初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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時折自分の書いた話って読んでて疲れるなあと思ったり思わなかったり。


白き姫の願い

 ジェネックス開催、それが修学旅行から帰ってきた僕たちにいつの間にやら学園に帰ってきていた鮫島校長より告げられた大会の名前だった。

 

 プロ、アマ問わず、アカデミアに招待してデュエルによる勝利を競う。

 それは寝耳に水な内容の大会であり、プロデュエリストと戦えるかもしれないという滅多にない機会に大変興奮させてくれる大会である。

 

 しかし一度でも負けたら失格になる。そんな大会に誰もが喜ぶというわけではなく、僕や十代くんは大興奮していたが、翔くんなどのデュエルにイマイチ自信を持てないデュエリストは苦い顔をして不安に押しつぶされそうに気落ちしていた。

 

 僕は学園の全生徒が入れる大きな広間で鮫島校長による大会の説明を聞きながら横目で少し離れた場所に立っている愛理ちゃんを見た。

 

 魂の牢獄から解放され修学旅行から帰ってきてからまだ、僕は彼女とは話をすることができないでいた。

 寮にいるであろう時に会いに行っても女子寮であるという理由から門前払いされ、教室で話そうにも周りに明日香さんや他の女子が常にいて、近づくことを拒否されていた。

 

(うーん、どうにかして愛理ちゃんに近づく機会は得られないものかなあ。話すことさえできないとなると、助ける云々以前の問題だよ)

 

 僕が視線を送っていたことに気がついたのか、愛理ちゃんが小さく手を振って笑っていた。

 僕もまた、軽く苦笑いをしながら手を振りかえし、こちらに厳しい視線を送ってきたクロノス先生を見て慌てて顔を鮫島校長に戻した。

 

(とりあえず、愛理ちゃんについては後回しにするしかないかな。先に、三沢くんの方をどうにかしよう)

 

 光の結社に囚われた友人、三沢くん。

 デュエル大会、ジェネックスのこともあるが目下大切なのは大会で結果を残す以上に大切な友人と好きな女の子を正気に戻すことだ。

 

 その難しさを理解しながら、僕はさも真面目に聞いていますといった顔で大会の説明を聞きながら、どうやってその機会を作ろうかなあと悩み続けるのだった。

 

 

 

 

 ジェネックス開催宣言より少しして、アカデミアのあちこちで多くのデュエリストがデュエルをしていた。

 それは僕も同じ、島の東側である湖近くの森の中を歩いていると巡り合ったデュエリストたちとデュエルを繰り返していた。

 

「──僕はジ・アースでダイレクトアタックだ!!」

「うわぁああああ!!」

 

 僕の場に召喚されたジ・アースががら空きとなったフィールドを突き進み対戦相手のプロデュエリストに胸のボッチから放つ光線を叩きこみ、ライフを削り取った。

 

「ふぅ、ありがとうございました」

「~~ッ! はぁ、敗けたよ。興味本位で君を指名してみたが、強いね」

「いえ、それほどでも…………」

 

 ジ・アースの攻撃で倒れたスーツを着た相手に手を差し伸べ立ち上がりを手伝いながら僕は褒められたことに照れながら話していた。

 相手は現在プロデュエリストとして活躍している選手の人だ。

 プロとして勝率を競って付けられるランクは………まあ、この人には悪いけどあまり高くはない。けど、決してプロとして弱いと呼ばれるような実力ではなかった。

 

「ふぅ、宝玉獣を扱うヨハンくんという少年との動画も見たが、星の名をもつモンスターの力を体験出来てよかったよ。それだけでもこの大会に参加した甲斐があったと言うものだ」

「そう言ってもらえると光栄です。僕も卒業後はプロの世界に参加するつもりですので、その時はまた対戦しましょう」

「ほう、そうなのか。それは楽しみだ。その時までこの腕を磨いておこう。それではバッジだ」

「はい、ありがとうございました!」

 

 土埃で汚れたスーツをはたきながらジェネックスの参加者の証としての意味を持つバッジを貰う。

 それを胸の内ポケットにしまい込みながら去って行くプロデュエリストの人に手を振って僕は気怠さを感じた体に従うがままに木の根に座り込んだ。

 

(大会が始まって少し、それなりの数のバッジが集まったなあ。中にはプロとして活動している人ともデェエルできるなんて、鮫島校長に感謝したいくらいだ)

 

 僕は集めたバッジを数える。その数は20枚ほど、この島にいる学生の数や外から来ているであろう人の数を考えれば微々たる枚数だ。

 その中に、三沢くんや愛理ちゃんのバッジはない。

 まだ、僕は二人とデュエルすることはできずにいた。

 

「──おっ、コナミじゃねえか。どうしたんだ、座り込んでよ」

「──やあ十代君。ちょっとデュエルの連戦で疲れちゃってね。今お休み中だよ」

 

 後ろから掛けられた声に振り向くとそこにはいつもの赤い制服がよく似合う快活な笑みを浮かべた十代君が木に手をかけながら僕を見下ろしていた。

 僕は顔を後ろに向けて気心の知れた相手とわかってそのまま立ち上がることなく話すことにした。

 

「おっ、そうなのか? 俺は相手を探して歩きまわっているところだぜ。翔は隠れちまってどっか行っちまってなあ。剣山も今日は一人で行くってことで俺は一人で行動中だ」

「へー、まあ翔くんらしいね」

 

 本気になれば彼も強いのにとは思いはしても口にしない。そんなことは僕以上に十代君のほうが余程知っているだろう。

 まあ、それで変にお調子者の面がある彼が調子に乗っても碌な目に合いそうにないから彼も信頼を見せることはあっても実力を褒めると言うことはあまりしない。

 少なくとも、僕はそんな印象を抱いている。

 

「そうだ、明日香さんと万丈目くんだけど、元に戻すことができたんだってね。おめでとう」

「おう、三沢と愛理はまだなんだよな」

「うん、二人のことは僕に任せておいて。何とかするからさ」

「ああ、あいつらのことはお前に任せる。三沢も愛理も、きっと待ってるぜ」

 

 ビシッと親指を立てながら笑みを浮かべる十代君に僕も微笑む。

 ジェネックス開催から十代君は光の結社の一員として破滅の光もとい斎王に洗脳されていたちからから万丈目くんと明日香さんを助けることができていた。

 それを聞いて喜びと、早く僕も二人に正気を取り戻させたいと焦燥感を感じたものだ。

 

「ただ、どうにも二人とデュエルする機会が得られないんだよねえ。愛理ちゃんは露骨に避けられてるというか、周りがガードしてて近寄れないからわかるんだけど、三沢くんがよくわからないんだよね」

「避けられちまってんのか。デュエルができないってなると、助けようってのにもどうしようもねえなあ」

「そうだよねえ。どうしようかと困ってるところなんだ」

 

 愛理ちゃんのほうはまだわかる。いや、僕と話しすらまともにしてもらえない理由の方はわからないけど、デュエルできない理由が周りが近づけないようにしてるからという理由でわかるのだ。

 目が合えばニコリと笑って手を振ってくれるし、人づてに渡してくれる形だけどお弁当も作ってくれるから嫌われたりしてるわけではない。これまで通り好意をもってくれていることだけはわかる。

 

 だから周りがガードしているのは僕が光の結社から抜けさせようとしてるとわかっているということだろう。周りがそれを許さないか、近づけさせないように指示しているからだと推察できる。

 次は運命だろうがMercuryの力だろうが、何が彼女の味方をしても絶対に勝つと言う意思の元に戦うわけだしね。

 

 問題は三沢くんの方だ。

 彼は僕を避けているわけではない。話しかけることもデュエルを申し込むこともできる。だけど引き受けてくれないのだ。

 デュエルを申し込んでものらりくらりと理由をつけて断られている。これではどうしようもない。

 

「まあ、わかんねえもんは仕方がねえ。避けられちまうってなら、向こうから来るのを待つしかねえよ」

「やっぱりそう思う?」

「ああ、デェエルしようって意思は伝わってんだ。それまで待とうぜ」

「そうだね。それしかないか!」

 

 十代君と相談して結論を出した僕は立ち上がり彼に向き直った。

 

「よっし、じゃあ、そろそろ対戦相手探しに出かけようかな!」

「おっ、もういいのか。じゃあ、俺とやろうぜ!」

「十代君とか、それは──」

 

 いいねと、返事を返そうとした僕の言葉は木々に半身を隠しながらからこちらを窺っている小さな影が視界に映ることで止まった。

 

「ん、何だ?」

「君はたしか──」

 

 そうして出会った存在との邂逅から間もなく、三沢くんからデュエルの申し出が送られてきたのだった──。

 

 

 

 

 学園内部に設置された巨大なデュエル場、そこが白い制服に髪色さえ白く染めた三沢くんが指定した場所であった。

 周囲にはジェネックス開催中だと言うのに観客が大勢いる。

 

 そのほぼ、というよりすべてが三沢くんの応援団だ。でも、僕を応援してくれる人がいないわけではない。

 僕の後方の観客席にはデュエルを聞きつけてきた十代くんや翔くんたちのいつものメンバーが、その中には洗脳が解けた明日香さんや万丈目くんもいた。

 

「よく来たなコナミ。先に言っておくが、すまなかったな」

「ん、なにが?」

「デュエルを避けていたことだ。ある方がこの島にくるときを待っていたんだ。決してお前から逃げていたわけではない」

「ある方…………?」

 

 斎王さんのことかなと思ったが、どうやら違いそうだ。三沢くんが見つめる観客席の方、その一番奥の方に一人ポツンと座るお爺さんがいた。

 

「俺はあの方にお前に勝利して、一番になる瞬間を見てもらいたかった。そのために、今日と言う時にあそこで見てもらえるよう頼んだんだ」

 

 三沢くんが見つめるお爺さんを彼は憧憬や尊敬といった感情が籠った視線で見つめていた。

 

 1番に拘る三沢君が敬意をこめて呼ぶお爺さん。見覚えのない、学園の事務員や教員でもなさそうな人だけど、島の外からやってきたと言うなら見覚えがないのも仕方ないだろう。

 

 いや、どっかで見たような。どこでだろう…………。

 

 ダメだ、思い出せそうにない。どこかで見た覚えがある気がするんだけどなあ。

 僕は昔見た覚えのある容姿のお爺さんの姿に思い出せそうで思い出せない。そんな気持ちにかぶりを振って無理に思い出そうとするのを中断した。

 

 まあいいや、あのお爺さんの正体は気になるけれど、それは後でいい。洗脳状態が解けた後に聞くとしよう。

 今はデュエルを通して彼の正気を取り戻す。

 それが一番大事だ。

 

「三沢君、僕は君を大切に想う存在からの願いを背負ってこの場に立っている。友人として、ライバルとして、1人のデュエリストとして。僕は君に勝つよ」

「コナミ、俺はおまえを倒して1番になる。ナンバー1だ。そして俺の輝かしい未来を掴む。その未来は、お前に勝利してこそ掴めるものだ。輝ける未来のため、俺の踏み台となれッ! コナミ!!」

 

 強い覇気を込めた言葉、お互いに勝利を目指し、それを譲ることはできない。

 ナンバー1、それが三沢君が僕を倒す理由。いつも1番を目指していた彼がそれを目指すのは至極当然のことだ。

 

 だが、運動とか勉強とかデュエル以外のことならいくらでも敗けてもいいけど、ことデュエルで1番をあげることはできない。

 この学園で1番のデュエリストになるのは僕だ。十代君さえ退けて、僕が1番になる!!

 

「行くよ三沢君ッ!! 僕が君を倒すッ!!」

「こいっ、コナミ!! 俺がナンバー1だッ!!」

 

 語気を強くしながらデュエルディスクを構え、僕たちは互いの意思を合わせながらデュエル開始の宣言をした。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 




あの世界のプロの人の強さっていまいちわかんない。ピンからキリまでいるってのだけはわかるんだけどねえ。
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