初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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メメント・モリ ②

 

 天上に手を伸ばす大樹の下、僅か1ターンで3体もの超大型モンスターを並べた愛理のターンが始まる。

 

「私のターン、ドロー……バトル! メメント・ツイン・ドラゴンで幻惑の見習い魔術師を攻撃!!」

 

 四足の足を大地につかせ、どっしりと構えた2つの顔を持つドラゴン。その角に稲妻が帯びる。

 雷が稲光を上げ、白と緑に交互に発光する角から雷撃が放たれるその直前、私はここだと勢いをつけてカードを発動させた。

 

「この瞬間、私は速攻魔法、幻惑の眼を発動! 攻撃対象をメメントラル・テクトリカへと変更!! 高い攻撃力が仇になったわね。大ダメージよ」

「そうかしら。世の中そう上手くはいないものでしょう? リバースカード マジック・ディフレクターを発動! 魔法カードの発動を無効にする!!」

「トラップカード──!?」

 

 幻惑の見習い魔術師が雷撃を放とうとしていたツイン・ドラゴンへと魔術をかけ、その矛先を変えようとした。

 その矢先に、それを阻むようにドラゴンの側に円盤状のアンテナのようなものを広げた機械が現れ、その魔力を根こそぎ吸収していってしまった。

 

 それにより魔術は無効。ドラゴンの攻撃目標は変わらず魔法使いに向いていた。

 

「バトルは続行。消しとばしなさい、メメント・ツイン・ドラゴン!!」

「きゃっ!!」

 

 私の目の前に稲妻が落とされる。

 一瞬、視界が機能しなくなるほどの強い光に当てられ思わず目を閉じる。

 

 バリバリと小さく滞留した電気が海底に走る中、音と衝撃が落ち着いたことを確認するように私は目をゆっくりと開いた。

 

「……モンスターが破壊されていない?」

 

 目を開いた私の視界に眉を顰めた愛理の姿があった。

 その疑問の的になっているのは雷撃が直撃しながらその場で姿を保っている幻惑の見習い魔術師だった。

 

「……幻惑の見習い魔術師が戦闘を行う場合、お互いのモンスターは破壊されない。そういう効果を持っているのよ」

「戦闘破壊耐性!!」

「ええ。どんなに高い攻撃力でも、この効果がある限りは私にダメージを与えることはできないわよ、愛理」

 

 頬に一筋の冷や汗が流れる。

 強気に笑いながら答えるも、全てが未知であるメメントというモンスターにこの効果が通じたことに内心ではホッとしていた。

 

 貫通効果や効果そのものを無効にされることがなかったことが幸いだった。

 

「戦闘では無敵。なら、効果で破壊しましょうか。私はもう一枚のリバースカードを発動! メメント・フラクチャー・ダンス!!」

「メメントのトラップカード!?」

「メメント・フラクチャー・ダンスは相手の場のカード1枚を破壊できる。さらに私の場にテスカトリカがいる時はもう一枚も破壊できる──私は幻惑の見習い魔術師と伏せカードを破壊するわ!!」

 

 フラクチャー・ダンスの絵柄に描かれているように、メメント・ホーン・ドラゴンがその三本爪を2度、振り下ろした。

 その爪先から放たれた赤い衝撃波が地面を切り裂きながら私の場のモンスターとリバースカードを切り裂く。

 

 戦闘耐性はあれど効果にまで対応することのできない幻惑の見習い魔術師は悲痛な叫びを海中に轟かせながらその身体を泡のように化し、姿を消した。

 

「これで面倒な娘は消えたわね。それじゃあ次はメメント・ホーン・ドラゴンでダイレクト──ん?」

「私は、メメント・フラクチャー・ダンスが発動したその時、場の永続魔法となっていたミレニアム・アブソリューターの効果を発動させたわ。相手のカード効果が発動した時、このモンスターを場に召喚することができる」

 

 

《ミレニアム・アブソリューター》 攻撃力1300 守備力1400

 

 

 小さな鏡を両手に支える緑の鳥のようなモンスターが召喚される。彼は4枚羽で器用に宙に浮きながら下から見上げるようにメメントモンスターたちを睨みつけていた。

 

「ふーん、なるほどね〜。でも、その子で私のテクトリカとホーン・ドラゴンの攻撃を防げるの?」

「ミレニアム・アブソリューターは幻惑の見習い魔術師と同じ、幻想魔族。幻想魔族に共通する効果として、お互いのモンスターは戦闘で破壊されないというものがあるのよ。さらに、アブソリューターが自身の効果で召喚された時、フィールドのモンスターの攻撃力の半分のライフを回復できる。私はメメントラル・テクトリカを選択!!」

 

 

《エリア》 残 LP 6500

 

 

 アブソリューターが両手で支える鏡にテクトリカを映し出す。

 そこに映し出されたテクトリカからエネルギーを抽出するように、鏡から光が漏れだし、私にライフのエネルギーへと変換してくれていた。

 

「ライフ回復に加えて、戦闘破壊耐性まであるのね。……うーん、面倒ね。うん、厄介というか面倒。破壊できないなら仕方ないわ。私は墓地のメメント・フュージョンを除外、場のメメント・ツイン・ドラゴンを破壊することでデッキからメメント・クレニアム・バーストを手札に加えるわ」

 

 最上級モンスターであるツインドラゴンを破壊するなんて……!

 

 赤い結晶がツイン・ドラゴンの上空に現れ、飲み込まれるように消えていく。その場に残ったのは一枚のカード。

 色からしてトラップカードであるそのカードが愛理の手札に加わるのを目を見張りながら私は見つめた。

 

 破壊しても痛くはないフィールドということもあるのかもしれないが、それほどに手札に加えたカードが強力ということもあるのかもしれない。メメントと名のある通り、それ用のサポートカードなのは確実なのだから。

 

「手札に加える。私がしたいのはそれだけじゃないのよ。もう気づいてるでしょうけど、メメントモンスターは破壊を繰り返しながら効果を発動するの。そしてツイン・ドラゴンは破壊されることで墓地のレベル6以下のメメントモンスターを特殊召喚できる。私はメメント・ダークソードを特殊召喚するわ」

 

 

《メメント・ダークソード》 攻撃力1800 守備力1500

 

 

 メメント・ダークソード、それはコナミくんのデッキに投入されているダークソードそっくりなモンスターだった。

 

 もっとも、元のダークソードは黒い鎧に全身を覆っていたが、メメントモンスターの方は白く光沢のない骨の鎧に灼熱化したような剣を握っている。

 

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンドよ」

「私のターン、ドロー!!」

 

 伏せられた2枚のカード。一枚は確実にサーチしたカード。ならもう一枚は……?

 少なくとも、アブソリューターを倒せるようなカードではないはず。そう、願いたい。

 

「私は手札から儀式の下準備を発動! デッキから儀式魔法であるイリュージョンの儀式とその召喚先であるサクリファイスを手札に加える!」

 

 3体のモンスターに睨まれているこの状況、重要なのは、守りの要であるアブソリューターの維持。

 そして、決して守りの姿勢を崩さずに愛理の場を荒らすことに専念することにある。

 

 下級モンスターのダークソードはともかくとして、最上級モンスターのホーン・ドラゴンと攻撃力が5000もの超大型モンスターのテクトリカを処理できなければ、勝とうにもその芽すら生まれない。

 

 だからまずは……。

 

「そしてイリュージョンの儀式を発動! 手札の黄金の邪教神をリリースすることでサクリファイスを守備表示で特殊召喚!!」

「その瞬間、永続トラップ、メメント・クレニアム・バーストを発動しておくわ」

「このタイミングで……?」

 

 

《サクリファイス》 攻撃力0 守備力0

 

 

 ギョロリと一つの目が飛び出した天秤のようにも見えないことはない恐ろしい姿をしたモンスターが召喚される。

 彼は守備表示で召喚したように、その両腕を交差し守りの態勢をとっている。

 

(サクリファイスに変化はない。あの永続トラップはいったい……)

 

 訝しみ思索にふける私の様子に愛理が補足するように説明を始める。

 

「メメント・クレニアム・バーストには2つの効果がある。一つはテクトリカがいる時、フィールドのモンスターの効果の発動を攻守を1000下げることで無効にできるというもの」

「効果の無効!? それじゃあサクリファイスの効果が使えないっ!!」

「使えないわけじゃないわよ。無効になるだけだからね。破壊するわけでもないし、意味がないわけではないわ」

 

 破壊するわけではないと言われて、それで気持ちが好転するわけがなかった。

 サクリファイスのモンスター吸収効果は1ターンに1回しか使えない。一度無効にされたら次のターンまで使えないのだ。

 

 それでも愛理の言う通り破格の攻撃力を持つテクトリカの攻守を下げれることは無意味ではないと言えるが、それでも4000は残ると考えると焼け石に水感を感じずにはいられない。

 

「……もう一つは?」

「もう一つは攻撃表示モンスターは必ずテクトリカを攻撃しないといけない。サクリファイスを守備表示で召喚してよかったわねエリア」

 

 なるほど、メメントのサポートカードらしいテクトリカと噛み合った効果をしていると嘆息する。

 高い攻撃力を活かした戦闘誘発効果に、そのステータスを減少させるとはいえ、モンスター効果の無効効果まである。

 理にかなった、非常に強力なカードと言えるだろう。しかしそれでも、私にはまだ打てる手があった。

 

「場のモンスター効果は無効にされる。でも、墓地は対象外。なら、今イリュージョンの儀式で墓地へ送られた黄金の邪教神の効果を発動! このカードを除外して、貴方のモンスターをサクリファイスの装備カードにするわ!!」

「そうくると、思っていたわ! 私は速攻魔法──墓穴の指名者を発動! 黄金の邪教神を除外することでそのモンスター効果を次のターンまで無効にする!!」

「──墓穴の指名者ッ!? そんなピンポイントなカードをどうして!!」

「私は貴方の中にいたのよ。全部は知らないけど貴方のデッキで私のメメントに対抗する手段としてサクリファイスとその眷属を活用するのは読めていたわ」

 

 私のディスクから飛び出そうとした無数の目を体に持つ黄金の邪教神。それを許さないかのように大地の下から盛り上がり飛び出した一つの腐った腕が黄金の邪教神を遠い次元の彼方へと追いやった。

 

「ウフフ。アナタの手札は0枚。もうできることも少ないでしょ。サクリファイスの効果を使って終わりかしら」

「……ええ。私はサクリファイスの効果を発動。テクトリカを吸収する」

「ならそれを、テクトリカの攻守を下げることでメメント・クレニアム・バーストの効果を発動。無効にするわ」

「私は……ターン終了よ」

 

 サクリファイスの瞳が怪しい光をテクトリカに向けた時、光に反応したテクトリカの全身から無数の光が飛び出した。

 

 それはテクトリカの中に溜め込まれたメメントたちのエネルギーを放出しているように見えた。彼の力を減退させながら、放たれた光に打ちのめされたサクリファイスは同じようにその力を失っていた。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 読みがあたり戦術を止められたことで苦しい顔をしている私に気を良くした愛理がターンを始める。カードを引いた彼女は若干残念そうな顔をし、モンスターにバトルを命じた。

 

「バトル。テクトリカでサクリファイスを攻撃──メメント・クレニアム・バースト!!」

「──ゔぅっ!!」

 

 サクリファイスの効果を止められたときと同じように、今度は直接的な攻撃へと変換されたテクトリカから無数の光の線がサクリファイスに向けられる。

 

 その光に貫かれたことによってサクリファイスは破壊され、さらに海底を貫いたことで周囲を爆発的な土煙が覆った。

 

 サクリファイスの効果を止めたときと同じ攻撃手段。しかし、光景は同じでもテクトリカからステータスの減少といったことは起きない。

 内部に溜め込められたエネルギーが減少するほどの放出ではなかったためだ。

 

「戦闘で破壊されないアブソリューターを攻撃しても意味はない。ターン終了。よかったわねエリア。時間の問題でしょうけど」

「くっ、私のターン、ドロー!」

 

 苦しいと、息を荒くしながら内心で呟く。

 一向に改善しない状況もその原因であったが、それと同じぐらいに心が苦しかった。

 

 デュエルに負ければ身体の自由を失う。その緊張感と元は愛理の身体であったのを奪った形であるという負い目。その2つがエリアの心に重たい重圧となってその心を責め立てていた。

 

 それでも、好いた男を奪われるかもしれないと言う怒りと不安が一時的にその重荷から解放させる。

 しかし突発的に起こった怒りを持続し続けることは難しく、浮上しては沈む感情の揺れに普段以上の体力を消耗させられていた。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」

「フフ、アハハハ! 防戦一方ねエリア。そんなことじゃあ私に勝てないわよっ!!」

 

 エリアは、気づいていない。

 

 愛理を倒すと言うこと。その結果、愛理という人物の魂は永遠の眠りにつくかもしれない。

 それでも、望む未来のために戦う。その覚悟と決意を持たない故に、苦しんでいるのだという──事実に。

 

 デュエルは2人の終局へと向かい駆け落ちてゆく。

 未来を得られるのは1人。

 天の光は定まる時を待つ。望みを掴むその1人が決まるまで──。

 

 




テクトリカ……テクトリカ。うーん、途中でテスカトリカと書いてたりメメントラルからラルが抜けてたりしてややっこしい名前してんなこいつと悪態がでましたね。
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