初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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世界樹の迷宮超面白い。けど時間超取られるからあまりやれんね。


太陽 ①

 

「僕のターン、ドロー!!」

 

 炎に包まれた魔法使いの里。その広場で僕と大賢者とのデュエルが始まった。愛理ちゃんたちがドリアードへと融合した際に一時的に消えた炎が少しずつだが、再燃するようにフィールドの周囲を、そして里を燃やしている。熱気のこもるフィールドは流れる汗をその場で止まることを許さない。

 

 ただその場にいるだけでも大きく体力を奪っていくために、怒りとは関係なしに可能な限りすぐにデュエルに決着をつけなければと危機感に背を押されていた。

 

「僕は手札から融合を発動! 手札のフォレストマンとオーシャンを融合し、E・HERO ジ・アースを融合召喚!!」

「ジ・アース……地球か……」

「まだまだ終わりじゃないぞっ! さらに融合回収を発動し、今使用した融合とフォレストマンを手札に戻す。そして融合派兵を発動! 闇魔界の竜騎士 ダークソードの融合素材である闇魔界の戦士 ダークソードを特殊召喚!! そしてそのままフォレストマンと融合──E・HERO エスクリダオを融合召喚!!!」

 

 

《E・HERO ジ・アース》 攻撃力2500 守備力2000

 

 

《E・HERO エスクリダオ》 攻撃力2700 守備力2000

 

 

 僕の場に地球の名を冠するHEROと闇を司る最上級HEROが並び召喚される。2体は僕の怒りに同調しているかのように気炎をあげて大賢者を睨みつけている。

 

「ほう、一ターン目にして上級モンスターを並べたか…………」

「そして最後にE・HERO レディ・オブ・ファイアを守備表示で召喚! レディ・オブ・ファイアはエンドフェイズ時、E・HEROの数だけ200ポイントのダメージを与える!!」

 

 

《E・HERO レディ・オブ・ファイア》 攻撃力1300 守備力1000

 

 

 僅かに目を見張り、感心したような声を上げる大賢者。そんな彼にレディ・オブ・ファイアが掌から生み出した3つの火球が襲う。

 

 

《大賢者》 残 LP 3400

 

 

「悪くない。だが、1ターン目から全ての手札を使い切るとは、最上級モンスターを並べるためとはいえ、随分と思い切った戦術をするな少年」

「僕は怒っているんだ。半端な戦術なんてしない! 全力で貴方を倒す!!」

 

 3つの火球によるダメージには微動だにせず、顎に伸びた白いひげを触りながら大賢者は笑みを浮かべている。並べられた僕のモンスターたちなど歯牙にもかけないと言った様子だ。

 

 その不気味なまでの余裕を見せる姿に愛理ちゃんたちを利用しようとされた事への怒りとデュエリストとしての勘が告げる危機感。それが不協和音を奏で一秒でも早く倒せと囁いてくる。

 

「私のターン、ドロー」

 

 僕のモンスターたちに怯むことなくデッキからカードを引く大賢者を鋭い眼光で睨み続ける。そこに、冷静に観察すると言う考えは存在しなかった。

 

「そうだな、まずはこのモンスターでいくのも面白いだろう。私は手札から時の魔術師を攻撃表示で召喚する」

「──時の魔術師!?」

 

 

《時の魔術師》 攻撃力500 守備力400

 

 

 赤と黄色の明るい置時計に手足の生えたコミカルなモンスター、時の魔術師。

 

 決して強力なモンスターではない。

 攻撃力も守備力も下級モンスターの中でも特に低いラインの警戒に値しないモンスター。しかし、僕の場にモンスターが並び、大賢者の場にモンスターがいない現状、これほど恐ろしいモンスターもいない。

 

 運次第だが、時の魔術師はその効果により一瞬で形勢を逆転する可能性の持つモンスターだからだ。

 

「時の魔術師、実にユニークな効果を持つモンスターだ。君に説明は不要かね?」

「………ルーレットを回し、当たれば相手のモンスターをすべて破壊。外れれば自分のモンスターを破壊し、その攻撃力の半分のライフを失う。有名なギャンブルカードだ」

 

 まるで教師が講義をするような小気味よい口調で大賢者は語る。

 

 周囲の炎に包まれた状況とはあまりにも不釣り合いな声に眉が釣り上がるが、これから起ころうとしていることに比べれば、些事に等しい感情だった。

 

「しかし、ただ効果を使うだけでは芸がないというもの。これを発動してから効果を使うとしよう。私はライフを1000払いうことで黒魔術のヴェールを発動、手札からブラック・マジシャンを特殊召喚する」

「ブラック・マジシャン!? 時の魔術師がいながら!?」

「全力、本気というのもよいが、時には遊興に身を任せる余裕も必要というものだぞ、少年」

 

 

《大賢者》 残 LP 2400

 

 

《ブラック・マジシャン》 攻撃力2500 守備力2000

 

 

 時の魔術師の隣に召喚されたのは世界中のデュエリストの憧れの存在であるキング・オブ・デュエリスト──武藤遊戯のエースカードであるブラック・マジシャン。デュエリストで知らない人などいないであろう超有名な最上級魔術師である。

 

「さあ、始めよう少年、遊びの時間だ。時の魔術師よ、ルーレットを回せ」

『タイム・ルーレット!!』

「くっ、本当に運に身を任せるのか!?」

 

 時の魔術師の杖の先端にあるルーレットが回り始める。

 

 グルグルと回る針の矢尻が指す先を息を呑んで見守る。僕は緊張の眼差しで、大賢者はのんびりとその言葉通り遊興を楽しむように微笑みながら。

 

 そして緩やかになった針が止まる。止まった先に示されているのは──。

 

「ほう、これは幸先がいい。しかし、君にとっては残念な結果だったな少年。──アタリだ」

「ぐぅっ!!」

『タイム・マジック!!』

 

 時の魔術師が杖を振り上げ、空間に歪みが生まれる。それは巨大な引力を持つ時間と空間が歪に絡み合う黒い穴。

 そこに吸い込まれるように僕のHEROたちが次々と向かっていく。

 

 手札の全てを使い切り、今打てる手の全てを出し切って召喚した自慢のHEROたちはそうして安易に呼び出された時の魔術師によって一瞬にして消し去られてしまった。

 

「デェエルとは厳しいものだな。時として運次第で形勢が一変してしまう」

「くっ、攻撃するなら早くしろ! まだ他にやることがあるのか!!」

「ふふ、そうだな。では時の魔術師の効果が成功したことにより、私は場のブラック・マジシャンを墓地へ送り、黒衣の大賢者をデッキから特殊召喚するとしよう」

「!!」

 

 

《黒衣の大賢者》 攻撃力2800 守備力3200

 

 

 ブラック・マジシャンが消える。というよりも、時の魔術師による時間操作の効果によるものなのだろう。端正な顔立ちをした青年であるブラック・マジシャンが年を重ね、老いたことにより貫禄のある老人へと成長した姿がそこにあった。

 

 それは目の前で戦っている大賢者そのもの。

 深い知性と積み重ねられた経験がその眼差しに底知れない相手であることを教える。僕の怒りさえ吹き抜けるそよ風のようにささやかなものとして見るその敵の姿があった。

 

「黒衣の大賢者は召喚時、魔法カードを1枚持ってこれる。私はディメンション・マジックを手札に加え、そして攻撃。時の魔術師と私自身で君にダイレクトアタックだ」

「──うぁああああっ!!?」

 

 

《コナミ》 残 LP 700

 

 

 時の魔術師によりささやかな杖による攻撃と、大賢者の激しい魔法が僕を襲う。

 その衝撃により、僕の身体は後方に倒され、僅か1ターンでライフの大半を失うことになってしまった。

 

「私はカードを2枚伏せてターンを終える。さて少年、自分で立てるかね? 手伝いが必要なら手を貸すが?」

「ぐっ、バカにするのも大概にッ!! 自分で立てる!!」

 

 痛みと衝撃を湧き上がる怒りが押し流し、震える腕に力を込めて立ち上がりながら立ち並ぶそのモンスターたちと大賢者を睨みつける。

 

 想定外の反撃に一瞬で劣勢に追い込まれたことに対し、危機感が積もり始めるも、心に燃え盛る怒りの感情は周囲の炎のように熱く、その勢いを増している。

 

 僕は脳裏にサイレンの如く鳴り響いてくる危機感などお構いなしに怒りに身を任せるようにカードを引いた。

 

「僕のターン、ドロー!!」

 

 引いたカードを見て、安心などという感情が湧くことはなかった。

 

 どちらかと言えば引いてきて当然とでも言うような、カードたちも大賢者に怒っているのだという連帯感のようなものを感じ、何が欲しいかを考えることもなくそのHEROを召喚した。

 

「僕は手札からE・HERO バブルマンを守備表示で特殊召喚する! このモンスターは手札がこのカードだけの時、特殊召喚できる!!」

 

 

《E・HERO バブルマン》 攻撃力800 守備力1200

 

 

「そして、その効果により2枚ドロー!!」

 

 

 

 

「やはり、勇者くんの力の最たる部分はそのドロー力にありそうですねえ。ここぞという時に引いてくるカードにハズレがない」

 

 追い詰められたコナミがバブルマンの効果によりカードを2枚引く姿をフィールドの外からアレイスターはドリアードと並んで見ていた。

 

 燃え広がる炎は2人に近寄らない。

 まるで意思を持っているかのように、2人を避け広がっていく。

 

 さらに何らかの魔術により護られているのか、炎の熱に多量の発汗を余儀なくされているコナミと違い、2人の周囲は不自然なほどに暖かく、緩やかに空気は流れていた、

 

「ここでバブルマンを引いてくるとは、大賢者様が圧倒して終わりかと危惧しましたが、まだまだ楽しめそうですねこのデュエルは。貴方はどちらが勝つと思います?」

「………」

「クフフ、そうですか。なら私は大穴で勇者くんが勝つ方を予想しましょうか。そうなったらどうしましょうかねえ……ハハッ!」

 

 アレイスターの質問にドリアードは何も語らない。

 しかし噤んだその口とは裏腹にその瞳は雄弁に彼に語っていた。勝利するのは大賢者の方であると──。

 

 そしてそれに内心でアレイスターも同意する。

 コナミが勝つ方を予想したアレイスターも、ここにいるコナミが大賢者に勝てるとは露とも考えてはいない。

 

 エンディミオン王とデュエルしていた頃のコナミなら微量の可能性は存在していたであろうが、怒りに震える今の彼ではと──。

 

「しかし、大賢者様も意地の悪いことをする。もう十分に怒っている勇者くんを煽るようなことをするとは」

 

 怒りは判断を誤らせる。

 実力の拮抗した者同士ならその差は致命的なものになる。それ故に相手の精神を揺さぶる行為は戦術において有効ではある。

 

 あるが……。

 

「それを大賢者様がする必要があるとは思えないのですがねえ」

 

 それでもしているのは勇者くんを脅威に思っている。というよりも、多くの魔術師を育ててきた教官としての癖のようなものが出てきているのだろうと、アレイスターは推測する。

 

 まあ、大賢者様にどういう思惑があれ、勝負の趨勢は見えたと言っていいよかった。怒りの感情に呑まれ、視野の狭くなっているコナミに勝ち目はない。

 

 アレイスターは少しだけ残念な気持ちをこぼしながら、デュエルの続きを見届けるべく、意識を彼らに戻すのだった──。

 

 

 

 

「僕は手札からゴラ・タートルを攻撃表示で召喚! 時の魔術師に攻撃──タートル・ヘッドバット!!」

 

 

《ゴラ・タートル》 攻撃力1100 守備力1100

 

 

 赤いビー玉のような眼が特徴の黄色い亀であるゴラ・タートルが時の魔術師に突撃する。

 

 多少のっそりとした動きながらも時の魔術師へと向かうゴラ・タートルのその攻撃が魔術師に届こうかと思ったその瞬間、ゴラ・タートルは奇術で使われるような人型の箱に押し込まれていた。

 

「ゴラ・タートルっ!?」

「お前が攻撃を宣言した瞬間、私はディメンション・マジックを発動させていた。このカードを手札に呼び込んだこと。まさか見落としていたなどということはないだろう?」

「──ッ!?」

 

 大賢者の指摘に図星をつかれたように歯を食いしばる。

 

「ディメンション・マジックは自軍の魔法使いモンスターをリリースすることで手札から魔法使いを呼び出し、君のモンスターを破壊するカード……私がリリースするのは」

「時の魔術師か…………」

 

 当然、ステータスで劣る時の魔術師だと予想し、どう残される黒衣の大賢者に対抗するかと思考を巡らそうとした僕を、次いで出た大賢者の言葉が差し止めた。

 

「いや、私が墓地へ送るのは黒衣の大賢者。つまり私自身だ!」

「なっ、そんなバカなッ!!?」

「そして、君のゴラ・タートルが破壊される代わりに、私の手札からクロニクル・ソーサレスが特殊召喚される」

 

 

《クロニクル・ソーサレス》 攻撃力1250 守備力1250

 

 

「少年、当然ステータスの高いモンスターを残すなどという安易な先入観に囚われていては、強くはなれんぞ。まして、君の夢であるキング・オブ・デュエリストなど到底な」

「ぐっ!!」

 

 黒衣の大賢者がディメンション・マジックの箱の中に消えた代わりに、手品の脱出マジックのように中から一人の少女が現れる。

 

 金の長髪に白い魔術師風の服装をしたその少女はブラック・マジシャン・ガールにも似ており、こんな怒りの感情に満たされた時でもなければ見惚れていても可笑しくない美少女モンスターであった。

 

「僕はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー。クロニクル・ソーサレスの効果を発動、墓地に闇属性のモンスターがいるため、デッキからマジクリボーを墓地へ送る。そして融合を発動、時の魔術師とクロニクル・ソーサレスを融合──時の魔導士を融合召喚」

 

 

《時の魔導士》 攻撃力2000 守備力1900

 

 

 時の魔導士、時の魔術師がより強化された融合モンスターなのだろうが、特別その姿に大きな変化はない。体の歯車が多少大きくなっており、手持ちの杖に複数の小さな時計が増えた程度だろう。

 

 初めてみるモンスターだった。しかしステータスに勝る黒衣の大賢者を代わりに生贄にしてまで召喚したモンスターだ。確実に厄介な効果を持っている。

 

 恐らくは時の魔術師に類する効果なのだろうと予測をたてながら、身を守るバブルマンの背でいつでもリバースカードを発動できるように僕は身構えた。

 

「時の魔導士はその名前通り、時の魔術師の発展型のモンスター。その効果はルーレットを回し、アタリなら全てのモンスターを破壊、その攻撃力の合計の半分を君に与える」

「またルーレットか………はずれの場合はッ!?」

「ハズレた場合、同じようにすべてのモンスターを破壊し、私がその半分のダメージを受ける」

 

 やはり想像通りのギャンブルカード。

 アタリでもハズレでもモンスターが破壊される点こそ強化されているが、そのダメージがどちらに当たるかは完全に運任せ。

 

 ギャンブルデッキというハイリスク・ハイリターンのデッキを使う人はいる。しかしそういうコンセプトでデッキを作っているならともかく、この人のデッキがそういうことを目的としたものとは思えないし、感じない。

 

『全力、本気というのもよいが、時には遊興に身を任せる余裕も必要というものだぞ、少年』

 

 時の魔術師の効果を使う際に大賢者が放った言葉が蘇る。

 こちらの本気の怒りをそよ風のように受け流す態度、そしてまるでこのデュエルを遊びの一つとでも言いたげなふざけた戦術。この人は本気でこのデュエルを遊興として楽しむつもりなのか。

 

 そのこちらとは対極に位置するようなふざけた態度に、ただでさえ限界まで噴出している憤りがさらに熱を上げていく。

 

「アタリでもハズレでも全てのモンスターは破壊される。だけど、僕の場にはバブルマンが一体、使う必要があるとは思えない。いや、そもそも召喚する必要があるとも、それでもそんなギャンブルをすると言うのか!?」

「当然だろう少年。効果も使わず何のために召喚したと言うのだ」

「あなたはッ! 本気で勝つつもりがあるのか!!」

「無論、聞くまでもない質問だ。私はいつだって勝利のためのデュエルをしている。時の魔導士、ルーレット開始だ!!」

 

 怒りに視界の全てを呑み込まれそうになる自分の気持ちを握り締めた拳の痛みが踏みとどまらせる。回り始めたルーレットを見ながら僅かな理性が、デュエルに勝つために冷静になれと叫んでいた。

 

 ルーレットは回る。

 僕たちの勝敗という運命を乗せて、ぐるぐるぐるぐると、針はアタリとハズレを巡り続ける。

 

 『ルーレットの停止』、その一瞬を見るためにその場にいる全ての者の視線を集めながらルーレットの針はどこまでも回り続けていた──。

 

 

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