初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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召喚魔術 ①

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 白いフードから顔を出した魔術師、アレイスターとのデュエルが始まった。

 友人である堂本をそそのかし、誤った道を歩ませた事実と、それに悪びれることのない態度に苛立ちと怒りが湧き上がる。

 

 その熱に冷静さを削がれることのないよう、ドローをした俺は落ち着かせるために息をふうと吐き出しながら手札を眺め見た。

 

「俺は手札から魂喰いオヴィラプターを攻撃表示で召喚! その効果によりデッキからデューテリオンを手札に加える!!」

 

 

《魂喰いオヴィラプター》 攻撃力1800 守備力500

 

 

 二本の足で立ち灰色の肌に前傾姿勢の胴体。血のように赤く染まった鉤爪のような手とこぶのついた頭部をした恐竜型のモンスターが召喚された。

 

 そのオヴィラプターと呼称されるモンスターは熱を感じさせない、寧ろ寒々しさを総身に与えてくる青い焔をその腕から俺の手札に投げやり、それはデューテリオンと描かれた新たな俺の手札となった。

 

「さらにデューテリオンを手札から捨てることで魔法カード、ポンディングーD2Oを手札に加える!」

「複数のサーチ効果から必要なカードに繋ぎますか…………」

 

 デューテリオンを捨て、手札を交換していく俺の姿のなにが興味を抱かせたのか。アレイスターはじっと俺を見つめている。

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターン終了だ」

 

 そんなアレイスターの実力は未知数。

 ここは俺の気持ちを静める意味合いも込めて堅実にじっくりと相手の出方を見ながら戦術を組み立てていきたい。

 

 奴のターン、その行動次第でこのデュエルの進め方を決める!

 

「私のターン、ドロー! 私は召喚師アレイスター……つまり私自身を召喚します」

 

 

《召喚師アレイスター》 攻撃力1000 守備力1800

 

 

 プレイヤーであるアレイスターの前に同じ容姿、姿をしたもう1体のアレイスターが召喚される。

 

 彼は魔術が書かれているのであろう分厚い本を開き、ぶつぶつと呪文を唱えている。すると、開かれた魔術書の中から1枚のカードが浮かび上がってきた。それはアレイスターの手に渡っていく。

 

「アレイスターが召喚された時、デッキから融合魔法である召喚魔術を手札に加えることができます」

「召喚魔術………サーチ効果があると言うことはお前の専用融合魔法か」

「通常の融合としても使えるため多様的ではありますが、専用と呼ぶことはできますね。私は手札に加えた召喚魔術を発動、場のアレイスターと、あなたの墓地のデューテリオンを素材とし除外することで融合召喚します」

「なにっ!! 俺の墓地のデューテリオンを融合素材にするだと!?」

 

 モンスターの方のアレイスターが開いた魔術書が妖しい光を放つ。

 その本に吸い込まれるように俺のデュエルディスクから茶色く濁った水流が溢れ出し、その本へと向かう。

 

 その水流が止んだ時、魔術書の中央には一枚のカードが浮かんでいた。カードを挟み込むようにその魔術書を閉じた時、アレイスターを中心に巨大な氷の柱が生まれ、その中から一体のドラゴンが現れた。

 

「私は召喚獣コキュートスを守備表示で融合召喚!!」

 

 

《召喚獣コキュートス》 攻撃力1800 守備力2900

 

 

 滑らかな水銀のような光沢のある身体に2枚の翼。そしてドラゴンとだけあり恐ろしい牙を見せる氷の竜がアレイスターの前に召喚された。

 しかし、その恐ろしい相貌に反して、そのドラゴンは身を伏せ、守りの姿勢をとっている。

 

「俺のデューテリオンを素材に融合召喚とは、驚かされたが守備表示とはな。守りを固めるつもりか」

「コキュートスは高い守備力に加えて効果の対象にならず、カード効果では破壊されない効果を持っています。そう簡単に倒すことは叶いませんよ」

 

 その説明に俺の表情が固くなる。

 守備力2900というのも厄介だが、カード効果で破壊されないと言うのはもっと面倒な効果であった。

 

 それはつまり、純粋な攻撃力で上回るしかないと言うことでもあったのだから。

 

「しかしそれでも守備表示というなら問題はない。召喚権も使った今、お前にできることは多くはないだろう。それでターン終了か?」

「いえいえ、まだやることはたくさんありますとも。私は墓地の召喚魔術の効果を発動。このカードをデッキに戻すことで、除外されている私自身を手札に戻します」

「!?」

 

 強いな……と、驚きと共に内心で唸る。

 融合効果を持つ専用魔法である召喚魔術。それをサーチできるアレイスター。さらに融合後にアレイスターを手札に戻し、再利用しまたサーチと。

 

 その2枚だけで一種のサイクルが完成している。

 多くの手札やモンスターを必要とする融合カードにおいて、それは理想的なカードと言えるかもしれない。

 

 早めに手を打たなければ、取り返しのつかないほどに状況が悪化する。そう理解させられるほどに強力なカードたちだった。

 

「そして私はバトルフェイズに入ります」

「なに? お前の場に攻撃できるモンスターはいないはずだ!」

「言ってませんでしたが、コキュートスは守備表示のまま、守備力で攻撃することができるのですよ──コキュートス・ブレス!!」

 

 コキュートスの口が大きく開かれる。

 その喉奥に溜め込まれた氷雪がオヴィラプターに向けて発射されようとした刹那、その動きを縫い止めるような巨大な重力がフィールド内に蔓延した。

 

「俺はその攻撃に対し、永続トラップ、グラヴィティ・バインドを発動! レベル4以上のモンスターは攻撃できない!」

「やはり攻撃を止めるカードを伏せていましたね。私は手札から速攻魔法、コズミック・サイクロンを発動! ライフを1000払うことで魔法・罠を一枚除外する!!」

「っ!?」

 

 フィールドの中心に一瞬の竜巻が吹き荒れる。

 その竜巻が重力の網を巻き取っていくように上昇し消えていき、コキュートスの自由を取り戻していた。

 

 そして、自由を手にしたコキュートスの攻撃が再開される。

 突き抜けるような氷の旋風がコキュートスの口元から放射され、オヴァラプターを凍てつかせ破壊した。

 

 

《三沢》 残 LP 2900

 

 

《アレイスター》 残 LP 3000

 

 

「最後に私はカードを2枚伏せてターンを終了です」

「その前に、永続トラップ、リターン・オブ・ザ・ワールドを発動させておいてもらう。このカードにより、デッキから儀式モンスターであるリトマスの死の剣士を除外させてもらう」

「デューテリオンにリトマスの死の剣士……なるほど。三沢くん、貴方のデッキがなんとなく見えてきましたよ」

 

 訳知り顔で頷きターンを終えたアレイスター。

 その反応から俺の使用した数枚のカードから少なくとも俺のデッキのエースたちは割れたと見てよかった。

 

 だが、そんなことは想定の範囲内。

 遅かれ早かれサーチカードを多用すればバレていたこと。気にするほどのことでもない。

 

 それよりも大事なのはアレイスター召喚からの召喚魔術へと繋がるコンボに対処することだ。

 あれを何度もさせるわけにはいかない。このドローで対処できるカードを引きたいものだが……。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 そうして若干の祈りをこめながらデッキから引いたカード。そこには理想とまではいかないものの、悪くないと言えるカードが記されていた。

 

「俺はモンスターをセット。さらにカードを一枚セット。さらにリターン・オブ・ザ・ワールドを墓地へ送ることで除外したリトマスの死の剣士を手札に加え、ターン終了だ」

 

 引いたカードの存在に内心では喜びの感情を沸き立たせながらも表情を変えることなく、カードを伏せる。

 アレイスターの目にはまるでコキュートスの強い守りの前になす術もなくターンを終えたように俺の姿は写っていることだろう。

 

 それを見て少しでも油断してくれないかと期待したが、アレイスターの目からは微塵も油断した様子はなかった。

 寧ろ笑みを深くし、より俺の伏せられたカードに警戒を濃くしたようだった。

 

「私のターン、ドロー。私は手札から召喚師アレイスターを通常召喚! そしてデッキから再び召喚魔術を──」

「今だ! 俺はその召喚に対し、断絶の落とし穴を発動! 攻撃力1500以下のモンスターが召喚された時、そのモンスターを裏側で除外する!!」

「なんと!?」

 

 その魔術師が召喚されたと見るや否や、俺はここだと言わんばかりに対アレイスター用に伏せたカードを発動させた。

 それは、手の内がわからないアレイスターのみを狙い撃ちするためにデッキに混ぜたカードでもあった。

 

 フィールドに現れたアレイスターは召喚された瞬間、足元から這い出てきた無数の腕に引き込まれ消えていく。

 その光景を見た俺の口元には会心の笑みが作られていた。

 

「お前自身の効果も、召喚魔術による融合召喚も非常に強力だが、そのコンボの要はアレイスター、お前自身だ。ならばそのお前が一切使用できなくすればそのコンボは崩れる。裏側で除外された以上、召喚魔術によって回収もできない。2体目の召喚獣は召喚させんぞ」

「やりますねえ。しかし断絶の落とし穴とは随分とピンポイントで範囲の限られるカードを……もしや、私について知っていましたか?」

「ああ。一度元の世界に帰る機会があってな。あまり時間もなく、お前自身希少なカードのようで情報も極めて少なかったが、お前がどう言うモンスターかは知れたよ」

 

 それは三沢が砂漠に囲まれたアカデミアに辿り着き、十代たちの活躍により元の孤島に帰ることができた時のことだった。

 

 三沢はコナミ救出のためにもう一度異世界に行くつもりであったために、その時に立ちはだかる可能性の高い大賢者とアレイスターについてわずかな時間の隙間で調べていたのだ。

 

 しかし、調べてわかったのはアレイスターのステータスとその効果のみ。融合モンスターのステータスを上昇させる効果とその時は何に使うのかわからない召喚魔術という名称のカードをサーチする効果しか知ることができなかった。

 

 それ以外のことについては何も知ることができなかったのだ。そのため対策用のカードを入れたと言ってもその数は少ない。

 決してドロー力の高くない三沢にとって、その対策カードが都合よく早々に引けたことは幸運以外の何者でもなかった。

 

「なるほど、これは困りましたね。確かに裏側で除外されたとあっては私にもどうしようもない。しかしコキュートスは健在、私の優位は揺らいでいませんよ」

 

 アレイスターの言葉に反応するようにコキュートスが口元から白い息を出す。その息が周囲の空気を冷たくしているようで俺の周りの温度も冷たく下がっているように肌寒く感じていた。

 

「バトルです。コキュートスで貴方のセットモンスターを攻撃──コキュートス・ブレス!!」

「攻撃されたのは強欲なポッド! そのリバース効果によりお前の場のカードの数だけデッキの上からカードをめくり、そのうちの一枚を手札に加える!」

 

 コキュートスの氷の息吹に晒されたのは幾多もの宝石が嵌め込まれた壺型のモンスターだった。

 まるで蛸壺の中に潜むタコのようにそのツボの中から緑色をした怪物が顔を出し、息吹に破壊される前に舌を伸ばし俺のデッキから3枚のカードをめくった。

 

「俺は超越天翔を手札に加える! そしてそれ以外のカードは墓地へ送られる!」

「私にできることはありません。これでターン終了です」

「よし、俺のターン、ドロー!」

 

 アレイスターの手札には今、裏側で除外された自分を召喚した際に手にした召喚魔術がある。

 

 断絶の落とし穴はモンスターを除外はしてもその効果までは阻害できない。にもかかわらず手にした召喚魔術で融合をしてこなかったと言うことは手札に他のアレイスターを持っていないと言うこと。

 

 複数枚アレイスターを投入しているのか、それとも一枚だけしか持っていないのかを判断することはできないが、持っていると想定して動くべき。

 

 つまり──。

 

「攻め手に欠ける今のうちに準備を整えるのが最善。俺は化石調査を発動! デッキからレベル6以下の恐竜族を手札に加える。俺は2枚目のデューテリオンを手札に! そしてカードを3枚伏せてターンエンドだ!」

「一枚はサーチした超越天翔として、他2枚で何をするか見ものですね。私のターン、ドロー!」

 

 自身の優位性故か、それとも生来の気質によるものか俺の対応に胸を躍らせるようにニヤけた顔でアレイスターはカードを引いた。

 

「私のカードについては対策済みのようですが、このカードについてはどうでしょうかね。私は手札からネメシス・フラッグを攻撃表示で召喚!」

「ネメシス……?」

 

 

《ネメシス・フラッグ》 攻撃力1100 守備力200

 

 

 聞き覚えのないモンスターの登場にピクリと俺の眉が上がる。

 

 赤というよりも紅。濃い色をした装甲に全身を守られたそのケンタウロスのような4本足に人の上半身をくっつけたモンスターが召喚される。

 

 ネメシスという名前に聞き覚えはない。それなりに知識をもつ俺ですら初見のモンスター。

 

 アレイスターの言葉からして彼のテーマカードからは外れたモンスターなのだろう。高いステータスではない。下級モンスターとしても低い方だ。

 

 しかしそれ故に召喚獣を封じられたアレイスターが使用した事実に警戒を抱かずにはいられないモンスターでもあった。自信ありげなアレイスターに対し、俺は注意深くそのモンスターを見つめていた──。

 

 

 




アレイスターは基本何にでも合わせれるから純正構築にして戦うのは無理かなあと思ったんですよね。どうやっても他のテーマと組ませるイメージしか生まれなかった。
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