箱に引っ込めてた昔のギャルゲー引っ張りだして軽くプレイしたら、あー俺ヒロインの友人の攻略不可の娘の方が好きだったなあそういやって懐かしい気持ちに浸れた。
大賢者とのデュエル、その2巡目となる彼のターン。僕はぐるぐると回り続けている時の魔導士のルーレットの前に早くも絶体絶命のピンチに陥っていた。
「ふふふ、さて、今度の運はどちらに味方するかな?」
その結果を楽しみに待つ大賢者と違い僕の表情は硬い。
ライフが残り僅か700しかない状況のため、万が一ルーレットがハズレを引きでもしようものなら、その瞬間に僕の敗北が決まってしまうからだった。
そして、永遠とも思えたその時の魔導士の杖先の針が緩やかに止まり始める。その針の先に向けられていたのは──。
「残念な結果になったな」
「!?」
呟かれたその言葉にドクンと激しい心臓の鼓動が鳴り響く。もしやアタリだったのかと目を見開き慌ててその針の先を見ると、そこにはハズレの文字が、ルーレットの針は僕に味方をしてくれていた。
その結果を目にしほぅっと安堵の息を吐く。強張っていた肩から少しばかり力が抜け、ハズレたことで生まれた空間の歪みに目を向けた。
「ルーレットがハズレた時の魔導士の効果は場のモンスター全ての破壊とその攻撃力の合計の半分のダメージが自身に与えられる」
「今、場にはバブルマンと時の魔導士の2体。あなたは1400のダメージを受けてもらう」
「うぅむ」
《大賢者》 残 LP 1000
時の魔導士が開いた穴に吸い込まれ、時の魔導士自身と僕のバブルマンが消えていく。その効果によるリスクダメージを負いライフが3分の1にまで消費された大賢者を見て僕は口端を上げた。
「必要もないのに運任せのカードを使うからそんな結果になる。素直に攻撃を選んでいれば時の魔導士も残せたでしょうに」
「運に身を任せその流れに乗ることで得られる勝利もあるものよ。堅実な道だけが正しい道ではない」
「ハンッ、それで危険に近づいていちゃ世話ない」
強がりか、それとも本気でそう言っているのか。そのしわがれた口調からは読み取ることができない。ただ一つわかるのは、これでまた僕の勝利が近づいたと言う事実だけだった。
「ルーレットはハズレたが、それによって発動するカードもある。私はリバースカード ダークホライズンを発動。私が戦闘、及び効果でダメージを負った時、そのダメージ以下の攻撃力を持つ魔法使い族・闇属性のモンスターを特殊召喚できる。私はデッキから黒き森のウィッチを攻撃表示で召喚」
《黒き森のウィッチ》 攻撃力1100 守備力1200
「黒き森のウィッチで君にダイレクトアタックだ」
てっきり無策で時の魔導士のギャンブル効果を使用していたと思っていたのだが、きっちりハズレタ場合のリスクをリカバリーするカードも伏せていたらしい。
こちらに向かってくる黒き森のウィッチに内心で不満をぼやきながらこの時のために伏せておいたカードを発動させる。
「僕はリバースカード エターナル・カオスを発動! 黒き森のウィッチの攻撃力以下の光属性と闇属性のモンスターをデッキから墓地へ送る!」
「攻撃を止めるカードではない。デッキから墓地へ捨てたところで攻撃を止められはすまい。何を捨てるつもりか」
「いや、攻撃は止めさせてもらう。僕が墓地へ送るのは超電磁タートルとタスケルトン。攻撃力の合計は700。そして今捨てたタスケルトンは除外することで攻撃を1度だけ無効にできる!!」
超電磁タートルは光属性、そしてタスケルトンは闇属性のモンスター。
どちらも墓地から除外することで戦闘を止めることのできるカード。ゴラ・タートルと一緒に来てくれたエターナル・カオスでなければ時の魔導士の効果がなかったとしても黒き森のウィッチにより僕は敗北していた。
僕へと迫っていた黒き森のウィッチの眼前に黒い子ブタが現れたことでその動きが止まり、戦闘が停止していた。
「なるほど、ならば私はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
「よし、僕のターン、ドロー!!」
ここでモンスターを引いて形勢をこちらに戻す!
最悪超電磁タートルがいるからもう一度攻撃は差し止められるが、本当にいざと言う時のためにとっておきたい。だから何とか黒き森のウィッチを倒せるモンスターに来てほしかった。その祈りが通じたようで、ドローしたカードは一人の魔術師の絵が描かれたカードだった
「僕は太陽の魔術師エダを攻撃表示で召喚! その効果によりデッキから守備力1500の魔法使い族をセットする。僕は水霊使いエリアをセットする!」
《太陽の魔術師エダ》 攻撃力1500 守備力1500
青白い肌をした魔術師であるエダがその手の杖を振ることで隣にエリアが記されたカードがセットされる。
そして一瞬だけしまったと、怒りで焦っていたのか、それとも好意からよく選んでいたための癖が出てしまったのか、選ぶべきは水属性のエリアではなく闇属性のコントロールを奪うダルクを伏せるべきだったと後悔の念を抱く。
しかしながらすぐにやってしまったことは仕方がないと割り切り黒き森のウィッチへの攻撃を宣言する。
「僕は太陽の魔術師エダで黒き森のウィッチを攻撃!」
「ならばこの瞬間、私はリバースカード マジシャンズ・サークルを発動! お互いにデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族を特殊召喚する。私はブラック・マジシャン・ガールを召喚する!!」
「ブラック・マジシャン・ガール!? くっ、だったら僕はクリスタル・ガールを攻撃表示で召喚!!」
《ブラック・マジシャン・ガール》 攻撃力2300 守備力1700
《クリスタル・ガール》 攻撃力200 守備力100
ブラック・マジシャン・ガール、最上級魔術師であるブラック・マジシャンの弟子であるという彼女を見るのはこれで2度目。
その効果により墓地のブラック・マジシャンの数だけ攻撃力が上がる彼女は以前デュエルした時とは違い敵を見据える厳しい顔をして僕を見下ろしている。
彼女をデュエルで見るのは数年前、アカデミアの学園祭の時以来か。あの時は純粋にデュエルを楽しむことができたが、今は違う。
僕の敵として大賢者を守るべく召喚された彼女に敵意を向けながら、僕は今は倒せないと判断し変わらず黒き森のウィッチへと視線を固める。
「僕は太陽の魔術師エダでそのまま黑き森のウィッチを攻撃だ!」
「ぬ〜」
《大賢者》 残 LP 500
太陽の魔術師エダの攻撃により大賢者のライフが残り500にまで減った。あと少し、何らかの攻撃を加えるだけで削り切れる程度のライフ。
それは僕自身にも言えることかもしれないが、明確に守る手段を持つが故に俄かに余裕が生まれようとしていた。
「黑き森のウィッチが破壊されたことで墓地のマジクリボーの効果が発動。このカードを手札に戻す。そして黑き森のウィッチ自身の効果によりデッキから守備力1500以下の魔法使い族、マジシャンズ・ローブを手札に加える」
大賢者の手札が2枚増える。マジクリボー、マジシャンズ・ローブ、どちらも恐らくは魔法使い族のサポートする効果を持つに違いないモンスターたち。
どういう効果を持っているのか、警戒を強く持ちながらクリスタル・ガールの効果を発動させた。
「僕のエンドフェイズに入ったことでクリスタル・ガールの効果が発動! デッキからレベル5以上の水属性モンスターを手札に、僕は『The tripping MERCURY』を手札に加える!」
ターンの終了とともに、僕のデッキのエースの一枚であるMERCURYが加わる。僕の場には3体のモンスター。
次の僕のターンまでに残すことができれば、MERCURYの効果で一気に勝負を決めることができる。
それは、超電磁タートルが墓地で眠る今、容易に達することができる戦術目標である。
そのため次の僕のターンで決めてやると意気込み、知らずごくりと喉を鳴らしながら僕は大賢者のターンを待っていた。
「私のターン、ドロー。バトルだ。ブラック・マジシャン・ガールでクリスタル・ガールを攻撃!
「ちぃっ! 僕は墓地の超電磁タートルを除外することでその攻撃を無効にする!!」
最後の防壁である超電磁タートルの効果を使うことで周囲に電磁波の膜を張る。
ブラック・マジシャン・ガールの魔法弾を物ともせず弾くその膜が僕のモンスターたちを守り、その後の攻撃をも防ぐ。超電磁タートルの持つ絶対的な守りの力が発動した。
それにより生き残った3体のモンスターたちを目にし、あと少しで勝てると、手札のMERCURYを持つ指に力が入る。
「ふむ、これで2枚のカードは使い切ったな。ならば私は星呼びの天儀台を発動! 場のブラック・マジシャン・ガールをデッキの一番下に戻すことでカードを2枚ドローできる!」
「せっかく召喚したブラック・マジシャン・ガールを戻すのか!?」
燃え盛る炎が赤黒く染めている夜空に流星が2つ流れる。
それはブラック・マジシャン・ガールが消えたことで大賢者のデッキに与えられた恩恵。上級モンスターを代償にすることでしか得られないドローをする権利の授与であった。
「ブラック・マジシャン・ガールをデッキに戻すことで私は2枚ドロー。そしてマジシャンズ・ローブを守備表示で召喚。さらにカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」
《マジシャンズ・ローブ》 攻撃力700 守備力2000
それを何と表現すべきなのだろうか。
顔のないブラック・マジシャン。それとも服だけがブラック・マジシャンの青い靄の集合体と表現するのがいいのだろうか。膝を地につけて身を守るその魔法使い風のナニカは自分の出番を待つように静かにその身を沈めていた。
「僕のターン、ドロー! 僕は3体のモンスターたちを生贄に捧げる!!」
デッキからカードを引くと同時に僕のモンスターたちから青い水晶のような粒子が舞い上がる。
あのマジシャンズ・ローブがどんな効果を持っていようが関係はない。
こいつで、この僕のエースで勝負をつける!!
「3体のモンスターたちを生贄に、手札から来いッ!! The tripping MERCURY!!!」
《The tripping MERCURY》 攻撃力2000 守備力2000
二本の青く輝くビームのような剣を手に、MERCURYが召喚される。
戦闘において極めて強力な効果を持つMERCURYは守備表示で身を守ることを許さない。
その剣は相手の力を奪い、その身から醸し出す空気は守りの構えを崩す。
攻撃力が0となり、守備表示の構えから立ち上がったマジシャンズ・ローブを目にし、僕は勝利を確信する。
「なるほど、それがMERCURY──水星の力か。ならばこの瞬間、マジシャンズ・ローブの効果を発動! 手札から魔法カードを墓地へ送ることでデッキからブラック・マジシャンを特殊召喚する!!」
「無駄だ! ブラック・マジシャンを召喚したところでMERCURYの力からは逃れられないッ!!」
《ブラック・マジシャン》 攻撃力0 守備力2000
マジシャンズ・ローブが手持ちの杖を振ることで召喚されたブラック・マジシャン。しかしその攻撃力は1ポイントすらもない。
召喚された瞬間からMERCURYにより魔力の全てを奪われたその存在は弱弱しく小さい。
あとは攻撃を宣言するだけで勝てる。そう確信し口を開こうとした刹那、笑みを浮かべている大賢者の前に一つの紅い棺が現れていることに気が付いた。
「それは………っ!」
「君がMERCURYを召喚し、マジシャンズ・ローブの効果を発動する前に、私はリバースカード 黒魔族復活の棺を発動していた」
「黒魔族復活の……棺…………」
それは僕のモンスターと自軍の魔法使いを代償に新たな魔法使いを呼ぶトラップカード。
今の僕の場に存在するモンスターはMERCURYのみ。
ならばその対象は──!
「私はマジシャンズ・ローブと君のMERCURYを墓地へ送り、デッキからブラック・マジシャン・ガールを特殊召喚する」
「MERCURYがッ!!?」
《ブラック・マジシャン・ガール》 攻撃力2300 守備力1700
棺に吸い込まれていくMERCURYに絞り出すような叫びが漏れる。
そして普段なら興奮しこの光景を生で見れたことに喜んでいたであろう、並び立つ2体の魔術師にも反応できず、目の前のガランとした僕の場に唖然とするばかり。
そうして動き出せないでいる僕に満足そうな息を吐きながら大賢者が声をかけてくる。
「どうしたのかね少年。目の前の光景が信じられず受け入れられないと言った顔をして。ライフが残っているが……さて、まだデェエルを続けるだけの勇気はあるかね?」
「──ぐ………くぅっ!」
その明らかにこちらを舐めた言葉にこれでもかと言わんばかりに歯を食いしばり拳に力を籠める。
「まだだ、まだ僕は敗けちゃいないッ! 僕は手札から一時休戦を発動! お互いにカードをドローし、次の僕のターンまでお互いが受けるダメージを0にする!」
「ほう、この期に及んでまだ耐えるのか。大したものだな」
カードを1枚引く。
「…………僕はターンを終了する」
「私のターン、ドロー!」
一時休戦によりドローしたカード。それを発動するか否か、一瞬悩み、発動しない選択をした。
今ここで使用することで場の状況は改善するが、使うべきは一時休戦が発動している今ではないと、そう直感が囁いていたから。
そしていざと言う時に、危険を教えてくれるそのデュエリストとしての勘は正しく働いてくれていた。大賢者が召喚するモンスターを見て、そう本心から思った。
「………どうやら、君を一目見てみたいとカードが私の手に舞い込んできたらしい。ならばそれに応えよう、私はブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールを生贄に捧げ、The supremacy SUNをアドバンス召喚する!!」
「SUN………太陽──ッ!?」
《The supremacy SUN》 攻撃力3000 守備力3000
月が支配する暗黒の時間に、太陽が昇った──。
それは眩いばかりに赤黒く染められた周囲を照らし、圧倒する。
至上という名がついている通り、その圧倒的な存在感はその場にいた誰しもの視線を集め、逸らすことを許さない。
その太陽の名を冠するモンスターが放つ威光は眩いばかりではなく、恐ろしいまでの寒気も与えてくる。その様はまるで暖かな太陽が突如として隠れ、闇に染まる日食のように、黒く寒々しい。
太陽の名に反するような刺々しい漆黒の鎧を纏い胸の中心に小さな太陽のような灼熱の球体を持つモンスターは大賢者の場で、僕のことを睥睨している。
僕は突如として召喚されたそのモンスターにたじろぎながら目を離せずにいた。
「残念ながら、一時休戦の効果で戦闘を行ったとしても君にダメージを与えれない。モンスターもいない今、できることはないに等しい。私はカードを1枚伏せて、ターンエンドといこう」
「これが…太陽。最後のプラネットモンスター。だったら、こいつを倒せば、僕の勝ちだってことだな! 僕のターン、ドロー!!」
太陽の名を冠する最後のプラネットモンスターに威圧されながらも、気力を奮い立たせデッキからカードを引く。一時休戦の効果も切れた今、先のターンで手札に引いたカードを使うべき時が来たのだと悟る。
「僕は手札からミラクル・フュージョンを発動! 墓地のE・HERO バブルマンと水霊使いエリアを融合し、E・HERO アブソルートZeroを融合召喚する!!」
《E・HERO アブソルート・Zero》 攻撃力2500 守備力2000
これが僕の最後の切り札、最強のHERO!!
いつだってどんな時だって逆転の切り札になってくれる氷のHEROだ!!!
「アブソルートZeroで勝負を決める!!」
「しかし、その攻撃力ではThe SUNを倒すことはできまい。どうするつもりかね」
「アブソルートZeroは僕の場の他の水属性モンスター1体につき攻撃力を500ポイント上げることができる。僕は墓地のクリスタル・ガールの効果を発動! 僕の場にレベル5以上の水属性モンスターがいる場合、このカードを墓地から守備表示で特殊召喚できる!」
《クリスタル・ガール》 攻撃力200 守備力100
「クリスタル・ガールを蘇らせたか。しかしそれでも攻撃力は互角、The SUNとは相打ちだな」
「まだだ。僕はさらに手札からモノマネンドを発動! 僕の場のレベル2以下の守備表示モンスターと同名カードをデッキから守備表示で特殊召喚する!!」
クリスタル・ガールが2体並ぶ。
それにより強化されたアブソルートZeroの攻撃力は3500。
眼前に燦然と宙に浮かぶThe SUNを超えた。どんな効果を持っているのかだけが不安要素ではあるが、ここまで来たらもう止まることなんてできない。
突き進んで破壊する!
「僕はアブソルートZeroでThe SUNを攻撃──
絶対零度の吹雪がThe SUNを襲う。
全てを一瞬で凍らし滅ぼすその攻撃は太陽の化身であるThe SUNをもその全身を余すことなく凍らし、冷たい氷の中に閉じ込める。
大賢者のライフは残り500。
氷に包まれ破壊されていくThe SUNとの攻撃力の差もまた丁度500。
僕は氷がひび割れ崩れていく姿に勝利を確信し、グッと拳を握る。しかし太陽が消え氷が壊れた後の霜が晴れた時、残されていた大賢者を見てその双眸を見開くことになった。
「ライフが──残っている!?」
《大賢者》 残 LP 250
大賢者のライフは残っていた。
そのフィールドこそ太陽が消えたことでモンスターは存在しなかったがそのライフは健在。少ないとはいえ削りきれないでいるポイントがそこには表示されていた。
それだけではなく、霜が完全に晴れまで気が付かなかったが、大賢者の前には何故かブラック・マジシャンの姿まであった。
《ブラック・マジシャン》 攻撃力2500 守備力2000
「私は君の攻撃時、リバースカード ダメージ・ダイエットを発動させていた。それにより私が受けるダメージは半分に、さらにダメージを受けた際手札のマジクリボーを捨てることでデッキからブラック・マジシャンを召喚していたのだよ」
淡々と説明される種明かし。
勝利を確信した僕を嘲笑うように、あと一歩。あと一歩が届かない。そんな不快な気分を味わいながら、僕は苦虫を噛み潰したような顔を向ける。
「しかし惜しかったな少年。あと少し攻撃力を上げていれば私を倒せていただろうに」
「……僕は、これでターンエンド。でも、貴方のライフは残り僅か、ブラック・マジシャンはいてもThe SUNは消えた。僕の場にはアブソルートZeroがいる。次のターンで僕が勝つ!!」
僕の圧倒的優位。それは事実で反論する余地のない現実。
だというのに、追い詰められているはずの大賢者の顔から笑みは消えず、対する僕の顔からは焦燥感が溢れていた。
「君が勝つか。それはどうだろうなあ。必ずしも君に次のターンが回ってくるとは限るまい」
「なに!」
「つまるところ、これがラストターンだということだ。私のターン、ドロー!」
大賢者がデッキからカードを引いたその瞬間──太陽が昇った。
「なっ!? The SUNが復活した!!?」
「他の惑星のカード同様、The supremacy SUNにも効果がある。その効果はこのカードが破壊され墓地に存在する時、無条件で蘇るというものだ」
「バカなっ!? 何のコストも支払わず攻撃力3000のモンスターが復活するのか!!?」
「太陽は沈み、再び昇る。それが自然の摂理、そういうものではないかね?」
燦然と輝くそれはまさしく太陽。
この目に映る光景は嘘でも、見間違いでも、まやかしでもない。倒したはずの太陽が蘇っていた。
だが、それでもこちらの優位は揺らがない。
復活することが効果だというのなら、攻撃力で勝るこちらが有利。
仮にクリスタル・ガールを破壊されることになってもその攻撃力はイーブン。相打ちに持ち込むことで場を開けることができる。
そう、このターンさえ凌ぎきれば、僕の勝利への道が途絶えることはないのだ。
「次のターンさえくれば、そう考えているね。しかしそれは敗者の思考だぞ? 私は手札から巨大化をThe SUNに装備、その攻撃力を倍にする」
「攻撃力が倍!?」
《The supremacy SUN》 攻撃力6000 守備力3000
太陽の熱が上がる。
元より膨大なエネルギーを保有している太陽がその余波だけでも凄まじい熱量を発しているというのにさらにその温度を上げていく。
灼熱の太陽がその温度を上げることに連動するように胸の中心にある小さな太陽もまた回転しながら輝きを増していく。
それは僕の死刑宣告に等しい。
これから起こる太陽の攻撃に対し、ここまでのデュエルであらゆる防衛手段も使い果たした僕へと向けられる最後の攻撃である。
「終わりにするとしよう。最後のデュエル、中々楽しめたぞ少年。バトルだ。The supremacy SUNでアブソルートZeroを攻撃──SOLAR FLARE!!!」
The SUNから撃ち放たれた熱線が迫る。
それは通った跡の大地を溶かし、赤く染めていく。
氷のHEROであるアブソルートZeroの冷たい零度もそのThe SUNの放つ熱には耐えられるはずもなくその姿は熱線の中に溶けて消え、彼に守られていた僕もまた、その攻撃により赤い光の中に呑まれていった──。
「うっ……ぁアアアアアアアア!!!」
《コナミ》 残 LP 0