デュエルまでの繋ぎ回。
今更かもしれませんがサブタイトルにキャラの名称が入っていたらそのキャラ視点で始まるってことでお願いします。
今回の場合三沢君視点ですね。
放課後、俺は生徒会室で事務仕事をしながら先日のコナミとヒロシのデュエルのことを思い出していた。
低レベルモンスターを中心とした異色のデッキ。そしてそれを使いこなすコナミの姿を。
本来低レベル、低ステータスのモンスターは余程効果が強くなければ使用されることはない。
俺でも特別な理由がなければ使用しようとなどは思わない。せいぜいが遊びで使う時くらいだろう。
あのデユエルを見た後、俺も真似て作ってみようかと試しに作って見たが、納得のいくデッキは組みあがらなかった。
結局、安定した強さにするには高ステータスのモンスターで固めた方がよいという結論に達し、その後そのデッキは調整用として保管してある。
「会長、来月に行われる運動会についてですが……」
「ん? ああ。それは……」
頭の中で自分の求めるデッキを作り上げる方法を考えながら児童会のみんなと今度行われる運動会について話し合っていく。
異なるタイプのデッキ。それを一つにまとめ上げる。コナミはたしかそう言っていたな。
理屈の上で考えるならばそんなものまともなデッキになるわけがない。
少なくとも実戦で使えるようにするのは相当厳しいだろう。
だが、コナミはそれをすると言った。ならばできるのだろう、あいつはデュエルに関して半端なことを言うようなやつではない。
まあ、恐らく大半のデュエリストには扱えないピーキーなデッキになるのだろうが……。
コナミや一部の天才と呼ばれるデュエリストのみが持ちうる奇跡のごときドロー。
それがあれば俺も自信をもって作れると言えるのだろうか?
だが俺にコナミのような欲するカードを引き寄せるドロー力はない。
ゆえに吹雪さんがコナミに助言した自由な……言い方は悪いが無茶苦茶なデッキは俺には合わないだろう。
ならば、やはり求めるべきはどこまでも計算された偶然が入り込む余地のないデッキだ。
「んー。この運動会の最後に行われるデュエルのエキシビジョンマッチだが、出場者は決まっているのか?」
運動会で最後の演目の締めとして行われるのがデュエルとは何とも形容しがたい気持ちになるが、デュエルが万人に人気なのは周知の事実。
よほど下手な人選でなければ普通にデュエルをするだけで問題なく終われるだろう。
「一人はもう決まっているのですが……」
「……誰だ?」
「会長もよくご存じのコナミさんですよ」
「なるほど、まあ妥当な人選だな」
コナミか。まあこの学校で俺と1,2を争う実力者だ。人選としては問題ない。
エキシビジョンマッチゆえに勝利より皆が盛り上げてくれるデュエルを行うのが目的だが、まあコナミならうまいことできるだろう。
「問題は……」
「対戦相手ですね。会長が出れれば一番いいのですが……」
「そうだな……俺としても出れるなら出てやりたいが」
俺とコナミのデュエルか。お互い知った仲だ。デュエルの息も合わせやすいだろう。
しかし俺には会長としての仕事があるからなあ……。
「俺以外でコナミに合わせられるデュエリストか」
「会長以外いませんよ。この学校で実力が伯仲している相手なんて……」
デュエルというものはやはり実力が拮抗しているもの同士の方が見栄えもいいし、何より自然な形として盛り上げれる。
コウキは……だめだな。息は合わせれるだろうが、すぐ熱くなるからな。見栄えや演出というものを忘れてしまいかねない。
「……やはり俺が出るのが一番か。何か方法を考えなければな」
「はい。それが一番かと。ではその方向で先生方に相談してみましょう」
デュエル・エキシビジョンマッチか。
まだ俺ができるとは決まったわけではないが、それ用のデッキを考えておかなければな……。
その後、家に帰宅した俺は改めて自分のデッキを見直していた。
「俺の求める究極のデッキ。それは偶然が入り込む余地のない計算されつくした合理的なデッキだ。それは間違いない。そのために俺が作るべきデッキ、目指すべきデッキ……」
手持ちのカードを1枚1枚見ていく。
1枚1枚。
だが……何度考えても現状以上ので構築ができるとは思えなかった。
「くそっ! やはり手詰まりか……まあ現状維持でも……いや、現状で満足していてはやがてコナミに追い抜かれてしまう」
現状でこそ対等だが、今回あいつは自由なデッキというものを手に入れた。
それは指先をひっかけた程度の微かな要因に過ぎないかもしれないが、あいつならいつか自由なデッキを完全にものにするだろう。
そうなれば恐らく追いていかれる。
コナミは俺とは違う。今まで俺と同じように論理的に作り上げてきたデッキは吹雪さんの言葉を信じるならあいつには向いていないデッキ。
向いていないデッキで俺と対等に渡り合えている。ならば向いているデッキを使いこなせるようになった時、どれほど強くなるというのか。
「俺は作り上げなければならない……友として…ライバルとして。負けるわけにはいかんだ」
俺は教室でコナミ達と中学への進学について話していたことについて思い出す。
「三沢君はやっぱりデュエルアカデミアに受験するの?」
「恐らくそうなると思うが、正直悩んでいるところもある」
「そうなの?」
デュエルアカデミア。確かにそこへ入学できれば俺は高度なより高度な戦術や理論を学ぶことができるだろう。
俺やコナミよりも強いデュエリストも大勢いて、それはきっと俺を高みへと導いてくれる。
間違いなく入学できるならその方がいい。
親元から離れ、他県での寮生活というのは気がかりではあったが、幸いにも両親からの許しはもらえている。
普段の生活のたまものというものだろう。
俺ならば大丈夫と信頼されているということだ。
「ああ、少し思うところがあってな、お前たちは……いけないんだったな?」
「そうだよ。っけ! 親父が『お前が寮生活なんてできるわけないだろうが!?』なんて言いやがって……」
「妥当な評価だと思うよ。お父さんたちがいない中、コウキがまともに生活できるイメージなんてないもん」
「お前に言われたくねえよ!? お前も大概同じ理由だろうが!」
「僕はコウキほど両親に迷惑はかけてないよ!」
ギャーギャーと騒いで喧嘩を始めた二人を諫めながら思うが、俺からすればお前たちは同じ穴の狢だ。
ご両親が許可しなかったのも納得できる。
2人とも普段の生活がだらしなさすぎるのだ。まったく……俺の言うことを聞いていればな。
「お前たちもしょうもないことで喧嘩などするな。ともかくだ、俺はまだ進学先については決めていない。もしデュエルアカデミアに行くとしたら……」
「「したら?」」
「まあ……自信を持てた時かな?」
「「はあ???」」
コナミとコウキは顔を見合わせ訳が分からないといった表情をしている。
そうだろうな。学力では間違いなく学年1位、スポーツでも優秀な成績を残している。デュエルにおいても1番か、2番には入るだろう実力を持っていると自信を持って言える。
そんな俺が自信がないからデュエルアカデミアの受験を悩んでいいるなど冗談を言っているとしか思われないだろう。
だがな、俺は1番になりたいのだ。
1,2を争う実力者ではなく、1番強い実力者として卒業したい。
俺はデュエルアカデミアへ行く。
そのためにはやはりコナミとのデュエルで決定的な勝利を飾った上で行きたい。
運動会。そこで行われるエキシビジョンマッチ。
そこで勝利を得られればきっと俺は胸を張ってデュエルアカデミアへ行くことができるはずだ。
だが、今のままでは自信をもって勝てるとは言えない。どうすれば……。
行き詰った状況にため息をつきながらつぶやく。
考えすぎて気がめいってきた俺は気分を変えるためそばにあったリモコンでテレビを点けた。
『……デュエル統一理論の提唱者のツヴァインシュタイン博士がこの度ノーヴェリー賞に受賞されました……』
テレビではいつものように世界のニュースが流れているが、俺はそこに写っている人にくぎ付けになった。
ツヴァインシュタイン博士。世界でも有数の頭脳を持ち独自の理論のもと作り上げたデュエル構築理論を提唱した人。
テレビでは老齢の男性が自らの理論を簡潔ながら説明している。
この世はすべて論理的に作り上げられておりそれはデュエルもまた同じ。ならば真に論理的に組み上げられたデッキはこの世の何物よりも完成されたデッキと言えるだろうと……。
「これだ。この人だ!! 俺が目指すべき道を行く人は!!!」
俺はテレビ写るツヴァインシュタイン博士が提唱するデュエル統一論にひどく感銘を受けた。
この理論を身につけたい。
そうすれば俺の目指す偶然が入り込む余地のないデッキが作れるはずだ!
運動会までまだ時間ある。
ツヴァインシュタイン博士の論文を少しでも多く読み解き、わずかでも吸収することができれば俺はさらなる飛躍ができるはずだ!
「そうと決まればこの人が出している論文を手に入れなければ!」
そして時は過ぎ、運動会当日。
幸いにも天気は晴天。雲一つない晴れだ。
「さて徒競走、大玉転がし、騎馬戦と多少けがをする生徒はいたみたいだが滞りなく進行で来たな」
「はい。あと残すは会長とコナミさんのデュエルだけです。頑張ってください」
俺はグラウンドの向こう側でコウキとおしゃべりしているコナミに目を配り今回のために用意したデッキを準備した。
さて、疲労はあるが観衆の眼前で下手なデュエルをするわけにはいかない。
いつも通りのデュエルを完遂しよう。
準備ができた俺はコナミに合図し共にグラウンドに出ることにした。
「コナミ、今日はエキシビジョンマッチ。主役は俺たちではなく観客のみんなだ」
「うん。わかってる。でも負ける気はないよ」
「俺もだ。お互い疲れはあるだろうが、いつも通りやればそれが十分な見世物になる。気負うなよ」
「それとな…このデュエル、俺が勝ったから俺はデュエルアカデミアへ行く」
「!?」
「前々から悩んでいたことだが、このような大勢の前でするデュエルなどそうそう機会はない。だからこのデュエルで俺の可能性を見極める!」
「…手加減はしないよ?」
「当然だ。手加減などしたら、一生許さん」
「大丈夫、全力で倒すよ」
俺たちはそれぞれの持ち場につき周囲を囲む観衆の中デュエル開始の宣言をした。
「「デュエル!!」」
ちょっと調べて驚いたんですが、小学生って生徒会ってないんですね。その代わり児童会ってのがあるみたいで、ただどこで何するのかよくわからなかったので便宜上生徒会室って名称の部屋を出しています。