初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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手札事故った時のこれでどうやって戦えばいいんだ感。


死を呼ぶ古代の舞踏劇

 

「ぅ俺のタァーン、ドロー!!」

 

 訛り口調をした赤い軽鎧を纏った戦士──エヴォルテクターシュバリエとのデュエルが始まった。先行はとられてしまい相手のターン、初めての命を賭けたデュエルということで普段以上の緊張感に身を苛まれながらその行動を観察する。

 

「俺は手札から俺自身であるエヴォルタクターシュバリエを攻撃表示で召喚! さらに神剣ーフェニックスブレードを装備させることで攻撃力を300ポイントアップだァ!!」

 

 

《エヴォルテクターシュバリエ》 攻撃力2200 守備力900

 

 

 俺自身とあまり聞きなれなれない召喚口上に片眉を軽く吊り上げる。

 

 見ると確かにフェニックスブレードを両手に装備してこそいるが、それ以外はデュエリストであるシュバリエと同じモンスターが召喚されている。

 

 そこに微かな違和感を感じながらも、愛理くんが水霊使いエリアを使うようなものだろうと、あまり気にしないことにした。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだぁ」

「俺のターン、ドロー!」

 

 エンディミオン王もそうであったが、彼ら精霊は自分と同じモンスターが召喚する際に自分自身であるという認識のようだが、目の前に自分と同じ容貌、造形の存在が立って戦うことに違和感はないのだろうかと、そんなどうでもいいことに一瞬思考を割きながらカードを1枚引く。

 

「ふむ、シュバリエと言えば………デュアルモンスターか」

 

 数あるデュエルモンスターズのカードの中から記憶を辿りその詳細を思い起こす。

 

 相手は戦士族、そして2度の召喚を行うことで真価を発揮するデュアルモンスター。通常モンスターから効果モンスターへと変化する特殊なモンスター群。

 

 効果を持たれると厄介だが、その前なら対処は容易。その本領を発揮される前に潰す!

 

「まずは後ろで守るリバースカードから破壊させてもらう。俺は手札からギャラクシー・サイクロンを発動! リバースカード1枚を破壊する!!」

「ぬぐぅ、いきなりカード破壊かぁ!?」

 

 銀河に渦巻く青い竜巻がフィールドを席巻する。激しい風がフィールドを吹き荒らしながら破壊した相手のカードはデェアルスパーク。

 これからしようと考えていた俺からすれば戦闘を妨害できるそれはあっては困るもの。自然と口元が綻ぶ。

 

「よし、これで道は開けた。俺は手札からブラッド・ヴォルスを攻撃表示で召喚。さらにブラッド・ヴォルスにデーモンの斧を装備、攻撃力を1000ポイントアップさせる!!」

 

 

《ブラッド・ヴォルス》 攻撃力2900 守備力1200

 

 

「バトルだ、ブラッド・ヴォルスでエヴォルテクターシュバリエを攻撃!!」

 

 悪魔のような顔をした大男であるブラッド・ヴォルス。彼の持つ三日月型の斧が悍ましい木乃伊の顔がついた斧に切り替わる。

 攻撃力を大きく増強させたその斧を振りかぶり縦一文字に切り裂かれたエヴォルテクターは痛ましい叫び声を上げながら爆発し破壊された。

 

「ぬがぁアアアっ!!」

 

 

《エヴォルテクター》 残 LP 3300

 

 

「最後にカードを一枚伏せて、ターンを終了する」

 

 そこまで終えて、俺は少しだけ緊張をほぐすように息を吐いた。

 

(命をかけたデュエル。想像していた以上に精神と体力を消耗させる。特に1ターンにおける一つの戦術の選択の重みが段違いだ。集中を切らさないようにしなければ)

 

 三沢はこれまで経験してきたどのデュエルとも質の違うデュエルに開始早々だと言うのに軽い疲労感を感じ始めていた。

 

 それは覚悟をしてここにいるのだといくら言い聞かせても消えない死ぬことへの恐怖心が齎す絶え間ない緊張感によるもの。一手読みを誤れば次の瞬間には敗北が確定するのではないかという恐れがそれを成していた。

 

 その恐れは精神だけではなく身体全体にも波及しており、手札を握る手には脂汗が滲み、体は硬く力が込められている。自然体には程遠い姿であった。

 

「ちィ、よくもやぁってくれやがったなァ! 目にもの見せてやる。俺のターン、ドロー!!」

 

 しかし幸いであったのはそのような状態に三沢が陥っていることにエヴォルテクターは気づいていないことであった。もしこの時気づいていたならば、後のデュエルの様相も大きく変化していたことであろう。

 

 死に怯える羊をじわじわと追い詰めるように、より狡猾に時間をかけて、そのような戦術をとっていたに違いはなく、そうならなかったことは三沢にとって最大の幸運であった。

 

「俺は手札から未来サムライを攻撃表示で召喚! そしてスーペルヴィスを装備するゥ!!」

「スーペルヴィスっ!? デュアルモンスターのサポート装備魔法か!!」

 

 

《未来サムライ》 攻撃力1600 守備力1200

 

 

 目元を近未来的なバイザーで隠したサムライが召喚される。

 未来と名の付くだけあり過去に存在した侍とはその出で立ちが異を成しており、刀に当たる武器も電光が奔る機械的なものである。

 

 だが、そのモンスター自体は恐るるに足らなかった。ブラッド・ヴォルスに遠く及ばない攻撃力に警戒は必要ない。三沢に警戒をさせたのはその装備魔法──スーペルヴィスにある。

 それはデュアルモンスターを2度の召喚を必要させなくさせる装備魔法。つまり今、未来はサムライは何らかの強力な効果を有すると言うことであった。

 

「スーペルヴィスの説明は必要ないかぁ?」

「端的に今その未来サムライは効果を扱えるようになった。そうだろう」

「その通りだっ! 未来サムライは墓地のモンスターを除外することでフィールドのモンスターを破壊できるのさぁ! どんな強いモンスターでもなあ!!」

「くっ!」

 

 今、エヴォルテクターの墓地には奴自身でもあるエヴォルテクターシュバリエがいる。そして俺の場に、未来サムライの効果を防ぐカードはないッ!!

 

「消えちまいなァッ!! 俺は墓地のエヴォルテクターシュバリエを除外することで、お前のブラッド・ヴォルスを破壊するゥ!!」

「ぐぉっ!?」

 

 未来サムライの刀が目にも止まらぬ速度で一閃される。

 

 雷光の残滓を残しながら振り抜かれた刀はデーモンの斧諸共切り裂き破壊する。一瞬で行われたその一動作に目を瞑り、再び開いたときには存在したはずのブラッド・ヴォルスは影も形も存在しなくなっていた。

 

「俺はさらに墓地のデュアルスパークを除外することで手札からマジック・ストライカーを召喚! こいつと未来サムライでダイレクトアタックだァッ!! 地獄を見なァッッッ!!!」

 

 

《マジック・ストライカー》 攻撃力600 守備力200

 

 

《三沢》 残 LP 2600

 

 

 先ほどのブラッド・ヴォルスの攻撃のお返しと言わんばかりに、鎧を着た小人であるマジック・ストライカーがハンマーを手に振りかぶり攻撃してくる。さらに追撃を加えるように未来サムライもまた、その刀を振り抜いて俺に攻撃を加えてきた。

 

「──うぐぅっ……ぉおおおおッ!?」

 

 攻撃力の低いマジック・ストライカーを召喚するというリスクのある選択をしてまで連続攻撃を繰り出してきた攻撃に耐え切れず苦悶の叫びを宙に響かせる。

 

 それを聞くエヴォルテクターの顔には喜悦が浮かび上がり、逆に俺の顔には想像以上のダメージとそれが肉体にまで与えてきた苦痛に多量の発汗を額に流しながら胸に手を当て歯を食いしばる。

 

「いい表情だァ、苦痛と恐怖に耐えるその表情。額に飾って置いたら絵になるだろうぜェ?」

「悪趣味な奴だ…………」

「ハハハ! まぁそういうな………しかし、ライフが可笑しいな。なぜそこまで残っている」

 

 俺が苦しむ姿を楽しそうに見ながらも、その目に疑問の色を見せるエヴォルテクター。

 

「俺は未来サムライの攻撃の際に、リバースカード バージェストマ・ハルゲニアを発動させていた。それにより、このターン、未来サムライの攻撃力は半分になる」

 

 未来サムライがその刀を振り抜くその一瞬前に、俺はそのカードを発動させていた。

 命がかかっているこのデュエル、ライフという生命線を維持することは極めて重要。2200

ものダメージをこの先の展開を考えて、可能な限りダメージは減らしておきたかった。

 

「ハンッ、小細工をしたか。まあいい、俺はこれでターンエンドだ」

「ぐ………俺のターン、ドロー!!」

 

 軽くなってきた痛みに多少楽になったことでターンを開始する。

 相手の場にリバースカードはなく、決して高いとは言えないモンスターが並んでいる。なら、まずすべきは未来サムライに装備されているカードの排除から。反撃はその後でいい!

 

「俺は墓地にあるギャラクシー・サイクロンのもう一つの効果を発動! このカードを墓地から除外することで表側表示の魔法・罠を一枚破壊できる!」

「表側の魔法だと……はっ、しまった!?」

「今、表側になっている魔法は一枚のみ。俺が破壊するのはスーペルヴィスだ!」

 

 再びフィールドを銀河に渦巻く嵐が襲う。

 その狙いは一つ、スーペルヴィス。デュアルモンスターを強化し、さらには破壊されることで墓地からの蘇生も可能とするそれを破壊した。

 

「スーペルヴィスは破壊された時墓地のデュアルモンスターを蘇生させる効果があるが、今、お前の墓地にその対象となるカードは存在しない。ブラッド・ヴォルスを破壊するために除外したのが仇になったな」

「チィッ!」

 

 舌を鳴らす相手に俺はこれ見よがしに得意げに笑う。

 

 相手の性格はだいたい把握できた。

 短絡的で頭に血が昇りやすい。

 ならば、わざわざ口にしなくてもこうして軽く調子よく笑うだけで相手は危険を考えずに攻撃的な戦術をとってくる。

 

 あとはさらにこの状況を有利に運べばいい。

 そうするだけで、俺の想定内に収まる範囲でことは進む。

 

「俺は手札からハイドロゲドンを攻撃表示で召喚! マジック・ストライカーを攻撃──ハイドロ・ブレス!!」

 

 

《ハイドロゲドン》 攻撃力1600 守備力1000

 

 

「マジック・ストライカーは戦闘でダメージは負わない。0だ!」

「だが破壊はしてもらう。そして、ハイドロゲドンが戦闘でモンスターを破壊したことで、デッキからもう一体のハイドロゲドンを呼ぶことができる!!」

「なにっ!? もう一体だと!?」

 

 ハイドロゲドンが吐き出した泥水の濁流に呑まれたマジック・ストライカーが破壊されたことで、ハイドロゲドンの隣から噴水が吹き上がるように泥水の水柱が立ち、その中からもう一体のハイドロゲドンが現れる。

 

「そして召喚されたハイドロゲドンで未来サムライを攻撃だ」

「攻撃力は同じ! 相打ちだぞ!」

「そいつに残られるよりかはマシという判断さ」

 

 濁流を口から吐くハイドロゲドンに対抗するように相手の未来サムライもその刀を振るう。呑まれ、裂かれた2体は同時に爆発し、その姿を消す。

 

 俺は計算に間違いはないことを確認し、カードを2枚伏せターンを回した。

 

「俺のターンだ。ドロー!!」

 

 調子が崩れてきているのか、荒々しい動作でエヴォルテクターはドローする。俺の目論見通りに進んでいると内心でほくそ笑んでいたが、それはすぐに覆ることになった。

 

「はっ、ハハハハハ!! 来たぜっ!! 俺のデッキのキーカードがっ!!」

「!!」

 

 キーカード!? 

 何を引いてきた……デュアルのキーカード……なんだ?

 

「俺は手札からフィールド魔法──化合電界を発動!! ここからは俺のフィールドダァ!!」

「デュアル専用のフィールド魔法か!!」

 

 電流に熱が伴い流れていくように、フィールドに波紋が流れる。

 

 異なる二つの物質が化学反応により一つに変化する。デュアルという通常モンスターから効果モンスターへと変わる特徴を持つ彼らを表したフィールド魔法ということだろう。

 

 このフィールド魔法がどのような効果を持つにせよ、ここからが本番ということだけは間違いがなかった。

 

「化合電界には3つ効果があるが、今から使うのはそのうちの2つだ。まず一つ! デュアルモンスターを召喚する際、リリースの必要はなくなるゥ!!」

「なにっ、上級モンスターの生贄が必要なくなるというのか!?」

「俺は手札からフェニックス・ギア・フリードを召喚ゥ!!」

 

 

《フェニックス・ギア・フリード》 攻撃力2800 守備力2200

 

 

 エヴォルテクターの場に彼のエースであろう白い甲冑を着た炎属性の騎士が召喚される。

 

 その最上級に相応しい高い攻撃力とレベルを持つモンスターを生け贄も無しに召喚できるとは、デュアルモンスターにのみ許された破格の性能のフィールド魔法だと驚愕する。

 

「これで終いじゃねえぞ。化合電界のもう一つの効果! デュアルモンスターをもう一度召喚できる!」

「……つまり、そのフィールド魔法一枚でデュアルモンスターを扱うのに必要な効果を全て取り揃えているということか」

「そういうこったあ!! これがあれば百人力ってことだなあ?」

 

 勝ち誇るエヴォルテクターを流し見しながら化合電界について思考を割く。

 

(リリース補助に再度の召喚。これだけでも盛りすぎなくらいに強力なカードだが、奴は3つ効果があると言っていたな。どういう効果にせよ、厄介なフィールド魔法だ)

 

 扱いの難しいテーマのカードに対し、強力なサポートカードが時として現れることは珍しいことではないが、生命が賭かっているデュエルで引いてほしくはないカードだった。

 

 その強力なカードの登場に俄かに計算の狂いを感じ始めたことに歯噛みしながら三沢は相手の次なる手を待った。リバースカードをいつでも発動できるように準備をしながら──。

 

「これでおわりじゃねえぞ。俺は墓地の神剣ーフェニックスブレードの効果を発動する。墓地の未来サムライとマジック・ストライカーを除外することでこのカードを手札に加え、そして装備だ!!」

「さらに攻撃力を上げてきたか…………」

 

 

《フェニックス・ギア・フリード》 攻撃力3100 守備力2200

 

 

 元々持っていた大剣が神剣に置き換わる。

 3000の大台を超えた白き騎士が神剣を肩口まで振り上げその指示を待っていた。

 

「バトルだ。フェニックス・ギア・フリードでハイドロゲドンを攻撃!! フェニックス・ギアソード!!!」

「今だ! 俺はリバースカード 魔法の筒を発動! 攻撃を無効にし、その攻撃力分のダメージをお前に与える!! これで俺の勝ちだッ!!」

「しゃらくせぇッ!! フェニックス・ギア・フリードの効果発動! 装備カードを墓地に送ることでそのカードを無効だ!!!」

「なぁッ!?」

 

 一足飛びに跳び上がりながらその神剣を向けてきた騎士、攻撃を無効にするために発動した魔法の筒にその神剣を投げつけ破壊し、そして──ハイドロゲドンに向けて大剣を振り抜いた。

 

「ぐぉおおおおおッッッ!!」

 

 

《三沢》 残 LP 1400

 

 

 五体に激痛が奔る。

 まるで電流でも流されたような一瞬の痛み。

 それが命が削られていく痛みであるということだろう。

 

 ライフが削られるたびに死へと近づいていく。その恐れを振り払うために、俺は自分自身に喝を入れるように強く強くカードを引いた。

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札のバージェストマ・エルドニアを墓地へ捨てることでバージェストマ・ピカイアを発動。カードを2枚ドローする!」

 

 デッキから引き抜いた2枚のカードを見る。

 そこに描かれている2種類のカードを見ながら、自分と相手の状況から見えてきた勝利への展開を予想し墓地にあるカードを発動させた。

 

「俺はバージェストマ・ピカイアが発動したことで墓地のバージェストマ・ハルゲニアの効果を発動する。このカードは罠カードが発動した時、通常モンスターとして特殊召喚することができる!!」

「罠モンスターって奴か…………」

 

 

《バージェストマ・ハルゲニア》 攻撃力1200 守備力0

 

 

 パージェストマ・ハルゲニア、古代カンブリア紀に存在したハンキゲニアをモデルに作られたであろうモンスター。

 

 ミミズのような細長い胴体に無数の触手のような手足のついたその姿はまさしくモンスターと呼べる。うねうねと動くその姿は生理的嫌悪感を想起させるのか、女性が見れば悲鳴でも上げそうな見た目をしているので、あまりウケのよろしくないカードでもある。

 

「そして俺はカードを2枚セットし、ターン終了だ」

「それだけか? 俺のターンドロー! バトルだ! フェニックス・ギア・フリードでハルゲニアを攻撃だ。フェニックス・ギア・ソード!!」

 

 守りを固める俺の姿に勝利を確信したのか、迷う間も無く攻撃を選択した白騎士の剣が迫ってくる。

 振るわれたその剣が俺の場で守備表示のハルゲニアを切り裂こうとしたその瞬間、宙から現れた無数の縄が白騎士の体を絡めとった。

 

「ギア・フリードっ!?」

「お前が攻撃を宣言した瞬間、俺はリバースカード大捕り物を発動させた。この縄に囚われたものは、攻撃も効果も扱えない。そしてこのカードが存在する限り、俺のモンスターとして扱われる」

「なんだとっ!! クソッ! 対象をとる効果ならギア・フリードの効果で──」

「無理だな。今フェニックス・ギア・フリードに装備されているカードはない。大捕り物に対抗することは不可能だ」

「──グゥッッッ!!」

 

 歯噛みして目を血走らせるエヴォルテクターを置いて、無数の縄に囚われた白騎士は俺の場に留まる。それを横目に視ながら大捕り物をトリガーとしても一枚のバージェストマの効果を発動させた。

 

「もうひとつ、追い打ちをかけるようで悪いが、墓地のバージェストマ・ピカイアの効果も発動させてもらう。こいつもハルゲニア同様──」

「召喚されるってことだろうが、いちいち説明はいらねえんだよッ!!」

「………そうだ」

 

 

《バージェストマ・ピカイア》 攻撃力1200 守備力0

 

 

 ハルゲニアと同様、遥か古代の生物をモデルにしたトラップモンスターが召喚される。見た目はオレンジ色をしたウナギやウツボと言ったハルゲニアよりもずっと魚に近い形をしている。モデルとされたのは極めて原始的なナメクジに近い存在なのだが、今ここの召喚されているピカイアを表すには魚と表現した方が近いだろう。

 

「俺は……ちっ、カードを一枚伏せてターンエンドだ…………」

「俺のターン、ドロー!」

 

 エヴォルテクターの顔が勝利の愉悦から一変、敗色濃厚になったことで極めて険しい表情になっている。彼自身、もう後がないほどに追い詰められている状況であると理解しているからだ。

 

 怯えと恐れが入り混じった表情。

 それを見ていると、手心を加えたくなるような甘い考えが浮かび上がってくるが、俺も命は惜しい。容赦せずに行かせてもらう。

 

「俺は手札から儀式の下準備を発動、デッキから儀式魔法リトマスの死儀式とリトマスの死の剣士を手札に加える。そしてリトマスの死儀式を発動! 俺はフェニックス・ギア・フリードを生贄としてリトマスの死の剣士を儀式召喚する!!」

「俺のギア・フリードを生贄にするってのか!?」

 

 

《リトマスの死の剣士》 攻撃力3000 守備力3000

 

 

 祭壇に生贄として縄で縛られたフェニックス・ギア・フリードが捧げられる。捧げられた騎士の命を代償に召喚されたのは二本の剣を携えた闘牛士を思わせる紅いマントを背負った貴族風の剣士であった。

 

「リトマスの死の剣士は罠カードが発動している場合、攻守を3000ポイントアップさせる。俺は永続罠、門前払いを発動させる。このカードがある限り、リトマスの死の剣士の攻撃力が変わることはない」

 

 リトマスの死の剣士、このデッキの俺のエース。

 

 戦闘で破壊されることも、罠カードの効果を受けることもないこのモンスターは門前払いという、ダメージを与えることで手札に戻る効果も受けない。

 

 コンボカードとして満を辞して発動された2枚のカードだが、その真価を発揮することはなくこのデュエルは終わるだろう。

 

 もうあとは、攻撃するだけでこの決闘の末は決まるのだから……。

 

「俺は……リトマスの死の剣士とバージェストマたちでお前にダイレクトアタックだ!!」

「終わってたまるかァ! リトマスの死の剣士に炸裂装甲を発動! 攻撃モンスターを破壊する!!」

「……残念だが、リトマスの死の剣士は罠の効果を受けない。そのカードは無効だ」

「ナニィッ!?」

 

 止めの宣言をするのに一拍の呼吸を必要としながらもハッキリと宣言されたその攻撃に最後の希望を託すように発動された炸裂装甲。

 

 その効果による衝撃をものともせずにハルゲニアとピカイアを引き連れたリトマスの死の剣士がエヴォルテクターに迫り、その二振りの剣は振り抜かれた。

 

「グァアアアアアアアッッッ!!」

 

 

《エヴォルテクター》 残 LP 0

 

 

 悲痛な叫び声を上げながら消えていくライフに内心生き残れたとホッとする。後味の悪い勝利の余韻に俺は静かに目を閉じるのだった──。

 

 

 




バージェストマとリトマス混ぜるかあとしてたんだけど、途中でお前って罠モンスターだけど罠扱いじゃないやんって気づいて相性悪っ! となりました。
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