初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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デュエル描写より、こういうそれ以外の回の方がやっぱり書きやすい。構成もそうだけどむずい、デュエルは。


天を貫く白光

 

 太陽が翳る夜を除き、黄金色に彩られた木漏れ日が差し込む森。その奥深くに作られた魔法使いの里と呼ばれる魔法使いたちが住む森があった。

 その里では多数の魔法使いが住んでおり、霊使い達を人間世界へと送り込んだ大賢者もまた、その里で常に過ごしていた。

 

 大賢者は大木の上に建てられた屋敷の中で背もたれが深い椅子に座り魔導書を開き読んでいる。

 

 すでになすべきことを為し、後は時を待つだけの身となった彼は日々を里に住む未熟な魔術師たちへの教導と幾度も読み暇つぶし以外の意味を持たない魔導書を開くことだけに終始していた。

 

 遠い外からは子供たちの声が窓から届いてくる。

 

 高所にいるこの屋敷にも届くほどの声量とは、余程楽しいのだろう。それはこの里が平和で安心して生きていられる場所であることの証左であると、微かに笑みを浮かべて目を閉じる。

 

 その子供たちの喧騒に耳を傾けようと──。

 

 そう瞳を閉ざした彼の耳に窓を2度、ノックされた音が届いた。

 

「…………」

 

 楽しみを邪魔されたような気になり、その仕立て人は誰かとノックされた窓の方を見ると、そこには杖に跨り宙に浮いた里の魔術師の一人が静かにこちらを見つめていた。

 

 どうやら、なにか知らせがあるらしい。

 大賢者は指をひらりと窓に向けるとひとりでに窓が開き、その魔術師を招き入れた。

 

「どうした………」

「はい。実は──」

 

 窓から静かに降り立った魔術師から話を聞く。

 それは、待ち望んでいた時の始まりが近づいてきたという朗報であった。

 

「そうか。下がってよい」

「はい……」

 

 魔術師を下がらせる。

 待ち焦がれていた朗報故、変化のない日々による空虚に蝕まれつつあった心に熱が灯る。

 

 この里が出来上がる前から求め続けていた願い。

 それの成就がもう目の前まで来ている。

 その事実に大賢者の心は震えていた。

 

 長きに渡り、そのためだけに準備を続けてきた。

 計画通り進めれば、この里も用済み、後に残るものは何もないやもしれぬと、外の子供達に目をやり、そしてそっと心を閉ざした。心が引かれることがないように。

 

 そして大賢者が次に目を開いた時、そこには里の皆が知る温和が形をしたような温かな瞳はなく、ひどく冷徹な心を閉ざした者の目をしていた。

 

「さて、迎えの準備と行かねばな」

 

 誰に告げるでもなく、大賢者は独り言を呟き外へと足を運んだ。

 その果てに見る光景こそが正しい選択であると信じて疑うことはなく、その代償に奪い続けてきたものに目を向けることも、大賢者がすることはなかった。

 

 

 

 

 場所は移り変わり実験施設前。

 ライナさんとのデュエルが終わり、落ち着きを取り戻した僕はライナさんからクリスタルを譲り受けていた。

 

「お見事でしたコナミさん。私の敗けです。どうぞ、これはあなたのものです」

 

 右手を差し出し渡されたライナさんのクリスタル。

 その内部は彼女が光属性の精霊であることを示す純白の光によって色づけられていた。

 

「うん、ありがとうライナさん。これで──」

「コナミさん。私のことはライナとお呼びください。これからは誠心誠意、あなたに力を貸す精霊の一人としてエリアたち同様、お傍にいますので」

「えっ、あーうん。わかった。よろしく………えーと、ライナ」

「はい。よろしくお願いしますね」

 

 これで霊使い全員の力がクリスタルに集まった。そう言おうとした僕の言葉に差し込まれるようにライナから呼び方の抗議が入った。

 

 デュエル中の考えを読ませない能面のような笑顔とは違う。これが本来の彼女なのか本当に優しさを感じさせる笑顔を浮かべながらも、どことなく断ると言う選択を与えさせてくれそうにない圧しの強さを感じさせる雰囲気に僕はたじろぎながらライナさんの………ライナの希望通りにする。

 

 何故か、同時に後ろからも圧のようなものを感じるけれど、きっと気のせいだろう。

 そうに違いない。

 後ろには愛理ちゃんしかいないが、ただの気のせいだろう。

 

「──あ!」

 

 それは誰の口から出たものだったのか。

 ライナから渡された白い光のクリスタルから僕のクリスタルへとその光が移り始めたことから出たものだった。

 

 光は流線形の名残を描きながら僕のクリスタルの内部へと侵入していく。

 これまで集めてきた5つの属性の色を表す水、土、火、風、闇の魔力の光に加わるように新たに白い光の属性の魔力がクリスタルの内部で泳いでいる。

 

 集まった6つの属性の光がクリスタルの中で円を描くように泳ぐ姿はまるでリズミカルにダンスを踊っているよう。

 虹彩色の光を放つ透き通ったクリスタルは何千万とする宝石にも負けない美しい輝きを示していた。

 

 それと共にライナからも実体を失い始めた際の光の泡が漏れ始める。

 これで5回目。幾度も見た光景だ。

 精霊の姿も見れるようになった今、アウスの時のような動揺はない。僕はじっと消えていく姿をみていた。

 

「…………これは?」

 

 ──と、実体が消えるその時を待っていると、その前にと言うようにライナが2枚のカードを差し出してきた。

 それを受け取った僕はそのカードたちを見る。

 

 1枚はこれまでがそうだったのでライナも持っているのかなあと思っていたが、その予測通り9枚目のプラネットカード──天王星が生み出した『The despair Uranus(ザ・ディスペア・ウラヌス)』だった。

 

 そしてもう1枚。

 そこにはプラネットモンスターとは関係のない1体の天使の姿が描かれたカードだった。

 

「そのカードはきっとこれからのあなたに必要となるカードです。カードが、あなたの力になりたいと行きたがったのです」

「僕に必要となるカード…………」

 

 改めてライナから渡されたカードを見る。

 天使族のそのカードはライナの僕の力になりたいと言う言葉に応えるように一瞬だけ光って反応している。

 

「そっか。うん、ありがとうライナ。カードが望んでいるっていうならありがたく使わせてもらうよ」

「ええ、そうしていただけるとありがたいです。どうぞ、私同様、その天使も大切に扱ってくださいね」

 

 ライナが消える。

 

 クリスタルによる恩恵が完全に消えて実体のない精霊に戻ったのだ。が、その姿が見えないと言うことはカードの中に入っているのだろう。

 見ると足元にライナが使用していたデッキと、ライナ自身のカードが落ちている。

 

 それを拾い、ライナから受け取った2枚のカードは天使族のデッキに、ライナはHERO主体のデッキに差し込んだ。

 これからのデュエルできっと僕の力になってくれるだろう。

 

「なにはともあれ……光のクリスタル、これでゲットだぜ!!」

 

 僕の首に下げられているクリスタルを太陽に掲げる。

 光に乱反射する6色の光彩が眩しく輝いていた。

 

「おめでとう、コナミくん。これでアウスに言われてた私たちの力を集めることができたね」

「うん。プラネットモンスターもあと1枚だ。それで…………」

 

 はて、あと一枚のプラネットモンスターってなんの惑星なんだろうか…………?

 

「どうしたの?」

「いや、僕がこれまで手にしてきたのって惑星の頭文字の水金地火木土天海冥でしょ? あと一枚って何かある? って思ってさ」

「あーそう言われればそうね。プラネットモンスターってそれぞれの惑星の名前をとってるんだものね。あと可能性としてあるとしたら…………太陽かしら」

「太陽?」

 

 愛理ちゃんの予想に首を傾げる。

 太陽って惑星扱いでいいんだろうか。いや、太陽系っていうくらいだから惑星みたいなもの?

 

「う~ん、ちょっとわかんないね」

「そうね。でもまあ、その時が来たらわかるわよ。これまで順調に集まってきたんだし」

「まっ、そうだよね。とりあえず、これまで通りしていたら向こうからやってきてくれるか」

 

 カラリと答えて実験施設の方を見る。

 ライナとのデュエルで随分と時間がかかった。時間を見るとそろそろ昼頃、そろそろ戻ってもいい頃合いだ。

 それに小腹も空いてきたし、三沢くんとみんなで昼食というのもいいだろう。

 

 そう考え、量子力学実験の施設に足を向けた時だった。

 僕たちを突然の揺れが襲った──。

 

 

 

 

「──ツヴァインシュタイン博士!! これはいったい!?」

「…………これは…………ほう、素晴らしいッ!!!」

 

 島を巨大な揺れが襲った時、実験施設内では量子力学の実験に使用する予定であった機器の前で三沢大地はツヴァインシュタイン博士の隣で慌てふためいていた。

 

 実験の本番前にリハーサルとして出力を抑えて実験の試しを行っていたところ、機械が突然暴走、その出力が最大となって作動し始めたのだ。

 

「見たまえ三沢くん! ライナくんとの話から私が予測していたこの世界を含めた12の次元。12の世界の実在性をッ!! 計器が今、それを実証しようとしているのだッッッ!!」

 

 計器の前で目を大きく広げ興奮した様子のツヴァインシュタイン博士が計器が表示する画面から目を離すことなくこちらに叫ぶように話しかけてくる。

 

 一瞬の変化も見逃さんとするその目は血走らんばかり。明らかにそれどころではない機械の暴走状態に、俺は喉が裂けそうになる勢いで博士に叫ぶ。

 

「博士ッ! 機械が暴走しています! 今すぐ停止をすべきですッ!!」

「ムムム………しかしこれは…………!!」

「博士ッ!!」

 

 目の前で唸りを上げながらドンドンとその音を上げていく巨大な実験機器。

 その音量はすさまじく、施設内部はおろか、防音性に優れた施設を超えた外にまで響きかねない程だ。

 

 それだけではなく、危険な出力を出している証明の赤いライトを発している機器のうねりは広がり、大地を揺らしている。

 その揺れは時を追うごとに大きく、激しくなっているようだった。

 

 俺は急いで機器の停止をすべきだと進言するも興奮した様子を見せる博士は聞きいれる様子はない。計器から目を逸らそうとしない博士は画面を見つめながら何事かに気づいたようにぶつぶつと呟いている。

 

「くっ、仕方ない。強引に電源を落として……………………止まらないッ!!?」

 

 博士の様子から止めることはできないと判断した俺は施設内の主電源を落とすべく手動で電源のレバーを降ろしたが、それで止まるはずの機器は電源が切れた状態で尚動き続けていた。

 

 電源が切れても動きを止めないと言う異常事態。

 明らかに可笑しな挙動をするその機械は外部から操作されているかのようにその動きを止めない。

 

 俺はその様子に瞠目し、そして過剰な出力に青い光を機器の外にまで発し始めた電流に危険性が増してきたことを感じ、急いで外にいると聞いているコナミたちに避難を促さねばと踵を返して外への扉へと急いだ。

 

「これは………機器の暴走などではない。向こう側からの──!!」

 

 変わらず計器から離れる様子を見せない博士に避難するように叫びながら、俺は外へと向かった。

 去り際に聞こえてきた興奮した博士の言葉が、俺の耳に残響し続けた──。

 

 

 

 

 僕は島全体を巻き込んだ突然の揺れに驚きながらも、足に力を込めて何とか転ばないように耐えていた。

 

「──くっ!」

 

 揺れはすぐに止む。そう思ったのだが、その考えは甘かったようで揺れは次第に大きく、激しいものになっていく。

 これはいけないと施設前の整地されたタイルの上に手を置いてしゃがみこむ。

 

「愛理ちゃん………危ないから手を繋いでしゃがんでいよ──愛理ちゃん?」

 

 しゃがみながらどこか避難できるところはないか、ここは危なくはないかと左右に目を凝らしていると、僕の隣にいた愛理ちゃんが揺れの中でしゃがむことなく立ち尽くしていることに気づいた。

 

 彼女は呆然と目を宙に向けながら声を震わしたように言う。

 

「コナミくん、時が来たわ…………」

「えっ?」

 

 その呟きに思わず疑問の声で返す。

 何に対して愛理ちゃんが目を見開き驚いているのかはわからないけれど、今はとにかく安全のために座ってほしかった。

 そのため、強引にでも座らそうと手を伸ばした瞬間、彼女は勢いよく僕の方へと振り返り意気を上げていった。

 

「迎えが来たのよ! 私たちが世界を渡る時が来たのッ!!」

 

 手を広げ大きな声を上げる愛理ちゃんに唖然と口を広げる。

 

「な、何を言って………いや、そんなことより危ない──」

「──コナミッ!! 愛理くんッ!!」

 

 遠くから叫ぶような三沢くんの声が響いてきた。

 

「三沢くん!!」

「ここは危ないッ! 少しでも遠くに離れるんだ!!」

 

 遠くから駆け寄ってくる三沢くんが地震の揺れに耐えながら焦燥感を浮かべた顔で叫んでいる。

 

 その瞬間だった。

 実験施設の中心から天を穿つような光が生まれたのは──。

 

「なァっ!?」

 

 突如として現れた光に驚愕の声が漏れた。

 天を貫き星にまで届きそうなその光は施設を中心としてどんどん大きくなっていく。

 それはこちらに向かって走ってきていた三沢くんを呑み込み白い光の中に姿を隠していく。そして次第に僕たちの方までその広がりを増してきていた。

 

「三沢くんッ!? くっ、愛理ちゃんここから遠くへッ!!」

「大丈夫、心配しないでいいわ。あれは──」

「愛理ちゃん!!!」

 

 白い光が迫る中、愛理ちゃんは僕に優しく手を差し出しながら真っ直ぐとその光を見つめたままに微笑み光の到来を待っていた。

 激しくなっていく揺れと近づいてくる光の中で僕は何とか愛理ちゃんに手を伸ばすが、その手が彼女の手に届くことはなかった。

 僕の手が彼女から差し出された手に届くかと思えた瞬間、施設から天へと向かって生まれた白光に包まれたのだ。

 

「うぁああああ!!?」

 

 光の中に消えていく彼女と白く染まっていく僕の視界の中で、奇妙な浮遊感だけが僕が知覚できる全てだった。

 そしてその日、僕たちは世界から姿を消した──。

 

 




第3期ー序章の終わり。次話から異世界編が始まります。
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