エスカフローネ、敵の親玉が主人公の恋路を覗いてルート分岐させてくるとかマジかよ。少し笑ったぞ。
砂漠の上で獣神王バルバロスの重たい唸り声が響く。
それに対峙しているのは俺の場の2体の悪魔族モンスター。魔サイの戦士と闇の侯爵ベリアル。
2体は互いを守り合うように互いの効果により戦闘でも効果でも破壊されないモンスターとなっていた。
「俺のターン、ドロー! 俺は──」
「──道長くんっ!!」
俺が手札からモンスターを召喚しようとしたその瞬間だった。テントから走ってきた様子のコナミ先輩が結界の外から叫んでいた。
「先輩……!」
「コナミちゃん……」
「2人ともどうしてデュエルなんてしているんだ!! この世界でのデュエルは負けた方は死んでしまうんだよ!? だから今すぐデュエルをやめるんだ!」
赤い結界に阻まれ中に入ることのできない先輩が三沢先輩の隣で叫ぶ。
少し息が乱れているのは走ってきたからなのか、それとも興奮によるものか。
どちらにせよ、その先輩の願いを受け取ることはできなかった。
「残念だけどそうはいかないのよコナミちゃん」
「そうですね。堂本先輩がコナミ先輩を狙っている以上、やめるわけにはいきません」
「堂本くんが、僕を?」
堂本先輩と俺の言葉に瞠目した様子で先輩は訳がわからないという顔をする。
「そうよ。アタシはアナタを殺したい。道長ちゃんはアナタを守りたい。相反する思い。だったら争うしかないじゃない」
「な、何を言っているんだ君は……」
「先輩、すみませんけど危ないので下がっていてください。大丈夫です、先輩は俺が守りますから」
「道長くんまで……!」
俺と堂本先輩を右往左往する視線は先輩の混乱具合を示している。
今ここにいる俺でさえ何故堂本先輩がコナミ先輩を狙うのかよくわからないのだから、目を覚ましたばかりの先輩は俺以上に訳がわからない状態だろう。
「コナミ、このデュエルを止めることはできん。どうなるかはわからないが、今は2人のデュエルを見守るんだ」
「そんなっ! なんとかする方法はないの、三沢くんっ!!」
懇願する先輩に三沢先輩が無言で首を振る。
そんな様子を見ながら俺はデュエルを再開するため、前を向いた。
「俺は手札からハ・デスの使い魔を召喚! リリースすることで闇の侯爵ベリアルの攻撃力と守備力を700ポイントアップさせる!」
《闇の侯爵ベリアル》 攻撃力3500 守備力3100
青肌をした小さな悪魔ハ・デスの使い魔がその身を捧げるように青い炎へと姿を変え、ベリアルの黒い大剣へと吸収されていく。
それによる攻撃力の強化は対面に居座るバルバロスを超えていた。
「これでバルバロスを倒せる! 俺は闇の侯爵ベリアルで獣神王バルバロスを攻撃!
「ふっ、だったらこの瞬間、アタシはバルバロスにリバースカード 幻獣の角を発動して装備、その攻撃力を800ポイントアップさせるわ!!」
「なにっ!?」
《獣神王バルバロス》 攻撃力3800 守備力1200
バルバロスの頭部にヘラジカの角のような弧を描いた角が生える。
それはベリアルに与えられた青い炎同様にバルバロスの力を高めていた。
「アナタが攻撃力を上げて突破しようとしてくることは想定済みよ。これで返り討ちよ!」
「くっ、だが魔サイの戦士による効果でベリアルが戦闘破壊されることはないッ!」
バルバロスへと突貫していたベリアルの大剣とバルバロスの槍が交差する。そして、2体がすれ違い反射ダメージを覚悟した俺の目に映ったのは、バルバロスの槍によって膝をついたベリアルが爆発し破壊される光景だった。
《道長》 残 LP 3500
「バカな……どうしてベリアルが破壊されている!?」
「ふふふ、甘いわね道長ちゃん。アタシはアナタの攻撃に合わせて永続トラップ スキルドレインを発動させていたのよ」
「なっ! スキルドレインをっ!!」
それはライフを1000ライフ払う代わりにあらゆるモンスターの効果を無効にする罠カード。
確かめるように幻獣の角の隣にあるカードを見ると、そこにはスキルドレインのカード名が記されていた。
《堂本》 残 LP 700
スキルドレインが魔サイの戦士の効果を失わせている。それは先輩の獣神王バルバロスも同様であったが、元の攻撃力の高さを持つが故に先輩の盤面にそこまでの支障はない。
しかし、俺は違う。
攻撃よりも守りに特化した盤面を敷いていたためにスキルドレインの無効効果はダイレクトに効いていた。
その事実と失われたベリアルに肩を落としながら墓地の炎魔の触媒の効果を発動させた。
「ベリアルが破壊されたことで墓地の炎魔の触媒の効果が発動。このカードを手札に戻す」
「アタシもアナタのベリアルを返り討ちにしたことで幻獣の角の効果が発動。バルバロスがモンスターを破壊したことでカードを1枚ドローするわ」
お互いの手札が増える。しかし、それによって俺に有利に働く行動ができるわけではなかった。
「……俺は魔サイの戦士を守備表示に、ターンを終える」
「アタシのターンね。ドロー! バトルよ! 獣神王バルバロスで魔サイの戦士を攻撃──スパイラル・シェイパー・2nd!!」
「ぐぅ!」
ベリアルに続き、バルバロスの槍に貫かれた魔サイの戦士が破壊される。しかしそれにより、魔サイの戦士の効果が発動した。
「俺は破壊された魔サイの戦士の効果を発動! デッキの悪魔族である魔神童を墓地へ送り、さらに墓地へ送られた魔神童はその効果で俺の場にセットされる!」
「魔神童ね。でも、スキルドレインがある限り、効果を扱えない。脅威ではないわね。アタシは幻獣の角の効果でカードを1枚引くわ」
《魔神童》 攻撃力0 守備力2000
自身の優勢が揺るがないものであると考えているのだろう。カードを引く堂本先輩は悠然と笑みを浮かべている。
そしてそれは間違いではない。この守るしかない状況が続けば自ずと限界が訪れ、いずれ俺は負ける。それは目に見えているのだから。
「アタシはカードを1枚伏せてターンエンドよ」
「俺のターン、ドロー!」
スキルドレインを破壊できるカードを、そう願い引いたカードは俺の願いとは裏腹にモンスターカードであった。……が、俺に落胆の感情はなかった。
(デス・ガーディウス、ここできてくれるか。スキルドレインの無効効果はフィールドモンスターのみ。なら、こいつを使えば……)
「よし、こいつでいくっ!」
「あら、なにかいいカードを引いたようね」
「ああ、そのバルバロス、利用させてもらう! 俺は手札の炎魔の触媒を墓地へ送ることでメルキド四面獣を特殊召喚! そして魔神童とメルキド四面獣をリリースすることで仮面魔獣デス・ガーディウスを特殊召喚する!!」
《仮面魔獣デス・ガーディウス》 攻撃力3300 守備力2500
狂笑が砂漠に響き渡る。
聞くものによっては不快に感じるであろうその笑い声も、打開策を模索しなければならない今の俺にとっては頼もしい声として耳に届いてくる。
長首の先にある仮面に隠された顔と両肩につけられた2つの仮面。鋭い爪と悍ましい緑のオーラは悪魔そのもの。
俺のデッキのエースの1体の姿がそこに召喚されていた。
「デス・ガーディウスを出してきたのね。でも残念、普通の相手ならその攻撃力で十分なのでしょうけど、アタシのバルバロスちゃんを倒すには物足りないわね」
「ええ、ですがお忘れじゃないでしょう。デス・ガーディウスには破壊された時に起動する効果があることを」
「…………自爆特攻が狙い?」
「デス・ガーディウスの効果は墓地で発動する効果。スキルドレインでも止められませんよ」
「やめておきなさい。それじゃあアタシには勝てないわよ」
虚勢………それとも牽制か?
表情を消して淡々と告げるその忠告の真意が計れない。
ただわかるのは、この状況を打開するにはリスクを承知で特攻するしかないと言うことだけだった。
「なにがあるにせよやるしかないんだ。デス・ガーディウスで獣神王バルバロスを攻撃──ダーク・デストラクション!!!」
「忠告はしてあげたわよ…………」
デス・ガーディウスが黒い電を両腕から発しながらバルバロスに飛び掛かる。
当然というべきか。攻撃力で劣るデス・ガーディウスの両腕の電はバルバロスのその目前で当たることなく霧散する。それは、飛び掛かったデス・ガーディウスの心臓にはバルバロスの紅い槍が深々と突き刺さっているためであった。
《道長》 残 LP 3000
「デス・ガーディウスは墓地へ送られた時、その呪いの仮面を残し、相手モンスターに装備させる!!」
心臓を貫かれ破壊されたデス・ガーディウスの亡骸の中から一つの仮面が浮かび上がりバルバロスの顔にへばりついた。
それは遺言の仮面。
デス・ガーディウスの呪いであり、その仮面を装備されたモンスターのコントロールを奪う効果を持っていた。
「これでバルバロスは俺のモンスターに…………なぜ俺の場に来ないッ!?」
仮面をその顔につけられ苦しみもがいていたバルバロスが動かない。
顔につけられた遺言の仮面はそのままに、仮面により意思を失いながらもじっと先輩の場で佇んでいる。
「だから言ったでしょう、やめておきなさいと。アタシは遺言の仮面が発動した瞬間、リバースカード 洗脳解除を発動させたわ。このカードがあるかぎり、モンスターは元々のコントローラーの元へと戻る」
「洗脳……解除…………!」
半ば呆然と発動されているそのカードを見つめる。
予想外、という程突飛なカードでも珍しいカードでもない。コントロール奪取効果メタのカードとしては強力でレアではあるがそれだけ。
決して珍しいカードではないが、今この時にあって欲しくないカードであるのも確かであった。
上手くいかないことが続く、そんな憂いの感情が胸を奔る。
決して、手札が悪いわけではない。デッキも俺の想いに応えるように回ってくれている。それでも状況を打開できない。悪くなるばかり、それはつまり、自分よりも相手がデュエリストとして優れているということである。
純粋な実力差が明確な差として現れているこのデュエル、逆転は極めて難しい。いずれ超えるということならともかく、2度目のないデュエルだ。
今ここで先輩を超える力を、奇跡を起こさないことには勝ち目はないと、そのカードを見て悟る。
「道長ちゃん、アナタは決して弱いデュエリストではないわ。でも、アタシには勝てない。このデュエルにかける想いの強さはアタシの方が優っているのだから」
「ぐっ、そんな。そんなはずが…………っ!」
弱っている先輩を守るという思いよりも、殺すと断言してきた人の方が強い思いでデュエルしているなどという妄言に歯を食いしばる。
今現在進行形で追い詰められている自分ではその言葉に反論するにはあまりに乏しく、弱かった。
「まだだ、まだ負けたわけじゃない。俺は手札の予想GUYを発動! デッキからレベル4の通常モンスターである仮面呪術師カースド・ギュラを守備表示で召喚! さらにデス・ガーディウスが破壊された際に手札に戻っていた炎魔の触媒を守備表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
《仮面呪術師カースド・ギュラ》 攻撃力1500 守備力800
《炎魔の触媒》 攻撃力1600 守備力200
無理に自分を奮い立たせるように気勢を上げてモンスターたちを並べる。手札の全てを使い切り、次のターンまで持ち堪えさせるのが目的であった。
「アタシのターン、ドロー! アタシは手札を1枚捨ててバルバロスに閃光の双剣ートライスを装備! このカードが装備されているモンスターは攻撃力が500下がる代わりに2回攻撃することができる!!」
「2回攻撃!?」
守りを強固にするために手札を使い切った俺とは違い幻獣の角により潤沢にある手札を削りバルバロス1体で2体のモンスターをなぎ倒せるカードを装備させた。
装備カードの双剣を装備したバルバロスは元の槍と盾をいずこかへとしまい込み、その手には細みの剣を両手に握っている。使い慣れた槍から慣れない双剣に変えたためか下がった攻撃力も、元々が高い攻撃力を持つためにデメリットになっているとは言い難い。
少なくとも、並のモンスターでは壁にもなりえない攻撃力を依然保っているのは確かであった。
「さらにこれで終わりよ。手札から深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトを攻撃表示で召喚!!」
《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》 攻撃力3000 守備力3000
夜闇の上空の何もないところから列車が走るための2本の鉄筋と木材で組まれた長いレールが現れる。そしてガタンガタンとレールの上を走りながらその鋼鉄の騎士は召喚された。
「攻撃力3000のモンスターを生贄もなしでっ!」
「アタシの場に何もなければ攻守は0で召喚されていたわ。今はスキルドレインのおかげで攻撃力は戻っているけどね」
「妥協召喚か!」
2度の攻撃権が付与されたバルバロスと新たに召喚された最上級モンスターの登場に背後で見守る先輩方からも悲痛な声が漏れる。
俺の残りライフは3000。バルバロスにせよナイト・エクスプレス・ナイトにせよ、どちらの攻撃を受けても耐えきれない。敗北が間近にまで迫っていた。
「バトルよ! アタシは獣神王バルバロスで2体のモンスターを攻撃! さらにナイト・エクスプレス・ナイトでダイレクトアタック──これで終わりよッ!!」
「うぉおおおおッ! まだだァ!! リバースカード ガード・ブロック! 直接攻撃による戦闘ダメージを0にし、カードを1枚引く!」
「そのカードじゃあモンスターを守ることはできないわねッ!!」
バルバロスが2本の剣を振り回し俺の前で身を守っている炎魔の触媒とカースド・ギュラを切り裂く。それに続くようにナイト・エクスプレス・ナイトが俺に向けて剣を振り下ろしてくるがそれは俺に届く直前で見えない壁に阻まれ弾かれていた。
「うふふ、中々耐えるじゃない。でもそろそろ息が切れてくるころかしらね。カードを伏せてターン終了よ」
「まだだ。まだ……俺のターン、ドロー!!」
そのカードを見た俺の胸に去来したのはようやく来たという喜びの感情と、なぜこのタイミングでという疑問の声であった。
「道長、あいつ何を引いた。ドローした途端固まったぞ」
「わからない。でも、悪いカードじゃないと思う。諦めているようには見えないし、なにか、悩むようなカードを引いたんだろうけど」
引いたカードを見て手札を見ながら固まる俺の様子に眉を顰める堂本先輩。さらに後ろからは三沢先輩とコナミ先輩の困惑した声が聞こえてきていた。
(サイクロン………これを使えば洗脳解除を破壊できる。そうすれば遺言の仮面を装備しているバルバロスが俺の場に………2回攻撃でゲームエンドまで持って行ける。だが、もう一枚の俺の手札、なぜ今こいつが、なんでこのタイミングで俺の手札に…………)
俺は苦悩の渦中にいた。
引いたカードはサイクロン。待ち望んでいた逆転の可能性を秘めたカード。しかし、もう一枚の手札が問題であった。
も一枚の手札、それはイタズラの大精霊ハロ。
春香から譲り受けたデス・ガーディウスやマスクド・ヘルレイザーに並ぶ俺のデッキの切り札の1枚だ。その効果は俺の墓地の悪魔族の数だけ攻撃力を上げるか、効果ダメージを与える効果。どちらを選んでも、先輩の残りライフを削りきれる効果である。
だからこそ悩みの原因になりえた。
ハロの効果を阻害するスキルドレインを破壊するか、洗脳解除を破壊するか。選べる道は二つに一つ。どちらもは選べない。
(何もこんなときに手札に来なくても、こんな状況でもなければ悩まずにすんだと言うのに! 名前通り、イタズラ気分で手札に来たってのか?)
洗脳解除にしてもスキルドレインにしても片方を破壊することで勝利にはつながる。問題は先輩の場に伏せられた1枚のリバースカード。それがどんなカードかによって勝敗は決まるだろう。
そうして悩み始めてどれぐらいが経っただろうか。
しびれを切らしたように、憮然とした表情で俺の決断を待っていた堂本先輩が何事かを口にしようとした瞬間、俺は覚悟を決めた様に顔を上げ背後で見守るコナミ先輩に振り返った。
「先輩、覚えていますか。中学で先輩からデェエルを教わり始めた頃に、一番大切なことだって言って初めに教えてもらったことを」
「僕が君に教えたこと?」
「俺は今でも覚えて、この胸に刻み込んでいます。デュエリストは自分を信じて、デッキを信じて最後まで戦うんだってことを。たとえ負けるのだとしても、前を見ているんだってことをッ!!」
中学校で自分を変えるために先輩にデュエルを教わり始めた頃、何度デュエルしても勝てないことに悩む自分に教えてくれたこと。
それは諦めない心、カードを信じる気持ち。
そして、勝敗の有無に関わらずデュエルを楽しむこと!!
「俺も、そう信じていますッ!! 俺は手札からサイクロンを発動! 俺が破壊するのはスキルドレインだ!!」
「──サイクロンですって!?」
切り裂くような強烈な竜巻が砂漠の砂を巻き込みながら先輩のカードに突き進む。
その嵐のような風に腕で顔を守る先輩の伏せられたカードは発動しない。発動したサイクロンはモンスターの効果を無効にするスキルドレインのカードを穿ち破壊していった。
「これが俺の最後のカード! 俺は手札からイタズラの大精霊ハロを攻撃表示で召喚!! ハロは召喚時、相手に攻撃力がアップする効果か、効果ダメージを与える効果を選ばせることで自身の効果が決まる!!」
箒に跨った少女であるハロが笑いながら夜空を駆けている。
上空から向けられるその曇りのない楽しそうな顔は堂本先輩に向けられ、彼の選択を待っており、その強力なエースの登場に背後で観戦している先輩たちの声が沸き上がっている。
「たしか、ハロは墓地の悪魔族モンスターの数だけ攻撃力を800ポイント上げるのよね。いいわ、アタシは攻撃力の増加を選択しましょう」
「攻撃力アップか。なら、今の俺の墓地にいる悪魔族モンスターの数は9体。よってその攻撃力は──」
《イタズラの大精霊ハロ》 攻撃力7200 守備力0
「7200!?」
「これが最後の攻撃だ! 俺はイタズラの大精霊ハロで獣神王バルバロスを攻撃──
ハロが上空に高く高く舞い上がる。
夜空を染めあげるように、無数のカボチャが現れその口内の小さな灯が明かりをつけていた。
そのカボチャが一斉に笑い声を奏で、バルバロスへと向かい始める。
歓声と笑い声が木霊するフィールドに誰もが俺の勝利を確信していた。ただ一人、その攻撃を向けられている先輩だけは迫りくる攻撃から不敵な笑みを崩してはいなかった。
「見事ね道長ちゃん。でも、敗けては上げられないのよねえ! アタシはリバースカード 禁じられた一滴を発動! 深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトを墓地へ送り、イタズラの大精霊ハロの効果を無効にする!!」
「なにっ!?」
「無駄なのよ! どう抗ってもアタシの勝利は揺るがないッ!!」
フィールドの中心に水が一滴落とされる。
それは砂漠に波紋を作り、上空をオレンジ色に染め上げ飛びまわるハロを巻き込みその力を失わせていた。
「効果が無効になったハロの攻撃力は0に戻る。さあ、これでフィニッシュよ──消えなさいッ!!」
「くっ、それでも──ハロ! 俺の生涯最後のバトルだッ! 夜空を明るく照らせッ!!
力を失いそのカボチャの火も乏しいハロに視線を合わせ、意思を伝える。
ハロは俺の意思を汲むようにその乏しい火を精一杯に燃やす。その火は弱さゆえの儚さを見せながらも強く、強く輝いていた。
怒声を奏でながらその四歩脚で跳び上がったバルバロスが上空で立ち向かわんとするハロの前に立つ。小さく、抗う力もないハロにその両手の剣を振り下ろした。
「ぐぅああアアアアッッッ!!!」
「アーハッハッハッハッ!!!」
《道長》 残 LP 0
破壊されその衝撃と共に膨大な戦闘ダメージが降り注ぐ、その痛みと衝撃に叫ぶ俺と、勝利した先輩の狂気すら感じさせる笑声が闇に暮れた砂漠に広く木霊するのだった──。