初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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リリーナ可愛いなあ。ロイリリは至高、他ルートとか認めんぞ俺は。


運命の採択者

 童実野町、言わずと知れたデュエリストたちの聖地である。その街から外れた山中の一角の洞穴にて私は待ち人が来るのを待っておった。

 洞穴の奥に置かれた台座には幾本もの蝋燭に火が灯され、中心には大きな鏡が鎮座している。

 

 その鏡に私の生来の力を通すことで占いや人の心に干渉するなどの種々様々な現象を起こすのが私の力の行使の方法である。

 そしてそれは今も、身を清めた後、普段着である巫女服に袖を通し、丁重に置かれた鏡の前で深く瞑想することで遠方の景色を脳裏に映し出していた。

 

「──遊城十代、エド・フェニックス……共に数奇な運命を背負って生まれた者たち」

 

 そして、我が兄、斎王琢磨が自らの運命を進める存在として認識している2人。このどちらかが、兄を救う可能性を持つ。

 

 今日会う予定のもう1人もその可能性を持った少年であったが、残念ながら相手の方が手が早かった。

 彼にはもう兄を救うことはできない。

 頼ることはできないのだ。

 

「──……来たか」

 

 私が背後からの気配に呟くと、そこには光を宿していない瞳の白い制服を着たコナミとそれに同伴するように来ていた愛理が立っていた。

 

「はーい、初めまして……だっけ? 水無月愛理だよ。斎王に頼まれてきたけど、あなたが妹の美寿知さんであってる?」

「うむ、そなたらが来るのを待っておった。それからそこの小僧とは初対面ではない。全国大会で見知っている。そなたとは初見だがな」

 

 どこか見覚えのあるようなと言いたげな顔をしている青髪の少女である水無月愛理に正確性の欠いた返答をした。

 

 初めて会うと言う意味なら初見であっているが、初めて見ると言う意味合いなら間違っている。

 水無月愛理のことは全国大会の折り、対戦相手であるコナミの好い人として認知していた。そして、少年を苦難の道へ引き込む因果を持つ者としても……。

 

「そなたらにきてもらったのは他でもない。兄、斎王琢磨から聞いておろうが、遊城十代とエド・フェニックス。この2人とのデュエルに協力してもらうためだ」

「私たちじゃなくて、コナミくんが…でしょ、あなたが用があるのは」

「うむ、然様。しかし、邪魔者の排除も必要じゃ。私の手駒ではちと不安なのでな、愛理よ、そなたにはそちらを頼みたい」

「邪魔者ねえ、いいけど、それって私にできそうな相手なの? 自慢じゃないけど私デュエルにそこまで自信はないわよ?」

「問題はない。十代やエドのような特異な相手ではないゆえな。そなたでも十分に役目は果たせよう」

 

 友人や仲間と呼べる存在と群れることをあまりせず単独行動をしているエド・フェニックスはともかくとして、もう一人のターゲットである遊城十代には多くの友人がそばにいる。

 

 彼らを指定地である場所に呼び込む餌はすでに決めてある。しかしそれを差し引いてもまだコナミと親交のあるものが同行している。

 彼を止める役が必要なのだ。

 

 そしてそれは水無月愛理でも十分に果たせる相手であると私は見ていた。

 

「う〜〜〜ん、十代くんと行動してて、私でもなんとかなりそうな相手かあ。まあいいわ。時間稼ぎくらいはしてあげる」

 

 愛理は頭を悩ませるような仕草をしたが、すぐに受け入れるように顔を戻した。

 

「コナミよ。今のそなたに話しかけることにあまり意味はないかもしれんが一応言っておく、手加減は無用ぞ。彼奴等とのデュエル、全力で打ちのめすことに意味があるゆえな」

「………」

 

 彼はこくりと頷いてその瞳を宙へと向けた。天井に目を向けても洞穴の中では岸壁ばかりで何もないであろうが、或いは妾にもわからぬナニカを見ているのやもしれんな。

 何せ、今や星のカードを持つ身だ。余人には理解の及ばぬものが見えておっても不思議ではない。

 

「ふむ、愚問であったな。そなたはこれまで通りデュエルをしてくれたらよい。私と共に、小童共を倒そうではないか」

「………勝つ」

「わっ、喋った。めっずらしい。やっぱりデュエルに関してなら反応しやすいのかしら」

 

 小さく、一種無気力ささえ感じる声であったが、しっかりと答えた彼の目を覗き込む。

 

(心ここに在らず、文字通りの意味じゃな。しかし、これは……。兄の仕業ではなさそうじゃ。ならばこやつの心は今どこに……)

 

 全く関わっていないと言うことはあるまい。そう思いながらこの肉体から失われている心のありかを探る。

 

「──む、これはどう言うことじゃ?」

「どうかしたの美寿知さん……?」

「愛理よ、こやつの心じゃがそなたの……いや、何も言うまい。わかった上で何もせんと言うならそれでもよかろう」

 

 コナミの瞳から少年の心が何処にあるのかを悟り、その不可思議な状態も探ることができ隣の水無月愛理に告げようと目を向けたが、その顔を見て話すのを止めた。

 

 何やら含むところがありそうな笑みには少年と、それに伴い愛理の心と密接に繋がっていることを承知しているようだった。

 意図はわからないが、受け入れていると言うのなら干渉するまい。

 

 今は余計なことに携わっている場合ではない。兄が救われ、少年が愛理と離れることを万一にも望む場合には力を貸すとしよう。

 

「さて、デュエルに問題がないのなら共に行くとしよう。準備はよいな」

「私の方は別にー、コナミくんも大丈夫だよ。デュエルが楽しみみたい!」

「そうか、ならばよい、行くぞ」

 

 コナミと愛理を引き連れ、洞穴の入り口へと向かう。足取り重く、しかし謎の光の影響を受け変貌してしまった兄を救うため確固たる覚悟を決めた私の目に迷いはなかった──。

 

 

 

 

「くっそーっ!! 美寿知の奴ぜってぇ許さねえ!!」

「そうね十代ちゃん! 早く翔ちゃんと剣山ちゃんを助けないと。今は海馬コーポレーションに急ぎましょう!」

 

 童実野町に修学旅行にきていた俺たちは今、美寿知の配下により攫われた翔たちを助けるために急いでいた。

 目的はわからねえけど、俺とエドを誘き寄せるために翔たちを一緒に修学旅行で行動していた2人を攫ったらしい。

 

 怒りに燃える俺の横で堂本が同意しながら同じように目の奥に怒りの炎を燃やしていた。

 

「でも、どうして美寿知さんは翔くんたちを攫ってまで先輩を呼んだんでしょうね。エド…さんは知らないんですか、あなたのマネージャーである斎王の妹なんでしょ?」

 

 いつの間にやら光の結社入りをしてしまっていたコナミの代わりに修学旅行で俺たちと行動をしていた1年の佐藤道長がエドに聞いていた。

 斎王と近しい仲であるエドならば妹について知っていても不思議ではないと思っての質問だろう。

 

 顔には彼の特徴である仮面をつけている。今は緊急事態で急いでいるからか焦燥感を煽るような仮面をかぶっている。

 どうでもいいけどよ、息しづらくねえのかな。仮面なんてつけて……。

 

「さあな。ボクもあまり彼女と親交があったわけではない。理由も、これといって思いつかないな」

「どうでもいいわ。彼女がなぜあなたたちを呼んでいるのか、直接聞けばわかることよ」

 

 憮然と話すエドに切り捨てるように堂本が言った。こいつも卑怯な行いに憤っているみたいだ。

 せっかくの楽しい修学旅行を邪魔するなんて許せないぜ美寿知!!

 

「──む、誰かいるな……」

「あれは、愛理先輩と春香か!?」

 

 海馬コーポレーションのあるビルへと向かう道すがら、通りの前で立ち塞がるように俺たちを待っている人物がいた。

 彼女たちを見たエドが呟き、道長が驚く声を上げた。

 

「はーい、ストップー! ちょっとだけ立ち止まってねー!」

「愛理に春香、そこをどいてくれ!! 今俺たちは急いでいるんだ!!」

「わかってるわ十代くん。翔くんたちを助けに行くんでしょ。安心して、私たちが用があるのはそこの2人だから」

 

 立ち塞がった愛理が指さしたのは一緒に行動していた堂本と道長であった。

 

「あら、私たちが目的なの? ちょっと意外ね」

「美寿知さん的にはあなたたちは余計な人員みたい。だから邪魔されないように足止めとして私と春香がきたってわけ」

「ふーん、そう言うことね……十代ちゃん、私たちは2人の相手をするわ。エドちゃんと共に先に行ってくれるかしら」

 

 口に人差し指を当てながら堂本が俺を見た。

 

「いいのか、お前たちを残しちまうけど」

「仕方ないわ。こんなところで時間をかけるわけにもいかないでしょ。それに、私たちがいなくてもあなたたち2人がいれば問題ないと信じているわ」

 

 堂本が信頼のこもった目を向けている。確かに、こんなところで時間を食っている場合じゃない。

 早く翔達を助けに行かないといけないんだ。ここは、2人に任せるのがいいだろう。

 素早く決断した俺は二人に後を託して進むことに決めた。

 

「そうか、わかった。行こうぜエド!」

「ふん、ボクに命令するな十代!」

「頑張ってください、十代先輩!!」

「おうっ任せとけ!!」

 

 前に立ち塞がる愛理と春香を抜けビルへと再び駆け出した俺の背中に道長の声が届く。

 それに手を振って俺たちは先を急ぐのだった。

 

 

 

 

「それで愛理ちゃん、私たちを足止めって話だけど、こうして突っ立ってるだけでいいのかしら?」

 

 駆け去っていく十代ちゃんから目を離し、白い制服を着た彼女に視線を移した。

 隣には愛理ちゃんと同じく光の結社の一員の証である白い制服を纏った後輩である春香ちゃんがいる。

 彼女はいつも以上に気合いを入れて化粧をしており、力ずくで超えようとしても容易には抜けさしてもらえなさそうだった。

 

「こうしてお話しして時間を潰すのも私としてはいいけど?」

「それは困るわ。私たちとしては早めに十代ちゃんたちに合流したいから。そうね、こうしましょう、あなたたちとデュエルして勝ったら先へ進める。どう?」

 

 チラリと愛理ちゃんが春香ちゃんと目を合わした。目を向けられた彼女としては愛理ちゃんの意見従うつもりなのか、お任せしますと伝えている。

 

「じゃ、そうしましょっか。私としては時間さえ稼げればいいし、楽しくデュエルと行きましょ!」

「道長ちゃん、デュエルに勝って、前に進みましょう」

「はい。例え先輩や春香が相手でも躊躇はしません!」

「愛理先輩とのタッグかあ。足手纏いにならないように頑張りますね!」

 

 焦燥の仮面を外し、勇ましい紋様が描かれた勝負下着ならぬ勝負仮面に付け替えた道長ちゃんとともにアタシもデュエルディスクを構えた。

 同じように対面の彼女たちもデュエルディスクを構えて準備万端と言った風情だ。

 

 風の噂を聞くに、愛理ちゃんは明日香ちゃんだけではなくコナミちゃんまで倒している。

 十代ちゃんたちが翔ちゃんたちを助けるのに間に合うか、そもそも勝てるかどうか。

 でも、やるしかない。やってみせるわ!

 

「「デュエル!!」」

 

 先を急ぐアタシたちのデュエルが、始まるのだった──。

 

 

 

 

 そこは電子が支配する電脳空間であった。海馬コーポレーションの技術により精神のみが肉体から離れコンピューター内部へと入ることができる。

 俺とエドは翔たちを助けるためにそんな世界へと入っていた。

 

 その電子空間は完全な暗黒空間ではなく、光のない暗闇の空間に青白い電子線が真っ直ぐにそこかしこに通ることで視界を明るくしていた。

 

「美寿知!! 俺たちはきたぞ!! 翔たちはどこにいるんだ!!」

 

 俺の叫びが電脳空間全体に反響しながら轟いていった。

 隣に立つエドはコンピューターの世界というものが興味があるのか、周囲を忙しなく観察しながら感嘆のような声を漏らしていた。

 

「そう声を荒げるでない。そなたらがきたことなど、とうに気づいておる」

「──美寿知か!!」

 

 俺が声を上げ存在を知らせると、奥から巫女服を着た長い黒髪を垂らした女性である美寿知が現れた。

 隣には黄色い車らしき存在と二足歩行の巨大な恐竜がいた。

 

「アニキ〜〜! 助けに来てくれたんすねー!!」

「おー兄貴ドン!! 見てほしいっす!! 俺、恐竜さんになれたドン!!」

「お、お前たちもしかして翔と剣山かあ!? なんだよその姿!?」

 

 美寿知の横に現れた車と恐竜が発した言葉に驚きの声を返しながら見る。小心さを感じさせる声と独特な口調を放った2人……人?

 まあ、その2つの存在は俺のよく知る2人の特徴とそっくりだったのだ。

 

「ボクたち、この世界にきてこんな姿になっちゃったんす〜〜!」

「へー、すっげえな電脳世界。姿まで変えれるのかよ。ちょっと羨ましいぜ、俺もHEROになってみてえ!!」

「兄貴、その気持ちわかるドン。俺も今憧れの恐竜さんになれてテンションMAXだドン!!」

「おい十代、目的を忘れるな。ボクたちが用があるのは美寿知の方なんだぞ」

「おっと、そうだったな。おい美寿知、2人を解放しろ!!」

 

 翔たちの姿に少しばかり羨みながら、俺は横で静かに微笑みながら佇んでいる美寿知へと声をかけた。

 

「ほっほっほっ。2人を助けたくば妾を倒すが良い。2人でタッグを組み、デュエルの相手をしてあげようぞ」

「なに、タッグデュエルだと?」

「へー、エドとのタッグか。翔たちのことは心配だけど、ワクワクするぜ!!」

 

 美寿知の提案に疑問が混じった声色のエドに対し、俺はエドとタッグが組めることに興奮したように叫ぶ。

 

 タッグデュエルか、悪くねえ。

 デュエルに勝てば解放してくれるのも、エドっていう百人力な奴なデュエリストとタッグを組めるのもいい。

 美寿知がどれくれえ強いのか知らねえけど、俺とエドのタッグなら勝ったも同然だぜ!!

 

「一つ質問だが、ボクと十代がタッグなのは百歩譲っていいとして、ボクたち2人をお前1人で相手するつもりか?」

「お、そういやそうだな。美寿知、お前のパートナーは誰がするんだよ」

「くふふ、そう案ずるな。妾のパートナーはもう決まっている。ほれ、来るが良い」

 

 コツコツと足音を立てながら、美寿知の後ろから誰かが歩いてくる。

 それは白い制服にトレードマークであるクリスタルを首から下げたコナミの姿であった。

 

「──コナミか!?」

「妾のタッグパートナーは此奴が務める。なに、お前たちの相手に不足ない力を持っておるよ」

「なるほど、星のカードを持つデュエリストだったな。確かに、そいつなら不足はなさそうだ」

「へへ、コナミが相手か。思ったより、簡単には行かなさそうだな。行くぜエド!!」

「ああ」

 

 俺たちに反応を示さないコナミは恐らく明日香たちと同じく斎王のやつに洗脳されちまった影響によるものなのだろう。

 それでもダラリと無気力な感じに体から力を抜いている様子だったが、俺とエドがディスクを構えるのに反応するように、目に力が宿り力強い姿勢になった。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 美寿知に囚われた翔たちを助け出すデュエルが始まるのだった──。

 

 

 




 堂本たちのデュエルはありません!!
 出したのはこの2人全然書いてないなあとふと思ったからです。

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