D.C.Ⅲの主人公、白髪のヒロインの娘のルートだと過去一ウキウキするやん。お前他の娘のルートやとそんな反応せんかったやろ。
落ちていた──。
煌々とさまざまな色をした光の泡が周辺を漂い、下方へと落ちる僕の周りを通り過ぎていく。
真っ白な原色の世界に僕は揺蕩い落ちていた。
ここがどこであるのかを認識することは難しい。
光牙の牙に貫かれた胸の痛みはすでになく、幻痛が伝える痛かった記憶が残るのみ。
目を開き見る世界に現実味はなく、夢でも見ているのかと思えるほどにそこには実感を与えるものがなかった。
「僕は……どうなったんだ……失敗したのか……?」
遠くに見える光の柱を見ながらぼんやりと呟く。
白い世界に6つの柱が立っていた。
それぞれが見覚えのあるデュエルモンスターズの属性と同じ色をしたその光の柱にここがどこであるのかを悟る。
僕は、どうやらドリアードの心の世界にいるようだった。
それは、僕の賭けが上手くいったことを示していた。
「──行こう。彼女たちの想いを知るために」
落下に任せていた体勢を変え、泳ぐようにそれぞれの色をした光の柱へと向かう。
火、水、地、風、光、闇。
霊使いの皆を示す6つの柱が白い世界に立っている。
その近くまでやってきた僕は柱を見渡す。きっと、この柱に触れればそれぞれの霊使いの皆と話せるような気がしていた。そのため、どの柱に触れようかと少し悩んでいた。そうしていると、悩んでいる僕に焦れたのか、土色をした柱が突然動き出し僕を呑み込んだ。
「──うわっ………!?」
瞬間、咄嗟に閉じた目を開ける。
光の柱に呑まれた先、そこはもう、白い世界ではなかった。
そこは穏やかな木漏れ日が差し込む木造の一軒家の中へと変貌していた。室内は多くの本に囲まれており、びっしりと敷き詰められた書棚が苦しそうにしている。
そんな部屋の窓際で椅子に座ったアウスが僕に背を向けて一冊の本を読んでいた。
彼女は僕に振り向くことなく本のページを捲っている。
「君がここに来た理由をボクたちは知っているし、無駄話をするほど余裕があるわけでもないだろう。だから簡潔に言おうと思う。君はもう少し学というものに興味を持った方がいい。知識は無駄にはならない。ボクが君に求めるものがあるとしたらそれだけさ」
「………そうだね。帰ったら、ちゃんと勉強するよ。将来のためにも、僕自身のためにも………」
久々の邂逅は僅かな間に終わった。
こちらに一瞥もくれることのないアウス。そっけなく感じさせるその背中だが、特別怒っているような感情はなかった。本を黙々と読み進める彼女は僕の返答に満足したように、背中越しに頷き日の差し込む窓へと視線を向ける。
暖かな日差しに包まれた部屋には穏やかな空気が流れ、彼女の幸福な日々をそこに描き出していた。そしてアウスの希望を聞いたことでその室内に光が広がっていく。
木漏れ日が差し込むゆったりとした時間が流れる部屋ではなく、爽やかな風が吹く草原へと──。
「うーん、いい気持ち~。ここは私のお気に入りの場所なんだ~」
光が閉じた先で、草原の上で寝ころんでいるウィンがいた。
彼女は新緑に伸びた草と同じ色をした髪を草の上に横たわらせ、大きく伸びをしながら、草原に吹く風を目一杯吸い込むようにお腹を上下させている。その視線は大空を見上げており、やはり僕を見てはいない。
ただ、余所者である僕を受け入れてくれているようで、不快感というものは感じなかった。その声からも、僕を除けようとする気配はない。
そのため僕も彼女の隣に立ち、気持ちよさそうに空気を吸っている彼女に倣うようにどこまでも続いている草原と青い空の地平線を眺めながらその空気を吸いこんだ。
「──うん、いい風だね。君が好きだっていうの。わかるよ」
「風はね、自由なんだ~。な~んにも縛られることはないの。行きたいところへ行って、気の向くままに世界を吹いていくんだよ」
その風は澄んでいた。
これほど清涼感のある風というものを感じたことがないと思う程、その風には穢れが存在しなかった。
遠い、果てのない場所から吹き抜け僕たちを通り過ぎていく。しがらみを持たず、目的地もない。そんな形を持たない自由な涼風がどこまでも吹き抜けていた。
「だから、私は君の好きにしたらいいと思うなあ。やりたいことをして、したいことをして生きていくの。だから、君がしたいようにしたらいいよ」
「僕のしたいようにね」
「あっ、でも私に嫌なことはさせないでね。それだけ守ってくれたらいうことはないかな」
その若干投げやりというか、どうでもいいと言う風なウィンに苦笑が浮かぶ。
ただ、それがウィンの個性であり譲れない観念のようだった。
風のように自由で縛られることのない人生を。それが彼女の願いなら、僕もそれに従って生きていこう。つまり、僕のしたいように…………。
そして瞼を閉じた先、再び景色は変わる。
そこは三日月に欠けた月が雲間に見える木々の上だった。足元を見るとはるか下に闇夜に染まり黒く染まった大地が見える。
僕の足は木々の中の頂上に近い場所に伸びた太い枝の上に置かれている。
少しでもバランスを崩せば落ちてしまい大怪我をしてしまうだろう。そんな枝の上に立っていることに驚きながらも冷静に何者かの気配を感じる隣に意識を向けた。
「ダルク、君は僕に何か望むことはあるかい」
「さあな。ライナもそうだが、他の奴と違って俺はお前と会って大して時間も経っちゃいないからな。望みなんて言われてもあまり思い浮かばんな」
僕の隣で枝に腰を下ろしているのはダルクであった。
彼は背中を木に預け、手持ちの長い杖を手の中で遊ばせながら月を見上げている。
僕の質問にあまり興味のなさそうな気配を見せている彼だが、それでも何かあるだろうかと考えてはいてくれているようで、黒い瞳は遠くを見つめている。
そして、強いて言えばと注釈をつけて話し始めた。
「俺のマスターなら無様な敗けをするんじゃねえ。相手の挑発に乗って次にプレミなんかしやがったら出てってやる」
「そうだね。まったくその通りだ。うん。肝に銘じておくよ」
「ふん、大賢者様が相手とは言え次は敗けるな」
「当然。次は勝つよ」
ニヒルに笑うダルクに僕も腕をぐっと突き上げて応える。
しばし心地の良い風が流れ木の葉を揺らしていく。その風に心を任せるように瞳を閉じていると、空気が変わったことに気が付いた。
目を開ける。
涼やかな風が揺らしていた森は消え、そこには静寂と清浄が支配する教会の礼拝堂であった。
大理石で囲まれた室内には長椅子が左右に並び、中央通路の先には大きな十字架が建てられている。
その前に敷かれた台座の前で祈るように膝をついている銀髪の少女がいる。聞かずともわかる。彼女がライナであった。僕はその少し後ろで彼女を見つめるように立っている。
彼女は身じろぎ一つせず、僕の存在にも気づいていないように感じた。
それでもその静謐を破ることに忌避感を感じ僕もまたお祈りをするように静かに長椅子の片隅に座り彼女の反応を待つ。
そうしてしばらくし待っていると、前方の方からコツコツと石畳を歩きながらこちらに歩いてくる気配がした。
気配と音に惹かれるように顔を上げる。そこには僕を半眼で睨むライナが僕を見下ろしていた。
「跪いて頭を垂れなさい」
有無を言わせない冷たい声だった。
僕はそれに従うように椅子から立ち上がり中央の広い通路で膝をついて頭を下げる。彼女の杖がゴンッと音を立てて地面を叩いていた。
「ドリアードが必要なことを大体告げているため、詳しくは私からは言いません」
その声は冷ややかさで満ちており、ドリアードによく似ていた。ドリアードの中の悲しみが愛理ちゃんのものだったなら、もしかしたら怒りの部分はライナのものだったのかもしれない。
「私は不実を許しません。正義にもとる行いは魂の穢れに繋がります。まして意中の相手がいながら他の女性にうつつを抜かすなど言語道断。許されざる行いです」
「はい」
その場において彼女は裁判官であり、僕は被告人であった。
彼女から滔々と通告される内容に粛々と答えていく。
「エリアに誠心誠意謝りなさい。そして二度とそのような真似をしないことを彼女と神に誓いなさい」
「はい」
彼女の杖がシャランと音をたてる。杖に取り付けられている飾りが杖の動きに合わせて揺れた音だった。
「あなたがエリアにしたことは許されることではありません。叶うならば二度とは会わせたくはありませんが、それは彼女の希望に沿わないでしょう。故に、立ちなさい」
彼女の言葉に従い立ち上がり、目の前で立つライナと目を合わせる。
その目は変わらず冷たい目をしていたが、僕の粛然とした態度に多少は軟化したようでわずかだが温かみを帯びてもいた。
「あなたが正しくある限りは傍におりましょう。しかし、努々忘れてはなりませんよ。正道に背く行いは必ず報いを受けると言うことを」
「はい」
「わかったのならよいのです。さあ、次へ行きなさい。彼女が貴方を手ぐすねを引いて待っています」
ライナに背を向けて教会の外へと向かう。
彼女はすでに言いたいことを終えたからか、僕に背を向けて長椅子に座り瞑想を始めていた。
教会の出入り口である両開きの茶色いドアを開く。
真っ白な光に満ちた先の見えない壁の中へ、僕は迷うことなく身を任せるのだった。
「ここは………ヒータか…………」
予想通りというべきなのか、そこにある景色は水属性を司る愛理ちゃんのイメージとは正反対の場所だった。これまでの霊使いの皆の心象世界から言って、この目の前にある光景の場所が火属性のヒータのものであることはすぐに分かった。
僕が立っている場所、そこはマグマが噴き出している火山のようだった。
大気には熱気が迸り、灼熱の温度が体を熱くする。
周囲には溶岩がそこかしこにあり、赤赤とした亀裂が入った岩々と波のように流れるマグマが火山の下流へと流れている。
その景色に驚くことはなく、僕はキョロキョロと周囲を見渡しこの世界の主がどこにいるのかと探す。そんな僕の肩を誰かの手が掴んでいた。
「──オラァ!!」
「──うぐっ!?」
それを認識した刹那、神経が焼けつくような痛みが頬を打った。
衝撃に倒れこみ、殴られたらしい頬に掌を当てながらその下手人の方を見る。そこには殴りつけた拳を上げたヒータが立っていた。
彼女は倒れこんだ僕の上に跨り、再び僕の頬を打つ。
「──ッ!!」
鈍い音が、響き渡った。
「おい、なんでアタシが怒ってるかわかるか」
「…………愛理ちゃんを傷つけたから──う゛ッ!!」
返答は拳であった。
息を荒くし、怒気を見せる彼女のその反応は僕の返答に満足していないという答えを返していた。その証拠に僕の頬を打ったヒータの瞳は赤く燃えていた。
「おめえとエリアとの間のことなんざアタシには興味ねえよ。好きにすりゃあいい。アタシが気に入らねえのは──っだ!」
「ぐっ!」
「てめえが、情けねえツラ晒してやがったことだァ!!」
彼女のその華奢な腕のどこにそんな力があるのかわからないが、その腕で僕の胸倉を掴みながら強引に立ち上がらせ、不満を叫びながらこれまで以上の一番強い力で頬を殴りつけてきた。
「カハッ!?」
殴られた衝撃に体が宙を舞い、背中から岩に叩きつけられる。ゴツゴツとした岩に叩きつけられたことよりも4度に渡り殴られた頬が灼けるような熱を伝えていた。
「アタシたちはなあ、ドリアードになってからもてめえの動向を見てたんだぜ。たった一度敗けて死にかけたからって長いこと凹みやがって。挙句の果てにダチ死んでようやく立ち直るってなあどういうことだ! それでもてめえはアタシたちが認めたマスターか!? ああっ!!」
口内を流れる血の味が酷い。
心の中とは言え、歯も何本も折れているだろう。心の世界のため現実に残ることはないだろうが、それゆえに容赦なく殴られた頬は腫れあがり、片目が上手く開かなかった。
それでも無事なもう一つの片眼でフーッと怒りに打ち震えるヒータを見据え、背中を打った岩を支えに立ち上がる。そんな僕にヒータの拳が降ってくる。
憤然冷めやらぬとばかりに今度は腹を殴られたことにより口内に満ちていた血を吐き出す。
そしてよろけながらも立ち上がった僕をヒータが殴る。容赦のない殴打、それが何度か続いた。
「う──あっ………ぐぅっ、お、終わりかい」
「フーッ、フーッ──まだ殴り足りねえが、今回はこれで終いにしいといてやる。許してやるよッ!!」
全身が痛む。
幾度も殴られ、岩に叩きつけられた体が悲鳴を上げていた。骨が折れている箇所もあるかもしれない。だがそれでも、僕は膝をついて蹲ってはいけない。そんなことをしたら、今度こそヒータに見限られるだろう。
彼女は弱い男をマスターとは認めない。そうわかるから。
彼女の怒り交じりの許すと言う言葉には真実味が薄かったが、ヒータは一度言ったことを撤回するような精霊じゃない。
道長くんが決死の覚悟で道を示してくれるまで怯えていた僕に怒りが残っていても、許すと言ったからには許してくれたのだろう。
「次はねえ。次折れやがったらそんときゃあアタシが殺してやる! 覚悟しときなッッ!!」
「ああ──ありがとう」
「けっ! さっさと行きやがれ。出口はあっちだよ」
どかっと岩に座り込んだヒータがぶっきらぼうに指差す方を見る。
そこには何もない空間に壁を作るように白い光で構成されたドアが作られていた。
ズルズルと痛みで思うように動いてくれない体を押して歩く。時折よろけそうになる僕を厳しい目でヒータは見つめている。
「手は貸してやらねえぞ、てめえの足で歩いていけ」
「わかってる。大丈夫、僕1人で行くよ」
強くあらねばならない。
泣き言を言っていい時期はすでに過ぎてしまったのだから。
ゆっくりとではあったが、その白いドアに指をかける。
後ろから感じる視線に顔を向けることなく、別れ際に僕は彼女に声をかけた。
「ヒータ、僕は強くなるよ。デュエリストとしてだけじゃなくて、人として」
「ったりめえだ。お前はアタシのマスターなんだ。マスターらしく、シャキッとしてやがれ」
「はは、そうだね」
切れた唇を無理に引き上げながら自嘲した声で返し、僕はドアをくぐる。その先にいるであろう最後の霊使いである愛理ちゃんに会うために。
果たして、会って許してもらえるだろうか。いや、仮に許してもらえなくともライナと約束した通り誠心誠意謝らなくてはならない。
そして、彼女が望んでくれるなら、今後の僕たちの未来についてきちんと話し合わなくちゃいけない。
その話し合いで愛理ちゃんが何を望むのかはわからないけれど、可能な限りの希望を叶えるつもりでいた。しかし、ドアをくぐり、その先にいる人物を目にした瞬間、そんな考えは吹き飛んでしまった。
「なっ……君は!?」
「久しぶりだね、コナミくん。元気にしてた?」
扉をくぐった先の世界。そこに立っていたのは愛理ちゃんではなかった。
眩い白い光が天上から降り注ぐ青い海底世界。
その海底でにこやかに手を振りながら傷ついた僕に笑いかけているのは愛理ちゃんの心の中で眠りについたはずの愛理であった。
愛理、それは精霊エリアである愛理ちゃんと同じ容姿をした少女。
違いは愛理ちゃんが透き通るような水色の髪しているのに対し、彼女は神聖さを感じさせるような純白の白い髪をしていること。
そして彼女はエリアの魂である愛理ちゃんと違い、正真正銘人間の魂をもった水無月愛理であることだった。
「愛理、どうして君が目覚めて……まさか自力で!?」
「ふふ、そんな驚かないでコナミくん。私はただ、自分の役目を果たす時が近づいたから目を覚ましただけよ」
「役目……?」
「そっ、役目。それより……」
彼女は僕に近づきその手を頬に寄せる。
水中に流れる血の傷跡をなぞるようにそっと彼女は手で触れた。
「痛そう〜。ヒータに随分と殴られたんだねー。大丈夫?」
「うん。痛いけど、それは大丈夫。愛理、君が目を覚ましてるのは嬉しいけど、僕は愛理ちゃんに会いにきたんだ。愛理ちゃんは今……」
周囲を見渡すがそれらしき影はない。
愛理はこの世界に来た目的である愛理ちゃんを探す僕の手を取り、海底の奥の方へと引っ張った。
「エリアはこっちよ。眠ってるから、話すことはできないけどね」
「寝てる?」
「ええ、心の傷を癒すためにぐっすりよ」
愛理の案内に逆らわず彼女の手が引く方へと歩みを進める。
心なしか以前見た海底よりも一段と明るく感じる海中を僕たちは泳ぐように水をかき分けながら進む。
泳ぎながら軽くいつから目覚めていたのかなどを話す。
彼女がいうにはエンディミオン王が亡くなった直後あたりから目覚めていたらしい。
それからドリアードになったことで愛理ちゃんの心のキャパシティが限界が来たことで眠りにつき、その代わりというべきか、愛理がドリアードの中で心の繋がりを通して僕のことを見ていたようだ。
「あれは……大きくなっている……?」
愛理の案内の元に後ろをついていくと、その先に巨大な木が見えているのに気がついた。
それは愛理の魂の具現。かつて彼女から聞いた彼女の心と魂が木の形を取り愛理ちゃんの心の中で育ったものだった。
青々と成長したその木は明らかに巨大に育っていた。
以前見た若木のような時の面影はすでになく。その大きさは世界樹にも決して負けてはいない。
見上げる木の頂上はどこまで伸びているのかを把握することは難しい。
果ては海を超えて天から降り注ぐ光にも届いているのではと思えてしまうほどに。
「うふふ。ほら、エリアはそこよ。たぶんドリアードから分離するまで起きることはないと思うから、この世界で話すのは諦めた方がいいと思うわ」
その大樹と表現することも心許ない木の存在に驚き見上げている僕に愛理が大樹の根で丸くなり寝息を立てている愛理ちゃんを指す。
愛理のいう通り、愛理ちゃんはよく眠っており起きそうになかった。
「愛理、愛理ちゃんは大丈夫なんだよね」
「ええ。心配しなくても大丈夫。だから安心して元の世界に戻って大賢者と決着をつけてきていいわ」
愛理ちゃんに触れる。
全く起きる様子のないその姿に申し訳なさと心配が表面に出てくる。
気持ちをより強く伝えれるこの世界にいる間に彼女と話したかったが、できない以上、先を急ぐしかない。
他の霊使いのみんなと話せただけよしとするべきだろう。
「わかった。愛理、僕はもういくよ。大賢者と決着をつけてくる」
「ええ、それがいいと思う。貴方の力で私たちも死なずに済むしね」
ドリアードは死なない。
正確には分離して元に戻るのだとわかる。
この世界には死という終わりの予感がしなかった。
僕の中の星の力がそれをしているのか、デュエルに敗北しても彼女たちの無事は約束されていた。
「愛理、知っていたら教えてほしいんだけど愛理ちゃんが僕に何を望んでいるか、君は知ってたりする?」
この世界から出る前にと、大樹に触れている彼女に聞く。
愛理ちゃんから直に聞くのが1番いいことではあるのだが、それが現状難しい今、知っているのならと思っての質問だった。
「コナミくん、エリアが望んでいるのは永遠よ。人と精霊という垣根を超えた永遠の愛を求めているわ」
トンと柔らかく地面を足で叩いた愛理が踊るように水中を昇る。大樹の枝に捕まりながら上へ上へと登る彼女をまるで御伽噺にでる妖精のようだと僕は感じていた。
「うふふ、コナミくんはエリアに与えることができる? 死んで生まれ変わっても変わることのない永遠の愛を」
「わからない。でも、それが愛理ちゃんの望みならなんとかしてみせるよ」
「頑張ってね。期待してるから!」
水中を反響し届く彼女の声にそれはどういう期待なのだろうと一瞬思う。彼女の語る期待という言葉にはどこか、一言では言い表せない思いが込められているように感じた。それは彼女のいう、役目とやらに関わっているのかも知れない。
どんどん大樹を登る彼女はまるで天から降り注ぐ光に手を伸ばすかのように頂上を目指していく。
海底から覗く天上の光。その光から言いしれぬ不吉な予兆を感じるのはそれが破滅の光によるものだからだろうか。
視界が瞬き、この世界にいられる限界が訪れようとしているのを悟る中、僕は愛理に力と何かの役目を与えたのであろう暴虐の光を睨みつけていた──。