初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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サウダージ聴いてて「夜空を焦がして私は生きたわ恋心とーー」の部分でどうやったらそんな言葉思いくねんって問いただしたくなった。


揺蕩う雲流 ①

「ボクの先行、ドロー」

 

 コブラ先生が提案したエキシビジョンデュエル。十代くんとヨハンくんとのデュエルの前に僕とアモンくんのデュエルが行われることになった。

 

 先行はイースト校のアモンくん。

 彼は非常なまでに落ち着いた様子でデッキからカードを引いた。

 

 他校におけるチャンピオンである彼と意図せず戦える機会が訪れるなんて僥倖としか言えないだろう。

 新学期始めのデュエル、勝利で飾らたいものだけど、果たして彼はどんなデュエルをしてくれるのだろうか。

 

「ボクは手札から雲魔物ー羊雲(クラウディアンーシープクラウド)を守備表示で召喚。さらにカードを1枚伏せてターエンドだ」

「攻守0のモンスター…………僕のターン、ドロー!」

 

 

雲魔物ー羊雲(クラウディアンーシープクラウド)》 攻撃力0 守備力0

 

 

 アモンくんの場に召喚されたのは白い雲の塊のモンスター、羊雲。

 攻守0のモンスター、壁として召喚したにしてはあまりにも心許なさすぎるモンスターだ。

 

 何かしらの効果を持っていると見て行動すべきか……。

 

「なら、僕は手札からE・HERO ブレイズマンを召喚! 効果によりデッキから融合を手札に加え、そして発動! 手札のE・HERO オーシャンとブレイズマンを融合し、E・HERO ノヴァマスターを融合召喚!!」

 

 

《E・HERO ノヴァマスター》 攻撃力2600 守備力2100

 

 

 上空に生まれた融合の渦に水と炎のHEROが飛び込むことで、その渦からより強い炎の力を宿したHEROが召喚される。それは僕の場に強い力で着地する。そのモンスターは赤い鎧に真紅のマントを留めた上級HEROだった。

 

 アモンくんの狙いが読めない現状、モンスターを倒すことで手札を増やせるノヴァマスターは先兵として最適解に近いモンスターだろう。

 攻守0のモンスター、壁としてあまりにも心もとない力だ。その狙いを知るために、まずはこいつで様子を見る!

 

「ノヴァマスターで雲魔物ー羊雲を攻撃! 爆炎葬送波!!」

 

 ノヴァマスターの両腕から炎の渦が生まれる。

 放たれた炎の渦は雲魔物ー羊雲の全身を巻き込みながら宙高く舞い上がり破壊の煙を発しながら破壊した。

 

「この瞬間、ノヴァマスターの効果発動! モンスターを破壊したことで僕はカードを1枚ドロー………あれは──?」

「ふっ、君のノヴァマスターがボクの羊雲を破壊したことで羊雲の効果も発動した。羊雲が戦闘で破壊された場合、ボクの場に雲魔物トークンを2体、特殊召喚される」

 

 

《雲魔物トークン》 攻撃力0 守備力0 ×2

 

 

 煙が晴れた先、その中から羊雲によく似ながらも、そのサイズだけが縮小化したようなトークンが召喚されていた。

 

 攻守ともに0であるその2体のモンスターを見た瞬間、僕はなんの気もなく召喚された小さな羊雲が上級モンスターへの布石であったことを悟った。

 

(なるほど、壁として召喚したにしてはと疑問だったけれど、羊雲を召喚したのはこのためだったのか。僕のモンスターに破壊されるため、伏せカードを発動しなかったのもそのためなのかな?)

 

「僕はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

 ノヴァマスターの効果によりカードをドローしながら2枚のリバースカードを伏せる。これは次のターンにくる可能性が高い上級モンスターへの対抗札。

 

 まだ全容が見えないアモンくんのデッキに対応するために、できるだけのことをしておかないと。1ターン目の静かすぎる行動を鑑みると、次の彼のターから動き出すはずだからだ。

 

「ボクのターン、ドロー! ボクは手札からマジックカード、ワン・フォー・ワンを発動! 手札のモンスターを墓地へ送ることで、デッキからレベル1のモンスターを特殊召喚する! ボクは雲魔物ースモークボールを特殊召喚!!」

「トークンがいながらさらに召喚するのか!?」

 

 

《雲魔物ースモークボール》 攻撃力200 守備力600

 

 

 アモンくんの場に小さく可愛らしいまるで動物の赤ちゃんを思わせる形状をした雲が召喚された。

 

 それはトークンが2体召喚されている関係上、更なる生贄を要求するために召喚したとしたら尋常ではないモンスターの召喚をしようとしている可能性がある。

 

 その新たに召喚されたその雲魔物を見て僕は顔を険しくした。

 

「このまま上級へ、そうしてもいいがその前に君の場のリバースカードが邪魔だな。なのでまずはそのカードたちを排除させてもらうとしよう。ボクは手札から雲魔物ーアシッド・クラウドを攻撃表示で召喚!!」

 

 

《雲魔物ーアシッド・クラウド》 攻撃力500 守備力0

 

 

「上級モンスターじゃない………いや、それ以上に攻撃力500のモンスターをどうして攻撃表示で…………」

 

 アシッド・クラウド、そのモンスターは両腕の付いた翠色の雲型モンスターだった。その攻撃力はノヴァマスターに対抗するにはあまりにも小さく、弱い。

 

 守備表示で召喚しない理由の見当たらないモンスターだった。

 

雲魔物(クラウディアン)モンスターたちはその多くが攻撃表示でなければいけないと言う制約を持っている。アシッド・クラウドを攻撃表示で召喚したのもそのためだよ」

「守備表示で出せないモンスターたち………だけど、それは逆に言えばそれだけのリスクを負うだけの強力な効果を持っている可能性があるということ」

「その通り、アシッド・クラウドが召喚された時、ボクの場の雲魔物モンスター1体につき1つ、フォッグカウンターを置く。ボクの場の雲魔物は4体。よって4つのフォッグカウンターが置かれる!!」

 

 アシッド・クラウドと同色をした小さな雲の塊が4つ、アシッド・クラウドの周囲に漂い始めた。

 

 カウンターを利用するタイプのモンスターはカウンターの数が多ければ多いほどその効力を発揮できるモンスターだ。

 

 1回の効果使用のために要求されるカウンターの数にもよるけれど、4つもあれば基本的に複数回は発動できるだろう。

 

 そして、その狙いは彼が言った通り僕のリバースカードが狙いであることは明白でもあった。

 

「アシッド・クラウドはフォッグカウンターを2つ取り除くことでフィールドの魔法・罠を1枚破壊できる。ボクはアシッド・クラウドのカウンターを4つ取り除くことで君のリバースカードを2枚破壊する!!」

「くっ」

 

 アシッド・クラウドの両腕に周囲で漂っていた小さな雲が2つずつ集まる。

 

 その2つの小さな雲は気流に流されるように僕のリバースカードの真上まで流れてきて、翠色をした明らかに悪い性質をもつとわかる雨を降らす。その雨は酸が大地を溶かすように、僕のリバースカードたちを破壊して行った。

 

「さらにこの瞬間、リバースカード ナチュラル・ディザスターの効果が発動! 雲魔物の効果により君の場のカードが破壊されるたびに君に500ポイントのダメージを与える」

「なにっ!?」

 

 破壊されたリバースカードに目を奪われていると、いつの間に発動していたのかアモンくんの場に伏せられていたリバースカードが発動されていた。

 

 それに驚きながら目を移すと、一面の雲の上に冷たい雪が降っている絵柄が書かれたカードから2つの雪の暴風が飛び出すように僕を襲いダメージを与えてきた。

 

「ボクが破壊したカードは2枚。よって君は1000ポイントのダメージを受ける」

「ぐぅうううううッ!!」

 

 

《コナミ》 残 LP 3000

 

 

「これで、安心してモンスターを召喚できる場が整ったな」

「召喚………だけど君はアシッド・クラウドを召喚するために召喚権を使用している。アドバンス召喚は行えないよ」

「そうかな。やりようはあるものだよ。ボクは手札から水界の秘石ーカトリンを墓地へ送ることでもう一度通常召喚できる!」

 

 手札から1枚のカードが墓地へと送られていく。

 それを見ながら彼の場に潤沢な生贄素材の揃っている状況に冷や汗を流し、そのすべてが計算されつくしたようなカードの流れにすごいと感心していた。

 

「ボクはボクの場に存在する全ての雲魔物モンスターたちをリリースすることで雲魔物ーニンバスマンを召喚する!!」

「すべて!?」

 

 

《雲魔物ーニンバスマン》 攻撃力1000 守備力1000

 

 

 4体ものモンスターが消えて行った先に召喚されたモンスター。それは巨大な幼児を模した形状をした雲の塊であった。色は暗い灰色をしており、通常の空を覆う雲に例えるなら雨雲と言っていいだろう。

 

 しかし、その巨大さと4体もの生贄を要求したモンスターに反して、その攻撃力は低く、僕は懐疑的な視線を投げた。

 

「攻撃力1000。4体も生贄に捧げた割には随分と地味な攻撃力だね」

「安心していい。ニンバスマンは生贄に捧げたモンスターの数だけカウンターが乗る。そして、カウンター一つに対し攻撃力を500ポイントアップさせる」

「そういうことか…………」

 

 アモンくんの説明に思わず苦い顔が浮かび上がる。

 召喚されたモンスターを見た時は弱いな……と言った感想を抱いた僕だが、それが誤りであったことを知った今は違う感想を抱いている。

 

 ニンバスマンが声を上げる。

 その周囲に現れた4つの雲は線でつながるようにニンバスマンと繋がり、その力を底上げしているようだった。

 

 

《雲魔物ーニンバスマン》 攻撃力3000 守備力1000

 

 

「これでニンバスマンの攻撃力が君のノヴァマスターを超えた。アシッド・クラウドにより守るカードもない君にこの攻撃を防ぐ手段はない。バトル! ニンバスマンでノヴァマスターを攻撃!!」

「くっ、ノヴァマスター!!」

 

 

《コナミ》 残 LP 2600

 

 

 巨大な雲の塊であるニンバスマンがその全身で包み込むように炎の戦士であるノヴァマスターを巨大な雲の中に取り込み雷を内部で発散させる。

 抗うようにノヴァマスターも雲の内部で炎を噴出させるが、抵抗空しくその雷雲のなかで破壊されてしまった。

 

「さらにボクは永続魔法 雲魔物のスコールを発動! 次のボクのスタンバイフェイズが訪れるたびにフィールドの全てのモンスターにフォッグカウンターを一つ乗せる。これでボクはターンエンドだ」

「流石はイースト校のチャンピオン。甘くはない。僕のターン、ドロー!」

 

 まさか返しの1ターンで僕の盤面が更地にされてしまうなんて、流石にこうなるのは予想外だった。

 

 だけど、これで彼の主な戦術を見ることができた。

 

 雲魔物っていうテーマのモンスター群を使い、専用のフォッグカウンターを駆使することでモンスターの強化や僕の場を荒して有利にしていく。

 

 その強力な破壊効果の代わりに攻撃表示でなければならない制約があるみたいだし、正直、玄人向けというか、扱いづらさを感じるカードたちって印象を受けるカードたちだ。

 

 それでもまるでそう言った印象を受けないのはアモンくんの高いタクティクスが成せる技なのかもしれない。

 

 いずれにせよ、このままではニンバスマンの攻撃力が手が付けられなくなるほどに高くなっていく以上、3000というまだかろうじて対処可能な範囲の攻撃力のうちに破壊するのに全力を傾けるべきだ。

 

 なら、少しリスキーかもしれないけど、このHEROで行くッ!!

 

「僕は手札からE・HERO フラッシュを攻撃表示で召喚!!」

「ニンバスマンに対して攻撃表示? 血迷ったのかい?」

 

 

《E・HERO フラッシュ》 攻撃力1100 守備力1600

 

 

 全身を青いスーツで包み、その上から着た銀の鎧。閃光の名前のHEROがその攻撃力に反して攻撃表示で召喚されたことに今度はアモンくんが疑念の声を上げる。

 

「いや、こいつでニンバスマンを倒すために攻撃表示で召喚したのさ。バトルだ! E・HERO フラッシュでニンバスマンを攻撃!!」

「バカなッ!? 自殺行為だぞ!!」

 

 フラッシュがニンバスマンに向かっていく。巨大な体躯のニンバスマンの半分にも満たないサイズのフラッシュはたちまちのうちにニンバスマンの中に取り込まれてしまった。

 

「ふっ、まさか自爆とはな。大方、フラッシュの効果で融合を回収するためだろうが、このような戦法は無駄にライフを減らすだけ、ナンセンスだ」

「いや、そうでもないさ。僕はこの瞬間、速攻魔法 ライフハックを発動! この一瞬だけ、フラッシュの攻撃力を君のライフと同じにする!!」

「なにっ!?」

 

 ライフハックの効果によりニンバスマンの中に取り込まれていたフラッシュの攻撃力がアモンくんのライフ4000へと上昇していく。

 

 雲の切れ間から雷が流れフラッシュを攻撃していたニンバスマンに反撃するように、その体内から爆発的な閃光が起こる。

 そしてその閃光が落ち着いた時、ニンバスマンは雲が割かれて散り散りに消えゆくようにバラバラに裂かれて文字通り雲のように消えて行った。

 

 

《アモン》 残 LP 3500

 

 

「ライフハックを発動したターン、君が受けるダメージは半分になる。大したダメージは与えられないけど、これでニンバスマンは破壊された。雲魔物のスコールとのコンボは使わせないよ!」

「フッ、なるほど、攻撃力の劣るフラッシュで攻撃力を超えてくるとはな。だが、残念ながら、君の目論見は失敗に終わる」

「えっ?」

 

 フラッシュの攻撃でバラバラになったニンバスマンに焦るかと思っていたが、予想に反してアモンくんの反応は非常に淡白で余裕に満ちていた。

 

 そして、その理由はすぐに判明した。

 破壊され、霧のように消えたはずのはニンバスマンが散り散りとなった雲が集い重なり一つなることでフラッシュの前に現れたからであった。

 

「バカなッ! 破壊されたはず…………」

「ニンバスマンは………というより雲魔物(クラウディアン)と言った方がいいだろうね。雲魔物の多くは攻撃表示でしかフィールドに存在できない。だが、それ故に戦闘における絶対的な耐性を有している。ニンバスマンもその一体ということさ」

「戦闘で破壊されないモンスターってことか!!」

 

 戦闘で破壊されず、雲魔物のスコールとのコンボで毎ターン攻撃力が上がっていく上級モンスター。

 なんて厄介なモンスターなんだ。

 

「くっ、なら僕はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

「ふっ、ニンバスマンを倒せず残念だったね。ボクのターン、ドロー! この瞬間、雲魔物のスコールの効果によりニンバスマンにカウンターが一つ乗り、その攻撃力を上げる!!」

 

 

《雲魔物ーニンバスマン》 攻撃力3500 守備力1000

 

 

 アモンくんが発動していた雲魔物のスコールの永続魔法から一つの雲が生まれ、ニンバスマンに向かっていく。

 既に4つの雲に繋がれたニンバスマンにさらなる力を与えるようにその雲も他の4つの雲と同じように線で繫がり、その力を増幅させた。

 

 それを険しい顔で見つめながら、僕の頬に流れる汗を手でふき取り息を吐く。

 このターン、アモンくんがどんな戦術を使ってくるかわからない。

 だが、何をしてきたとしても全力で受け止め勝利を目指すだけだ!

 

「来いッ!」

 

 僕は全てを呑み込みかねない程の巨大な雲とそれを悠然と扱うアモンくんにフラッシュと共に声を張り上げた。

 アモンくんのターンが始まろうとしていた──。

 

 




雲魔物ってむずい。
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