初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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RD潜脳調査室、女性キャラがなんだかもっちりしてるな。


大地の神、断罪の剣 ②

 

 紫色に染まり、一番星が顔を覗かせ始めた砂漠の上で僕と堂本くんのデュエルは続いていた。

 

 強敵である獣神王バルバロスは砂塵のバリアーダスト・フォースーによってセットされ、裏守備表示へとかわったことで無力化されている。

 その反対に賑やかなほどに可愛らしい踊りを見せる僕の場の3人の妖精たちがカードを引いた僕に愛らしく笑顔を振り撒いていた。

 

「踊る妖精は僕のスタンバイフェイズに守備表示でいた場合、ライフを1000回復する」

 

 

《コナミ》 残 LP 3600

 

 

 回復したライフに感謝を述べ、踊る妖精たちはその軽やかな踊りを止める。前を向いた僕の視線の先には伏せられたバルバロス。

 まずはこいつを迅速に倒し、生贄などの利用をされないための戦術をする。それがドローしたカードと相談した僕の判断であった。

 

「僕は踊る妖精をリリース、手札から天空騎士パーシアスを攻撃表示で召喚! 守備表示のバルバロスを攻撃──聖なる一閃!!」

「──ッ!」

 

 

《天空騎士パーシアス》 攻撃力1900 守備力1400

 

 

《堂本》 残 LP 1100

 

 

 青い鎧の上から真っ白な羽を身体に包み込んだ天空の騎士パーシアス。

 バルバロス同様、下半身が人ではない4本の足を持つモンスターではあるが、その姿は真逆とも言えた。

 

 バルバロスが荒ぶる猛獣ならば、パーシアスは洗練され、静謐さを漂わせる騎士そのもの。

 彼はその手の剣をまっすぐに振り下ろしバルバロスを切り裂いた。

 

「パーシアスには貫通効果がある。攻撃したモンスターの守備力を攻撃力が超えていればその分ダメージを与える。さらにパーシアスがダメージを与えた時、カードを1枚ドローできる!」

 

 パーシアスの効果によりカードを引く。

 その時、突如として異変は起こった。

 

「!?」

 

 まるで、時が止まった様に、その場を静寂が包んだのだ。

 

(なんだこれは……何が起こっているんだ……)

 

 静寂の世界では、動くことはできなかった。

 本当に時間を止められた様に指一本として動かそうとしても動かず、身体もまた動かすことができない。

 

 意識だけが、その場に取り残されていた。

 

『貴方は何故戦うのですか?』

 

 静寂の世界で再び耳に声が届く。

 少年か少女か……先日から僕に囁く、何者かの声だった。

 

(これはいったい、君がしているのか?)

 

 声は答えない。

 しかし、声の主なのだろう。白く細い柔らかな腕がそっと顔の横を通過し、堂本くんを指差した。

 

『彼は己の全存在を賭けて貴方に挑んでいます。それは願いのため、決して叶うことのない願いに手を伸ばすために友すら手にかける覚悟であの場に立っている。貴方はなんためにここにいるのですか?』

 

 声は問いただす。

 僕の疑問を異に返さず己の問だけを投げかけてくる。

 そこに不満がないとは言えないが、彼女は味方だと信じ僕は自分の思っていることを伝えた。

 

(道長くんが倒された。彼の弔いのために、彼は僕に強くあることを望んでいた。だから──!)

 

『だから友達を殺す。それが彼の望んだあなただと言うのですか?』

 

 僕の勢いをせき止めるように、声は続く。

 

『友達と争うあなたが、彼の望みなの?』

 

 その言葉にぐっと、僕は喉を詰まらせる。

 それが道長くんの望みであると、僕は強く言い返すことができなかった。

 

(だったらどうすれば………堂本くんは僕を殺そうとしているんだよ!?)

 

『どうするかを決めるのはあなた。留まることも、引き返すことも叶わない戦いの中で、あなたの強さを見つけなさい』

 

 静寂が終わる。

 気が付けば、柔らかな風が砂を揺り動かす元の砂漠に戻っていた。

 

「どうしたのコナミちゃん。早くデュエルを続けなさいな」

「あ………うん。僕はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

「そう、ならアタシのターンね。ドロー!」

 

 僕は音が戻った砂漠の上でカードを引く堂本くんを見ながら今の問答について考えていた。

 

 戦いの中で強さを見つけろと声は言った。

 今の僕は道長くんの言った強さとは違うものだからと。

 

「だからって、どうしろって言うんだ。どっちにしろ敗けたらどちらかが死ぬっていうのに…………」

「何をぼそっといってるの! アタシは手札から森の聖獣 キティテールを守備表示で召喚! このモンスターが召喚された時、墓地にいるモンスターと同じ種族のモンスターをデッキから墓地へ送れるわ!」

 

 

《森の聖獣 キティテール》 攻撃力200 守備力200

 

 

「デッキから墓地へ………同じ種族ということは獣戦士族か!」

「アタシは暗黒のマンティコアを墓地へ送る!」

 

 聖獣と名付けられた2匹の子猫が互いの尻尾を追いながらぐるぐると回る。その円の中心から光が生まれるようにバルバロスの影が浮かび上がり、堂本くんのデッキから飛び出した1枚のカードがその影に吸い込まれて行った。

 

 墓地へ送られたそのカード名に覚えがあり、僕はピクリと反応した。

 

「マンティコアは確か…………」

「そう、エンドフェイズ時に場の獣族を墓地へ送ることで墓地から特殊召喚ができるモンスター。アタシは聖獣キティテールを墓地へ送ることで暗黒のマンティコアを特殊召喚する!!」

 

 

《暗黒のマンティコア》 攻撃力2300 守備力1000

 

 

 2本足で立つ獅子の身体に蠍の尾、そして黒い鳥類の翼を広げた暗黒のマンティコアが雄たけびを上げながら2匹の子猫を代償に召喚された。

 その攻撃力はレベル6の上級モンスターの中では高い方で、パーシアスを超えていた。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 マンティコアが召喚されたと言うことは彼はエンドフェイズに入ったということ。そしえ、既に堂本くんのターンは終えたと言うことでもある。

 デュエルディスクのランプもそう示しており、それを見た僕はデッキからカードを引いた。

 

 暗黒のマンティコアは素材さえあれば何度でも蘇生が可能な厄介なモンスター。

 条件さえそろえれば、無限に蘇ることさえ可能とする。

 

「なら、他にモンスターがいない今のうちに倒すのがベスト。まずは倒せるモンスターを持ってくる! 僕はリバースカード 聖邪のステンドグラスを発動! 僕の場に天使族がいる時、カードを3枚引き、手札を2枚デッキの下に戻す!」

 

 僕の真上に天使と悪魔の柄の美しいステンドグラスが現れる。

 そのステンドグラスに描かれた天使である守護天霊ロガエスが光り輝き、僕に虹を降り注いでいた。

 

 その光に導かれるように、デッキから3枚のカードを引く。

 

「どうやら、いいカードは引けなかったみたいね」

「いや、そうでもないさ。僕は手札を2枚、デッキに戻す」

 

 僕の表情が少しだけ曇ったことを悟った堂本くんがにやけ顔を見せる。

 それは当たらずも遠からず。

 

 最高と呼ぶには程遠いカードがそこにはある。しかし、悲嘆するほどではない、このデッキの頼れるモンスターが来てくれていた。

 

「僕は天空騎士パーシアスをリリースし、天空勇士ネオパーシアスを特殊召喚する!!」

 

 

《天空勇士ネオパーシアス》 攻撃力2300 守備力2000

 

 

 パーシアスの全身から極光が溢れ、その翼を大きく広げるようにその姿を進化させた。

 生物的であったその姿は黄金と青に塗られた金属の身体をしており、より非生物的で人とはかけ離れた原始的な天使に近い造形をしている。

 

 本来ならば天空の城というフィールド魔法で力を発揮するモンスターであるためか、その輝きと威光は鳴りを潜め、静かにその巨体を宙に漂わせていた。

 

「バトルだ! 天空勇士ネオパーシアスで暗黒のマンティコアを攻撃!!」

「相打ち狙い!?」

 

 宙に浮くネオパーシアスの巨大な剣が暗黒のマンティコアを捉える。

 向かってくるその攻撃に合わせるように、咆哮を上げながらマンティコアも跳び上がりネオパーシアスへと飛び掛かった。

 

 2体は互いの攻撃に耐えきることはできず巨大な爆発を巻き起こしながら破壊され、その場には塵とて残さない。お互いのモンスターの爆発が吹き上げた砂を風が吹き飛ばしていった。

 

「君の場にモンスターがいない今、暗黒のマンティコアの効果が発動することはない」

「だからといって、苦労して召喚したネオパーシアスを相打ちにしてまで破壊してくるなんて………こういう場合、流石の決断力と言うべきなのかしらね。でも、その結果あなたの場にもモンスターはいないわ。がら空きでターンを回すつもり?」

「いや、そのつもりはないよ。僕はクリアクリボーを守備表示で召喚し、ターンエンドだ」

 

 

《クリアクリボー》 攻撃力300 守備力200

 

 

 小さなと呼ぶには少しばかり誇張が過ぎる大きさのクリボーが上級モンスターたちの消えた砂上に召喚される。

 どこか着ぐるみ感を感じさせるその紫色の毛で全身を覆っているモンスターは縮こまりながら、その身を守っていた。

 

「アタシのターン、ドロー! ………ふふふ、来たわね、後はこれを捨てれば勝てるわ!」

「!!」

 

 ドローした堂本くんの顔に浮かんだ笑み。それは勝利を確信した者の笑みだった。

 よほど強力なカードでも引いたのか、堂本くんの口角がつり上がり喜色が浮かんでいた。

 

「アタシは手札断殺を発動! お互いに手札を2枚墓地へ送り、その後カードを2枚ドローする! アタシはマスマティシャンとアマリリースを墓地へ送るわ!」

「……僕も手札を2枚捨てて、2枚ドロー!」

 

 よほど興奮しているのか、堂本くんは言う必要もない捨てたカードの名前を言いながらカードを交換する。僕も同じようにカードを引きながら、何を引いたんだと疑問の目を投げつけていた。

 

「これで今、アタシの墓地には5体の地属性のモンスターが揃ったわ!」

「5体?」

「そう、このモンスターは墓地に地属性モンスターが5体のみの場合特殊召喚できるモンスター。このモンスターで勝負を決めるわ!!」

 

 5体の地属性モンスターで召喚されるモンスター。

 覚えのない召喚条件だが、似たようなカードで言えば愛理が使用していたダーク・アームド・ドラゴン。一度召喚できてさえしまえば、ゲームエンド級の力を発揮できるモンスターだ。

 

 それと同系統の召喚方法を必要とするカードを堂本くんの手札にはあり、また、その難しい召喚条件を揃えたということ。

 それほどの厳しい召喚条件をクリアすることで召喚できると言うことは相応に強力なモンスターということでもある。

 

 それは彼の勝ち誇った笑みを見ても一目瞭然であった。

 

「これがアタシの切り札よッ!! アタシは手札から地霊神グランソイルを特殊召喚!!!」

「地霊神ッ!? これはッ──!?」

 

 

《地霊神グランソイル》 攻撃力2800 守備力2200

 

 

 大地が揺れ動くような地響きを引き起こしながらその規格外ともいえる長身をした黒い巨神が召喚された。

 空を見上げなければその全長が把握できない程のバカげたサイズをしたそのモンスターはバルバロスを優に超える威圧感で場の空気を圧迫し、重苦しい空間を作っている。

 

 僕は目をこれでもかという程に開いて食い入るようにそのモンスターを見上げ、ともすればその重圧に屈しないように膝に力を入れた。

 

「これが、君の切り札! 奥の手かッ!!」

「そうよ。そしてグランソイルは大地の神。召喚時、同じ地属性のモンスターを復活させる効果を持っているのよッ!!」

「蘇生効果か!! 今、君の墓地にある地属性といえばっ!!」

「そうよ。アタシは墓地から獣神王バルバロスを特殊召喚するわ!!」

 

 

《獣神王バルバロス》 攻撃力3000 守備力1200

 

 

 グランソイルが巨大な手でごっそりと砂漠の砂を掴み取る。

 そして握りこんだ拳を開き、その砂を落とした時、その砂はバルバロスの形をとり召喚されていた。

 

「あなたの場にはモンスターが1体。この2体の攻撃を防ぐことができて!?」

「くっ」

「バトルよ! 獣神王バルバロスでクリアクリボーを攻撃──トルネード・シェイパー・2nd!!」

 

 バルバロスの槍がクリアクリボーを貫く。

 小さな手で身を守ろうと抗ったクリアクリボーだが、バルバロスの凶悪な槍の前ではそんな守りはないも同然、抵抗もむなしくクリアクリボーは破壊され墓地へと送られて行った。

 

「さらに地霊神グランソイルでダイレクトアタック──グラン・アースクエイク!!」

「させないっ! 僕は墓地のクリアクリボーの効果を発動! このカードを除外し、デッキの上から一枚カードを捲る。そのカードがモンスターだった場合、特殊召喚しそのモンスターとバトルさせる!」

「それで防ぐつもり! そんな都合よく引けるものでも──いえ、アナタなら!!」

「僕はクリアクリボーの効果で一枚ドロー!!」

 

 グランソイルの巨大にすぎる腕が砂漠に叩きつけられようとしていた。風を切り裂きながら振り下ろされていく腕は暴風と圧倒的な暴威で僕の体を叩き潰そうとしてきたが、その手の前にクリアクリボーが現れた。

 

 クリアクリボーはその身を大きく膨らませながら四つに破裂する。さながら栗が割れて中身が飛び出してくる様に。

 

 そして、別れた体の中には1人の弓を持ち桃色の服を着た少女がその身を守っていた。

 

「僕が引いたのはハイ・キューピット! モンスターカードだ!!」

「やはり引いてきたっ!? 構わないわ! 叩き潰しなさいっ!!」

「ぐぅうううッッッ!!」

 

 グランソイルの腕がハイ・キューピットを砂漠に叩きつける。

 その拳が地面に叩きつけられた衝撃は爆発的な揺れを引き起こし、僕の身体を大きく後方へと吹き飛ばしたほどだった。

 

「ハ、ハイ・キューピットは相手によって破壊された時ライフを1500回復させる」

 

 

《コナミ》 残 LP 5100

 

 

 地面に倒れ伏し、息も絶え絶えになりながらも効果を発動させる。

 ハイ・キューピットの散り際に残した弓矢が僕のライフを回復させていた。

 

「今ので攻めきれないなんて、やっぱり引きが強いわねコナミちゃんは。アタシはこれでターンを終えるわ」

「ぐっ、僕のターン、ドロー! …………あれは?」

 

 砂漠に倒された体をなんとか起こし、カードを引く。そんな僕の目にそれは映り込んでいた。

 

 たとえデッキに目を映していても、グランソイルのその存在感と巨体が目に映さずにいることは難しい。そのモンスターと比較すればバルバロスさえ、遠く霞んでしまう。

 

 そのグランソイルの全身を薄く黒い、闇の様な膜が覆っていた。

 

「あれはいったい……闇?」

『あれは彼の心の闇。堂本工事という人間の後悔と妄念が生み出した闇の力。それが、あのモンスターに力を与えている』

「心の……闇……」

 

 語りかけられる声に、もう驚きはなかった。

 僕にしか聞こえていないその声は続く。後ろから伸ばされた彼女の指は堂本くんを指し示している。

 

『彼を見なさい。あの過去に執着する哀れな罪人を。貴方には見えるはずです。堂本工事の闇に囚われ、旅立つことも許されずにいる幼い魂の存在を』

 

 その声に従って、目を凝らすように堂本くんをじっと見つめる。

 

 そうして見つめていると、少しずつ見えてくるものがあった。それは小さく白い塊。黒い靄に全体を覆われ、堂本くんから離れることのできずにいる子供の魂がそこにあった。

 

「あの子はなんで……」

『失われた命の回帰。それを堂本工事は望んでいる』

「失われた命……? まさか、堂本くんは死んだあの子供を甦らそうとしている!? そんなこと──」

『不可能ではないと、彼はそう考えているのでしょう。世界の創造すら可能とする貴方の力なら、彼を蘇らせることも。過去を変えることさえも……或いはそのような微かな希望に縋っているとも言っていい。そうすることが贖罪になると』

 

 幼い命の蘇生と贖罪……それが堂本くんの望み。

 心の闇の正体………!!

 

「だからって、道長くんを殺してまで……そんなの、そんなの許せるはずがないッ! 僕は手札から死者蘇生を発動! 墓地の守護天霊ロガエスを──」

「そうはさせないわっ! アタシはリバースカード 魔宮の賄賂を発動! カードを1枚ドローさせる代わりに魔法・罠の発動を無効にする!!」

「くぅっ!」

 

 堂本くんの心の闇の正体と望みを知り芽生えようとした同情の気持ちを振り払うように発動した死者蘇生が無効化される。

 

 起死回生のカードを無効にされたことに呻きながら魔宮の賄賂の効果でカードを引く僕には、闇に囚われた魂に対しこのまま戦ってよいのかという思いが巡り始めていた。

 

「僕は、ジェルエンデュオを守備表示で召喚。このモンスターは戦闘で破壊されることはなく、僕がダメージを受けた際に破壊される。これでターンエンドだ」

 

 

《ジェルエンデュオ》 攻撃力1700 守備力0

 

 

 ハートの形をした桃と緑の色をした2体のモンスターが召喚される。2体で1体のジェルエンデュオは互いに寄り添うように小さな手を繋いでいた。

 

「そのモンスターで時間を稼ごうってつもりね。アタシのターン、ドロー! アタシは手札から愚鈍の斧を発動! ジェルエンデュオに装備!!」

「なっ!! ジェルエンデュオに!?」

 

 見るからにジェルエンデュオの体格に合わないサイズの銀色の斧がジェルエンデュオに装備される。二人で一体のジェルエンデュオは小さな手で斧を支えているが、プルプルと震えながら持つその姿に無理をしているのは明らかだった。

 

「愚鈍の斧を装備したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップするわ。その代わりそのモンスターの効果は無効となる」

「無効!? なら、今のジェルエンデュオに破壊耐性は──」

「そう。その子はただのモンスターよ。守備力0のね! アタシは地霊神グランソイルでジェルエンデュオを攻撃──グラン・アースクエイク!!」

「うぁああああっ!!」

 

 グランソイルの鉄拳がジェルエンデュオに振り落とされる。

 叩き落とされた砂漠の大地が再び揺れ動き、その衝撃に吹き飛ばされながら叫び声をあげた。

 

 飛ばされた体が砂漠の大地に打ち付けたその瞬間、僕の耳を打つ声があった。

 

『──気持ち悪い…………』

「──!!」

 

 それは強い嫌悪が混じった少年の声。

 グランソイルの攻撃と共に僕の魂に届いた幼い子供の声だった。

 

「い……今のは…………!」

 

 堂本くんの闇に縛られている幼い子供の声ではなかった。何故か、それはわかる。

 今僕の耳を打った少年の声は堂本くんのものだ。

 彼の後悔と懺悔の心がグランソイルの攻撃に乗って僕に直接叩きつけられてきたのだ。

 

 少年時代の堂本くんが、より幼い子供である男の子に向けて放たれた残酷な言葉。

 悪気などない、それが当然の感情であるように告げた自分の感情がきっかけで堂本くんはその子を失った。

 

 その過去の自分の行いに彼は苦衷し、救いを求めている。

 

 血走った殺気を向ける彼の思い。

 殺意を向けながらもその事実に苦しみ倒してほしいと願っている。救いを求めながらも決して救われることはないと諦めている。

 

 悲しい、切実なまでの罰を求める想いだった。

 

「フー、フー、さらにバトルよッ!! バルバロスでダイレクト──!?」

 

 ジェルエンデュオが破壊された僕へと向けてバルバロスの攻撃を叫ぼうとした彼を無数の光の剣が止めた。

 

「これは──!?」

「僕は墓地の光の護封霊剣の効果を発動させた。墓地のこのカードを除外することで、このターン、君のモンスターは僕に直接攻撃できなくする」

「光の護封霊剣!? そんなカードいつの間にッ!!」

「君の手札断殺の時だ。僕はその時にこのカードを捨てていた」

「あの時に…………!」

 

 ジェルエンデュオを突破された今の僕に打てる唯一の防御手段だった。

 降り注いだ光の剣群は結界を作るように僕の周囲を囲い込み、モンスターたちの攻撃を通さない。

 

「~~~~ッ!!」

 

 圧倒的に有利な状況でありながらも決して届くことのない攻撃に、堂本くんは地団太を踏むように砂を踏みつぶし歯を食いしばっていた。

 

「なんてしつこい………! まだ耐えると言うの!! アタシはカードを1枚伏せてエンドよ!!」

 

 苛立ちをぶつけるように投げやりにカードを伏せた彼のターンが終える。勝利を目前にしながらも、彼に心の余裕はないようだった。

 

「僕のターン──」

 

 そんな彼を悲し気に見つめながらデッキに指をそっと添える。

 ピリとした感覚を伝えてくるカードの詳細に確信を持ちながら、僕は祈るように瞳を閉ざしカードを引いた。

 

「──ドロー!!」

 

 そして………僕の世界は暗黒に閉ざされた──。

 

 

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