初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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マスターデュエルでずーっと放置してたソロモードを最近消化していってる。よう知らないテーマ初動がわからずめんどいぞ!


召喚魔術 ②

 

 壁面に一列に並べられた篝火がその炎を絶やすことなく燃えている。部屋の中央、階段前に鎮座する祭壇の前に立つアレイスターを倒すべくデュエルは続いていた。

 

「ネメシス・フラッグはその召喚成功時、デッキから自分とは異なるネメシスモンスターを手札に加えることができます」

「アレイスターとは別のサーチ効果を持つモンスターか!」

「私はデッキからネメシス・アンブレラを手札に加える!」

 

 四つ足の紅い鎧を着たケンタウロスであるネメシス・フラッグがその手に持った旗を大きく振る。

 その旗にまるで扇動でもされているようにアレイスターのデッキから一枚のカードが彼の手札に収まっていく。

 

「バトルです! 召喚獣コキュートスで君にダイレクトアタック──コキュートス・ブレス!!」

「させんっ! 俺はライフを2000払うことでバースト・リバースを発動! 俺の墓地から強欲のポッドを裏側守備でセットする!」

「構いません! そのまま破壊しなさい!!」

 

 

《三沢》 残 LP 900

 

 

 コキュートスの氷の息吹が墓地からセットされた強欲のポッドに降りかかる。それは先のターンの焼き直しのように同じ光景を2人に映し出した。

 

「攻撃されたことで強欲のポッドの効果が発動! お前の場のカードの枚数は4枚。よって4枚デッキの上からめくり、その中から1枚手札に加える。俺が手札に加えるのはリトマスの死儀式!!」

「これで儀式モンスターとその魔法を揃えましたか。しかしこの攻撃を喰らえばそれも形になりませんよ! 私はネメシス・フラッグでダイレクトアタック!!」

 

 ドドドと、硬い脚を床に叩きつけたネメシス・フラッグが旗を振り回しながら俺に向かってくる。

 その旗を叩きつけられる直前に俺は先のターンに伏せていた3枚のカード。その2枚目のカードを発動させた。

 

「その攻撃にリバースカード、超越天翔を発動! 俺の除外されているデューテリオンを蘇生させる! さらにこいつが特殊召喚されたことによりその効果が発動! 墓地からオキシゲドンを特殊召喚する!!」

「オキシゲドンっ! 強欲なポッドで既に墓地へ送られていたのですか!?」

 

 

《デューテリオン》 攻撃力2000 守備力1400

 

 

《オキシゲドン》 攻撃力1800 守備力800

 

 

 俺の目前まで迫っていたネメシス・フラッグを押し返すように地面から濁った泥水が溢れ出す。それは恐竜の一種であるティラノザウルスのような形をとり、デューテリオンとして召喚された。

 

 その隣には緑色をした両翼で空を羽ばたいていたプテラノドンと似た造形をした恐竜が風と共に現れている。

 2体はコキュートスとネメシス・フラッグから俺を守るようにその巨体で立ちはだかり、巨大な壁とかしていた。

 

「素晴らしい! 私のターンに2体のモンスターの召喚に加え、エースモンスターたちの召喚準備まで整えましたか!!」

「お前が何をしようと、俺の計算に狂いはない。俺のターン、ドロー!!」

 

 デュエルディスクにランプが灯されたことを見てデッキからカードをドローする。2体のモンスターの攻撃を防がれたことでアレイスターのターンは終えていたのだ。そしてそれは俺にとって逆転のターンが来たことの証明でもあった。

 

「いくぞッ! 俺は手札からお代狸様の代参様を守備表示で召喚! このモンスターがいる限り儀式召喚の生贄はEXデッキから代用できる!」

「リトマスの死の剣士のために、ですか」

「そうだ。俺はリトマスの死儀式を発動! EXデッキからカエル・サンデスを墓地へ送りリトマスの死の剣士を儀式召喚!!」

 

 部屋の篝火が燃え上がる。

 猛々しく燃え上がった篝火の炎はその一部を切り離すように千切れ俺のフィールドの中心で束になる。

 

 そして束になり繋がった炎が形をとった時、その中から2本の剣を携え、赤いマントを羽織った剣士が俺の前に立っていた。

 

「まだだ。さらに俺はポンディングーD2Oを発動! 手札、及びフィールドのデューテリオン2体とオキシゲドンをリリースすることでデッキからウォーター・ドラゴン・クラスターを特殊召喚する!!」

 

 手札とフィールドの2体のデューテリオンが水流渦巻く柱となりオキシゲドンが竜巻を天上に生み出す。3体は混ざり合い、一つになることで首が二又に分かれ、青く澄んだ激流が竜となったドラゴンへとその姿を変え召喚された。

 

「さらに俺は永続罠、魔封じの芳香を発動! リトマスの死儀式は場にトラップカードが発動されている間、その攻撃力と守備力を3000ポイントアップさせる!」

 

 

《お代狸様の代参様》 攻撃力0 守備力1600

 

 

《リトマスの死の剣士》 攻撃力3000 守備力3000

 

 

《ウォーター・ドラゴン・クラスター》 攻撃力2800 守備力2600

 

 

「それだけではないでしょう? ウォーター・ドラゴン・クラスターにも確か効果があったはず」

「その通りだ。ウォーター・ドラゴン・クラスターが召喚されたターン、お前の場のモンスター全ての効果は無効となり、その攻撃力は0になる!」

 

 ウォーター・ドラゴン・クラスターの2つの口からそれぞれ津波のような水流が吐き出される。

 それは部屋の奥まで広がっていき、アレイスターのモンスターたちの士気を下がると共にその能力もまた減退させていた。

 

「お前のライフは残り3000! ウォーター・ドラゴン・クラスターによりネメシス・フラッグの攻撃力は0! リトマスの死の剣士の攻撃で終わりだ!」

「果たしてそうでしょうか。貴方がエースモンスターたちを揃えている間に私が何も手を打っていなかったとお思いですか? 私はネメシス・フラッグをリリースすることでリバースカード、大番狂せを発動! レベル7以上のモンスター全てを手札に戻す!」

「なに!?」

 

 アレイスターの場に伏せられていた大番狂せが光を放ち始める。

 

 その照準は俺のリトマスの死の剣士とウォーター・ドラゴン・クラスターに向けられており、レベル6でかろうじてその効果範囲の対象から外れる彼のコキュートスには向けられていなかった。

 

「くっ、だがリトマスの死の剣士は罠の効果は効かない!」

「ええ、承知してますよ。しかしウォーター・ドラゴン・クラスターは違うでしょう。手札に戻ってもらいましょうか」

 

 大番狂せから激しい稲妻が放たれる。

 それが俺のモンスターに直撃するその直前、ウォーター・ドラゴン・クラスターの二又に別れた首が文字通り二つに分たれた。

 

「今のは……!」

「ウォーター・ドラゴン・クラスターは自身をリリースすることでウォーター・ドラゴン2体に分裂することができる」

「なるほど。しかし分離したとしてもレベルは8。大番狂せの効果から逃れることはできなかったというわけですね」

「……ウォーター・ドラゴン・クラスターが墓地へ送られたことで墓地のポンディングーD2Oは手札に戻る」

 

 大番狂せにより手札が3枚増える。

 

 しかし、それによって苦くなった俺の顔が晴れることはない。

 デューテリオンもオキシゲドンも墓地へ送られた今、召喚が難しいウォーター・ドラゴンの存在は無用の長物に等しい存在だった。

 

「だが、まだリトマスの死の剣士は残っている。バトルだ! リトマスの死の剣士で召喚獣コキュートスを攻撃!」

 

 リトマスの死の剣士が剣を振るう。

 その剣はコキュートスの硬い体を容易く切り裂き破壊し、大きな爆発を引き起こした。

 

「これで、お前のモンスターは全て倒した!」

「しかし、そうしたことで私の場にはリバースカードが1枚だけになってしまいましたね」

「……? どういう意味だ。お前のカードが1枚しかないことに何の意味がある」

「それが、意味あることなのですよ。私は拮抗勝負を発動! 貴方は私の場のカードと同じ枚数になるように貴方の場のカードを裏側で除外しなければならない!!」

「拮抗勝負だと!?」

 

 マズイとそのカードの存在に目を見開く。

 お互いのフィールドの枚数を矯正するということは俺の場の3枚のカードのうち2枚を除外しなければならないということだ。

 

 それは実質、リトマスの死の剣士を場に残すことはできないということと同義である。全ての罠カードの耐性を持つリトマスの死の剣士も、プレイヤーに強制する効果からは逃れることはできない。

 

 俺の残りライフは900。手札に永続罠もないため、伏せることもできない現状、俺が選べる選択肢は一つしかなかった。

 

「俺はお代狸様の代参様を残して、他のカードを除外する」

「ふむ、今の貴方の手札はポンディングーD2Oとウォーター・ドラゴンの2枚のみ。これ以上できることはありませんね」

 

 その言葉に同意するように頷く。

 

 チラとデュエルディスクに目を向け、墓地のカードを一度確認したが、このタイミングで墓地にある時の効果を発動して動けるカードは存在しなかった。

 

「ああ、俺はこれでターン終了だ」

「では私のターン、ドロー! 私は手札から名推理を発動。貴方は1~12までの数字を一つ選択し、そのレベルのモンスターを私が引けば墓地へ。それ以外なら召喚される。そしてそれは私がモンスターを引くまで行われます」

 

 名推理か………非常にギャンブル要素の高いカードを使用してきたものだ。

 しかしその狙いはわかる。あわよくばアレイスターの召喚から召喚魔術をさらにサーチ。そうでなくとも融合素材を墓地へ送る。そのために投入したカードだろう。

 

「俺が選ぶのはレベル4だ!」

「では引いていきますね」

 

 一度発動した以上墓地へ行かれたら止められんが、アレイスターの召喚は止められる。召喚はさせん!

 

 アレイスターのデッキから1枚、また1枚とカードが墓地へ送られる。

 そのカードの枚数が4枚になろうとしたとき、彼の淀みなく捲られていたその指の動きが止まった。そして、彼の指に挟まれていたカードのレベルは1だった。

 

「私が引いたのはネメシス・キーストーン。レベル1でありあなたが選んだ数字とは別のもの。よって私はネメシス・キーストーンを召喚します!」

 

 

《ネメシス・キーストーン》 攻撃力700 守備力0

 

 

 アレイスターの場に両腕が鉱物でできた黄色い体をした機械的なモンスターが召喚される。そのステータスは低く、俺の場のお代狸様の代参様を破壊できるモンスターではないことに安堵の息を吐く。

 

「強いモンスターではなかったことに安心するのは早いですよ三沢くん。私が名推理を発動した真の狙いはここからなのですから!」

「!!」

「私は手札からネメシス・アンブレラを召喚! そして墓地のフラッグ、場のアンブレラ、キーストーンの3体を除外することでアークネメシス・プロートスを特殊召喚いたします!!!」

「3体を除外だと……──これはっ!?」

 

 

《アークネメシス・プロートス》 攻撃力2500 守備力3000

 

 

 その龍は電流を全身から漲らせながら降り落ちてきた。

 

 3種類のネメシスモンスターの力を宿しているかのようにその体には様々な色をした棘が生えており、その色は俺が見たネメシスモンスターたちの属性を表しているかのようだった。

 

 龍は激しい唸り声を世界樹の空間に響かせながら俺と、俺を守る小さな狸のモンスターを睥睨している。

 

「アークネメシス・プロートスはネメシスモンスターの切り札の一体。その効果は指定した属性のモンスターを、全て破壊しかつ、次の私のターンまで指定した属性のモンスターを召喚できなくするというものです」

「強力だな! だが、そのモンスターの属性は闇。俺のモンスターも闇属性。それを発動すれば共倒れだぞ!」

「ご安心を。プロートスは効果で破壊されることはありませんので。私は闇属性を選択! プロートス、その小さきモンスターを破壊しなさいっ!!」

「くっ!!」

 

 プロートスが目も眩むような電流を部屋全体に巻き起こす。

 

 耳をつんざくような音が支配し、激しい怒号が地面を揺らした。そして、静けさが場に戻ったことで目を開いた時、俺の場にモンスターは存在しなかった。

 

「これで貴方の守りは消えました。エースも消え、召喚する術のない今、この攻撃から身を守ることができますか? アークネメシス・プロートスでダイレクトアタック──ブラスト・レーザー!!」

 

 勝ち誇ったアレイスターの口からプロートスに向けて号令が下される。

 

 それを受けたプロートスは全身から漲らせていた電流を一点に集まるように喉元に集めていく。

 集められた膨大な電流は一つの球体となり、そしてレーザーとなって三沢へと一直線に放たれた。

 

「ここで死ぬつもりはない! 俺は墓地の虹クリボーの効果を発動! その攻撃に対し、虹クリボーを特殊召喚する!!」

「おや、まだ守る手段を持っていましたか」

 

 プロートスのレーザーに割り込むように一筋の虹の輪がかけられ、そこに小さなクリボーが召喚された。

 彼はレーザーに敗れ一瞬で消えてしまったが、その役目を果たしたようで俺の身には1ポイントも減ってはいなかった。

 

「惜しい。召喚したのがプロートスではなくエスカトスの方だったならば今ので私の勝ちでしたのに。私はターンを終えます」

「ハァー。俺のターン、ドロー!」

 

 九死に一生を得たような気持ちで大きく息を吐き出す。喉元まで突き立てられたナイフをかろうじて躱したかのような寒気を感じながら、俺はドローした。

 

「俺は手札から強欲なウツボを発動! 手札のウォーター・ドラゴン2体をデッキに戻すことでカードを3枚ドローする」

「ここにきて手札補充とは運がいい。いえ、ウォーター・ドラゴンに分離させたことを考えれば、これもあなたの計算のうちと見るべきなのでしょうか?」

「当然だ! このデュエルで俺の計算から外れたところなどないッ!! 俺は3枚ドロー!!」

 

 強がりを混ぜた気勢を吐きながらカードを引く。なんとしてもこいつを倒す。そう念じながら引いたカードには逆転の可能性を与えるカードがある。

 

 俺はデッキが俺の心に応え理想的な動きをしてくれていることに感謝をし、このデッキを組み上げた際の計算が間違っていないことを確信する。俺は自身の勝利を予感した。

 

「俺は手札を2枚墓地へ送ることで魔法カード、ブーギートラップを発動! 自分の墓地の罠カードをセットし、発動する! 俺はボンディングーDHOを発動! 墓地のデューテリオン2体とオキシゲドンをデッキに戻し、墓地のウォーター・ドラゴン・クラスターを特殊召喚する!!!」

「──ほう! ここにきて再びエースを召喚してきますか!?」

 

 

《ウォーター・ドラゴン・クラスター》 攻撃力2800 守備力2600

 

 

 大地が黒煙を上げていく。

 瞬く間に部屋の奥まで届くように天井に満ちていく黒煙から雨が降り注ぐ。やがて降り注いだ多量の水は二又の龍となり、俺の場に返り咲いた。

 

 そのドラゴンの登場に感嘆の声を漏らすアレイスターの目は興奮に輝いていた。

 

「いいですねえ! やはり私の相手は君が相応しい! 類まれな才と強運に比重を置いた勇者くんとは違った強さ。全てが流動的で破綻することのない動き! 彼にはない君の強みですよそれは!!」

「余裕を構えていていいのか。ウォーター・ドラゴン・クラスターが召喚されたことでお前のプロートスの攻撃力は0になる!」

 

 プロートスをウォーター・ドラゴン・クラスターの水流が襲う。

 水流がプロートスの身体に流れる電流を全て水に流していくように彼の身体から覇気が消えていく。

 そのプロートスの姿に驚くアレイスターを余所に俺はその隙を逃さず即座に攻撃の命令を下した。

 

「バトル! ウォーター・ドラゴン・クラスターでアークネメシス・クラスターを攻撃──ツイン・アクア・パニッシャー!!!」

「──ぬぅううううッ!!?」

 

 ウォーター・ドラゴン・クラスターの口から効果で出した水流とはくらべものにならないほどの激流が吐かれる。それは津波となってフィールド全体に波及し、アークネメシス・プロートスの全身を呑み込み底の底へと沈めていった。

 

 

《アレイスター》 残 LP 200

 

 

「これで今度はお前のエースが消えたな! 俺はターンを終了する!!」

「くくっ。そのほうがやりがいが出てくると言うものでしょう? 私のターン、ドロー!!」

 

 召喚獣とは違う。第二の切り札のように見えたネメシスを破壊され、ライフも大きく減少したと言うのに、アレイスターの姿は寧ろ喜ばしいと言うように明るく力強さに満ちている。

 

 気合いをこめて引くその姿には微塵も追い詰められた者特有の悲壮感という感情は見受けられない。自分の腕への自信に満ち溢れていた。

 

「私は融合派兵を発動! 私の召喚獣の融合素材である召喚師アレイスターをデッキから手札に加える。そして召喚魔術を発動! 手札の私自身と墓地のコキュートスを融合──召喚獣アウゴエイデスを融合召喚!!」

 

 

《召喚獣アウゴエイデス》 攻撃力2000 守備力2800

 

 

 青く光る無数の幾何学的な紋様が裏地に描かれた銀色のベルトが人の形をとり巻き付いているようなモンスターが光を放ちながら召喚された。

 その巨大さはウォーター・ドラゴン・クラスターを超えており、部屋に収まっていることが奇跡のようにさえ感じるほどだ。

 

 その光輝さを感じさせるモンスターの双眸が俺たちを見下ろしていた。

 

「召喚獣アウゴエイデスはその召喚時、君のモンスターを破壊することができます」

「なにッ!?」

「君のウォーター・ドラゴン・クラスターは分離効果を持っていますが、墓地のウォーター・ドラゴンにまではその効果は及ばない。逃げることはできませんよ!!」

「──ッ!!」

 

 アウゴエイデスがその体から突き出た銀のベルトを槍のように伸ばし俺のウォーター・ドラゴン・クラスターを次々と貫いていく。

 膨大な水で構成されたその体だが、バラバラに引き裂いていくアウゴエイデスのその攻撃の前に脆くも崩れ去り、最期には床一面の濡れた後だけが、その龍の存在した証拠を残すばかりであった。

 

「そして召喚魔術の効果でアレイスターを私の手札に。そして、さあ、この攻撃でこのデュエルの幕引きといたしましょうか! 私は召喚獣アウゴエイデスでダイレクトアタックです!!」

 

 絶体絶命。

 まさしくそう表現するしかない状況の中で発せられたアレイスターの攻撃命令に、俺の口元には抑えきれない笑みが浮かんでいた。

 

「アレイスター、お前今攻撃と言ったな。俺は手札の煌々たる逆転の女神の効果を発動! 俺の場にカードが存在せず、俺の手札がこのカード一枚のみの場合、攻撃宣言が行われた時にだけ発動できる。このカードを墓地へ捨てることで、相手の場のカードを全て破壊する!!」

「──なんと……素晴らしい………」

 

 アウゴエイデスの攻撃をフィールドに現れた女神が防ぐ。

 その杖から発せられた光のバリアは俺を包み込み、アウゴエイデスの攻撃にびくともせずに決して通すことはない。

 

 そして、その攻撃も終えた頃、まるでこれまで受けた攻撃のエネルギーを反射するかのように俺を守っていたバリアから無数の光が飛び散りアウゴエイデスの全身を貫いていった。

 

「さらに煌々たる逆転の女神は俺のデッキからモンスターを1体、特殊召喚できる。俺が召喚するのは白魔導士ピケルだ!」

 

 

《白魔導士ピケル》 攻撃力1200 守備力0

 

 

 女神がその杖の先から光を地面にあてる。すると、そこから桃色の髪をした白いローブを着た少女が召喚された。彼女は一度振り向き俺にニコっと花のような笑顔を見せ、そして眼前に佇むアレイスターを睨みつけていた。

 

「ピケルですか。これはまた可愛らしいモンスターの登場ですね。しかし最後の最後で君は選択を誤りました。私はまだ通常召喚をしていないのですよ。

 私は墓地の召喚魔術をデッキに戻し、除外されている召喚師アレイスターを手札に加える。そして、召喚師アレイスターを召喚! その効果により召喚魔術を手札に加え、再び発動! アレイスターとあなたの墓地のウォーター・ドラゴン・クラスターを融合──2体目の召喚獣コキュートスを融合召喚します!!」

 

 

《召喚獣コキュートス》 攻撃力1800 守備力2900

 

 

 俺がウォーター・ドラゴン・クラスターを召喚したように、アレイスターの場にもコキュートスが再び召喚される。

 俺の時と違うのは奴のモンスターは正真正銘2体目であると言うことか。

 

「ピケルなど、恐れるに足りません。あなたのエースであるウォーター・ドラゴン・クラスターもリトマスの死の剣士も除外された。そして攻防において特に優れた能力のコキュートス。これで私の勝利は盤石となりました。

 くくく、三沢くん。君とのデュエルは楽しかったですよ。ええ、この世界で行う最後のデュエルに相応しいものでした」

 

 もはや勝負はついたと言わんばかりに喉を鳴らすアレイスターがターンを終える。

 その顔には喜悦とわずかな寂寥感が滲んだ笑みが浮かんでおり、このデェエルの終わりを惜しんでいるようにも感じた。

 

 だがそれはあまりにも早計な判断だと、対面する俺にはわかっていた。

 

 手札はない。

 場にはピケルのみでコキュートスを抜いてアレイスターにダメージを与える方法などない。だが、ピケルの自信に満ちた表情が俺に勝利の可能性を信じさせていた。

 

「不思議なものだ。俺がピケルを召喚すると、誰もが一様にお前のような反応をする」

「それはそうでしょう。微々たるライフ回復効果を持つだけで他に長所を見出すことも難しいピケルに恐れを抱くものは少ない」

「ああ、わかるとも。立場が逆なら、俺も似たような感想を抱くだろうからな。そして、油断して足元をすくわれるんだ」

「!!」

「俺のターン、ドロー!!」

 

 カードが光を放つ。

 それは間違いなく、俺の心と意思にデッキが応えてくれた証明だった。

 

「この瞬間、ピケルの効果が発動する! 俺の場のモンスターの数だけライフを400ポイント回復!」

 

 

《三沢》 残 LP 1300

 

 

 ピケルの杖から淡い光が漏れる。

 それは暖かな光となり俺のライフを回復してくれていた。

 

「その程度の回復が何だと言うのですか。足元をすくうと言いましたが、コキュートスの前で、エースの消えた君にできることがあると言うのですか?」

「ふんっ、勘違いしているようだから教えておいてやる。俺のデッキの真のエースはピケルだ!」

「バカな!? ピケルが………君のエース!?」

 

 俺の言葉に驚愕するアレイスターにいつかの否定していた自分の姿が見える。

 ピケルを使用することを頑として拒み、斎王の手下となっていた時には雑魚と呼んで見向きもしなかった愚かな自分の姿を。

 

「俺はデュエリストとしてピケルから学んだことがある。それはエースとはカードの強弱で決まるものではないと言うこと。そして、カードと心を通わせたデュエリストにカードもまた応えてくれると言うことだ! 俺はピケルに流星の弓ーシールを装備させる!!」

「それは──ッ!?」

 

 ピケルの腕に愛らしい容姿をした彼女が持つには少し物々しい弓が握られる。

 その弓により彼女の持つ攻撃力は1000ポイントも下がってしまいその攻撃力は僅か200ポイントしか残されていない。

 

 しかし、この状況ではそれで十分だった。

 残りのアレイスターのライフもまた200。リバースカードがなく、墓地にも彼を守れるカードもない。ピケルの一撃で勝負は決まるためだ。

 

「判断を誤ったなアレイスター。ピケルを弱小と侮ったお前の負けだ。バトル! ピケルでお前にダイレクトアタック──ホワイト・プリンセス・マジック・アロー!!!」

「──ふふっ、そうですか。私の敗けですか!! アハハハハハッ!!!」

 

 ふらつき、なれない弓を一杯に引き絞ったピケルの矢がアレイスターに向けて放たれる。

 それを受けるアレイスターは称賛を叫びながら満足気な高笑いを上げ、その矢に貫かれて行った。

 

 

《アレイスター》 残 LP 0

 

 

 




リトマスにウォーター・ドラゴン、ピケルが三沢くんのエースだよね! 磁石? 知らんなあ!!
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