ウィッチウォッチで爆笑して全巻衝動買いしちゃった。めっちゃ笑えたし、人気投票1位はお前そんな人気だったんだと驚いたわ。
意識が現実へと向かっていくと同時に身体もまた浮上していく。湖面に沈んだ身体が浮き上がるように、その流れに逆らうことなく無数の泡を引き連れながら僕は一面の青い水の世界から顔を出した。
「──プハーっ!」
顔の表面に空気が触れると同時に、僕は大きく空気を吸い込み肺に送り込んだ。
目覚めると突然呼吸の許されない水中の世界だったため、訳もわからず身体が流れるままに任せたが、そのために少しばかり空気に触れるまで時間がかかり呼吸は荒くなっていた。
水面から顔を出した僕は荒げた息のまま周囲に目を回す。日差しが差し込み照らすそこは巨大な湖の中心。自然豊かな木々に囲まれどこからかは鳥の鳴き声が響いてくる。陽光に反射し目に刺さる湖面の光が眩しく光り輝いている。
そこは幾度も夢の中できたガガギゴの思い出の湖に似ていた。いやそのものだった。
僕は何故ここに、と言う疑問を脇に置き何はともかく水から上がらなければと陸を目指して泳ぎ始めた。
そして濡れそぼった服に多少手間取りながらも陸へと上がった僕はデッキを手にその中身を確認していく。
(わかってたことだけど、プラネットの皆んながいない…………それに愛理ちゃんたち霊使いのカードも……)
やはりと言うべきか、確認したデッキの中身からいく枚ものカードがなくなっていた。心なし軽くなったデッキは酷く頼りなく心細いものとなって現実というものを嫌でも突きつけてくる。
E・HEROのカードは全てある。だからまったく戦えないと言うことはないけれど、万全のデッキでも敗北した大賢者と再び戦うにはあまりにも心許なかった。
それでも戦わないわけにはいかない。暫くはデッキの調整が必要だろうけれど、それが終われば今度こそ……。
と、軽くなったデッキに落ち込みながらも必ず勝つと意気込んでいたその時だった。
森の奥から草を踏み締める音を立てながらこちらに近づいてくる者がいた。
「お前は……勇者コナミだな」
「………あなたは?」
「私の名は召喚僧サモンプリースト。汝をデュエルで殺すべくこの森に参った。汝に恨みはないが死んでもらう。私とデュエルしてもらおう」
暗い外套を着た皺がれた老人である魔法使い。サモンプリーストはその目に暗い意思を乗せながらディスクを構える。
デッキの調整もなにもできていない状態でデュエルはできれば勘弁して欲しいんだけど、精霊相手に逃げるのは難しいだろう。
「起き抜けいきなりデュエルか。まあ、仕方ないよね。いいよ、やろう。僕は死ぬわけにはいかないんだ」
諦めが多分に入った息を吐きディスクを手に濡れた手でデッキを差し込む。多くのカードを失ったHEROのデッキを扱うか、それとももう一つの天使のデッキで戦うか。
迷い悩んだ僕は最も慣れ親しんだデッキを手に取った。
「デュエルの前に一応聞いておきたいんだけど、どうして僕を狙うの?」
「それが大賢者様の意思なれば。我らはそれを行う。それ故に」
「そっか。なら、君は敵ってことだね。負けても恨まないでよ!」
「当然。それが争いの慣わしなれば、恨みつらみは筋違いよ」
濡れたことで張り付く服が気持ち悪い。ポタポタと体から流れ落ちていく水滴を右腕で拭い眼前に立つサモンプリーストを追うようにディスクを構えた。
「「デュエル!!」」
*
「私の先行、ドロー。私は手札からサモンプリーストを守備表示で召喚! その効果により手札の魔法カードを捨てることでデッキからレベル4以下のモンスターを特殊召喚できる。私はエクリプス・ワイバーンを特殊召喚!」
《サモンプリースト》 攻撃力800 守備力1600
《エクリプス・ワイバーン》 攻撃力1600 守備力1000
黒い僧衣を着た魔法使いであるサモンプリーストが一枚の白い札を取り出す。それは瞬く間に燃えて無くなり黒い灰を残す。その黒い灰が形をなすように赤い血脈が体の表面を通っているような線が見えるワイバーンが現れた。
「私はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
1ターン目から召喚された2体のモンスター。
相手がサモンプリーストの精霊であることを考えても意外ということはない。
寧ろ生贄にできないサモンプリーストはともかく、エクリプス・ワイバーンを生贄に上級モンスターを出されなかったことを幸運と見るべきだろう。
エクリプス・ワイバーンの効果を考えても恐らく相手のデッキはドラゴン族デッキ。
魔法使い族中心のデッキではないであろうことに少しだけ驚きながらドローすべくいつものようにデッキに指を置いた──。
「………?」
デッキの上に添えた指が……震えていた。
ピクピクと震え、指が動かない。
早く引けと促すサモンプリーストに反応することもできず、僕の指は蝋で固められたかのように動かないでいた。
「ぐっ……うご…けぇッ!」
渾身の力を込めて腕を動かしカードを引き抜く。
どういうわけか、ただ一枚のカードを抜くことでさえ、通常の何倍もの力を必要としていた。
息を荒げてカードを引いた僕をサモンプリーストは不思議そうな目で見ている。そんな視線が向けられている僕もまた自分自身の不調とも、異変とも言える状態に酷く疑問と違和感を感じていた。
手のひらを見る。
やはり、不自然なまでに震えている。湖に濡れた体が冷えたためではない。これは………。
「──恐れておるな」
「!?」
「戦うことに、命を賭けることに、汝は恐れを抱いておる」
探るような視線で観察していたサモンプリーストが震える手を見つめ戸惑っている僕に憐憫の目を向けている。
「僕が……恐れている!?」
「その震えが証拠よ。如何様にして生き延びたかは知らぬが、汝は一度大賢者様に敗北したのであろう。その時の恐れが、恐怖が、汝を苛んでおるのよ」
その指摘にもう一度震える手を見つめる。
震えは一向になくなることはなく、寧ろ大きくなっているようにすら感じる。
「可哀想ではあるが、一度始めたデュエル。中断はできぬ。さあ、覚悟を決めてデュエルを続けるのだ」
「──くっ!」
恐れている……?
僕が、あれほど好きだったデュエルを……?
「そんな、そんなわけがないっ! 僕がデュエルを怖がっているなんて……僕は、──っ! かつて神呼ばれた亀を守備表示で召喚!」
《かつて神と呼ばれた亀》 攻撃力0 守備力1800
明るい桃色をした小さな亀が甲羅に篭りながら現れる。
一度こいつでモンスターを倒そうと手札に指をかけながら、直前に発作的に変更した護りに強いモンスターであった。
「ハァ……ハァ……。かつて神と呼ばれた亀がいる限り攻撃力1800以上のモンスターを特殊召喚することはできない」
「そうか、それでどうするのだ。モンスターで守りを固め、終わりか?」
「……僕は、カードを1枚伏せてターンエンドだ」
「よろしい。私のターン、ドロー」
サモンプリーストがカードを引く。
なんとかして荒い息を整えようと胸に手を当てながら下を向く。相手が何をしようとしてくるかに意識を向ける以上に、自分自身の不調を整えることに意識を割くことを優先した。
そうして落ち着こうと深く肺に空気を取り込むために呼吸をしていると、だんだんと震えがおさまっていく。そうして完全に止まった手に安心するも、それはサモンプリーストがモンスターを召喚するまでのことだった。
「私は手札からドラゴンを呼ぶ笛を墓地へ送りサモンプリーストの効果を発動、デッキからロード・オブ・ドラゴンードラゴンの支配者ーを特殊召喚。そして今召喚したロード・オブ・ドラゴンを生贄に捧げ、ライトパルサー・ドラゴンをアドバンス召喚する」
「上級モンスターか!!」
《ライトパルサー・ドラゴン》 攻撃力2500 守備力1500
青白い光の線が周囲を飛び回っている白いドラゴン。
僕を守る守備モンスターを大きく上回る攻撃力をもつその竜の登場に無意識のうちに目が見開かれ、足が下がる。
その自分の意思とは関係なく動いた動作に思わずハッと驚き、その足に視線を向ける。大口を開けてこちらに向かってくるドラゴンが視界の端に映り込みながらも、僕はその足から目を離せずにいた。
「よそ見をしていてよいのか。ライトパルサー・ドラゴンは攻撃しておるぞ?」
「──くっ! 僕はリバースカード 激流蘇生を発動! 僕の場の破壊された水属性モンスターを蘇生させ、貴方に500ポイントのダメージを与える!」
「ぬ……ぐう……」
《サモンプリースト》 残 LP 3500
ライトパルサー・ドラゴンの牙に甲羅ごと噛み砕かれたかつて神と呼ばれた亀が消えていく。その死骸ともいうべき甲羅の破片が落ちた場所から重力に逆らうように水流が吹き上がる。
その水の柱から飛び出た甲羅の破片がサモンプリーストにダメージを与え、噴出する水流が噴き終えた後、五体無事な桃色の亀が変わらず甲羅に閉じこもり居座っていた。
「ふむぅ、亀だけあって硬いのォ。エクリプス・ワイバーンでは超えられぬか。致し方ない、ターンエンドよ」
「ふぅ、僕のターン、ドロー」
流れ出た冷や汗を拭う。
心臓の鼓動が激しく、それに合わせるように肩が上下する。
いつもならなんてことない攻防も、今この時だけは窮地に追い込まれギリギリで踏みとどまっている時の緊張感が僕を襲っている。
後退りしたことで擦れた土の跡が僕の今の状態をものがたっていた。
サモンプリーストのいう通り、僕は確かに今、恐怖心を抱いていると……。
「僕は…瓶亀を守備表示で召喚。カードを2枚伏せターンエンドです」
「もう少し攻撃的にきたらどうかね。守りながら攻め時を探るのも戦術であるものだが、そのような弱腰では勇者の名が泣いてしまうぞ」
《瓶亀》 攻撃力200 守備力2100
相手のサモンプリーストの言うことは最もなことだった。それ故に反論することもできず、黙っていることしかできない。
僕が召喚した瓶亀。守備力に優れ、手札を増やす効果も持っている優秀なモンスターではあるが、相手の場にいるライトパルサー・ドラゴンに敵うようなモンスターではない。
隣のエクリプス・ワイバーンを倒すためにもう一度手札の攻撃力で勝るモンスターに手を触れたが、やはりその後に動いてはくれなかった。
こうなってはもう嫌ではあるが認めるしかない。
僕は今、デュエルに恐れ、怯えていることを。
そのために、ライフを1ポイントでも多く守ろうと言う戦術しか選べなくなっている。手札に多く僕のデッキの守りを担当する亀たちが集っているのは僕の心のありように影響してのことなのかもしれない。
僕を守ってくれる亀たちにホッと安心する気持ちと、それと同時にそんな自らの状態に恥じる自分。どちらも否定しようのない、今の僕であった。
それを考慮した上で、このデュエルに勝たないといけない。負ければ死ぬのだから。そしてそれだけではなく生きて愛理ちゃんを助けるために。託された約束を守るために。
「私のターン、ドロー。今の汝相手にこれは必要なかろう。私は手札の光の護封剣を捨て、私自身の効果によりキラー・トマトを召喚。生贄に捧げ、ダークフレア・ドラゴンをアドバンス召喚」
《ダークフレア・ドラゴン》 攻撃力2400 守備力1200
白い光の属性のライトパルサー・ドラゴンとは真逆に位置するかのように黒きドラゴンが召喚された。
白き竜が淡い光の粒を周囲に放っているのに対し、黒い竜は炎の輪を体の周囲に纏わせている。
白と黒、対極に位置する色を持つ2体の竜が並びこちらを見下ろす威圧感は強く、まるで実際に重荷を背負わされているような錯覚まで感じる。
サモンプリーストは静かに気圧されている僕を憐憫と退屈の眼差しで見つめていた。
「バトル。ライトパルサー・ドラゴンで瓶亀を、ダークフレア・ドラゴンでかつて神と呼ばれた亀を攻撃する」
「瓶亀が破壊される前に僕はリバースカード 強欲な瓶を発動。カードを1枚ドローするが、瓶亀がいる時さらに追加でもう一枚ドローできる」
「しかし攻撃を無効にはできまい。そのまま破壊じゃ」
「ぐぅっ!」
僕の亀たちが2体のドラゴンにより一層される。ライフにこそダメージはないが、その破壊時の衝撃により大きく後退させられていた。
「これでもう汝を守るモンスターはいない。エクリプス・ワイバーンでダイレクトアタックだ」
「それは通さないッ! リバースカード バブル・ブリンガーを発動! このカードがある限り、レベル4以上のモンスターは直接攻撃ができないっ!!」
エクリプス・ワイバーンが止まる。僕と攻撃してくるモンスターとの間に境界を引くように無数の泡がポコポコと地面から現れていた。
「……攻めきれぬ。硬い、と言うよりも必要なカードを引けとると言う感じ。勇者と呼ばれるだけの引きはあると言うことか、ターンエンドだ」
「僕のターン、ドロー!」
気持ちは攻勢に出たがっている。だが、出れない。
出れるだけの状態ではない。なら、守りながら勝つ。あまりやったことはないが、それをするしかない!
「僕はゴラ・タートルを守備表示で召喚。このモンスターがいる限り、攻撃力1900以上のモンスターは攻撃できない。さらに装備魔法 最強の盾を装備させ、その攻撃力分守備力をアップさせる。これでターンエンドだ」
「次から次へと、よくそう守りに長じたカードを引けるものだ。羨ましさすら感じるぞ。私のターン、ドロー」
《ゴラ・タートル》 攻撃力1100 守備力2200
感心とも呆れたも言えぬ声色でドローするサモンプリースト。
ゴラ・タートルの召喚により2体の上級ドラゴンの攻撃は封殺され、バブル・ブリンガーにより直接攻撃もできない。
さらに最強の盾を装備したゴラ・タートルをエクリプス・ワイバーンで破壊することも叶わない。
強固な守りの布陣が出来つつあった。
「このまま膠着状態が続くのは望むところではない。少々強引に壊させてもらうぞ」
「なにっ!」
「私はライトロード・マジシャン・ライラを攻撃表示で召喚。効果で守備表示にすることで相手の魔法・罠を破壊できる。バブル・ブリンガーを破壊!」
《ライトロード・マジシャン・ライラ》 攻撃力700 守備力200
白い神官風の服装をした女性が杖を振り上げ光を放出させる。
その光は一条の矢となって僕のバブル・ブリンガーのカードを貫き破壊した。
「くっ、だけどまだゴラ・タートルがいる! このモンスターと最強の盾がある限り、攻撃は──!」
「言ったはず、強引に壊すと、リバースカード バーストブレスを発動! ダークフレア・ドラゴンをリリースすることでその攻撃力以下の守備力を持つモンスター全てを破壊する!!」
「自分のモンスターまで巻き込んでッッッ!!?」
ダークフレア・ドラゴンが輪となっているその炎を全方位へと放つように大きく、大きく広げていく。
その輪に触れたモンスターたちは焼かれ、次々と消えていく。それは4体ものモンスターを並べ優位な立場を立っていたサモンプリーストもまた、例外ではなかった。
ダークフレア・ドラゴンが消え、その広がっていた炎もまた破壊されたモンスターたちと一緒に消えたと思ったその時だった。再び炎が激しく燃え上がり中から生贄にされたダークフレア・ドラゴンが蘇ってきた。
「ダークフレア・ドラゴン!? どうして!!」
「ライトパルサー・ドラゴンが破壊された時、墓地のレベル5以上の闇属性モンスターを復活させることができる。その効果により復活させたのだ」
「特殊召喚効果を持っていたのか!」
「これでようやく攻撃が通る。バトルじゃ、ダークフレア・ドラゴンでダイレクトアタック!!」
ダークフレア・ドラゴンが巨大な一塊の炎をその口から撃ち放ってくる。その炎を避けようにも慄いて動かない身体では避けれるはずがなく、また守る手段さえ失われた僕は全身からまともにその炎を浴び、強烈な痛みとダメージに悲鳴をあげて飛ばされた。
《コナミ》 残 LP 1600
「カードを伏せ、これでターンを終了。どれ、まだやれそうかね。辛いなら諦めることも選択の一つじゃぞ。死ねば楽になるとも言うしの」
「──ぐっ、嫌だ。僕は…死にたくないっ!」
「なれば戦うしか道はないの。立って私を倒して見せよ。汝が真の勇者なれば、それも不可能ではなかろう」
諭すように語りかけるサモンプリーストは敵であると言うのに優しい目をしていた。僕を倒し、殺そうとしているのだけは間違いのないことなのに、それはとても不思議なことであった。
「貴方は、僕を殺そうとしているのではないのですか。何故、僕に戦えと、貴方を倒して見せろと言うのですか」
「少年、私は必要だからここにきたのだ。好き好んで殺したいわけではない。まして怯える子供をいたぶる趣味もない」
「だったら見逃してって……言うわけにもいかないんですよね」
「当然じゃ。私も覚悟してここにおる。少年、君も覚悟を決めよ。覚悟なき者にこの世界は優しくはないぞ」
「覚悟………」
問われた覚悟という言葉に震えの止まらない手を見る。
その手は言っていた。僕には命をかけて戦う覚悟などないことを。
いつかのガガギゴから言われた言葉を思い出す。
死と敗北を恐れないと啖呵を切った僕を大言壮語と笑ったアイツ。ガガギゴは僕が本当は何の覚悟もできていないことをわかっていたのかもしれない。
僕の覚悟という言葉がどれほど現実味のない薄っぺらく見栄が張ったものであるか。覚悟という言葉は軽々しく言っていいものではなかったのだ。
しかし、もはや全ては遅かった。
半端な覚悟のままに僕はこの世界に来てしまった。来る約束を幼いときにしてしまったが故に。
「僕は超電磁タートルを守備表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンド」
《超電磁タートル》 攻撃力0 守備力1800
「やれやれ、いつまでそうして殻に篭るつもりなのか。私のターン、ドロー。手札からアックス・ドラゴニュートを攻撃表示で召喚! ダークフレア・ドラゴンで超電磁タートルを攻撃!!」
《アックス・ドラゴニュート》 攻撃力2000 守備力1200
巨大な斧を手にした黒い軽鎧のドラゴン。その隣で攻撃のタイミングを待っていたダークフレア・ドラゴンの鎌首が跨げ始める。
その咽頭に溜められた炎が吐き出されようとした刹那、ダークフレア・ドラゴンの鎌首を冷たい氷が襲った。
「氷?」
「貴方が攻撃を宣言した瞬間、僕は氷結界を発動させました。攻撃モンスターの攻撃力は0になり、効果も使えず表示形式も変更できない!」
《サモンプリースト》 残 LP 1700
氷結界による反射ダメージによりサモンプリーストのライフが残り半分を切った。守り守り守り続けての漸くのダメージ。時間はかかるが、もう少しで勝てる。そう思えるラインのところまで来ていた。
「攻撃力が消えたか。ならばこれでケアをするまで、私は竜の転生を発動! ダークフレア・ドラゴンを墓地へ送り、ライトパルサー・ドラゴンを特殊召喚する!!」
「!?」
凍りついたダークフレア・ドラゴンが炎に包まれ消えていく。氷結界の氷もその熱に耐え続けることはできず、瞬く間に溶け蒸発していった。
そして、不死鳥が自身を燃やした灰から蘇るように、いくつもの光が舞いながらライトパルサー・ドラゴンが召喚された。
「これで氷結界の効力は消えた。このターンはともかく、次のターンまで耐えられるか? バトル! ライトパルサー・ドラゴンで超電磁タートルを、そして開かれたフィールドをアックス・ドラゴニュートでダイレクトアタック!!」
「まだだ! ライトパルサー・ドラゴンに破壊された超電磁タートルを除外! バトルフェイズを終了させる!!」
「なればこれで私はターンを終える。次こそそのライフを終わらせて見せよう、少年!」
次、次のターン……。
ここまでで多くの守りのカードを使ってきた。守りよりもその多くを攻撃に振っている僕のデッキでありながら奇跡のように舞い込むカードたちももう限界だと伝えてくる。
だから、おそらくここが消えかけでなけなしの勇気を搾り出すところ。
ここで攻撃に出られなければ僕は恐らく負けるっ!
覚悟なんてない。ただ死ぬのが怖いから、全力で生き残りたくてスッとカードを引き抜く。光ることのない儚さを感じるドローは、わずかな可能性を持ってきてくれていた。
「僕はE・HERO バブルマンを守備表示で召喚! 他にカードがないため、僕はカードを2枚ドロー!」
「最後の最後までそうやって身を守るのかね?」
「………いや、僕はここで勝負に出るッ! 僕は手札からバブル・イリュージョンとバブル・シャッフルを発動! このターン、手札から一枚だけ罠を発動でき、さらにバブルマンを手札に戻しライトパルサー・ドラゴンを守備表示にする。そして手札からE・HERO アイスエッジを………攻撃表示で特殊召喚!!」
「なんだとっ! 攻撃表示!?」
《E・HERO アイスエッジ》 攻撃力800 守備力900
黒いシルクハットを被りマントを羽織った奇術師のような服装になったバブルマンがフワリと杖を振る。
杖の先から生まれた無数の泡はバブルマンを包み込み、それが弾けたあとそこにいたのはバブルマンではなかった。
E・HERO アイスエッジ、子供ほどの体躯をした氷のHERO。この状況で、その決して優秀とは言えない低いステータスのHEROを召喚することは今の僕には厳しく、多大な精神力を必要としていた。
震え拒む腕を強引に動かし召喚したその小さなHEROは、僕の心とは裏腹に勇ましく僕の指示を待っている。
僕はゴクリと息を飲み、カッと開いた目で叫ぶように命じる。
「手札を1枚捨てることでアイスエッジは直接攻撃をすることができるッ!」
「直接攻撃! しかし、その攻撃力では私のライフを削り切ることはできんぞ!!」
飛び上がり、中空に留まったアイスエッジが両手の内側に尖り刃のようになった氷の塊を生み出す。
「この瞬間、手札からトラップカード バーバリアン・レイジを発動! アイスエッジの攻撃力を1000ポイントアップさせる!!」
「……攻撃力が上がったことでアイスエッジの攻撃力は私のライフを超える……か。それを防ぐ術もなし。私の負けだな」
敗北を悟り、死を受け入れるかのように瞳を閉ざすその姿は怯え惑う僕とは真逆の様相。
バーバリアン・レイジにより高められた攻撃力がアイスエッジの生み出す氷を大きくし、モンスターたちを飛び越えサモンプリーストを貫いていく。
「ヌ…グゥッ、ォオオオオオッ!!」
苦悶の声を上げアイスエッジの攻撃に耐えるサモンプリーストの姿から僕は最後まで目を離すことはできなかった──。
《サモンプリースト》 残 LP 0
主人公がヘタっている時の描写というか、書くのって難しいんだなと知れた。どうしてもカッコいい姿とかを描きたくなるものだから、真逆の姿を描くのはモチベ的な意味でも難しいんだと知れたのはよかったなあ。