初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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 おかしい。なぜパックを剥いてデュエルの前準備をするだけの予定だったのにこんなに長文になってしまったんだ。


パック開封

 初めてデュエルをしてから数日、デッキの改造を考えた僕とコウキは近くのカードショップ屋さんへと向かっていた。

 

 さすがに初心者用デッキでずっと戦っていくことはできないし、初心者用デッキはあくまで初めてプレイする人でも扱いやすくルールを覚えやすくをコンセプトにした商品だ。

 お互いの夢のため新しいパックを買って自分のデッキを持つことは最優先で行うべきことだ。

 

「カードショップ屋さんかあ。あれだよねカードショップ カドピン。僕行くの2回目だなあ」

「2回目? あーデッキを買いに行ったときか。俺は買うことはなかったけど店でデュエルしてる人たちを見るために何度か行ってたぜ。お前も来ればよかったのに、何度か誘っただろ?」

 

 僕の隣を歩くコウキはそう言って数か月前に誘った時のことを話してくるが、僕は一度もお店に向かうことはなかった。

 

「動画なら見ていても遠い世界の話みたいな感じで我慢できたんだけど間近で実際に見るとね、お父さんたちに我儘言っちゃいそうだったから」

「ふーん、いい子ちゃんめ。…………おっ! 見えてきた。あそこだ」

 

 コウキが指さした先には「カードショップ カドピン」と看板に書かれた小さなお店がある。

 

 僕たちが急かすように中に入ると、店員のいらっしゃいませーという声が店内に響き、僕たちを迎え入れてくれた。

 

 店内は壁面のガラスケースに沢山のカードが飾られており、中ではいくつかのテーブルで僕たちより年上の人たちがカードを並べてデュエルをしていたり何らかの議論を交わしていた。

 その中でエプロンを着た男の人が入店した僕たちに気づいたのか近づいて声をかけてきた。

 

「うぃっす。店長! またきたぜ」

「おや、コウキ君じゃないか。隣の子は………この前来てくれた男の子だね」

「はい! 粉眠です。皆からはコナミと呼ばれています」

 

 店内を見渡していた僕は店員だろう男の人に話しかけられて慌てて答えた。

 

 大人の人と話すのは緊張するなあ。でも、今後もお世話になるお店だし礼儀正しくしないと。

 コウキは大人の人相手にずいぶんと気楽に話してるみたいだけど、知り合いだからだろうか。

 

「コナミ君だね。私はこのお店の店長をしている松田 ヒロシというものなんだ。この前はデッキを買ってくれてありがとう。デュエルはしてみたかい?」

「はい。コウキやクラスメイトの友達と対戦してみました。あまり勝てませんでしたけど。すごく楽しいです!」

「それはよかった。それで今日はどうしたんだい?」

 

 店長のヒロシさんの問いかけに少し興奮気味に僕が答えると、嬉しそうに笑いながらお店に来た用向きを僕とコウキに尋ねた。

 

「僕たちデッキを強くするためにカードを買いに来たんです」

「そ、流石に初心者用デッキで続けるのは厳しくてね。俺たち新しいカードを手に入れてじゃんじゃん強くなりに来たのさ」

 

 コウキのその言葉を聞いた店長はなるほどと頷き、カウンターの上に置いてあるパックをいくつか持ってきてくれた。

 

「始めたての君たちにはこの3種類のパックがおすすめかな」

 

 

<はじめてのモンスター> 通常モンスターを集めたパック 150円

 

<はじめての魔法・罠> 魔法や罠を集めたパック 150円

 

<はじめての効果モンスター> 効果モンスターばかりを集めたパック 200円

 

 

「この中から君たちが今求めているものが何かを選ぶといい。どれも始めたばかりの人におすすめのカードが入っている。効果モンスターのパックだけはちょっと高いんだけどね」

 

 ヒロシさんは苦笑しながらも僕たちにそのパックを見せてくれた。

 3つもあるのかあ、モンスターに魔法・罠、効果モンスターのパック。正直どれも欲しいけど、お金いっぱいはないしなあ。

 

「どれを買おうかなあ」

「なあ店長、俺たち強くなりたいんだけど、このパック全部はじめてって書かれてるし、もっとパパっと強くなれるのはないわけ?」

「そんな都合のいいパックはないよ。それにあったとしてもまだ君たちには早いかな。もっと色々と経験してテーマ性や生涯のエースカードを決めてからでも遅くはないさ」

 

 コウキが言うように簡単に強くなれるパックがあるなら僕も欲しいけど、そんな都合のいいパックはないようだしあんまり考えてもなあ。

 正直どれ選べばいいかわからないし、ここは…経験者のヒロシさんに相談するのがいいかな。

 

「えっと、ヒロシさん?」

「ん? 店長でいいよ。そっちの方が呼びやすいでしょ?」

「じゃあ店長さん。相談なんですがおすすめの決め方とかありますか?」

 

 僕の質問に店長さんは腕を組み少し考えた後、友達とデュエルした時のことを思い出してみるといいと答えてくれた。

 

「デュエルした時のこと?」

「何度か負けたんだよね。その時何が欲しかったかを思い出してそこを中心に手に入りそうなパックを選ぶといいよ」

 

 デュエルで負けた時…一番欲しかったのは強いモンスターと足りない攻撃力を補ってくれる魔法カード。

 ほんの少しの攻撃力で負けてしまって、その後どうしようもなくなってしまうことが多かった。

 だから今僕が欲しいのは。

 

「僕は魔法・罠を3パックと他2つを1パックづつください」

 

 僕はお母さんから家の手伝いをすることでもらったお小遣いで魔法・罠を中心のパックを選んだ。

 強いモンスターは欲しいけど、モンスターは一応デッキにいっぱいいるからね。

 

「それでいいのか? 俺は断然モンスターを集めるね。店長! 俺は通常モンスターのと効果モンスターのを3パックずつくれ!」

 

 魔法・罠を中心に強化することを選んだ僕を訝し気に見ながらコウキはモンスターをたくさん集めることに決めたようだ。

 こういうところも含めて僕とコウキの考えが一致することってあまりないんだよなあ。

 

「毎度ありがとう。ちょうどそこの机が開いてるしそこで開けていくといい。デッキの調整もね」

 

 店長さんはカウンターそばの机を指さして、いいカードが引けるといいねと言い残して他のお客さんの方へと歩いて行った。

 

「よっし、じゃあ開けようぜ!」

 

 そう言うとコウキは机の上でパックを開封し始めた。

 僕も内心ウキウキとしながらコウキの前に座って1パックずつ開けていくことにした。

 いいカード引けるといいなと祈りながら。

 

     ・

     ・

     ・

 

イタクァの暴風

 

悪魔のサイコロ

 

突撃指令

 

バスター・ブレイダー

 

正義の味方・カイバーマン(UR) 

 

賢者の宝石 (SR) 

 

 

 うん、結構強いカード引けたかもしれない。一部使いようのないカードもあるけれど。

 

 正義の味方・カイバーマンとか世界で一人しか使えないカード引けてもどうしようもなくない?

 ブルーアイズ・ホワイトドラゴンとか手に入れようがないじゃん。

 

 しかもウルトラレアだし。なんで初心者用パックに入ってるんだろう。

 レアカード引けた時の僕の感動を返してほしい。

 

「どうだい? いいカードは引けたかい?」

 

 そうして引けたカードを見ていると店長さんが様子を見にきてくれた。

 

「はい。何枚か強いカードが引けました。…………ただ、この2枚のカードがちょっと」

「ん? 正義の味方・カイバーマン? それに賢者の宝石まで。しかもレアリティがいやに高いな。なんでこのパックから出たんだ?」

 

 どうやら店長さんも困惑している様子だし、もしかして本来入っていないカードだったんだろうか。

 

「ふむ、多分エラーか何かで紛れ込んでしまったカードだと思うけど、どうする? いらないならこの2枚こちらで回収してもう何パックか渡すよ?」

「え、いいんですか?」

「うん、多分何かの間違いで紛れ込んだんだろうし。賢者の宝石はともかく正義の味方・カイバーマンは正直使いようがないからね」

 

 僕は店長の言葉を聞いて考える。この2枚正直いらないからもらえるならほかのパックが欲しい。

 いやでも、コレクションとしてなら価値はあるのか?

 

 最悪賢者の宝石は将来、可能性はすごく低いけどブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールが手に入る可能性は0ではないし、使える日が来るかもしれない。

 

 でもカイバーマンは絶対役立つ日なんて来ないだろうしなあ。

 コレクションとかより今は強いカード欲しいしなあ。

 

「じゃあ…」

「だけどもしカードが君を選んだのだとしたら2枚のカードが紛れ込んだとしてもおかしくはないのかもね」

 

 返却をお願いしようとした僕の言葉を遮って店長さんはおかしなことを言った。

 

「カードが僕を選ぶですか?」

「そう、実際どうなのかは私も知らないんだけどね。優れたデュエリストや特別な縁をもつ人のもとには特別なカードがやってくることもあるらしいよ?」

 

 肩をすくめながら眉唾だけどねと言って店長さんは僕におかしなことを言った。

 正直カードが人を選ぶなんて信じられないけれど。

 

「もしそうだとしたらこの2枚を引けたことにも意味はあるってことでしょうか」

「きっとね。今は役に立たなくても将来意味を持つときが来るかもしれないね」

 

 僕がこの2枚のカードを引けたことには意味はないのかもしれないし、役に立つ日なんて来ないのかもしれない。

 

 正直すっごい惜しいけど、新しいパック欲しいけど! もし僕を本当に選んでくれたのなら。

 信じられないけど、この選択に意味が生まれるのかもしれない。

 だから…………。

 

「店長さん。この2枚持っておきます。お守り代わりにでも」

「そうか。いつか役に立つときが来ればいいね」

「はい!」

 

 ところで、と店長さんが僕の前で引いたカードでデッキを改装しているコウキを横目に視ながら君はデッキを改造しないのかい? と僕に聞いてきた。

 

「僕はもうできてますので」

「ほう? 早いね。パックを空けてからそう時間は経っていなかったと思うんだけど」

「デッキの組み立て方は雑誌で調べていたので、それに僕はそこまで大改造するほどのカードは引いてないので」

 

 机の上には早々に終わった僕のデッキが置いてある。

 

「ならちょうど手も空いてるし私と対戦でもするかい? 今は手が空いてるから、お客さんの新しいデッキの練習相手ができるよ」

 

 店長さん相手に練習相手、いいんだろうか?

 でも手が空いてるっていうし、それにコウキを待ってたらしばらく手持無沙汰になってしまいそうだし…………。

 

「えっと、いいんでしょうか。店長さん相手にしてもらうのって…………」

「もちろん。手が空いてるときだけだけど、お客さんの相手をすることも仕事の一環さ。それにどんなデッキも使ってみないと実際強いかなんてわからないからね」

 

 僕は目の前に置いてあるデッキを手に店長さんに向かい合い。頭を下げてお願いした。

 

「それじゃあお願いします。あ、でも手も足も出ないようなデッキはちょっと」

「ははは! それはもちろん手加減はするさ。コウキ君はまだしばらく時間がかかりそうだし、別の机でやろうか。邪魔もしちゃいけないしね」

「はい!」

 

 僕は目の前で「うんうん」とうねりながらデッキを作っているコウキからそっと離れ、お店の端の方にある机に店長さんと向かった。

 

 途中常連さんなのか店長さんに向かって手加減してやれよー。とか新人デュエリストだとわかっているのか大人の人が頑張れよと僕に声をかけてくれた。

 

「じゃあ始めようか」

「はい」

 

 白い机の上にデッキを置き、お互いに向かい合った僕と店長さんはお互い準備ができたことを確認したのち、声を合わせて言った。

 僕は緊張した高い声で、店長さんはとてもリラックスした様子で。

 

「「デュエル!!」」

 

 

 




 アニメとゲームを混ぜた世界観で考えてますが、ブルーアイズとかアニメ作中で限られた人しか入手できないカードはゲーム内で手に入っても作中の主人公は手に入れることはないようにします。
 自分の知らない範囲のカードはちょっとわかりませんが。
 逆にブラック・マジシャンと超レアカード扱いされているだけで手に入る可能性自体はあるカードはなんらかの理由をつけて使うかもしれません。
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