初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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この言葉一つで意味が伝わるんだろうかみたいな時がたまにある。


邂逅

 

 ギシリとマシンナーズ・ギアフレームの関節部が軋む音を立てて、その体を前に倒した。地面に頭をつけたマシンナーズはそれ以上動く気配を見せない。

 

「まさか………死んだの?」

 

 ふと、不安に思い問いかける。倒れ伏したマシンナーズの動きのなさから生きている気配を感じず、起き上がる気配も見せないことからまさかと思いながらも問わずにはいられなかった。

 

 人間相手ではデェエルに敗けて意識を失うなんて早々起きることはない。

 よほど精神的なショックを受けたり、激しいデュエルを経なければ倒れるなんてことは起きないからだ。

 

「いや、機能を停止しただけなようだ。死んではいないよ」

 

 僕のつぶやきに前に出たアウスがマシンナーズ・ギアフレームに触れて状態を確かめる。

 僕には生きているのか死んでいるのか、その違いはわからないことだけどアウスが見た感じ、死んだわけではないようだった。

 

 それを聞いてほっとしながら僕も近づく。

 

 アウスの隣に立ち僕も間近に見てみるが、傍目には生きているのか死んでいるのかやはりわからない。

 

 彼女曰く、精霊は死んでいたならばその体をマナに変えて跡を残さないとのことだから、機械とは言えマシンナーズも精霊の一体。ここに横たわっているのなら生きている証拠だとのことだ。

 

「それよりも、だ。さっさと先に行った方がよくないか。この森にいるのがこいつ一体だけならいいが、どうせそうじゃねえだろ。デュエルで騒がせちまってるし、近くにお仲間がいたら向かってくるかもしれねえぜ」

「うん、ヒータの言う通りだね。行こうか、コナミ」

 

 ヒータとアウスに促され、僕も先を急いだほうがいいかと足を森の奥へと向けようとしたときだった。

 森の奥からガシャガシャと金属が駆動し擦れる音をがなり立てながら幾体ものマシンナーズたちが現れたのだった。

 

「………あー、ちぃと遅かった見てえだな」

「そのようだね。さて、この状況、どうしたものか」

 

 ヒータとアウスが諦観したように困り顔でその物々しい列を順繰りに眺める。見える範囲だけでもざっと10体以上、種々様々なマシンナーズたちが立ち並び僕たちにその視線を向けている。

 

 その数は多く、とても全員を相手することはできそうにない数だ。

 かと言って逃げようにも、後ろにもすでに何体かのマシンナーズが僕たちが逃げないように囲みこもうとその足を動かしている。

 

「逃げられそうにもないね」

「やはりデュエルは受けるべきではなかったようだね。ここはおとなしく捕まるとしよう。里に着けば、ボクたちを知る皆が解放してくれるはずさ」

「チっ、しゃーねえか」

 

 僕たちは抵抗しないと言う意思を示す様に両手を上げる。因みにデュエル前は僕の背におぶさって楽をしていたウィンだが、誰よりも早くマシンナーズたちの到来を察知したのか、いつの間にやらその姿を消していた。

 

 恐らく、僕のデッキの中に逃げ込んだんだろう。逃げ足が速いと言うか、判断が早い。

 

「侵入者3メイ、抵抗の意思なしと判断。負傷者1名を救助し、里へと連行スル」

 

 乱立する木々の間から1体のマシンナーズが前に歩み出て並んでいるマシンナーズへ向けて言った。

 

 赤いスーツを模しているかのような塗装をされた体に他のマシンナーズのような銃や巨大なナイフと言った武器を持ち合わせず彼らに指示を出しているところからマシンナーズの中での上官に位置する存在なのだろう。

 

 確か名前は………そう、督戦官コヴィントンだったかな。

 マシンナーズの中でのまとめ役のような存在だったと思う。

 

「負傷者1名っていうのは」

「たぶん今君が倒したマシンナーズ・ギアフレームのことだと思う。ほら、他のマシンナーズが彼を運ぼうとしている」

 

 見ると、コヴィントンの指示に従うように2体のマシンナーズが前に進み出てギアフレームの体を持ち上げている。

 きっと、里というところに運んで治療……いや、機械だから修理するつもりなんだろう。

 

 僕たちは周りをマシンナーズに囲まれたままに彼らについていくように森の中へと歩き出した。

 想定していた形とは違うとはいえ、結果的にはアウスたちが生きていたらしい里へと入れるから、結果オーライと言うべきなんだろうか。

 

 危険な状況だと理解はしていてもいざとなればプラネットモンスターやアウスたちがいるから大丈夫だろうと暢気に構えている僕に比べて、アウスとヒータの表情は硬い。

 周囲を囲むマシンナーズへの警戒と、そしてもし彼女たちの里が彼女たちの知るその姿ではなかった場合に備えて何とか逃げ出す算段でも考えているかのようだ。

 

 ──と、僕が里に入って愛理ちゃんと三沢くんが見つかる可能性があるならなんでもいいやと、のほほんと森の中を眺めながら森深くへと歩いて行っていると、周囲を取り囲む木々の姿に変化があった。

 

「うわぁ──」

 

 その周囲の景色の変化に僕は心を奪われたように立ち止まり感嘆の声を上げた。

 

 里を目指し森深くへと歩くこと暫し、気が付けばそこは緑生い茂る森の姿ではなく、どう言う原理なのか日の光を浴びた木々が黄金色に輝き周囲を照らしている風景になっていた。

 

 道は遥か先まで金色に輝き世界を輝かしく彩っている。

 ただの落ち葉が幾千幾万もの価値のある純金のようにさえ見える。

 

 しかしだからといってその金色は目に痛いと言うこともなく、優しく映りこむ。一つ間違えば成金趣味の道楽にも感じえない光景だったが、ここは精霊界。

 自然に生まれたものなのかはわからないけれど、一つだけ感想を言うならば奇跡のような光景だった。

 

「昔は見慣れていたからか何とも感じなかったけれど、久々にこの光景を目にすると感動すら覚えるよ」

「ああ、なんつーか帰ってきたなって感じるぜ」

「うん! ただいまって言いたくなるよね!!」

 

 黄金の森に愛理ちゃんたちのことも忘れ感激している僕に続くようにアウスが、ヒータが、そしてカードから出てきたウィンが続くようにその黄金の森を見つめていた。

 

「ていうかウィン、今出てきちゃ──」

「なんだお前! そいつらの仲間カ!!」

「えあっ、そうだった!!」

 

 しまった。という顔をして口に手を当てるウィンに周囲のマシンナーズがそれぞれの武器を向けて威嚇し始めた。

 それに対して慌てて急いで敵じゃないことを示す僕たち。

 

 里への道中はどうにも締まらない僕たちだった──。

 

 

 

 

 道中、それとなく聞いてみてこの森の秘密を知った。

 里への通り道が何故これほどに幻想的な黄金の道になっているかだが、なんでも里を守る結界と濃度の高いマナによる作用によるものらしい。

 

 外部からの侵入者の力を削ぐ結界と、結界内部を満たすマナが森に差し込む日光の反射に影響を及ぼし、木々の色を変化させているとのことだった。

 

「へー、それじゃあもう結界の中に入ってるってことなんだ」

「うん。ボクたちは元々ここの住人だから影響はないけれど、君のプラネットモンスターや他の精霊が出てきていたら結界が反応してその力を抑圧するはずだよ」

「へー」

 

 緊張感のないままに雑談を交わしながら里へと進む。

 周囲を囲むマシンナーズに警戒でもされないかと思っていたのだが、その心配は徒労に終わった。

 

 どうにもプログラムされた行動しかしないのか、それともすでに結界内へ入ったことで警戒心が薄れているのか雑談を挟むくらいの行動は許されているようだった。

 

 金色の落ち葉を踏みしめながら道を進み続ける。

 

 黄金の道に入った当初は感動で立ち止まって注意されることも度々起こっていたが、流石にある程度歩いていると慣れても来る。

 風景があまり変わらないことも原因だろう。どこまで行っても変化のない木々が乱立していては空きが出てきてしまっても仕方がないと言うものだろう。

 

 とはいえ、その道も永遠に続くと言うわけでもなかったようで、しばらく歩いた先、2本の屹立する特に大きな木を抜けた先に、僕たちはその里に辿り着いた。

 

「ここが……」

「おう、懐かしいあたしたちの里だ」

 

 そこは森林に囲まれながらも、長閑な暮らしを営んでいるのだろうと感じ取れる里の姿であった。

 精霊たちの住居であろう木製の家々や里の中を走り回っている魔法使い風のローブを着た子供達が見える。

 

 その向こう側では彼女たちの魔法だろうか、女性が衣服を宙に浮かせながら物干し竿らしきものに順番に干していたり、重量物を軽々と運んでいたりする魔法使いもいた。

 

「お前たちはここで見張っていロ。ワタシが里のものに不審なものを捕らえたと伝えてくル」

 

 コヴィントンが1人、他のマシンナーズたちを置いて里内の奥の方へと歩いて行く。

 里の偉い人にでも報告に行くのだろう。

 

「ねえ、ただ待ってるのもなんだから聞きたいんだけどさ。あのでっかい木ってなに?」

 

 僕は里の最奥の方に聳え立っている一本の大樹を指さす。

 そこには黄金に照らされた道である結界内に入ってからその存在感を如何なく発揮していた巨大な木が見えている。

 

 樹齢何千年、或いは何万年か。もはや考えるのもばかばかしくなるほどの年月を生きてきたのであろう大樹。

 その大樹は天を突きさし雲の上にまでその枝を伸ばしているのではないだろうかと思える大きさだ。

 

 枝の一本一本はそこらに生えている木々にすら匹敵しかねない程の太さで、幾重にも重なりその強度を増しているであろう枝はちょっとした屋敷ぐらいなら作られても耐えられるのではないだろうか。

 

「ああ、あれは神木だよ。ボクが生まれるずっとずっと前から存在している。あの神木を中心にこの里の人たちは集まって生まれたんだ」

「私たちは世界樹ーとか呼んでたりもしてるよ!」

 

 僕はアウスたちの説明を聞きながら「でっかいなあ」と首をこれでもかと上に上げながらその頂上を見上げようとした。

 しかしやはりその頂上を見ることは叶いそうにない。薄い霧のような雲に阻まれ頂点は隠されていた。

 

 果たしてあれのてっぺんまで昇ろうと思ったならいったいどれだけ頑張らないといけないのか。

 

「みんなは昇ったことあるの?」

 

 ふと気になって聞いた。

 

 人が木登りの要領で登ろうと思ったらそれこそ死を覚悟しておぼらなければならないだろうが、精霊であり、なおかつ空を飛べるかもしれない彼女たちならばあの天の上に突き立つ大樹の先に登ったことがあるかもしれないと思ったからだ。

 もし上ったことがあるのなら、そこから見える風景とはいったいどれほど美しいものなのだろうかとも気になった。

 

「ないよー。登ってみたいんだけどねー」

「そうなの?」

「ああ、あそこは神聖な場所とされててな。特別許された奴じゃねえと登れねえんだ」

「へーちょっと意外。アウスはともかくウィンやヒータならそんな規律無視して登るかと」

「ははは。そんなわけねえだろ」

「そうだよー」

「「ハハハハハハ!!」」

 

 二人して奇妙なほどに明るい雰囲気で笑っている。この反応は…………。

 

「登ったことあるんだね」

「二人とも勝手してよく怒られていたよ。奔放なのもほどほどにしなさいってね」

「うるせえ。規則なんぞに縛られてたまるかよ」

「そうだよ。そこに木があるんだから登らないと」

「まるで反省してる様子がない。らしいと言えばらしいけど…………」

 

 怒った風な顔を見せる2人に僕はありありと2人が楽しそうに神木に登る光景が思い浮かぶと苦笑する。

 とある登山家のそこに山があるからという言葉を思い出すようだ。まあ気持ちはわかる。僕だって登れるならば登りたい。そしてそこからの景色を一望したいものだ。

 

 道中の金色の森を一望できたなら、いったいどれほど美しい光景を目にできるのか。きっと一生ものの思い出になること違いない。

 可能なら、世界の危機とやらを救った暁に、皆と登れないか聞いてみようか。

 

 そんなことを考えながらみんなとコヴィントンが呼んでくるであろう人物を待っていると、奥の方から幾人かが影を引いてコヴィントンと共にこちらに歩いてきているのが見えた。

 その中には見覚えのある人物もいて──。

 

「──コナミくん!!」

「あっ………愛理ちゃん!! それに三沢くんもッ!!」

「ああコナミ。お前も無事でよかった」

 

 コヴィントンが連れてきた一群の中から二人が駆け寄ってくる。

 それはオベリスクブルーの制服を纏った愛理ちゃんと、そしてラーイエローの制服をきた三沢くんの姿だった。

 

 僕たちはお互いの無事を祝いながら肩を叩き合う。

 あの突然の光の中、離れ離れになってしまったけれど、精霊界に飛ばされて早々に会えてよかった。もしここにいなければ何としてでも捜索に行かなければならなかったのだから。

 この里にいて会えたのは幸運としか言いようがないだろう。

 

「俺と愛理くんはこの世界に飛ばされてすぐに彼らに保護されていたんだ」

「私たちは里の中心に飛ばされていたの。だからすぐに会えたし、ケガをすることもなかったわ」

「そうなんだ。僕はちょっとここから離れたところでさ。アウスとヒータの提案でこの里を目指してやってきたんだよ。まあ、その過程で色々あって捕まったんだけどね」

 

 愛理ちゃんや三沢くんがいても変わらず周囲を取り囲むマシンナーズを見ながら照れくさそうに頭を掻く。

 二人が無事だったのはよかったけれど、それなら僕も里の中に飛ばされたかったなあ。

 

「そうだ。ねえ三沢くん、この里にツヴァインシュタイン博士はいないの? あの光で僕たちがこの世界に来たなら博士も巻き込まれたんじゃ」

「いや、こちらの方々から説明を受けて知ったんだが、どうやらこの異世界に来たのは俺たち3人だけらしい。だから博士は変わらず元の世界で無事なはずだ」

「そうなんだ。それはよかった。それで…………」

 

 三沢くんの説明を聞きながら一緒に来ていた人たちを見る。

 コヴィントンが連れてきたのは白いコートを着た眼鏡の男性とすっごい大きな身長のご老人。

 

「こちらのメガネをかけた方はアレイスターさん。それからこちらのご老人は──」

「コナミくん、紹介するわ! この方が私たちの里の長老で勇者であるあなたを探すよう私に命じられた大賢者様よ!」

 

 興奮した様子で僕の背を押してその2人の前にだす愛理ちゃん。

 僕はその勢いに押されながら2人を見つめた。

 

「やあやあ君が勇者くんだね。私はアレイスター。この里の者ではないけれど、今は大賢者様の補佐のようなことしていてね。君がきたと聞いていても立ってもいられず会いにきたんだ」

「は、はい。初めましてコナミです。勇者と呼ばれるようなことができるかはわかりませんが、よろしくお願いします」

 

 アレイスターさんと紹介されたその人から差し出された握手に応じながら挨拶を交わす。

 どこか飄々とした掴みどころのない雰囲気を漂わせた知的な青年という感じの人で、どこかの研究室で実験でもしていそうな印象を受ける。

 

 うん、三沢くんをちょっと自由人にしたような感じの人だなと僕は第一印象で感じていた。

 

「次は私だな。私は里のものからは大賢者と呼ばれて親しまれている。気軽に大賢者と呼んでくれたまえ」

「はい。あなたが大賢者さんなのですね。あなたのことは愛理ちゃんから聞いておりました。色々とお聞きしたいこともありますし、これからよろしくお願いします」

 

 紫色のローブを着た大賢者と呼ばれる大きな老人に頭を下げる。

 

 この人が大賢者……。

 愛理ちゃんが誰よりも信用している人で、僕を勇者と呼んで彼女に探させた人。

 

 そしてなによりヒータが、VENUSたちが警戒している人物。

 僕はそのその穏やかな雰囲気を漂わせるとても優しそうな老人に不信感を内心に置きながら頭を下げた。

 

 敵か味方か。

 慎重に見極めないといけない。

 

 僕はついに会うことにできた大賢者を前に、決して気を緩めることのないように疑念の心を念頭に置くことを決めたのだった──。

 

 

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