初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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祝い品

 

 学園の購買部。

 特別講師のコブラ先生発案のデスデュエルが学園で盛んに行われている今日この頃、購買部の顔であり店員のおばさんであるトメさんの前で、後輩の道長くんと剣山くんが言い争っている光景に出会した。

 

「道長、ここは俺に譲るザウルス。これはアニキにこそ相応しいドン」

 

 剣山くんが眉間に皺をよせながら若干険のある口調で言う。

 

「こっちには引けない理由があるんだ。十代先輩に褒められたいだなんていう浅ましい理由しかない剣山こそ俺に譲るべきだろう」

「言ってくれるドン。そういう道長こそどうせコナミ先輩に褒められたいだけだドン」

 

 剣山くんに対して道長くんも負けず劣らずの剣幕で彼に答えている。その顔は一見にこやかであり、冷静を装って自分に譲るように説得しているが声色とまるで笑っていない目がそれを台無しにしている。

 

「うわぁ。二人とも何があってあんなことに…………」

「あらまあ、まさかこんなことになるんなんてねえ。あたしも思わなかったわ」

 

 オロオロとするトメさんの前で一触即発、もう僅かにどちらかが踏み込めば即喧嘩に発展する。そんな光景を遠巻きに眺めている僕と堂本くん。

 

 購買部に踏み込んだ瞬間に届いた声の主たちの姿がそこにはあった。

 

「…………? 堂本君は知ってるの? 二人がどうして喧嘩しそうになってるのか」

 

 堂本君が頬に手を当てて困り顔で二人を見ている。

 僕より先に購買に来て遠巻きに眺めていた彼だ。後輩たちの喧嘩の原因を知っているのかもしれない。

 

「ええ。実はね…………」

 

 それは、数時間前の出来事がきっかけだったらしい。

 

 

 

 

「うーん、先輩へのプレゼント。何がいいだろうか」

「難しく考えなくていいと思うわよ。心が籠っていればよっぽど酷い物でもなければ喜んでくれるわよ」

 

 そこはブルー寮の堂本くんの部屋で道長くんが相談していたことから始まったらしい。

 何でも僕がもう直ぐ誕生日を迎えるからと、わざわざプレゼントを用意しようとしてくれているとのことだった。

 

 ありがたいことではあるけれど、無理に用意しなくてもとも思ってしまう。剣山くんとの喧嘩になりかけていることを知ると、ちょっと申し訳なくて、いやいいよと言いたくもなる。

 

「心が籠っていれば大抵のものは喜んでくれるとは俺も思いますけど、どうせ渡すならやっぱり最高のものを渡したいじゃないですか。堂本先輩は何をプレゼントするか決めてるんですか?」

「あたしはねえ、これよ!」

「これは……コーヒーメーカーですか?」

 

 堂本くんが取り出したのはとあるメーカーさんのコーヒーを簡単に作れるコーヒーメーカーだったらしい。

 

「そっ、ドリップ式だったり全自動式だったりとあったけど、コナミちゃんあんまりまめなタイプじゃないでしょ。だから手の込んだやり方のものを渡しても使わなくなりそうだから、楽に作れてかつ美味しい。それを考えたの」

「なるほど、先輩苦いのあんまり好きじゃなさそうなのによく飲みますからね」

「ええ、理由はあるんでしょうけど、どうせ飲むなら美味しく飲みたいじゃない。それに役立つかと思ってね」

 

 堂本くんが胸を張り取り出したコーヒーメーカーを繁々と眺める道長くん。

 彼はその黒いパッケージに如何にもな高級感漂う箱に触れて聞いた。

 

「でもこれ、高かったんじゃないですか? 安くはないでしょコーヒーメーカーなんて」

「ええ。ちょっとお高くついちゃってお財布に厳しかったわ。おかげで今金欠で、悲しいことになってるのよねえ」

「自分が言っちゃなんですが、身銭を切るほどの物じゃなくてもよかったと思うんですが……」

「わかってるの。分かってはいたのよ。ここまでのものを用意しなくてもってのはね。でも、やっぱり渡すならお高い方がお祝いの気持ちは通じるかと思って」

「結構現金ですね先輩。さっきの心がこもっていればってのはなんだったんですか」

「ごめんなさい。値段は誠意なのよ」

 

 気まずそうに顔を背ける先輩に、道長くんはため息を吐いて先輩が用意したコーヒーメーカーを眺める。

 

(俺にこんな高そうなものを用意するのは無理。というかよく用意できたなと思いますよ先輩。なら代わりにコナミ先輩が喜びそうなものといえば……)

 

「無難にカードが1番……いや、先輩ならデュエルするのが1番?」

「道長ちゃん、何考えてるかはわかるけど、流石に誕生日プレゼントにデュエルはどうかと思うわよ。それならカードにしておきなさい」

「そうですか。そうですよね。先輩ならデュエルもアリかと思ってしまって」

「まあ、コナミちゃんなら割と喜んではくれると思うわね」

 

 2人でその光景を思い浮かべ、なんで安上がりな、いや単純な先輩なんだと苦笑した。

 

「まあデュエルは冗談だとしても、俺の出せるものでカードって言うのは1番いいと思うんです」

「あげたいカードとか、喜んでくれそうなカードの目星はついてるの?」

「いえそれがまだ……。先輩ならHEROか天使系列のカードがいいとは思うんですけど、どちらも専門外のカードであまり持ってませんしね」

 

 先輩のエースカードのプラネットカードと相性のいいカードっていう線も難しいなあと言って口をつぐみ考える道長くんに、あたしにいい考えがあると堂本くんは言ったらしい。

 

「…………応募券ですか」

「そっ、確実に手に入るってものではないからあくまで一つの提案としてだけれど、上手くいけばコナミちゃんはすごーく喜んでくれると思うわ」

 

 堂本くんが言うには、今購買部で僕や十代くんが扱うHEROテーマのレアカードが抽選で当たると言う応募券を売っているらしい。

 

 それに応募して、運よく当たると言うことがあれば、誕生日プレゼントとしては上等に過ぎるものとなるはずだと。

 どんな中身なのかはわからないけれど、もし貰えるとなれば僕はすごく嬉しい。大喜び間違いなしだ。

 

「プレゼントをどうするにしても、応募券をもらいに行くなら早い方がいいわよ。枚数には限りがあったはずだし、申込期間ももうあまり…………」

「よし、それに決めました。すぐに貰いに行きます! 先輩、相談に乗ってくれてありがとうございました!」

 

 限りがあると言う堂本くんの懸念を聞いた道長くんはすぐに立ち上がり、駆け足気味に購買部へと向かった。

 

 そして、購買部についた彼がいざトメさんから最後の一枚だったらしい応募券を手に入れかけたその時、道長くんと同様最後の応募券を求めてやってきていた剣山くんとかちあったとのことだ。

 

 

 

 

「なるほどねえ。そういうわけであそこで睨み合っていると言うわけかあ」

 

 剣山くんはわからないけど、喧嘩するくらいなら別に僕のプレゼントなんてなくても、全力でデュエルをしようとかで全然いいんだけど。

 それじゃあ、納得しないだろうしなあ道長くんも。

 

「どうしたものか…………」

「こうして睨み合っていても結論は変わらないドン。俺もお前も応募券を譲る気はないザウルス」

「なら、方法は一つしかないな」

「デュエリストらしく、デュエルで決めるドン!!」

「望むところ!! ここじゃ迷惑だ。表に出ろ剣山!!」

「上等だドン! ぶっ倒してやるザウルス!!」

 

 遠くで見守っていた僕と堂本くんを置いて、ヒートアップした二人がドシドシと足音を響かせながら外へと歩いていく。

 どうやら二人の間でデュエルで決着をつけようと結論が出たようだ。

 

「どうしよっか」

「あたしは見に行くわ。面白そうだもん」

「そっか。まあそうだね。僕も二人のデュエルには興味があるし、見に行こうかな♪」

 

 理由が僕にあるというのにも思うところはあるし、デュエルにも興味がある。見に行かない理由はないだろう。

 

「それはそうと、コナミちゃんはどうして購買に? 愛理ちゃんもいないようだけど?」

「あーそうだった。愛理ちゃんの姿が朝から見えなくてさ。明日香さんに聞いても見かけていないって言ってて、ブルー寮にいなかったんだ。だからちょっと探してるんだよ」

「あら珍しい。二人はいつも一緒なのにねえ」

「別にいつもってわけじゃ、大概だよ」

 

 一緒にいる時なんてせいぜいが週5、6ぐらいだよ。

 授業がお休みの時にたまに明日香さんや春香ちゃんと遊ぶって時は流石に遠慮して僕はいないしね。

 

 ただ基本的には一緒なので、そうではない時はお互い事前に連絡をしているのだが、今日はなぜかその連絡がないままに愛理ちゃんと会えないでいるのだ。

 

「何かあったんじゃってことで心配してるのかしら?」

「いや? 愛理ちゃん、ああ見えて強いし、仮に誰かに襲われたとしても普通に返り討ちにするのが目に見えてるから心配とかは正直そこまで」

「あらそうなの? 意外ね、運動が得意なイメージはないのにね」

「いやー本気になった愛理ちゃんはすごいよ。男の力なんて一蹴できるレベルだから」

 

 堂本くんの驚きの表情に苦笑いを浮かべて答える。

 

 愛理ちゃんは別に運動が得意というわけではないし、堂本くんの愛理ちゃんへのイメージも的外れではないんだけど、愛理ちゃんその気になれば精霊としての力が使えるから並の男の人だと相手にもならないんだよね。

 

 それでも人の身体で精霊の力を行使するのは負担が大きいらしく、あまり力を使うと筋肉痛や肉離れが起こるらしい。そのためよほどの事態でもないと使わないと言っていた。

 

 それに…………。

 

「説明が難しいんだけどさ。愛理ちゃんが本当に助けが必要なくらいのことが起こってたら僕がわからないはずがないってね。何かあったらまあそういうわけで、愛理ちゃんのことを心配してるってわけじゃないんだ」

「あら、惚気るじゃない。愛し合っている二人は離れていても心は通じ合ってるってことね!」

「はは、まあ、そんなところかな」

 

 実際には本当に心がつながってるんだけどね。

 

 だからもし愛理ちゃんが僕の助けを必要とするくらいの目に合っていたとするならば、たぶん僕にはもっと焦燥感とか危機感ってやつが襲っているはずだ。

 

 だからそういうものがなく落ち着いているってことは大丈夫ってことだ。きっとね。

 

「それじゃあ道長くんたちのところへ行こうか」

「そうね。早くいきましょうか。見逃しちゃうわ!」

「うん………あれ?」

「どうしたのコナミちゃん?」

「いや、今堂本くんのそばに………ううん、なんでもない。ただの見間違いだったみたい」

「そう? それじゃあ急ぎましょうか」

「うん」

 

 先を歩く堂本くんを追うように購買部の外へ向かって歩き出す。

 

 一瞬、前を歩く堂本くんのそばに小さな靄が見えた気がしたが、瞬きをした瞬間消えていたので、たぶん見間違いだったのだろう。

 

 先を行く堂本くんに並びながら、僕も外へと続く道を歩き出した──。

 

 

 

 

「ここでデュエルするドン」

「どちらが勝っても恨みっこなしだ。勝った方が応募券を手に入れる。それでいいな」

 

 俺は今、トメさんや他の生徒の邪魔になるという理由から学園エントランス前の大通りで剣山と向かい合っている。

 そこに、1人の女子生徒が近づいてきた。

 

「あんた、剣山と睨み合って何しようとしてんのよ」

「春香か。これからちょっと剣山とデュエルするんだ。欲しいものが被ってな。勝った方が手に入れるってやつだ」

 

 胡乱気に眉を上げて見てくる春香にデッキをシャッフルしながら答える。

 売り言葉に買い言葉による結果だが、あまり機嫌が良くないということもあり春香に対しても素っ気なく答えてしまう。

 

「んー、あんた勝てる自信あるの?」

「わからん。剣山は強い、俺では勝てないかもしれん。が、負けるつもりもない。勝つつもりでやるさ」

 

 俺が剣山に勝てる確率は皆無………ということはないはずだ。

 いくら剣山が1年の中でトップを走っていいるとは言ってもそれは勝率の話。敗北が全くないと言うわけではない。

 

 俺も1年の中では上位の実力者である自負がある。

 可能性は十分にあるはずだ。

 デッキのシャッフルを終えいざデュエルディスクにデッキを差し込もうとすると春香が横合いから迷うような仕草をしているのに気づいた。

 

「どうした?」

「ん………あー、これ、今のアンタじゃ勝てるか不安だっていうなら渡そうかと思ってね」

 

 視線を左右に彷徨わせながら差し出された指先にはカードが挟まれていた。

 

「…………これは、貰っていいのか?」

「アンタの役に立つかはわかんないけどね。アタシには使いようのないカードだし、アンタなら役立てるかと思ったんだけど。いらないっていうならケースに引っ込むだけよ」

「いや、ありがとよ。さっそくデッキに入れて使わせてもらうよ」

 

 春香が差し出してきたカードをデッキに入れる。

 春香が俺のためにと持ってきてくれたカードだ、その心遣いを無下にするわけにはいかない。大事に使わせてもらうとしよう。

 

「まっ、精々頑張んなさい。アタシがわざわざあげたんだから、それを使って敗けたら許さなさいわよ」

「おいおい」

 

 離れていく春香を見ながら腰に下げた仮面に一度触れて、目を細め手に取ろうとした動作を嗜めるようにそれを被ることなく剣山を見据えた。

 

「話は済んだザウルス?」

「ああ、待たせちまったな剣山」

「構わないドン。でも、準備ができたならデュエルを始めるドン!」

「ああ!!」

 

 春香と話していた俺とは違いとっくにデュエルをする用意が済んでいた剣山に若干の申し訳なさを感じながらもその目に闘志を漲らせディスクを構えてデェエルの開始を告げた。

 

 

「「デェエル!!」」

 

 




コーヒーはペットボトルとか缶でしか普段飲まないから豆から作る系統のは飲んだことないんだけど、美味いのかなあとちょっと興味はある。
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