初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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 先に予告しときます。今書いてる2期最終話の投稿は現状の投稿ペースで今年の4月30日になります。草稿という形ですが2期は書き終わったので話しておきます。今は草稿を完成させる合間に3期をチマチマ書いてます。2期の最終話まで書き終わった瞬間おいおい俺すごいなと自画自賛してました。


運命の下り坂

 レッド寮の自室。太陽も地平線へと姿を隠し、青白い三日月の星が星々に囲まれている時間帯。

 僕は木製の机の前に置かれた椅子に背を預けながら綺麗に折り畳められた真っ白の手紙を部屋のライトに翳していた。

 

 その手紙は明日香さんが愛理ちゃんに倒され光の結社とやらに加入してから数日後に愛理ちゃんから届けられたものだった。

 中には僕とは比べ物にならないほど綺麗な字で書かれたデュエルの申し込み、もといオベリスクブルーにきてねといった招待状だった。

 

「うーん、招待状かあ。これってあれだよねえ。最近流行ってる光の結社に僕も入りませんかってことだよねー」

 

 間延びした声を出しながら手紙を見る。僕がアメリカから帰ってきた頃から少しずつ学園で何故か流行り始めていた光の結社とやら。

 よくわからないけれど、デュエルに負けるとその結社とやらに加入しないといけないらしい。

 別段入会金とかが取られるわけではないらしいので、構わないと言えば構わないのだけど……。

 

「入ると性格が変わると言うか、自分に素直になるらしいってのがわからないんだよねー」

 

 なんでも噂では光の結社に入った人物は自分の心に正直になるとのことだ。最近の愛理ちゃんが妙に僕とスキンシップを取りたがるのはそのためなのだろうか?

 

 まあだとしても、特段、実害があるわけでも誰かを傷つけていると言うわけでもなく、ただデュエルをしているだけなので、先生方も特別問題視はしていないらしい。

 まあ、最近寮を白く染めたと言うのは問題かもしれないが、それだけと言えばそれだけなのである。

 

 中には洗脳されていると話す生徒もいるらしいが、デュエルに負けると洗脳されるとか意味がわからない。流石に飛躍しすぎじゃないかとも思う。怪しいってのは否定しないけど。

 というか、三沢君が入ってるんだから、そう悪いところじゃないと思うんだよなあ。

 

「ま、ごちゃごちゃと考えても仕方ない。愛理ちゃんからの招待状だし、デュエルするだけだ。行かない理由はないよね」

 

 仮に、万が一、まあ愛理ちゃんに負けたとして、何か問題がありそうかと言われたら、まあないだろう。

 むしろ愛理ちゃんと一緒にいられるなら寧ろありよりかもしれない。

 

「指定日は……明日の夜……か。うーん、デッキの調整だけはしてから寝ようかな」

 

 愛理ちゃんが明日香さんとデュエルしていた時に使ったダーク・アームド・ドラゴン。あのモンスターだけは注意しておかないと。

 僕の知っている魔法使い中心のサクリファイスデッキから変わっていたし、かなり強力なモンスターだった。

 あんな強力なカード、いくつもあるとは思えないけど、もしあれと同類のカードを持っていたら……。

 

「うーむ、かなりキツイデュエルになるかも……」

 

 厳しいデュエルになるだろう。そう思いながらも口角を上げた僕の口には喜色が浮かんでいた。

 楽しいデュエルになるといいなあ。そう思いながら、デッキのカードたちに手を入れていくのだった。

 

 

 

 

 その日は生憎、空の機嫌が悪くザーザーと勢いよく雨が降っていた。大地を打ちつける雨水は地面を湿らし傘を刺しながら歩くたびにビチャビチャと不快な感触と音をたてている。

 

 僕は今愛理ちゃんから送られてきた招待状に従ってオベリスクブルーへと向かっていた。

 時間帯は夜。なので雨による曇り模様も相まって道のりは非常に暗かった。

 

 青色の傘のハンドルに目を落としながらぬかるみに足を取られないように気をつけながら歩いていると、傘と大地からの間から見える僕の進行方向に白いコートを着た誰かが立っているのが見えた。

 

(……? 誰だろう、こんな天気の中、立ちぼうけで空を見ている)

 

 その人は制服を着てはおらず、背を向けている上に傘で顔は隠されていたため、誰かはわからなかった。

 ただ不思議と引き込まれるような、声をかけてはいけないような雰囲気を感じた。

 

 僕は道の真ん中に立つその男性を避けて歩こうとした。しかし、彼の横を通り過ぎようとした瞬間、その彼が発した声が聞こえたため足を止めることになった。

 

「少年、その先に行ってはいけない。星が隠れている。日を改めた方がいい」

「……えっと……あなたは?」

 

 まさか声をかけられるとは思わなかったために戸惑いながら声に反応して彼の方を見る。その人はじっと僕のことを見ていた。銀の混じった深い青色の長髪を垂らしたその青年の言葉に僕は首を傾げて対応した。

 

「失礼、私は斎王琢磨。この学園の生徒であるエド・フェニックスのマネージャーをしている者です」

「エド君のマネージャー?」

「ええ、訳あって今この島に逗留しているのです」

 

 優しげな笑みを浮かべるその人は僕を見つめながらそういった。真っ直ぐと立ち、皺や汚れを見せないその白いコートからは清潔感や神経質な印象を受けた。

 

「はあ、それでエド君のマネージャーさんが何故僕を止めるんですか?」

「私は少しばかり占いをやっています。それによると、今日はどうにも星の行方が悪い。日を改めた方がいいでしょう」

 

 星の行方が悪い……?

 よくわからないけど、運勢が悪いみたいなことかなあ。占いをやってるって言ったし、たぶんそんな感じなんだろう。

 僕はチラッと腕時計を見て時間を確認する。約束の時間が迫っていた。

 

「はあ、でもちょっとデュエルしに行くだけなので……。まあ、天気は悪いですけど、そんな気にすることはないですよ。でも運が悪いならちょっとだけ気をつけておきますね」

 

 星………というのがどうしても僕とかかわりがある単語なので気にはなったが、特段問題視することはなく、聞き流した。

 

 僕はよくわからないことを言う斎王さんに背を向けてブルー寮への道を再開することにした。

 背を向けた僕に斎王さんは何も言ってくることはなかったけれど、彼に背を向ける瞬間に見えた悲しげに僕を見る目が少しだけ気になった──。

 

 

 

 

 その寮は全てが白く染め上げられていた。外壁だけでなく内壁も、調度類も、なんなら照明器具でさえ白かった。

 僕は変わり果てたその崇高さを感じさせる寮に感嘆とも呆れともとれる声を上げて見上げていた。

 

「うわー、すごいねこれ。全部塗ったの?」

「そうみたい。頑張るわよねえ。ちょっと理解できないわ」

 

 僕はオベリスクブルー寮のロビーにいた。寮の出入り口が開いた時、思わず眩しく感じるほどにそこは全てが白かったのだ。

 話には聞いていたが、入った瞬間はかなり圧倒された。まるでそこは宗教が生み出した神殿のごとく極まった価値観が生み出した場所であったからだ。

 

 万丈目くんがブルー寮の生徒を率いて外壁を白く塗っていたのは知っていたけれど、内装まで白くなるとは思っていなかった。

 なんというか、やるとなったらとことんまでやると言う彼の気質が表れているようだ。

 

「今日は来てくれてありがと。寮の大広間で食事の準備がしてあるわ。デュエルを終えたらパーティーしましょ♪」

「うん。今日は誘ってくれてありがとう愛理ちゃん。ところでそのドレス、凄い似合ってるね」

「ふふ、そうでしょ。今日のために気合い入れて準備したのよ。綺麗でしょ!」

「うん、綺麗だよ」

 

 そのドレスを見せびらかす様にその場で一回転して僕に感想を求めてくる彼女に僕は恥じらうことなく自然に褒めた。美しいものは美しい。それを褒めることに恥じらう気持ちは僕にはなかった。

 

 そんな僕の隣には黒いパーティードレスを身に纏った愛理ちゃんがいた。大胆に肩を出して胸元まで大きく開かれたそのドレスをきている彼女が出迎えられた時は瞠目して、思考が止まるほどに固まってしまった。

 

 似合ってないとか、場違いだとか、そんな理由ではなく、あまりにも美しかったからだ。

 白く染められた世界の中心に立つ黒いドレスを着た美しい彼女が立つ光景はあまりにも現実離れしており、この世のものとは思えないほどに綺麗だったのだ。

 

 これでドレスの色が白色だったなら思わずウェディングドレスを着てきたのかと思ってしまっていただろう。

 もしそうだった場合、えっ僕今から結婚するのと誤解していたかもしれない。

 

「ところで、ここ、誰もいないね」

「うん、邪魔だったから、しばらく離れてもらったの。その方がほら、画が映えるでしょ!」

 

 ドレスを着た彼女が踊るようにロビーの中央で1回転した。それはとても絵になる光景で、確かにと同意した。

 

 ロビーには彼女以外誰もおらず、どうやらブルー寮の大広間で僕たちのことを待っているらしい。愛理ちゃんが出迎えは自分1人ですると言って誰もいない状況を作ったとのこと。

 紅一点というか、白の世界にいる黒一点を表現したかったようだ。

 

「愛理ちゃん、パーティーって言っていたけど、僕制服でよかったの? 愛理ちゃんみたいなドレスというか、スーツで来たほうがよかった?」

「大丈夫よ。ちゃーんとコナミ君用のスーツも用意してるわ。デュエルが終わったら着替えましょ!」

 

 なんで用意がいいんだ。というか僕のサイズとかどうやって調べたんだろう。長い付き合いだが今の僕の体の採寸をされた覚えはないんだけど………うーむ、謎だ。

 

「そういう細かいことは気にしなくてもいいわよ。ぜーんぶ私が用意してるから。さ、みんな待ってるわ早くいきましょ!」

「そうだね。行こうか、愛理ちゃん!」

 

 僕は愛理ちゃんから差し出された手を取って大広間へ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 大広間はロビーの大きな中央階段を上り、主通路を真っ直ぐ北に進んだ先にあった。

 通路を歩いて行くと、左右から閉じられた白色の重厚な扉が僕らを迎えた。扉の左右にはデュエルモンスターズの神と呼ばれる三幻神の一体であるオベリスクの巨神兵を模した象が置かれている。

 

 主通路の壁面や床さえも白く塗られていると言うのに、その象だけは灰色の石像そのものの色合いを維持していた。

 僕がそれを横目に見ながら「まるで奈良の金剛力士像みたいだなあ」と左右の像を見ながら感じていると、大広間のの目前までたどり着いた僕たちを出迎えるように扉がひとりでに開き始めた。

 

「──わぁお!」

「さあ、入りましょ! 私たちのためのステージよ!」

 

 開かれていく扉から差し込まれていく白い光は主通路を遠く奥まで照らすように輝いていた。中には僕と愛理ちゃんを待ちわびていたように白い制服を着た生徒たちが大勢並んで待っていた。

 

 彼らの列に沿うように手をつなぎながら大広間の中央へと歩いていく。

 その際、主通路や外壁同様に染み一つ許されない白く塗られた壁に視線をやって上へと向けていくと、そこには万丈目君と明日香さん、そして三沢君が大広間の外周部に設置されている上階に立っているのが見えた。

 

 その並んで立つ3人の中で三沢君だけがすこしだけ険しい顔で僕を見ているのが気になったが、僕が彼へと視線を向けるとすぐに口の端を片方だけ上げて笑って険しさが消えていた。

 

「あっ、斎王さんだ」

「え………あら、本当だわ。珍しいわね。わざわざ見に来たのね」

 

 僕が視線を向けていた上階の入り口から先ほど森で会った斎王さんが歩いてきていた。彼がいるのに気づくと上階にいるみんなや大広間の生徒たちも喜色を浮かべて歓迎していた。

 彼が手を上げて一瞬賑やかになったホールを鎮めて僕たちを見た。その双眸にはどこか期待と興味があった。

 

「ふふ、まあギャラリーは多い方がいいわよね。私たちの晴れ舞台、見てもらいましょ」

「晴れ舞台って………まあ、デュエルに観客は多いに越したことはないよね。楽しもうか愛理ちゃん!!」

「ええ、楽しいデュエルをしましょ♪」

 

 普段のニコリとした笑みではなく、どこか妖艶さを感じる妖しい笑みを顔に出した愛理ちゃんと僕は名残惜しくも手を離し、大広間の大きく開けられた場所に向き合って離れた。

 そして彼女が白い制服を着た女生徒から差し出されたデュエルディスクを身につけたのを見て、僕らは声を合わせてデュエル開始の宣言をした。

 

「「デュエル!!」」

 

 これが僕の歪んだ運命を告げるデュエルになることをまだ、僕は知ることはなかった──。

 

 




原作の寮はどこまで白く染めてたんだろうなあ。
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