初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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たまに自分が書いた話を読み直してひでぇなこの文章って思ったりします。きっと今書いてる話も未来の自分はもっと上手く書けよと言うんだろうなあ。


輝ける未来へ

「──またこの場所か……」

 

 デュエルの最後の攻撃、ピケルの杖から発された眩いばかりの光の中、目を開けた先にあったのは数年前に観客席から見ていることしかできなかった全国大会の会場へと辿る通り道であった。

 俺は突然の変化に戸惑いながらも冷静さを取り戻す様に周囲を見渡す。

 

 先ほどまでデュエル場でコナミと戦っていたはず、この場所にいるはずがない。

 

 不可思議で怪奇現象めいた体験だが、この体験には憶えがある。愛理くんに敗れ、斎王の力にかかった時のことだ。

 その時と違いがあるとすれば、あの時は会場の観客席で、ここは会場へと続く大通りに立ち尽くしていたことだった。

 

「…………俺がここにいるのは、お前の仕業か、コナミ」

「──やっ! 三沢くん、すごいでしょ。僕その気になればこんなことができるようになったんだよ」

 

 俺が背後から近づいてくる気配に振り向くと、そこには褒めてくれとでも言わんばかりの笑顔を見せているコナミがいた。

 

「ふうー。意味がわからん。斎王の時も思ったが、どういう場所なんだ。それにどうやって学園からこんな場所に連れてきたんだ」

「へへ、すごいでしょ。ここは………って、いうか斎王様とは言わないんだね」

「もう奴の妙な力からは解放されているからな。因みに万丈目とは違い記憶もあるぞ。それで、ここはなんだ?」

 

 頭の側面を指でたたき記憶があることを知らせながら周囲を見る。晴天の下、大通りの端には木々が乱立し、そこを歩く人々はいない。

 昼間でありながら、俺とコナミだけが大きな道に突っ立っている。栄光を得られる全国大会の会場前でありながら人影のいない光景は少しばかり寂しさを感じさせた。

 

「ちょーっとばかしVINUSの力を借りてね。言ってなかったっけ、プラネットモンスターにはさ、それぞれ現実に影響を及ぼせるようなすごい力を持ってるって」

「いや、初耳だが?」

「あっそうだっけ。VINUSの力は確か、真実と虚構の境界線を操るだっけな。よくわかんないから僕と三沢君の夢をちょっとだけ繋げてもらったみたいな認識でいいと思うよ」

「夢………そうか。俺は今夢を見ているのか…………」

 

 真実と虚構の境界線、夢を繋げたか。プラネットモンスターとはすごいのだな。三幻魔のような世界を滅ぼせると言ったカードそのものに強大な力をもつ存在。

 それを扱うデュエリストとして選ばれたこいつが、少しばかり………羨ましい。

 

 俺にはそんな特別なカードは持っていない。そこまでではなくとも、愛理くんのような財力も持たない俺は希少と呼ばれるカードも持ちえない。

 十代のように宇宙から生まれたネオスのような特殊なカードとも縁はない。

 

 だからこそ、知恵と努力でそれを補ってきた。だが、やはり羨ましく感じるのはどうしようもない。俺にもそんなカードがあれば………そう思ったのはどれほどか。数えることもできんな。

 

「しっかし懐かしいなあ。全国大会会場かあ。せっかくだから中に入ろうよ。夢だから、何でもし放題だよ!」

「わかったわかった。行くから背中を押すな」

 

 まったくと、背中を押してくるコナミを避けて俺は会場内への道を歩いた。靴が叩くタイルの音は甲高く、友と歩く懐かしき過去の光景に少しだけ笑みが生まれていた。

 

 

 

 

 そこはがらんどうの試合場であった。天井から照らされるライトこそ正常に作動しているものの、観客はいない。

 日本という国の最強を決める会場でありながら自分たち以外の存在が一人としていない。それはやはり、会場前でも感じていた通りの物寂しい光景だった。

 いや、それだけではない。夜中に電灯のともっていない場所を歩くような、人気のまったくない田舎や廃墟を肝試しで歩くような不気味さもそこには存在していた。

 

「わーっ、すごいね。僕たちの専用だよ!」

「夢だがな。現実ではありえん」

 

 会場内を好きなように歩き回れることにはしゃぐコナミに苦笑しながら、テンション高いなと呆れ気味に俺も歩きながら会場内を見渡した。

 

「3年前、お前はここでカイザーと戦っていたな」

「うん、あの時は悔しかった。でもすごい楽しかったよ」

「俺はそれを見ていることしかできなかった。あの観客席で、俺は見ていることしかできなかった。本音を言うならな、お前が羨ましくて仕方がなかったよ」

「うん、わかるよ。きっと逆の立場なら同じ感想を抱いてたと思うから」

 

 俺が見上げる方向をコナミも試合場から視線を上げて観客席へと向けた。

 

 その視線の先に抱いている感情はきっと違うものだ。

 こいつは選手として、俺は応援者として、この会場にいた立場が違ったのだから。たとえ羨む気持ちに共感できても、今抱いている気持ちは、きっと違うのだ。

 

「…………俺は1番になりたかったんだ。子供の頃、デュエルが強いと呼ばれるお前と出会うまでは、俺はどんなことでも1番だった」

「知ってる。いつも1番であることを目指していたもんね」

「ああ、だが、お前と出会うことで俺は1番であれなくなった。それが悔しくてな。つい斎王の甘言に乗ってしまった。お前には迷惑をかけてしまった、すまなかった」

 

 あの時、斎王から差し伸べられた手を、俺は強い意志で振り払わなければならなかった。そうすれば、こんな面倒なことをさせる必要もなかった。

 それにピケルにも心配をかけることもなかった。特別なカードをもっていなくとも、俺はカードに愛されている。それを自覚していればな。

 俺は自分の未熟さに苦笑する。

 

「謝罪なんていいよ。困ったときはお互い様、それに以前言ったでしょ。三沢君が困ったことになった時は、僕が助けてあげるって」

「………そんなこと言っていたか?」

「ええ!? 言ったよー、忘れたの? ほら、卒業前の公園でさ!」

「あー、そう言えばそんなことがあったような…………」

 

 驚き迫るコナミに俺は顔を渋くしながら思いだす。卒業式前の公園…………確かにそんなことを言っていた気がする。

 世迷言過ぎて忘れていたな。

 

「そうだな、そんなこともあったな。なら、これで貸し借りなしだな。中学の頃はお前の世話に大変だったからな」

「………貸してたつもりだったんだ」

「突っ込むな。言葉の綾だ。まあ、感謝していると言うことだ」

「うん、そういうことにしておくよ」

 

 どこか、しんみりした空気が二人の間に漂う。これも夢の中ならと思えば正直に隠さず話せるからだろうか。

 俺が抱いている嫉妬心さえ、恥ずかしく、胸に秘しておくべきことなのについ言ってしまう。

 

「俺はお前が羨ましくて仕方がない。恐らく、生涯この感情はなくならないんだろうなと思う」

「…………」

 

 空気にあてられてか、言うつもりではなかったことが口から漏れ出てくる。これも、プラネットモンスターによるものだ。

 そう自分に言って静止する自分を退けた。

 

「お前はデュエルの非凡な才能を持っていて、俺には決して及びもつかないドロー力を持っている。それだけではない、プラネットシリーズという世界でも1枚しかないようなカードに選ばれ、プロとしての道を切り開いた。

 挙句の果てに愛理君のような美しい女性と交際までして、そのご両親にまで認められている。まったく、順風満帆なようで俺であっても嫉妬にくるってしまいそうになる」

 

 くっくっくっ、自嘲したような忍び笑いを漏らす俺のことを、なぜかコナミは憮然とした納得のいかない表情で見ていた。

 俺としてはそれほど可笑しなことを言った覚えはなく、こんな反応をされるとは思わなかったため、内心少しだけ驚いていた。

 

「コナミ、こんな状況だ。誰も聞いていないことだし、普段言えないことも言い放題だ。何か言いたいことがあるなら言った方が楽だぞ」

「ならそうさせてもらうけどさあ。確かにそう羅列されるとすごい恵まれているってわかるけど、三沢君も大概でしょ。人のこと言えた立場じゃないよ」

「ほう、俺が列挙した内容に並ぶような特筆すべきことがあると言うのか?」

 

 目尻を上げてに面白いことを言い始めたなと思いながらコナミの続く言葉に耳を傾ける。俺が上げた内容に並ぶほどのものがあるというなら教えて欲しいものだ。

 所詮1番にはなれない凡庸な俺の特筆すべきことがあるというのなら──。

 

「三沢君はすごく頭がいいじゃないか。僕なんかと比べたら月とスッポン。学園でも1番いいくらいの頭のよさだ。これが自慢じゃないならただの嫌味だよ」

「まあ、頭がいいのは確かに俺の長所だな。自分で言うのもなんだが、それなりに出来がいいと思っている」

「それから運動神経もいいよね。あれなんでなの。頭もいいのに運動もできるとか、多方面にできすぎでしょ」

「ふむ、あらゆる点で1番を目指す以上、運動面を手を抜くわけにはいかん。体の調整には気を遣っているとも」

 

 頭がいい、運動もできる。それは自慢できる長所だろう。だが、それだけではコナミに並んでいるとは言い難い。

 所詮、学生レベルでしか図れない基準だ。それにあげられた2つで何かを成し遂げれたわけでもない。少しばかり弱いと判断せざるを得ないだろう。

 

「あとはー………顔もいいよね。イケメンだよ、優男とかそういう方面じゃなくて、男らしい顔って言うかさ」

「容姿か、あまり気にしたことはないが、整ってはいるのかもしれないな。だが、俺にはこれといった恋愛相手はいないぞ」

「それは三沢君にその気がないからでしょ。僕と違って女子にアプローチしに行ったりしないし、なんなら恋愛を避けてる雰囲気まであるし。その気になればいくらでも引く手あまただっていうのにさ。お相手がいないのは自業自得だよ!」

 

 呆れた顔をするコナミ。俺は腕を組み考える。

 学業、運動、そして容姿か。世に評価されやすい三大要素をすべて満たしていると言えるな。

 一般的に言えば、俺は羨まれる立場なのかもしれん。

 だが、俺はデュエリストだ。評価されるなら、そっちでありたいものだ。

 

「お前が羅列した内容を聞いても、やはり俺はお前の方が羨ましいぞ。デュエリストとして、おそらく俺よりずっと輝かしい未来を得られるその才能が、環境が羨ましい」

「僕だって三沢君が羨ましいよ。僕からデュエルの才能を除いたら平凡かそれ以下だよ。デュエルしかない僕と違ってあらゆる方面に大成できそうな三沢君の方が、ずっとすごいよ」

 

 俺たちはお互いに目を話すことなく心の内に秘めた嫉妬心を打ち明ける。

 子供の頃に出会ってからこれまで、お互いを知ることで詰み上がってきた心の膿を吐き出す様に俺たちは語った。

 お前が羨ましくて仕方がないと──。

 

「くっ」

「ふふっ」

 

「「あーはっはっはっ!!!」

 

 顔を突き合わせ話していると、何故だか可笑しくて、声が重なるようにお互いに吹き出してしまった。何が可笑しくてこんなにも笑えるのか、自分でもわからなかった。

 

「きっとさ、僕もずっと三沢君のことが羨ましいって思いながら生きていくと思う。三沢君が言ったように、僕も羨ましいって嫉妬心はずっとなくならない」

「そうか。お前も俺が羨ましいと感じていたのか。なら、お互い様か。俺たちは生涯羨み続けるんだろうな」

 

 或いは、もっと大人になればこんな醜い気持ちも整理して、なくすことができるのだろうか。

 立派な憧れられるような大人………今の俺にはとても想像の付かない状態だな。

 それが大人になると言うことなら、まだ、俺は子供ということなんだろう。いつになれば立派な大人になれるのやら。

 

「三沢君、僕にとって君はかけがえのない1番の親友で、ライバルだ」

「ああ、俺もだ。俺にとってお前は超えるべきライバルだ。そして、共にこの一瞬を生きる親友だ」

「うん、なら、もういいよね」

「ああ、もう十分だ」

 

 俺たちが頷くとともに夢の世界が崩れていく。俺とコナミがもういいと、ここまででいいと思ったことでその役目を終えようとしているのだ。

 

 今わかった。何故コナミが俺をこの世界に連れてきたのか。それは斎王の洗脳を完全に解くためであり、なにより俺が胸の内に抱え続けてきたわだかまりを打ち明けることでわかり合うためだったのだ。

 

 俺は崩れ行く世界に別れを告げながら、コナミに、そしてこいつと出会わせてくれた偶然、或いは運命に感謝した。

 

「コナミ──ありがとう。お前のおかげで、俺の心は決まった。迷うことなく先に進めるよ──」

「──!」

 

 世界が崩れる瞬間、光に満たされ完全に消える寸前にコナミが何かを言った気がした。それは俺と同じように感謝の言葉だったような気がした──。

 

 

 

 

「──ああ、帰ってきたのか」

 

 瞼の裏から感じる眩しさに目を開けると、デュエル場のステージの上で仰向けに倒れているのがわかった。

 会場全体を照らす天井からのスポットライトが眩しかった。

 

「──おはよう三沢くん」

「──ああ、おはようコナミ」

 

 上からのぞき込んできたコナミに差し出された手を握り返して勢いをつけながら立ち上がった。

 デュエルを終えてからさほどの時間は経っていないのか目を周りに向けるとそこには十代や万丈目たちが嬉しそうに笑っていた。

 

「コナミ、俺の行きたい進路が決まったよ」

「そっか、ツヴァインシュタイン博士だっけ。あそこのお爺さんのところに行くの?」

「そのつもりだ。許しさえもらえれば助手としてすぐにでも………しかしお前、あの方が誰か知っていたのか?」

 

 観客席にいるツヴァインシュタイン博士、デュエル物理学において世界にも認められている極めて優秀な博士だ。

 しかし、世界にも認められるような権威ある方だが、俺はともかく、デュエル物理学とかに興味のないこいつが知っているとは思わなかった。

 

「今思い出したよ。昔、三沢くんが見せてくれた本に載ってたなあってさ」

「そうだったな。まるで興味を持たれなかったから、話題に出すことはなかったが、たしかに教えたことがあった」

「………学校は、デュエリストとしての道は諦めるの?」

「ずっと悩んでいた。将来進む進路を、この学園を卒業して何をしたいのかを。だが、俺の腹は決まった。俺はあの人の元で多くを学び、そしていつか論理と直感が一つなったデュエル統一理論を完成させる。そのために、俺はこの学園を去る!」

 

 子供の頃にコナミに勝つことで確信した論理と直感の統一の可能性。その最先端を突き進む人がこの場にいる。

 この機会を逃せばもう二度と得られないかもしれない出会い。

 たとえ皆と、コナミと道半ばで別れることになろうとも、俺はこの道を進む!!

 

「──頑張ってね」

「ああ、たとえ断られても、土下座してでもついていくつもりだ。まあ、卒業してからにしろと突っぱねられるかもしれんがな」

 

 色々な言葉を呑んで告げられたであろう励ましの言葉。俺は明るく笑いながらそれに答えた。

 俺たちに暗い別れは必要ない。

 生涯の友、生涯のライバル。たとえ離れようともその関係は決して変わることはない。それが夢の世界で知ることのできた教えだ。

 

「コナミ、今日のデュエルの借りはいつか必ず返す。それまで腕を鈍らせるなよ」

「誰に言ってるのさ。三沢くんこそ、研究にかまけて弱くならないでよね」

「ふっ、それこそ世迷言だな。ではな、博士に話してくる」

「うん、きっと、三沢くんなら博士の元でも上手くいくよ」

 

 俺は皆に背を向けて万感の思いを胸に、俺たちの様子を見守っていたツヴァインシュタイン博士の方へと歩いていく。

 道の決めた俺の足取りに迷いはない。いつの日か俺の、俺によるデュエル統一理論を完成させ、コナミたちに勝利してみせる。

 

 博士の元へと歩む俺の顔には晴々しい表情が浮かび、その力強い目には夢へと向かう輝かしい未来が映っていた──。

 

 




三沢君、進路決定!
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