初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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トランス・ワールド面白かったなあ。動きがある映画じゃないし、細かい疑問はあるけど、そんなことどうでもいい面白さがあった。


魔法都市エンディミオン

 

「とうちゃーく!!」

 

 音速ダックに乗り愛理ちゃんたちの故郷である里を出てから早3日。慣れない野宿や道中のちょっとしたトラブルがありながらも無事僕たちは目的地である魔法都市に到着していた。

 

「私は音速ダックたちを小屋に預けてくるよ。取り次いだりするのにも時間がかかるからその間、君たちはこの都市を観光してるといい。時間ができたらエリアに連絡するよ」

「はい。ありがとうございます」

 

 僕たちが乗っていた音速ダックに一時の別れを告げて離れていくアレイスターさんの背に軽く頭を下げてから改めてその都市を見上げる。

 

 都市の中心に建てられた巨大な塔を囲むように四方には一回り小さくした塔が都市の端にそれぞれ建てられている。

 

 道全体に敷き詰められた石畳の道は森の中に作られた里とは真逆を行く作りのよう。左右には魔法で作られたであろう様々な石造の建造物が建ち並び、整然とされた道にはゴミ一つ見当たらず清潔さと景観さが保たれてる。

 

 この都市に住む人々の努力の賜物か、それとも魔法によるものか。どちらにしても、都市の美しさと過ごしやすさの証明となっていた。

 

「魔法都市エンディミオン、神聖魔導王 エンディミオン様が治められている魔法都市よ。沢山の魔法使いがこの都市で魔術の発展と研鑽に勤しんでるの」

「へー魔導王かあ。かっこいい名前だね」

「そのエンディミオンという人物に協力を取り付けるのが俺たちの仕事ということだな」

 

 王様の名前がそのまま都市の名前になっている。

 その説明を聞きながら僕の人生でカードの精霊とはいえ都市を治める王様に会うことになるなんて、正直今でも現実味があまりなく、VENUSが見せている夢の中なんじゃないかと思ってしまう。

 

 王様に会う。あって国と国を結ぶ。それを考えると、うーん、本当に僕って勇者って呼ばれる立ち位置の存在としてこの世界に来たんだなあとなんだか感慨深くなり唸ってしまう。

 まだ子供であった頃に愛理ちゃんに世界を救う勇者として戦ってほしいと言われた時も、正直その場の勢い任せで心から信じていたとは言い難い。

 

 それがこの明らかに僕が生きてきた世界とは違う異世界にきて、空飛ぶ魔法使いやら音速ダックやらを目にすると、僕って本当に勇者として呼ばれたんだなあという実感が伴ってくるというもの。

 

 宙を見上げた先に映る青い空は同じなのになあと呟く僕の胸に勇者としての責任というものに重みが増したように感じた。

 

「おーい! 置いてくぞー!」

「コナミくーん! 早くいきましょー!!」

「あ、待って待って。僕も行くから!!」

 

 三沢くんたちから呼び声が届いてくる。

 2人は都市へと歩き始めており、魔法都市の入り口前で立ち尽くし勇者としての重みというものに思いを馳せていた僕を見ながら待っている様子だった。

 

 それに慌てて2人に追いつこうと走り出した僕の身体を都市の涼やかな風が吹き抜けていった。

 

 

 

 

 魔法都市の見れるところは多かった。

 文化も常識も積み上げてきた歴史さえ違う一つの国。遠い異国にやってきたように、僕たちはそこにあるすべてに驚き、目を輝かせてそこにあるものを楽しんだ。

 

 特別観光地というわけではないために遊べると言った意味での施設やお土産を売っているような場所こそなかったが、カードの絵柄にでてくる多種多様な魔法使いやその使い魔。それ以外にも戦士族や機械族など、都市を練り歩いている精霊を見るだけで楽しいと言えた。

 

 都市で楽しめた中でも、特に食事が一番楽しめたと言えるかもしれない。精霊が食べるものというのは僕たち人間が食べる者とは根本的に違うようで、肉や野菜と言ったものを食べると言うよりは、そこに含まれている魔力を食べると言うことらしい。

 そのため、潤沢な魔力が含まれている物ほど値段は高く価値があるとのことでそこに味というものは二の次だと言うのには驚かされた。

 

 そのためか、味は薄味なものが多く野菜が好きで自然な味を好む三沢くんでさえあまりおいしいとは言えないみたいだった。

 ただ愛理ちゃんは懐かしそうにその屋台で買ったサラダと魚を閉じたサンドのようなものを頬張り、その味を楽しんでいる。

 

 僕もまた、似たようなものを食べている。そのサンドは確かに味は薄くとても味のみを評価するなら美味しいと手放しで言えるものではなかったが、これがマナというものなのかと、食べると妙に体に張りが出るような感じがして、これはこれでいいなと思えた。

 

「あっ、マシンナーズだ」

 

 僕が他の屋台で買った焼き串を食べながら魔法都市の観光をしているとき、大人の魔法使いが幾人もの小さな見習いのような子供に炎や水を浮かせて魔法を教えている光景が目に映った。

 その近くには僕がアウスたちの森に入る時に邪魔をしてきたマシンナーズが立っており、まるで子供たちを見守るように、或いは何かあった時にすぐに助けに入れるように彼らを見ていた。

 

「そう言えば聞いてなかったけど、森を守ってたあのマシンナーズって結局何だったの?」

「それは私の口から説明しようかな」

 

 都市の賑やかな喧騒を縫うように背後から聞こえてきた声に振り向く。

 そこには都市の入り口前で別れたアレイスターさんが片手に抱えた大きな紙袋と共に立っていた。

 

「んぐ、あれはね、私が都市の防衛を目的として召喚した機械族の兵士たちなんだよ」

 

 アレイスターさんは紙袋一杯に入った焼きポテトを嚙みながら話す。

 

「防衛ですか?」

「そっ、外敵から守るためのね。少し前………といっても何年も前になるんだけど、召喚したんだ。それを、大賢者様にも頼まれて森にも配備していたのさ」

 

 外敵………あの森にもこの都市にも、なんならその道中にも特別危険な存在というのには出くわさなかったけれど、何か危ない存在がいると言うことだろうか。

 アレイスターさんの説明にはその存在を確信しているかのような響きが含まれていた。

 

「なにか危険な存在がいると言うことですか?」

「それをわざわざ説明する必要ないと思うけどね。君がここにいる。それ自体が彼らをこの都市にも森にも配備している明確な理由として説明できると思うけど?」

「あー、なるほどー。僕かあ」

 

 勇者として呼ばれた僕。それそのものが近く危険な存在が現れると言うことの証明となるか。

 

「今、あなたは召喚といったが、それは彼らマシンナーズはこことは違う場所から呼ばれたと言うことですか? もしかしてそれは別の次元という意味なのでは…………?」

「ほう? 三沢くん、君はそれをよく知っているね。人間でありながら異なる次元世界のことを知っているとは驚きだよ」

「俺はツヴァインシュタイン博士という方の助手をしておりました。その中で博士は自分たちが生きている世界とは別の世界。12の世界が存在するのではと推察しておりました」

「素晴らしい。その博士は大した人物のようだね。ご推察の通り、世界は12の次元に別れている。私は召喚士でね、そういう他の世界や場所に干渉するのが得意で彼らマシンナーズを異なる次元から呼び出したのさ」

「やはり…………だとするなら博士の理論は…………」

 

 なんだか難しい顔をして話す三沢くん。頭の中で僕には理解できない数式でも構築しているのか、険しい顔をしながらぶつぶつと数字を唱える三沢くんを、アレイスターさんは面白そうに見ている。

 

「世界って12個もあるの?」

「さあ、私も初めて聞いたわ。でも、アレイスターさんはそう言ってるし、三沢くんも知ってた感じみたいだし、そうなのかも」

 

 その中で、愛理ちゃんと顔を見合わせながらアレイスターさんを見る。三沢くんは変わらずぶつぶつと念仏でも唱えるように自分の世界にこもっていて、僕たちの疑問に答えてくれそうにない。アレイスターさんはそんな僕たちににこやかに答えてくれた。

 

「その通り、ここを含めて異なる次元、異なる宇宙は12個存在する。私たちはそれを12次元宇宙と呼称している。12の世界は基本交わることはないが、時として私のような存在が干渉することがある。君をこの世界に呼んだのも私の力によるものなんだよ」

「そうだったんですか! 僕はてっきり大賢者さんによるものだと思ってました」

「召喚という分野の魔術なら私の方が得意だからね。君の持つクリスタルを目星にこの世界へと呼び寄せたのさ。そのおかげで傷一つなく世界を渡ってこれただろう?」

「ええ、まあ。里とは随分と離れたところに呼ばれましたけど…………」

「その上ちょっとの間だけど私たち全員離れ離れになっちゃったもんね。私はともかくコナミくんと三沢くんに何かあったら事だったわ」

 

 召喚っと言う魔術には一家言あるのか眼鏡をくいっと指の腹で上げながら自信満々に語るアレイスターさんに目を細めて毒づく。

 本当に得意だっていうならあんな森のはずれになんて呼ばないでほしかった。それにせめて呼ぶ前に呼ぶよーって説明も欲しかったし。

 

「ハハハ! まあそういうこともあるさっ。そっ、それよりもだ。そろそろ王様に会いに行こう。先方を待たせちゃいけない!」

「あっ、話を逸らした」

「失敗した自覚はあったのね」

「さあさあ、急いで! 王様を待たせるなんて不敬なんてものではないよッ!!」

 

 さあさあと急かして前を歩き始めたアレイスターさんに釈然としない不満を籠めた視線を送りながら、目を合わせた僕たちは先先へと進んでいくアレイスターさんの後を追うように、彼が先導する道を進んでいくのだった。

 

 

 

 

 アレイスターさんの案内に従って都市内部を進んだ先、僕たちはこの都市の中でも一番目立っていた中央に突き立っていた塔の中にいた。

 

 巨大な塔の最上階が王様との謁見の場となっているらしく、その講堂のように広がった空間は円陣模様を凝らしたガラス窓から差し込む光と部屋の奥、王様が座る場所なのであろう椅子の後ろに作られているステンドグラスから差し込む虹のような光によって明るく照らされていた。

 

 椅子の前に佇んでいるのは件の王様。都市の名称と同じ名前を持つ神聖魔導王 エンディミオンさんだった。

 アメジストのような濃い紫をしたマントを羽織り、漆黒の外装に身を包んだ魔法使いの王様。僕たちを見下ろす視線は冷たく、僕たちを見定めようとする意志と共に歓迎されていないと全身から感じさせる。

 

 僕は王様が発する重たい空気を感じながら息を呑み、その重厚な意志が込められた視線に気圧されそうになっていた。

 

「エンディミオン王。本日は我々との会談の機会を与えていただき感謝いたします。本日の用向きですが──」

「要らぬ。お前たちが来た用件はわかっている」

 

 王様相手だからだろう、恭しく頭を下げるアレイスターさんを遮ってエンディミオンさんが低い声色で言葉を発した。

 

「そこの人間を見ればわかる。お前たちが来たのは再三私に要請してきていた協力を求めてのことだろう。そこの人間どもは大賢者による指金、察するに勇者とやらなのではないか?」

「………ご明察の通りでございます。でしたらお話は早い。大賢者様によれば、予言の時は近く、敵は強大とのこと。ともに力を合わせ、その脅威に立ち向かおうとのことです」

「…………」

 

 ジロリと、アレイスターさんへと向けていた王様の視線が僕に向く。

 言わずとも誰が勇者として呼ばれたのかをわかっているのか、その視線は僕から離れることはなく、まるで重力でも発しているかのように僕の体に重みが奔っていた。愛理ちゃんたちもその場の空気が悪い方向に走っているのがわかるのか、口を噤んで黙っている。

 

「エンディミオン王、ことは急を要します。急ぎ対抗する準備を整え──」

「………要らぬ」

 

 重たい沈黙に耐えかねたアレイスターさんがさらに言葉を紡ごうとしたが、それをエンディミオン王が冷たく切った。

 

「それはつまり、協力要請は断る……と、言うことで?」

「何度も言わせるな。この都市の防衛に勇者や大賢者の力は必要ない。お前たちは里に帰るがいい」

「しかしですねエンディミオン王、敵は強大であり、何より世界を危機に追いやろうとしております。王のお力を軽視しているわけではありませんが、万が一という事態も」

「私が倒れる時、それはこの都市の終わりを意味すると言うことだ。お前が語る万が一の事態が起こるならば、それは是非もなし。この都市もそれまでということだ」

 

 にべもなく言い切る王様。その様は取り付く島もないと言う感じで、とても協力を得られそうにはなかった。

 

 しかし自分が倒れる時は都市が滅ぶときとまで言い切るなんて、無責任なようにも感じるけれど、都市に自分の名前が付けられているように、本当に自分こそが都市そのものなのだという王様としての矜持のようなものを感じる。

 

「うーむ、思った以上に勇者くんの効果が効いてないなあ。どうしたものか」

「あの、王様。自分たちの手で危機を脱したいと言う気持ちはわかるのですが、そこを曲げて協力はできませんか?」

 

 王様の様子に考え込み始めたアレイスターさんに、僕も何かできないかと思い話しかけた。ちょっと王様の眼光が強く強気に出ることはとてもできそうにないため、下手に出たような声色だったが、なんとか口に出すことには成功していた。

 

「人の子よ。そなたらも自分たちの世界に帰るがいい。アレイスターがいればそれも不可能ではない。本来無関係であるお前たちが我らの世界の事情に関わる必要などないのだ」

「いや、そういうわけには──」

「そうだ! エンディミオン王、ここはひとつ、勇者とデュエルをいたしませんか?」

 

 無関係ではないと、大切な人である愛理ちゃんを守るために王様の言葉を否定しようとしたが、突然顔を上げて挑戦的な笑みを浮かべたアレイスターさんに押されて口を閉ざしてしまった。

 

「そこの少年とデュエルを?」

「ええ。王がこの都市そのものであり都市の意思であると言うのなら、あなたをも超える力を勇者が持っていたならば、その意思を変えることにも異論はないかと思われますが………?」

「…………」

「付け加えて言うならば、失礼ながら勇者に敗けるような脆弱な王ではとても都市を守ることなどできようはずがない。そうは思われませんか?」

 

 あまりにも不敬が過ぎるのでは、そう思わずにはいられないアレイスターさんの挑発にそこにいる誰もが唖然としていた。

 問われた王だけは、彼の言葉に一考の余地があるとでも思ったのか黙っていたが、その沈黙が痛く、僕たちとしては気が気でなかった。

 

 次の一瞬には激怒した王様に幽閉でもされないかと思うと、背筋が凍り付くような気分でさえあった。そして、しんと静まり返った講堂内で誰かが唾を呑み込む音が聞こえた時、黙り込んでいた王様が口を開いた。

 

「勇者として呼ばれた少年よ。私とデュエルをする覚悟はあるか?」

「!!」

 

 静かに問われた言葉、それは僕が「はい」と一言答えればデュエルをできる。それに勝てばアレイスターさんの言う通り協力を得られるかもしれないと言う彼の提案を呑むと言うことだった。

 僕は影でぐっと拳を握っているアレイスターさんを見て、彼にこそっと聞いた。

 

「アレイスターさん、愛理ちゃんに昔聞いたんですけどこの世界でのデュエルって敗けたら死ぬって本当ですか?」

 

 それは小学生の頃愛理ちゃんの口から聞いた言葉。精霊の世界で敗けた側は命を失うと言うことの確認のためであり、もしそれが事実なら勝っても負けてもまずいのではという心配があっての質問。

 一瞬、アレイスターさんは虚を突かれたような顔をして、次の瞬間には可笑しそうに微笑みながら否定した。

 

「大丈夫だよ勇者くん。このデュエルはそこまで物騒なものじゃないから。君も王様も相手を殺そうとしているわけではないからね。敵意や殺意が欠片もなければ死ぬことはないさ」

「そう………なんですか」

「そっ、あくまで力試しさ。だから安心して受けていいよ。せいぜいがすごく疲れる程度さ」

「まあ、それでしたら…………」

 

 断る理由はないと、僕は前に出る。

 敗ければ協力を受けれないと考えれば責任重大なデュエル。だけどやることはいつもと変わらない。勝利を目指して頑張るだけだ。

 

 責任からくる重圧を大きく息を吐いて吹き散らし、よしっと強く意識を切り替えてディスクを構えた。僕の答えを待っていたエンディミオン王もまた無言で左手にディスクを生み出し構える。

 

「少年よ。汝の力、私に見せて見よ」

「勝って示します!!」

 

 後ろに下がった愛理ちゃんたちに目を向けて、必ず勝つと視線で伝える。

 この講堂で初めて視線を交わした時と変わらない、いや、それ以上の圧力を感じる紅い瞳に敗けない意思を籠めて睨み返し、僕は声を上げた。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 




エンディミオンのことエンデュミオンって書き間違えたりしてた。
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