「ボクのターン、ドロー!」
木漏れ日が差し込む木々の中、コナミ君とのデュエルで先攻はボクが取ることができた。
先行を取れたのはよかった。実力で劣る自覚のあるボクがコナミ君に勝つにはすこしでも早く手を打てる先攻であってほしいと願っていたから。
コナミ君は強い。学園でアニキに並ぶ実力を持っているのもそうだけど、そのドロー力までアニキ並だ。それによって1ターン目から最上級モンスターを何体も召喚してくることさえある。
ボクの知る限り、彼の扱うデッキは3種類。
HEROをメインにNEPTUNEやMARSといった極めて強力なプラネットモンスターをエースに据えたビートダウンデッキ。
もしくは天使族であるVENUSを主軸に相手のカードのカウンターやデバフを巻きながら勝利を狙うコントロールデッキ。
そして最後は調整用の昆虫デッキ。
──読むんだ。どのデッキで来られても対応できる戦術を組み立てる!!
「よし、ボクは手札から沼地の魔神王の効果を発動! このカードを墓地へ送ることでデッキから融合を手札に加える!」
「へえ……? 沼地かあ。久々に見た気がするなあ。翔くんいいカード持ってるね」
感心したようなコナミ君の言葉に返さず、ボクはデッキから融合を手札に加えた。
沼地の魔神王は融合素材にも融合サーチにも使える強力なカード。少しだけ手に入りづらいと言う面はあるけれど、とても有用な効果を持つカードだ。
コナミ君やアニキは代用素材や融合サーチカードがなくても当たり前のように融合できるけど、ボクはそこまでではない。こういうカードはあってほしい立場なんす。
「そして融合を発動! 手札のスチーム・ロイドとジャイロイドを融合──スチームジャイロイドを融合召喚!!」
《スチームジャイロイド》 攻撃力2200 守備力1600
ボクの場に機関車にジャイロがついたファンシーな見た目の上級モンスターが召喚された。僕の場に召喚されたスチームジャイロイドを見てもコナミ君に動揺はない。
それを見て確信する。恐らく彼の手札にはスチームジャイロイドを超えれるカードがある!
だから、二の矢を準備しておかないと、一瞬で負けかねないっす!!
「ボクはさらにモンスターを伏せて、カードを2枚伏せる。これでターンエンドっす!」
「1ターン目から手札を使い切るのか。珍しい、翔くんにしては随分と思い切った戦術をする」
「油断はしない。最初から全力でいくっす!!」
「そうか、なら、僕のターン、ドロー!」
コナミ君のターン!
最初に出てくるのがHEROか、それとも天使か。大穴で昆虫か!?
それが初めに使うカードでわかる!!
「……僕は天使の施しを発動! デッキから3枚カードを引いて、2枚捨てる。そして光神化を発動! 手札から天使族を攻撃力を半分にして特殊召喚する!!」
「光神化──!?」
コナミ君が光神化を使うデッキは思い当たるのは一つだけ、天使族デッキだ──!!
「僕は創造の代行者 ヴィーナスを攻撃表示で特殊召喚する!!」
《創造の代行者 ヴィーナス》 攻撃力800 守備力1000
天使の施しによりデッキからカードを引いた彼が墓地へ手札を送り、発動した光神化。そのカードにより彼の場に天使の羽根を生やしながら、三色の水晶玉のような形をしたものを周囲に浮かべたモンスターが召喚された。
それは光神化によりこのターンに破壊されることが決まっているモンスターだけど、その効果が面倒だった。
特に、彼のような引きの強いデュエリストが使うと無類の強さを発揮する場合のあるカードだった。
ボクは召喚権を残しながら天使族のプラネットモンスターと読み方が同じ名前のモンスターの召喚に嫌な予感を感じずにはいられなかった。
「創造の代行者 ヴィーナスの効果、ライフを500ポイント払うことにより、デッキから
「くっ…………やっぱり使ってくる!」
《
《コナミ》 残 LP 3000
女性の天使であるヴィーナスが歌声を森に響かせる。その声に惹かれるように、2体の新たなモンスターが召喚された。それは何の変哲もないただの球体だった。
効果も大したステータスも持たない。せいぜいが壁としての役割しか果たせない。
しかしそのモンスターの召喚に、僕の背筋は凍り付きその目は見開かれその後に来るであろうカードの存在を感じる故に目を離せないでいた。
(──来る。間違いなく、コナミ君は召喚してくる。ボクではとてもできない1ターン目からの最上級モンスターの召喚を──!!)
「僕は神聖なる球体2体をリリース。手札からアテナをアドバンス召喚!!」
「アテナ…………そのカードはまずいっす!?」
《アテナ》 攻撃力2600 守備力800
ヴィーナスの歌声に呼ばれた2つの球体が消えたことで召喚されたのはギリシャ神話に戦女神として登場するアテナ。その神を模してデザインされたであろうカードだった。
パールホワイトの女性らしいゆったりとした衣装ながらも両手に長大な矛と盾を携えた戦装束をした女性型モンスターは森の中に差し込む光の中、ゆっくりと降り立った。
「アテナは天使族の最上級モンスターだ。その効果だけど、翔くんの反応から知っているみたいだね」
「勿論っす。自分の場の天使族を墓地へ送ることで、墓地の天使族を復活させる。一気にモンスターを揃えれる強力な天使──女神っす!!」
そう、アテナは墓地に天使族が多ければ多いほど召喚することで有利に立ちやすいカード。本来ならデュエルの後半に召喚するのがセオリー。
1ターン目から召喚しても、墓地に召喚できる強力な天使は早々溜まってなんていないっすから。でも……コナミ君は天使の施しを使っているっす。なら、墓地に強力な天使がいても可笑しくない!!
「わかっているなら説明はいらないね。僕は創造の代行者 ヴィーナスを墓地へ送ることでアテナの効果を発動。墓地にいる天使族──The splendid VENUSを特殊召喚する!!」
「う゛っ、1ターン目から2体の最上級天使が揃うんすか!?」
アテナが右手の持つ槍を突き上げる。そこから放たれた光が創造の代行者 ヴィーナスを生まれ変わらせるように光で包みながら四枚の白き天使の羽根を背中に生やした黄金の星の天使を呼び出した。
《The splendid VENUS》 攻撃力2800 守備力2400
「VENUSがいる限り、天使族以外のモンスターの攻守は500ポイントダウンする。さらに、アテナ以外の天使が召喚されたことで効果発動! 相手に600ポイントのダメージを与える!!」
「──ぁぐッ!!」
《翔》 残 LP 3400
アテナの槍から閃光が放たれボクのお腹を貫いた。そのダメージは微々たるものだけれど、どんな召喚方法でも天使族を召喚しさえすればバーンダメージが来るとわかっているボクにとっては手痛いダメージでもあった。
「バトルだ。僕はVENUSでスチームジャイロイドを攻撃! ホーリー・フェザー・シャワー!!」
コナミ君のVENUSがすーっ浮かび上がり黄金色の光を身体全体から放ち始めた。それを見ながらボクは内心で『かかった!!』と笑みを浮かべた。
「その攻撃は読んでたよ──ボクはリミッター解除を発動! ボクの場の機械族モンスターの攻撃力を倍にするっす!!」
「リミッター解除!?」
《スチームジャイロイド》 攻撃力3400 守備力1600
VENUSの効果により委縮したように縮こまっていたスチームジャイロイドだが、減っていながらもリミッター解除により倍となることで美しき金星の天使の攻撃力を超えた。
彼は甲高い汽車音を立てながら黄金の風が吹き荒れる竜巻の中を怯むことなく突き進み、突進するようにVENUSに体当たりして返り討ちにすることに成功した。
《コナミ》 残 LP 2400
「……驚いたよ。何かしらあるかもとは思っていたけど、まさかリミッター解除とはね。読んでいたって言ってたけど、どこまでかな」
「ボクがスチームジャイロイドを出した時点で、コナミ君なら上から殴り勝てるカードを出してくると思ってたっす。コナミくんの持つどのデッキでも、それが可能だとボクは読んでいた!」
面白そうに笑みを浮かべて聞いてくるコナミ君にボクは力強く答える。
半端なカードを出していたら、コナミ君も下級モンスターで対処してくる可能性があった。
そのために、自壊するリスクを負ってでもスチームジャイロイドを囮にした。
それぐらいしないと、彼には勝てないってわかるから……!
それでもやっぱり、いきなり最上級を2体は想像したくない状況だった。だから、予測通りコナミ君の強力モンスターを減らしてなお、最上級女神のアテナがまだ残ってるというのは辛すぎることだった。
そういう意味では、できればアテナから攻撃してほしかったと思う。常に攻守を下げてくるVENUSも残ってほしくないっすけど、蘇生効果とバーン効果を持つアテナはもっと残ってほしくなかった。
「やるね、想定以上だよ。いや本当にごめんね。正直、翔くんのことは少しだけ舐めていたんだ。君が弱くないことはわかっていたんだけどね」
「いいっす。コナミくんから見れば大した相手ではないのは本当っすから。でも、今日のボクは敗けないッ!!」
微笑み、楽しいデュエルになりそうだと余裕をもって笑うコナミ君に反してボクはいっぱいいっぱいだった。
純然たる実力として上をいかれている彼に勝つために、彼がとるであろう戦術を読み続けるために、ボクは必死に彼の手を読み続けようとしていた。
「さて、スチームジャイロイドはこのターンで破壊されるが、アテナでは突破できない。なら、僕はアテナでもう一体の守備モンスターを攻撃する」
「──ボクが伏せていたのはメタモルポッドっす。お互いに手札をすべて捨てて、5枚ドローする。ボクの手札はない。5枚ドロー!」
「なるほど、そういう戦術だったか」
アテナが裏側に伏せていたカードを貫く、そのカードから現れたメタモルポッドは破壊される間際に大きく伸ばした舌で彼の手札である3枚の手札を墓地へと持って行った。
「僕も5枚ドロー…………カードを2枚伏せて、さらに天空の聖域を発動! このカードが存在する限り、天使族モンスターの戦闘でプレイヤーはダメージを受けない、ターンエンドだ」
天空の聖域により森の中に神殿が生まれた。
そしてコナミ君のターンが終えると同時にスチームジャイロイドが光となって消えていった。リミッター解除による反動でボクのターンまでは生き残れなかったのだ。
「ボクのターン、ドロー!!」
ボクはこのターンを無事に迎えれたことに安堵しながら場を見る。戦術通りにコナミ君のモンスターを返り討ちにすることはできた。
だけど、まだアテナがいる。それにメタモルポッドで潤沢となった手札からリバースカードも伏せられている。
対して、ボクの場に残っているのはリバースカードが1枚のみ。
理想を言うなら、前のターンでコナミ君の上級モンスターを返り討ち、僕のターンでメタモルポッドで手札を補充してがら空きとなった彼に攻撃するのが最上の結果ではあった。
だけどやっぱりそう上手くはいってくれない。
このターンでできる、ボクの最上のプレイングで彼を攻撃する!
僕は一度集中するように目をつぶり、意識を切り替えて強く開いた──。
書いといてなんだけど、バーンとかカウンター罠とかのコントロールデッキって主人公が使う戦術じゃないね。敵が使う側の戦術って感じだから今度から変えよう。