なんだろう。出来がちょっとね、うん。でも先々に進むために投稿する。本当に申し訳ない。
「僕のターン、ドロー!」
陽光煌めく晴れ渡った天気の下、僕と最後の霊使いである光属性のライナさんとのデュエルが始まった。
物腰柔らかな雰囲気を感じさせる彼女だが、どこかこちらに内心を悟らせないような油断ならない印象も受ける。
どういったデュエルをしてくるかわからないが、警戒してかかるべきだろう。
「僕は手札からカード・アドバンスを発動! デッキの上から5枚のカードをめくり、好きな順番で戻す。そしてこのターン、僕は通常召喚に加えてアドバンス召喚を行うことができる!」
デッキから5枚のカードを捲りながら考える。
この後に行う戦術と、それに対応された場合のことを考えた順番に上手く嵌るようにカードを組み替えながらカードをデッキに戻した。
「よいカードは見れましたか?」
「さてね。どうあれ、僕のやることは変わらないさ。僕はさらに神聖なる球体を除外することで天空の宝札を発動! デッキから2枚カードをドローする!!」
天からひらひらと降ってきた純白の2枚の羽根がデッキへと吸収される。
それを機に勢いをつけて僕はデッキからカードを引いた。
そこにあるのは当然ではあるがカード・アドバンスで調整したカードたち。この始めのターン、デュエルの機先を制するために選んだカードだった。
「うん、これで行ける。僕は手札からジェルエンデュオを召喚、このモンスターは天使族の生贄にする場合、2体分の生贄素材となることができる。僕は今召喚したジェルエンデュオをリリースすることで手札からThe splendid VENUSをアドバンス召喚する!!」
《The splendid VENUS》 攻撃力2800 守備力2400
もはや何度見たかわからない。
このデッキの頼れるエース、VENUSが召喚された。
金星の名を背負った黄金の鎧に4枚の天使の羽根を生やした女神はライナさんから僕を守るように杖で牽制していた。
「僕は最後に強欲なカケラを発動し、ターンエンド。強欲なカケラは僕のドローフェイズのたびにカウンターが一つ乗り、二つ乗ったカケラを墓地へ送ることで2枚ドローできます」
「カケラですか、強欲な壺が禁止されましたからね。それじゃあ私のターン、ドロー!」
強欲なカケラを見たライナさんが意外なものを見たと言う感じの声を漏らしながらカードを引いた。本当はそこにどういった感情が込められていたのか、僕には知る由もないが、少なくとも彼女が僕に抱いていたイメージとは乖離したものであったことだけは確かだっただろう。
ライナさんにとって僕はもしかしたらドローの補助を目的としたカードは扱わないみたいなイメージでも持たれていたのだろうか。
そんなことはないんだけど、そうでもなければあのような目はしないだらう。
そんな風にデュエルの外側に意識が向いていたからだろうか。僕の意識をつんざくような迅雷が視界を閃光で覆いつくすほどの衝撃と共に降り注ぎ、それに思わず「うわっ」と転びそうになってしまった。
「──ッ!?」
とっさのことに、上手く反応することができずに目を瞬かせる。
一瞬の雷は僅かな間僕から視界を奪い、それに慣れてきた頃に目を開けた時、僕の場にはVENUSの姿は影も形もなくなり、今はただそこにいたと言う焼け跡のみがVENUSの存在を証明していた。
「何が…………」
「私は手札を1枚捨てることでライトニング・ボルテックスを発動させたわ。ライトニング・ボルテックスは相手のモンスターをすべて破壊することができるの」
「ラ、ライトニング・ボルテックス!!?」
それは極めて強力で、凶悪な効果を持ったカードの除去のみを目的とした魔法カードの名称であった。
「皆さん、こういうカードの除去のみを目的としたカードは使いたがらないですが、私は積極的に使うべきだと思うのです。その方が勝利に近づけますでしょ?」
「コナミくん、言わなかったけど、ライナはそういうカードに頼ることに躊躇いないタイプだから気を付けてねー!」
僕が突然のライトニング・ボルテックスの衝撃に驚いていると愛理ちゃんから間延びした声が届いてきた。
デュエル前に彼女が僕に言おうか悩んだことはこれのことだったのだろう。
ライトニング・ボルテックスを始め、カードの除去のみを目的としたカードは多数存在する。しかし、多くのデュエリストはそれらを積極的に使用しようとはしない。
それは除去カードは強力で簡単に相手の強力なモンスターや戦術を崩すことはできるが、同時にそれを頼りにした結果弱くなることがあるからだ。
僕もまた、除去効果を持ったカードはデッキに入れているがそれは主にメインとなるカードの補助を目的としたり、罠カードによるカウンターを狙ってのことだ。
それ故に、そういったカードを扱うことに躊躇いがないというライナさんはある意味で極めて強力なデュエリストと言えるかもしれない。
「これで道が空きましたね。私は手札からカイザー・シーホースを攻撃表示で召喚。あなたにダイレクトアタック!!」
「ぐぅうううッ!!」
《カイザー・シーホース》 攻撃力1700 守備力1650
《コナミ》 残 LP 2300
ライナさんの場に魚の尾びれのようなものが付いた鎧を纏った青紫の戦士が召喚された。
戦士はその手に持った長槍の切っ先で僕の肩を切り裂き、ダメージを与えた。
「そしてカードを伏せてターンエンドです。ふふ、先制攻撃は私が先ですね」
「くっ、まだまだこれからです。僕のターン、ドロー!」
僕のドローフェイズが来たことで場の強欲な壺にカウンターが一つ乗り、そのカケラが紫色に染まる。あと1ターン耐えればドローできるが、その前にこの状況を乗り越えないとな。
VENUSがいきなり破壊されたことには驚いたけれど、幸いと言うべきかライナさんの場には攻撃力が高いとは言えないカイザー・シーホースだ。
なら、対処はできる。上級モンスターに繋げられる前に破壊する!!
「僕は手札からデュナミス・ヴァルキリアを攻撃表示で召喚! そしてバトルだ! デュナミス・ヴァルキリアでカイザー・シーホースに攻撃!!」
《デュナミス・ヴァルキリア》 攻撃力1800 守備力1500
女性型の天使であるデュナミス・ヴァルキリアが両手から光の球体を生み出しライナさんのカイザー・シーホースに打ち放つ。
僅か100でも攻撃力は勝るデュナミス・ヴァルキリアのその攻撃は僕の計算通りカイザー・シーホースを破壊するかと思われたが、攻撃が鼻先まで迫った瞬間、カイザー・シーホースの姿が消えてライナさんがその光に穿たれた。
「──ッ!!」
「カイザー・シーホースが消えた!?」
《ライナ》 残 LP 2200
何故、と思い見ると、破壊するはずであったカイザー・シーホースの代わりに胸を抑えダメージを受けたライナさんの前に1枚のカードが発動されていた。
「…………亜空間物質転送装置を発動させていたんだね」
「ふふふ。ええ、これでカイザー・シーホースを守ることができたわ」
「ダメージよりもモンスターを優先した…………」
これは、間違いなく次のターンのための布石。
カイザー・シーホースは僕のジェルエンデュオ同様、光属性モンスターに対して2体分のリリース素材となることができる。
だから次の彼女のターン、上級、或いは最上級のモンスターが召喚されるに違いない。もしかしたらそれがライナさんのエースという可能性もあるな。
僕のVENUSは破壊され蘇生させる方法はない。対処はちょっと難しいか。
「なら、僕はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「私のターンですね。ドロー!」
さて、このターンに何を出してくるか。ダメージ覚悟で守ったカイザー・シーホース。そこまでして召喚するモンスター。恐ろしさもあるけれど、とても楽しみでもある。
問題は、僕の伏せているカードで対処できるかどうか………だね。
「まずはこのカードから行きましょうか。私は手札を1枚捨ててブラック・コアを発動! デュナミス・ヴァルキリアを除外いたします!」
「なっ、破壊ではなく除外!?」
空から電が奔る黒く巨大な球体が降りてきた。
それはデュナミス・ヴァルキリアの頭から呑み込み、巨大な重力でも発しているように彼女を球体の中心へと吸い込み消し去ってしまった。
ライトニング・ボルテックスに続いてブラック・コアとは。
愛理ちゃんの言う通りモンスターの除去カードが多量に入っているということだろう。
しかも破壊ではなく除外という、破壊よりもより対策の難しいカードまで…………くっ、破壊ならまだ守れたのに!
「これであなたを守るモンスターはまたいなくなりましたね。それでは私はカイザー・シーホースをリリースすることでフェルグラントドラゴンをアドバンス召喚!!」
《フェルグラントドラゴン》 攻撃力2800 守備力2800
それは例えるなら黄金の竜だった。
外皮とも言える鱗は金色に輝き、太陽の光を反射して眩しいほどに周囲を輝かせている。まるで俺を見ろと言わんばかりの煌びやかさだ。
チカチカと反射する光が眩しく、目に刺さる。
「…………眩しい」
その輝きに思わず手をかざして目を細めてしまう。
その輝きに目が眩み思考が閉ざされそうになる。
こんことを悠長に思っていられるような余裕のある状況ではないとわかっていながら、僕はその竜を見て奇麗だなと思っていた。
「美しいドラゴンでしょう? 私、煌びやかで美しいものが好きなの。美しいものは心を虜にさせる魔力がある」
「………そうだね。奇麗な竜だ」
どこか恍惚とした声色の呟きで反応する。
彼女が言うように、その美しさの虜になっているのかもしれない。だんだんと思考が狭まれていく気分だ。
その竜から………目が逸らせない。
「────」
ライナさんがなにかを話している。
日光に照らされ黄金の輝きが絶えず煌めいているフェルグラントドラゴンが翼を羽ばたかせ僕に迫ってきていた。
そして、その咢が僕の体を嚙み砕かんとどんどんと迫ってきて──。
「──コナミくんッ!!」
「──はァッ!? くっ、僕はリバースカード 禁じられた聖衣を発動! フェルグラントドラゴンの攻撃力を600ポイントダウン!!」
ぼんやりと消え入りそうな意識をつんざくような愛理ちゃんの叫び声が呼び起こした。
その叫びに急き立てられた僕は伏せていたリバースカードを咄嗟に発動させる。
そのカードはタッチの差で間に合ったようで、目前まで迫っていたらしいフェルグラントドラゴンの攻撃力を減退させること成功していた。
「うぁああああ!!?」
《コナミ》 残 LP 100
咄嗟に発動したカードだったが、それが功を成したようで、僅かながらライフを残していた。
今の一瞬、愛理ちゃんから言葉を投げかけられなければきっと発動は間に合わなかっただろう。
ダメージに膝をつきながら未だに光に目をやられている意識を繋ぎとめるように瞬きを繰り返す。
黄金の竜がもたらしたその輝きに焼かれた瞳を闇が覆った。
「あまり見つめちゃだめよ。強すぎる光を見つめると意識を失ったりすることもあるんだから」
「………愛理ちゃん」
どうやら膝をついた僕の目は木陰から観戦していたはずの愛理ちゃんの手の平によって後ろから覆われているらしい。彼女の暖かな手が、僕の瞼の上から重ねられ薄れていた意識を繋ぎとめてくれているようだった。
「しばらくこうしていた方がいいわ。いいでしょライナ」
「構いませんよ。急いでいる訳ではありませんから。でも、外野で観戦していたあなたがデュエル中の人に干渉するのはどうかと思いますけれど」
「様子がおかしかったからついね。少ししたら離れるわ」
閉じた視界の中で、愛理ちゃんとライナさんの会話だけが耳に聞こえてくる。
どこか剣呑とした雰囲気を感じながら、僕はだいぶ思考が回るようになってきたと思い、覆ってくれていた愛理ちゃんの手に僕の手を当てた。
「…………いいの?」
「うん。ありがとう、愛理ちゃん。もう大丈夫」
覆われていた愛理ちゃんの手をそっとどける。
慎重に瞳を開け、暗闇から眩しさを感じさせるフィールドに目をやり問題ないことを確認した。
フェルグラントドラゴンを見つめようとするとまだ眩しさは感じるが、最初ほどではない。見つめ続けようとしなければ大丈夫だろう。
視線をフェルグラントドラゴンからライナさんへ送ると相変わらず何を考えているのかわからない微笑みを浮かべているのがわかる。
最後に愛理ちゃんに向けてまだ心配そうな目をしている彼女に離れるようにと手で促してライナさんに向き合った。
「デュエル、続けられそうですかコナミさん」
「ええ、中断してすみません。もう大丈夫です。目眩も治りました」
「そうですか。しかし残念です。もう少しで勝てたのですが」
「はは、そう簡単に負ける僕じゃないですよ」
額に冷や汗をかきながら強がるように答える。
今のファルグラントドラゴンが召喚された際の異常とも言える眩しさ。それが故意によるものかそうでないのか。
いや、愛理ちゃんの反応的にライナさんが何かした可能性の方が高い気がするけれど、まあそれはいい。
結果的にライフは残ってるし、まだ負けてもないからね。やられた方が悪い。そう受け入れよう。
ただ、なんだろうな。これまで出会ってきた霊使いの子たちも色々な性格だったけど、ライナさんには純粋に怖いなと感じる。
柔らかな身のこなしと美しい白い華のような容姿の裏に触れれば溶ける猛毒が隠されているような、背筋が凍るような印象を今の彼女の瞳の奥からは感じる。
「私のターンはこれで終わりです。ふふふ、負けないで下さいねコナミさん」
僕をこのターンで終わらせるために全ての手札を使い切ったライナさんが静かにターンを終了する。
「すーはー」
落ち着かせるように一つ深呼吸をする。
胸に手を当て強い光を浴びたせいかバクバクとなる心臓の落ち着きを待つこと暫し、ベストと言わないまでも問題ないラインまでコンディションが回復しているのを確認し、僕はデッキの上に手をかけた。
正視が叶わないほどの黄金の反射光を煌めかせる竜。絶体絶命とも言える状況の中、僕は真っ直ぐにカードを引き抜いた──。
正直、ライナ好きな人には悪いと思ってます。こんなキャラにするつもりはなかったんですけど、書いてる内にこうなっちゃいました。本当に申し訳ない。