードの発動もなしに融合なんてできるはずがないのだ。
「ネオスとネオスペーシアンたちのコンタクト融合に融合カードは必要ないのさ! 2体をデッキに戻すことで現れろ、宇宙から来た新たなるHERO、その力をコナミに見せてやれ! 俺はE・HERO アクア・ネオスを融合召喚!!」
《E・HERO アクア・ネオス》 攻撃力2500 守備力2000
それは文字通り、筋肉質なネオスにイルカの要素があるアクア・ドルフィンが混ざったようなモンスターだった。
アクア・ドルフィンであった時の薄いライトブルーの配色はアクア・ネオスへと変わることで濃い青色であるマリンブルーのような色へと変わっていた。
「アクア・ネオスの効果を発動! 1ターンに1度、手札を1枚捨てて相手の手札をランダムに破壊できる!!」
「アクア・ドルフィンと同じような効果か!!」
「エコー・バースト!!」
アクア・ドルフィンの効果と同じように、今度はアクア・ネオスの手から超音波のような波動を放たれて僕の手札が破壊されてしまった。
「くっ、僕の手札が、1ターン目に2枚も…………!」
「アクア・ドルフィンと違ってダメージまでは与えれねえけどな。その上、コンタクト融合で召喚できるネオスの融合体は1ターンしか場にいられないってデメリットがあるんだ」
「…………なるほど、召喚に融合が必要ない代わりに場持ちはよくないと言うことだね」
自分のターンが来ていないにもかかわらず2枚も手札を削られたことに驚きながら十代君の説明に頷いて答えた。
1ターンしか召喚しておくことのできないHEROか。融合を必要としないと言う点では非常に強力だし、その効果も特筆すべきところがあるけれど、中々に厳しいデメリットだ。
「一応聞いておくけど、そのデメリットを打ち消すカードはあるのかい?」
「当然、俺の最後の手札がそうさ。俺はアクア・ネオスにインスタント・ネオスペースを装備。こいつを装備している間、アクア・ネオスはデッキに戻る必要がなくなるぜ!」
アクア・ネオスの足元に、様々な色がカラフルに写りこんだ丸い歪みが生まれた。あれが彼をこの場に押しとどめるカード。
インスタントと名前が付いている感じ、より上位のカードがありそうなカードだった。
「これで俺の手札はもうない。俺はターンエンドだぜ!」
「ふふ、新しいHERO。見せてもらったよ、そのモンスターに負けない強さで応えないとね。全力で行こうかッ! 僕のターン、ドロー!!」
ネオスにネオスペーシアン、共に強力なモンスターたちだ。恐らく、ネオスを中心に他に存在しているであろうネオスペーシアンと呼ばれるモンスターで様々なHEROに融合していくコンセプトなんだろう。
他にどんなカードが出てくるのか興味はあるけれど、あまり悠長に構えているとすぐに負けかねない強さがある。
アクア・ネオスの攻撃力は2500。最上級クラスの攻撃力を誇っているが、やりようはある!
「僕は手札からE・HERO ブレイズマンを召喚、その効果によりデッキから融合を手札に加える。そして融合発動! 今召喚したブレイズマンと手札のザ・ヒートを融合、E・HERO ノヴァマスターを融合召喚する!!」
《E・HERO ノヴァマスター》 攻撃力2600 守備力2100
赤いマントを翻しながらノヴァマスターが召喚された。十代君のネオスのような融合を必要としない特殊な召喚方法はないけれど、その代わり失った手札を補充する効果がある。
これで少しでも手札の回復とライフの差を縮める!
「バトルだ! ノヴァマスターでアクア・ネオスを攻撃! 爆炎葬送波!!」
ノヴァマスターが地面に手を突きながら波のような炎をアクア・ドルフィンへと殺到する。炎の海に呑まれたアクア・ネオスは叫び声を上げながら爆発した。
「アクア・ネオスが………ッ!! だが、アクアネオスが破壊されたことでインスタント・ネオスペースの効果が発動するぜ! 俺はデッキからE・HERO ネオスを特殊召喚する!!」
「なにっ、ネオスが出てきた!?」
《十代》 残 LP 3900
ノヴァマスターが爆炎を放ち水のモンスターであるアクア・ネオスを破壊することに成功したが、アクア・ネオスの足元に発動していた虹彩色の宇宙のような空間からネオスが飛び出してきた。
「そうか、コンタクト融合だっけか。融合を必要としないのは強いけど最上級モンスターのネオスを召喚することは難しい。それを補う効果も持っているのか」
僕はノヴァマスターの戦闘でモンスターを破壊した時に発動するデッキからカードを引ける効果を発動しながら予想外に召喚されたネオスを見て彼の突飛な戦術を思い出していた。
コンタクト融合にネオス、そしてネオスペーシアン。彼は1ターン目にフェイク・ヒーローを使うことでネオスを召喚し、アクア・ネオスの召喚条件を満たしていた。
最上級クラスのネオスは通常モンスターだ。ましてサポートカードの多いHERO系統のモンスター。召喚する方法はいくらでもあるだろう。
さらにコンタクト融合を使用するなら場に召喚しないといけないみたいだが。それをしない場合を考えると、融合なしでも容易に召喚し、勝ち切れるようなカードがふんだんに入っている可能性がある。
今のインスタント・ネオスペースのように、デッキからすら思いもよらないタイミングで召喚されかねないと言うことか。
「はは、これは手強いな。僕はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
ネオスという新しいHEROが増えたことで融合を主体とする彼にそれ以外の戦術で戦う選択肢が増えた。
無論これまでもそういう融合をメインで使わない戦いがないわけではなかったが、やはり扱いは難しそうであった。
その彼がそういった戦術を容易にできるようになったとなると鬼に金棒だろう。これまで以上に勝つことが難しくなる。
僕は苦戦が必至になると思いながら、友人でありライバルである彼が強くなっていくことに喜びを感じていた。
時を経るごとに恐ろしいスピードで強くなる彼にいつか一勝さえも勝てなくなる日が来るかもしれない。そんな不吉な考えさえよぎりながら、僕は喜色を抑えることができそうになかった。
──そんな彼に勝ちたい!! 最強となった十代君をこの手で倒したい!!!
「アクア・ネオスがいきなり倒されちまうとはな。流石に一筋縄じゃいかないな。行くぜ、俺のターン、ドロー!」
さて、彼の手札は0枚。ネオスが召喚されたとはいえその攻撃力ではノヴァマスターには届かない。
ならば今のドローであらたなネオスペーシアンか、もしくは強化系統のカードを引いてこないといけないんだけど、どうなるか。
「俺は手札からアサルト・アーマーをネオスに装備! 攻撃力を300ポイントアップする!!」
「……アサルト・アーマー?」
《E・HERO アクア・ネオス》 攻撃力2800 守備力2000
炎を纏っているような気炎がネオスの体から立ち昇っている。
アサルト・アーマーか。聞き覚えのない装備カード。その上彼が発動する前に見せたカードの絵柄にネオスが写りこんでいた。
ネオス専用のサポートカードかはわからないけど、彼の新たなカードなのは確実だな。
「これでノヴァマスターの攻撃力を超えたぜ。バトルだ! 俺はネオスでノヴァマスターを攻撃! ラス・オブ・ネオス!!」
「──ッ!?」
勢いよく向かってくるネオスが繰り出したチョップはノヴァマスターを破壊し、土煙を発して衝撃を僕に与えていた。
《コナミ》 残 LP 3300
「よし、さらに俺はアサルト・アーマーを解除し──」
「いいや、その前に僕はこのカードを発動させてもらうよ。ヒーロー逆襲を発動! 僕のE・HEROが戦闘で破壊された時、手札のカードを選び、それがE・HEROだった場合、そのカードを召喚したうえで君のモンスターを破壊する!!」
「うげっ、それがあったんだった!!?」
十代君がノヴァマスターを破壊できたことに勢いに乗りアサルト・アーマーの何らかの効果を発動する前に、僕は1ターン目に伏せたカードを発動させていた。
「迂闊だよ十代君。ヒーロー逆襲はアクア・ドルフィンの効果で見ていただろうに」
「いやーははは。悪ぃ、忘れてた。んじゃ、俺は真ん中のカードを選ぶぜ」
「真ん中か。それは当たりだよ。僕は手札からE・HERO フラッシュを守備表示で召喚! そしてヒーロー逆襲の効果でネオスを破壊する!!」
「──ネオス!!」
《E・HERO フラッシュ》 攻撃力1100 守備力1600
僕の場に青いスーツを着たHEROが召喚されると同時に、逆襲の効果により爆発を起こしながら彼のネオスが破壊された。
これで彼の手札は0。モンスターもいない。これ以上、できることはないだろう。
アサルト・アーマーに妙な効果がない限りは…………。
しかし、逆襲を忘れてたか。どうにも十代君は頭が悪いわけじゃないし、デュエルに関しては冴えわたっているんだけど、時折間の抜けたミスをするんだよね。
まあ、僕も人のことを言えた立場じゃないから、あまり強くは言えないかな。
「くっそー。俺はこれでターンエンドだ」
「よし、僕のターン、ドロー!!」
僕はアサルト・アーマーの装備カードに後続を、もっとよく言えばネオスを場に残すような効果がないことにほっとしながらカードを引いた──。
ピーピングと手札破壊が揃う地味に厄介な効果もち、アクア・ドルフィン。