ここから2日に1話投稿になります。書き溜めた話にどの時点で追いつかれるか。
新学期!来訪する留学生!!
新学期、それは3年生へと上がった僕たちの始まりを告げる時節。
光の結社による世界の破滅の危機を乗り越え、平穏無事な学園が帰ってきていた。
そんな新学期が始まりを告げようとしている前日、世界中の前全デュエリストに激震が走る情報が出回った。
それは新たなるルール改定、リミットレギュレーションにより『強欲な壺禁止カード指定』という内容によるものであった。
世界中のあらゆるデュエリストが必ず入れるカード、強欲な壺。無条件でカードを2枚ドローできるカードの禁止カード入りという情報は一瞬にして学園中を、そして世界中のデュエリストに衝撃を与えた。
「いやあーッ!!」
隣で僕の好い人である愛理ちゃんが頭を抱えて叫び声をあげている。その目の先にはルール改定の内容が書かれた雑誌に向かれている。
そこには僕を含めた多くのデュエリストが衝撃を受けている強欲な壺とは違う。それ以外に選定されたカードも複数枚書かれている。
彼女はその中の一枚のカードに強欲な壺以上のショックを受けたために冷静さを失った声を上げているのだ。
僕もつられて彼女が見つめている雑誌の内容に目を通す。
「なになに…………その高い攻撃力と魔法カードを容易に回収運用できる極めて強力な効果のため、混沌の黒魔術師を禁止カードとして裁定されます………かあ」
「嘘よ。こんなことがあっていいの?」
なるほどなあ、と僕は大げさなまでに頭を抱えた愛理ちゃんの事情を悟った。
混沌の黒魔術師、それは彼女が長年に渡りそのデュエルを支えてきたエースカードの一枚だ。それが突如として禁止指定されたとあっては親が死んだという連絡がきたが如くの絶望の声をあげても仕方がないと言うもの。
「まあ、決まっちゃったものは仕方がないよね」
僕はうんうんと彼女の心情に寄り添うように頷きながら当たり障りのない言葉で慰める。
愛理ちゃんには悪いが、極端な話強欲な壺を何度も使いまわせる効果を持った混沌の黒魔術師は危険視されて当然の効果を持っている。
世界に彼女しか持っていないとか数枚しか存在しないとかなら目に留まらなかっただろうけど、デュエリスト全体の比率でいうと持っている人は少ないと言うだけでいないわけではなかったのだ。
プロの世界でも蘇生カードにより何度も何度も蘇っては強欲な壺や死者蘇生を使いまくると言う極悪コンボをするシーンもあった。
というかそれが引き金でもあったのだろう。
今回のルール改定で強欲な壺を禁止にするついでにこのカードも、となったんじゃないかと思う。
「う~~、さようなら、私のエース」
レッド寮の僕の部屋で机に突っ伏して悲しみの涙を流す彼女は、不承不承とデッキから混沌の黒魔術師を抜いた。
それを横目に僕もまた、彼女に倣うようにそっとデッキから強欲な壺を抜くのだった──。
*
夕方、日も落ちてきた頃に禁止制限改定による悲しみが癒えぬままに、愛理ちゃんはブルー寮の自室へと帰って行った。
「ようコナミ! 愛理は帰ったのか?」
「ああ十代くん。君も帰ってたんだね。大変だったよこっちは」
落ち込んだ愛理ちゃんを送り届けた帰り、レッド寮の食堂で夕食をと思いドアを開けたらメザシのご飯を食べていた十代くんが手を挙げてこちらを見ていた。
十代くんは相変わらずだ。光の結社の件があっても変わらないデュエル大好きな学生としてのデュエルに日夜明け暮れる毎日を送っている。
「十代くんは新しい禁止カードを見たの?」
「おう、まさか強欲な壺が禁止になるとは思わなかったぜ。翔たちなんか超慌ててよ、落ち着かせるのに大変だったぜ」
「はは、想像に難くないね」
愛理ちゃんと2人で自室にいた僕とは違い、十代くんは翔くんや後輩の剣山くんと会っていたらしい。
面倒だったとご飯を食べながら言う彼に少しばかり同情しながら、僕も自分の分の夕食をお盆に乗せながら彼と同じ机の前の椅子に座った。
「しっかし愛理は災難だったなあ。強欲な壺はともかくとして、混沌の黒魔術師が禁止になるってのはよ。あいつのエースだろ?」
「うん、それもあってかすごい落ち込んじゃってさ。こっちはこっちで大変だった」
「そうか。まっ、気持ちはわかるけどな。俺もネオスやフレイム・ウィングマンが禁止ってなったら超落ち込む自信があるぜ?」
「そりゃ僕もだよ。誰だってエースやお気に入りのカードが明日から使えませんってなったら落ち込むよ……あっ、美味しい」
十代くんの言葉に僕もエースであるプラネットモンスターたちやHEROたちが禁止になった光景をメザシを口に含みその美味しさに一瞬口元を綻ばせ、次の瞬間には思い浮かべた光景にうへーと嫌な顔をした。
「しっかし珍しいよなあ」
「何が?」
「今回の禁止改定だよ。強欲な壺は……まあいいとして、混沌の黒魔術師みたいな一般に広く普及してないカードまで禁止送りだろ? それがちょっと珍しいなって思ってよ」
「ああ、そのことね」
基本的に広く普及されているカードでもない類いのカードがデュエルモンスターズで禁止カードとして制定されることは珍しい。というより、ほぼないと言っていい。
如何に強力なカードと言っても使用人数が極小数ともなればそこまで問題視されないからだ。
今回のように強欲な壺といった誰しもが持っているカードでなら、何種類も存在するが、混沌の黒魔術師のような伝説と呼ばれたり希少とされるカードが禁止というのはなくはないが珍しいのは事実だ。
「やっぱりあれでしょ、プロの公式戦における1ターンキルが問題視されたんだと思うよ。暴れすぎたもん」
「あーあれな。スゲーよな! 相手に何もさせねーんだからよ」
テレビで見たプロデュエリストの公式戦はすごかった。
何がすごいって先行をとったプロの1人が混沌の黒魔術師を使用したデッキを回しに回すことで4000ライフをバーンダメージで削り取るというデュエルだったのだ。
何がすごいってプレイングの高さもさることながら、その成功率の高さがすごかった。勝率8割は行っていたんじゃないだろうか。
あれを見てしまったら、禁止もやむなしといった判断になっても可笑しくはないという気持ちが湧き上がってくる。
「まあ愛理ちゃんにとっては災難だったと諦めてデッキの調整に勤しんでもらうしかないね。それよりもさ、留学生が来るって噂聞いた?」
「留学生?」
「うん、なんでも世界中にあるアカデミアの姉妹校からデュエリストの更なる発展のための交流の一環としてこの学園にやってくるらしいんだ」
留学生が来ると言う噂は禁止カードの制定とは別の話題として学園を賑わせていた。
僕もその1人であり、正直な気持ち、僕のデッキにはそこまでダメージのない禁止改定よりもよほど気持ちの比重が偏っているほどに楽しみにしていた。
「へえ、強えのかな、そいつら」
「さあ、強いかどうかまでは……ただ、留学生として選ばれるだけの実力はあると思うよ」
僕はアメリカで出会い友人となったヨハンくんを思い出す。
ヨハン・アンデルセンくん。エメラルドグリーンの純粋な瞳をした十代くんと似た印象を受ける同年代の少年。
僕は彼とアメリカで出会い、デュエルをした。宝玉獣という極めて珍しいモンスターたちを扱う彼は確かアークティック校というアカデミアの生徒だったはずだ。
彼の強さは驚かされるほどだったし、もしかしたら留学生としてやってくる可能性はある。
それを思うと、留学生が来ると言う話は僕としてもすごく楽しみだった。
「まあどんな人が来るかはわからないけどさ、明日からの新学期、今度こそ平穏無事に過ごせたらいいよ」
「俺は楽しいデュエルができるならなんでもいいや。世界の破滅なんてのは流石にごめんだけどな!」
「言えてる」
1年時の三幻魔やら2年生の光の結社やらと、この学園に入学してからというもののどうにも危険な事件が立て続けに起こっている。
2度あることは3度あると言うけれど、そう何度もこんな事件なんて起こってほしくはない。
笑い合い向かい合った僕たちはお盆の上に残っている夕食後、強欲な壺が抜けたデッキの調整という名目で気が済むまでデュエルをするのだった。
*
日が明けて新学期の始まり、それは大広間にて今年度やってきた4人の留学生の紹介と特別指導顧問として学園にやってきたコブラ先生の言葉から始まった。
「この学園の生温い考えを一蹴するために、デスデュエルの開催を宣言させてもらう!!」
コブラ先生が言うには、この学園の指導はとても温いらしく、とてもデュエリストの育成を真面目に行っているようには見えないとのことらしい。
そして物騒な名称のデスデュエルとやらを実際に実施した学園のデュエリストの実力の向上は著しく、結果を出しているためにアカデミアでもするとのことだった。
「また随分と苛烈な感じの先生が来たなあ」
「デスデュエルかあ。名前は物騒だけどよ、要はたくさんデュエルしようぜってことだろ?」
「うん、話を聞く限り戦績で順位を決めて向上心を高めようって感じだね」
隣でコブラ先生を見ている十代くんに答える。
物騒な名前から一体どんなヤバい内容かと思ったが、デスデュエルとやらはどうやら1日一回は必ず誰かとデュエルをしようって取組らしい。
そして、その程度のことすらも怠る向上心のかけらもない生徒は退学してもらうとのことで、それがデスデュエルと言う名前の由来らしかった。
「いいわねコナミくんは呑気でいられて。私なんて……はあ」
「え、愛理ちゃん……まだ引きずってるんだね」
十代くんとは反対側の僕の隣に座っている愛理ちゃんが項垂れながら深々としたため息を漏らす。
どうやらまだ混沌の黒魔術師が禁止入りしたことのダメージが残っているらしい。
「ま、まあ丈夫だよ。あんまり慰めにならないかもしれないけど、サクリファイスやダーク・アームド・ドラゴンっていう強力なカードはあるんだしさ…………」
「………はあ」
変わらず落ち込んだ様子を見せる彼女に十代くんと顔を見合わせ、そっとしておくしかないと首を振る彼に僕も苦笑いを受かべ変わらず力強い言葉を放っているコブラ先生へと視線を戻す。
「競えッ! 戦えッ! そして勝利を掴み取るのだッ!!」
覇気のこもった言葉が会場に響き渡る。その言葉にはコブラ先生の人生観のようなものを感じれる強い力が宿っているようだった。
「そして早速ではあるが、この学園の在校生と私が選ぶ留学生によるエキシビジョン・マッチをする!!」
「へえ、いきなりデュエルかあ」
「実戦に勝る学びはないッ! 言葉をいくら連ねようと、いくら教本を学ぼうと、実戦以上の成長は得られないッ!!」
聞いていなかったからだろう。生徒を含めた教師陣のどよめきの声をかき消す言葉を重ねるコブラ先生に座学が苦手な僕は厳つくて怖そうな見た目だけど、座学より実戦という点においてなんだか話の分かる先生だなと好印象を抱いていた。
「対戦者は私が決めさせてもらう。ヨハン・アンデルセンと遊城十代!!」
「よっしゃあ!」
「そして、もう一組、アモン・ガラムとコナミ!!」
「おっ、僕もやれるのか!!」
名前を呼ばれた僕と十代くんは目を合わせイエーイッ! とハイタッチして喜び、対戦相手であろう留学生の2人に視線を向けた。
十代くんの相手はヨハンくんだ。
始業式前に会っていたらしい十代君と彼はどこか通じ合うところがあるのかお互いに目を合わせながらも闘志を高めている様子だ。
そして、僕の対戦相手として選ばれた逆立てた赤い髪色をしたアモン・ガラムくんはと言えばどこか胡乱な、もっと言うと迷惑そうな目をコブラ先生に向けている。
遠い外国から学園まで来て早々にデュエルしなければならないと言う状況が嫌なのかもしれない。
だけど僕と目が合った時は小さく笑みを浮かべていてどうしてもいやというわけではなさそうで安心した。
なんだか佇まいや雰囲気から気品さというか身分の高い人って感じの印象を受ける人だ。
「では、1時間後にデュエルを開始する」
そうして、朝から刺激的な内容の始業式は終わりを告げた。
*
1時間後、デスデュエルに必要ということで利き腕の手首につけた専用のベルトを装着した僕たちはデュエル場にいた。
目の前にはアモンくん。あまり乗り気ではなさそうな彼だったけど、やると決まった以上は真面目にしてくれるようで落ち着いた様子でデッキをシャッフルしている。
「さて、コナミだったね。思わぬ形でのデュエルになったがやるからには勝たせてもらう。よらしく頼むよ」
「はい。こちらこそ全力で戦わせてもらいます!」
握手を交わす僕たち。留学生たちは皆それぞれの学校におけるチャンピオンだと紹介で聞いている。
そんなイースト校のチャンピオンであるアモンくんと新学期早々にデュエルができると言うのは幸先がいい。
「頑張れよー! コナミィー!!」
「コナミ! 俺と戦った時からどれだけ強くなったか見せてくれよ!!」
「任せといてよ十代くん!! ヨハンくん!!」
デュエル場の後ろの方でヨハンくんと話している彼らに答えて僕はデュエルディスクを展開した。
「では始めようか。星のカードを扱うと言う君の力見せてもらうよ」
「はい。イースト校のチャンピオンだと言うあなたの力も見せてもらいますッ!!」
お互いの様子からデュエルの準備ができたことを確認したコブラ先生が手を振り上げる。それが波乱に満ちた新学期最初のデュエルの始まりの合図となった。
「「デュエル!!」」
3期は個人的には好きです。途中のゾンビ編とかはともかく終盤にかけてのたたみかけて来る神回ラッシュが最高に好き。
初戦は誰にしようかなあと思ったんですけど、割と好きなアモンにしました。ヘルヨハン対アモンとかいうデュエル、神。
そういえばすっかり忘れてたけど前話で1週間後とか書いてたんですね。完全に忘れてましたね。