クリスマスと言えばデートでしょってことでそう言うお話です。
「さっ寒いなあ。そろそろ約束の時間だし、もう来ててもおかしくないんだけど?」
駅前、僕は愛理ちゃんを待っていた。
今日はクリスマス。
世の大半の男女がそうであるように僕もこの聖なる日に愛理ちゃんとデートをするため寒空の下で彼女が来るのを待っていた。
「だーれだ?」
立っているのも疲れた僕が駅前にあるベンチに座っていると後ろから誰かが僕の目を塞いできた。
「いや……だーれだって愛理ちゃん以外いないでしょ? 僕にこんなことするの」
僕の視界を塞いでいる手を退けて振り向いてみるとやはりそこには愛理ちゃんがいた。
「おはよう。コナミ君。時間通りだね」
「おはよう。愛理ちゃん」
愛理ちゃんは足がすっぽりと隠れるロング丈のスカートを履いておりマフラーも巻くことで寒さ対策をしていた。
仕方ないけど露出が減るのはちょっと残念だ。寒がられるよりずっといいけど……。
「どう? この髪型、似合ってる? いつもと変えてみたんだけど……」
愛理ちゃんは普段のストレートに流している髪型とは違い髪を1つに纏めてポニーテールにしていた。
愛理ちゃんが髪型を変えるとは珍しいなぁ。
普段は髪型を弄るなんてしないのに、なにかあったのかな?
……まあそれはともかく褒めないとね。
女の子のオシャレは褒めるもの。
これは絶対だ。
「うん。似合ってる。とても可愛いよ」
「ふふ♪ ありがと!」
僕はオシャレをしてきた愛理ちゃんを見ながらももえちゃんから教わったことを思い返す。
『よろしいですか? どうでもいい方ならともかく親しい殿方から褒められて喜ばない女の子はいません。なので一緒にお出かけする時はどんな些細なことであっても褒めることです!』
正直女の子を褒めるのは恥ずかしいし、抵抗もある。
けれどかわいいと褒めてあげたら喜んでくれるから、まあ頑張れるかなって愛理ちゃんの笑顔を見てると思えてくる。
だけどちょっとしたアクセサリーとかシャンプーを変えたとかそんなの言われないとわからないよと言いたい変化は勘弁してほしいと心から思うよ。
毎回今回みたいにわかりやすい変化だとありがたいんだけどなあ……。
「コナミ君もカッコいいよ。あのカッコつけ事件から身だしなみをきちんとするようになったからかな?」
「…そうかもしれないけど、愛理ちゃん。もう忘れよう?」
あれはひどい事件だった。
ももえちゃんから教わったことは無駄ではなかったけど、いらないことも真に受けてしまった結果僕はしばらく学校の笑いものになった。
ただでさえ運動会やデュエルが強いことで僕を知っている子も多かったので学校中で僕のうわさが広まるのも早かった。
ノイローゼになりかけたぐらいだよ。
「だって面白いんだもの。あの時のコナミ君」
「ぬ〜僕にとっては嫌な記憶なんだけどなあ」
「ねっ! どうして急に寝癖とか気にするようになったの? 私が言っても直さなかったのじゃない」
「いや〜正直全然興味がなかったんだけど、ももえちゃんにこっ酷く言われてさ…………」
「へ~ももえちゃんって言うんだ……」
しまった!?
ももえちゃんに自分のことは愛理ちゃんには話すなって言われてたのに!
「ねぇ……ももえちゃんって誰? 女の子だよね?」
「い、いや…それは〜その……」
まずい。愛理ちゃんの声のトーンが下がっている。
このトーンはイエローゾーンだ。
ならばまだ愛理ちゃんの中では、ももえちゃんのことは審議中だ。
僕の返答次第でどうにでも変わる。
なんとかしなければ……そうだ。ももえちゃんと愛理ちゃんについて話している中に知られた場合の対応について話したはず。
あれはたしか…。
『う〜んこの写真の愛理という方のお話を聞く限り、相当嫉妬深い方のようですわね。となると独占欲も相応に強いはず』
『よろしいですか? こういうタイプは自分以外の異性の干渉をひどく嫌いますわ。愛理という方があなたに向ける感情が好意なのかはわかりませんが、私のことは絶対に知られてはなりません』
『万が一知られた場合? そもそも知られた時点でアウトですが、万が一知られたなら誤魔化さず正直に全部お話しすることですわ。絶対に誤魔化すようなことはしてはなりません。絶対にです! いいですわね?』
正直に話すこと…か。
大丈夫かな? 愛理ちゃん。すごい不機嫌な表情をしてるけど、余計怒らせることになったら……。
いや、ももえちゃんを信じよう。
彼女のおかげでひどい目にはあったけど全部が間違っていたわけではないんだ。
特に愛理ちゃんのことについてはひどく真剣な表情だった。
あの真剣さは信用に値するはずだッ!
「実は……ー」
僕は秋に帰省した時にももえちゃんと会った時のことを話した。
「ふむふむ。なるほどねー。つまりそのイケメンが大好きなももえちゃんって女の子に酷い点数をつけられて、ダメ出しされた部分を直すように言われたと……」
「うん。流石の僕も女の子に20点なんて言われたらね」
嘘は言ってない。流石に愛理ちゃんに嫌われるかもって話は恥ずかしくて話せなかったけど。
大筋の話に問題はない……はず。
「まあいいわ。そういう話なら仕方ないわね」
よかった。機嫌は一応直してくれたようだ。声のトーンが普段通りに戻った。
「まあ敢えて話さなかった部分については追及しないであげましょう。私にとって悪い理由じゃなさそうだし…」
「………」
えっ? もしかしてバレてる?
僕が身だしなみを気にした本当の理由……。
「さっ! 理由もわかったし行きましょうか!」
「う、うん。行こう」
僕は愛理ちゃんから差し出された手を握って目的地に行くべく歩きだした。
彼女に握られた僕の手は力を込められていてちょっと痛かった。
その後、僕たちは電車に乗っていくつかの駅を跨いだ先にある巨大なショッピングモールに到着した。
「ここが愛理ちゃんが来たかったところ?」
「そう! ここすごいのよ! たくさんのお洋服屋さんがあってね! 映画館もあるし、それに…カードショップもあるの!」
「へ〜色々あるんだねー」
僕はテンションの高い愛理ちゃんの言葉に気のない返事をしながらモールの中にある案内板を見る。
なるほど、たしかに色々なお店があるみたいだ。
大きな映画館に家電屋さん。本屋さんもある。それに愛理ちゃんの言う通りカードショップもある。
あとはこんな沢山必要ないだろってくらいにある洋服屋。
なんで一つのショッピングモールに数えるのも億劫になるほどの洋服屋が並んでいるのか。
これがわからない……。
僕としてはカードショップに直行して遊びたいんだけど……。
チラリと愛理ちゃんの様子を見てみる。
「やっぱり最初は有名ブランドから回るものよね〜。それが終わったら行ったことのないお店を順番に回って……」
うん、こりゃ駄目そうだ。
愛理ちゃん、もうどこから回っていくか決めてる感じだ。
「よしっ! 決まったわ。それじゃ行きましょコナミ君!」
順番が決まったのだろう。真剣な表情で案内板を見ていた愛理ちゃんが振り返って僕を誘ってくる。
何軒回るつもりかわからないが、僕はこれから訪れるであろう苦難の時を思い憂鬱になった。
「時間が惜しいわ。早く見て回りましょう!」
ルンルンと機嫌がいい愛理ちゃんに背中を押されながら僕たちはお店を見て回るべく出発した。
正直言うと洋服の良し悪しなんてわからなかったし、身だしなみに気をつかうようになった今でもあまり興味もない。
だから辛い時間になると思っていたけれど、思っていたよりも楽しむことができた。
それは愛理ちゃんと一緒だったからってのもあるけれど、普段見れない愛理ちゃんの色々な姿を見れたからってのが大きかったと思う。
特に冬場では見ることのない薄着のミニスカート姿はとても可愛くて良かった。
まあそれでも最後らへんは本当にしんどくて可愛い、似合ってるを連呼するロボットと化していたけど……。
そして愛理ちゃんが見たかったお店を粗方見た僕たちはショッピングモールにあるフードコートで少し遅めの昼食をとっていた。
「それで…愛理ちゃん。この後だけどどうするか決めてるの?」
「そうね〜クリスマスパーティーまではまだ時間もあるし、私が行きたかったところは大体見たからとりあえず終了かしらね。あとは強いて言えばコナミ君が行きたがってたカードショップに寄るくらいかな?」
「よし来た! じゃあ行こう! カードが僕たちを待ってる!」
「ふふ! そんなに楽しみだったのね。それじゃあご飯も食べ終わったし行きましょうか」
服を見ることに疲れてご飯を食べながらもどんより気分が抜けなかった僕だが、あとはカードショップに寄るだけと聞いて俄然元気が湧いてきた。
それからご飯を食べ終わった僕たちは上階にあるカードショップへ向かった。
その途中、アクセサリーショップを見つけた愛理ちゃんに連れて行かれて辟易したりしたけれど、まあ概ねスムーズに到着することはできたと言っていいだろう。
「着いたわ、ここが目的地ね。……へぇー思ったよりも大きいのね」
「まあ、ショッピングモールにあるお店にしては大きいのかな?」
上階に登り続けた先、玩具屋の隣りにカードショップはあった。
流石に1フロアの半分近くを占める家電屋や玩具屋に比べれば小さかったがこう言う家族向けの施設にしては大きいのではないのだろうか。
「それじゃあ入ろうか」
「うん」
僕はどんなカードが置かれているのだろうかとワクワクしながら愛理ちゃんの返事もそこそこにお店へと入る。
「ふんふふーん♪」
僕は無意識に鼻歌を歌いながらカードを見て回っていく。
ガラスケースには当たり前だけどキラキラしたレアカードが飾られており、中にはノーマルカードとして作られるはずのカードがスーパーレアなどのレアリティが高く作られた希少なカードも飾られていた。
「こう言うレアリティが高く作られたカードってよっぽどそのカードが好きな人かコレクターって人が集めるんだろうなあ」
「コナミ君もこう言うレアリティの高いカードって欲しいものなの?」
「そりゃあそうだよ。希少なレアカードも欲しいけど普段ノーマルカードでしか手に入らないカードがレアカードとして手に入ったら、もう嬉しくて合う合わない関係なしにデッキに入れちゃうよ!」
レアリティ違いのカードなんてそれこそ作られる枚数は世界的に見ても数十枚がせいぜいだ。
レアの中でも最上級のパラレルレアなんて手に入ったらもう!
「ふーん、私はパラレルレアよりウルトラレアの方が好きだなあ。ほら、パラレルレアってソリッドビジョンになったら虹色に光るじゃない? あれがちょっとなあ」
「あー確かに特殊な演出されてるもんねパラレルレアって」
パラレルレアは他のレアカードと違って特殊な加工がされているらしく召喚時に虹色の光を纏ってモンスターが召喚される。
それがいいんじゃないかと思うんだけど愛理ちゃんはそれが嫌らしい。
感性の違いというものなのだろう。
「それで、コナミ君はカードを買うの?」
「もちろん! 実は母さんから愛理ちゃんとデートに行くからってことで多めにお金貰ってるんだよねー」
「わー悪い子」
「へへっ、嘘は言ってないからいいんだよ。僕は6パック買うけど、愛理ちゃんはどうするの?」
「うーん、じゃあ私は1パック買おうかな?」
「1パック!? ……それだけでいいの!?」
「いいの。私はこれだけあればね」
愛理ちゃんは並べられているパックから1パックだけを選んで買うようだ。
洋服とか色々と購入して配送をお願いしてたし、節約のためなのかな?
愛理ちゃんは裕福な家庭だって聞いてたけど、やっぱり服を何着も買うとお金がなくなったりするのかもしれない。
……服のためにカードを節約かあ。
うーんよくわからない。
カードはこの世の何よりも優先されるものだと思うんだけどなあ?
「いいカードが当たるといいね」
「うん。愛理ちゃんも当たるといいね」
さっそくパックを開封しようとした僕だが、愛理ちゃんに引き留められて家に帰ってから開けようということになった。
僕としてはすぐにでも開封して中身を確認したかったのだが、この後に愛理ちゃんの家で参加するクリスマスパーティーの時間が迫ってるとのことで断念せざるを得なかったのだ。
そして場所は移り愛理ちゃん宅。
僕は愛理ちゃんとそのご両親に招待されて訪れた愛理ちゃんが住んでいる邸宅でクリスマスパーティーに参加していた。
そこで用意された豪勢な料理をご馳走になった僕は彼女のご両親の希望で愛理ちゃんとデュエルをすることになった。
「コナミ君。君のことは愛理から強い強いと聞いていたからね。その実力のほど、見せて欲しい」
「パパたちに見せてあげましょ! 私たちのデュエル!」
ずいぶん前に愛理ちゃんのご両親に挨拶は済ませていた僕だが、実際にデュエルを2人の前でしたことはない。
愛理ちゃんの家族に見守られながらのデュエルか……。
ちょっと緊張するけど、いつも通りやるだけだな。
「それからこのデュエル、私が負けたらカードショップで買ったパックをコナミ君にあげるね!」
「……いいの!? 僕、カードのことでは遠慮はしないよ!?」
「いいよ。だけどその代わり私が勝ったら君のパックを貰うよ?」
「当然! 僕が負けたらパックをあげるよ」
まさかのアンティルールを提案してくるとは。
予想外だけど勝てばカードを貰えるとなれば受けない手はない。
愛理ちゃんがどうとかご両親の前とか関係ない。全力で勝ちに行く!
「このデュエル…絶っ対に勝つ!!」
「お手柔らかに。楽しいデュエルにしましょうね」
「「デュエル!!」」
カードのレアリティは色々ありますしどれもいいと思いますけど最終的にはウルトラレアくらいがイラストも見やすいうえに光り方も落ち着いてて一番好きだなってなります。