初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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3期ラストステージ。あとちょっとだ!


終点ーユベル城

 

 周囲を覆っている闇が齎していた圧力が薄らいでいく。

 覇王という、俺自身の心の闇が生み出した存在が敗北したことで覇王の重圧も消えているのが要因の一つだろう。

 

 覇王はすでにその姿を一変させていた。

 

 傲然とした黒い鎧は消え去り、そのうちに潜んでいた人型の闇が佇んでいる。その様相を知ることはできない。人の形をとっている闇というだけで、目元や鼻立ちなどは形作られていなかった。

 

「覇王、お前が認めなくても、俺は力を敵を倒すためではなく誰かを助けるために使う。そのために、お前が必要だというなら、俺はそれを受け入れる」

『遊城十代、勝者こそが真実。お前がそうすると決めたのならば、それを貫くがいい。敗者たる俺はそれに従おう』

 

 闇が俺の体に染み込んでくる。俺の意思と力が闇を凌駕したことにより、俺の心に戻っていく。

 それは酷く冷たく、冷酷な感情を伴う心であったが、それ故にとても強く、揺らぐことのない鋼のような強さを感じられた。

 

 それを機に周囲を渦巻いていた闇も晴れていく。

 徐々に明るさを取り戻し、元の城の外にある森の中に光景が戻っていく中、覇王が立っていたその場所に、もう1人の俺が立っていた。

 

「お前は──!?」

『初めましてだね、遊城十代。僕はジュウダイ。君の前世と言えば、わかるのかな』

 

 柔和な笑みを浮かべた俺より少し幼さを感じる俺と同じ顔をした少年。前世では一国の王子であったためか、今の俺よりも高貴さを感じさせる気品を漂わせている。

 

 その明らかに自分とは歩んできた道とは違いながら、同じ魂と容姿をしている相手が目の前に立ち、自分を見ているという事実に少しだけ困惑させられていた。

 

『十代、君には申し訳ないと思っている。まさかユベルがあんな行動をとるようになるなんて、ボク自身思っていなかったんだ』

「あんた……」

『ユベルは君と君の友人を沢山傷つけてしまった。とても許される行いではない。だが、その上で頼みたい。厚かましい願いだとわかってはいるけれど、どうか、ユベルを助けてあげて欲しい』

「!?」

『ユベルはボクにとって大切な人だ。それを君にも同じように思って欲しいとは言わない。だけど──!』

 

 目の前に立つ王子が更に言葉を募ろうとしたのを見て、俺は手を前に出すことでそれを止めた。

 

「わかってる。お前は俺だ。同じ魂を持つもう1人の俺なんだ。だから、ちゃんとユベルを助けるさ」

『十代……!」

「あっ、だけど流石に恋人は無理だぜ。仲間ならともかく恋人ってのはちょっと」

『うん。ユベルと愛を交わし合ったのはボクだ。今の君とは関係のない話だからね』

「それからどうやっても無理だってなったその時は……」

『わかってる。その時は、どうか倒してくれ。ボクとしてもユベルがこれ以上人を傷つけるところを見たくはない』

 

 頷き返しながら俺は空を見上げる。

 この思わぬ邂逅も終わりが近づいていた。夕日を超えた空に瞬く星がその輝きを増して俺を迎えにきているようである。

 

「ジュウダイ、俺に……いや、俺たちに任せとけ。ガッチャ」

『──ああっ! ガッチャ!!』

 

 星の瞬きが強くなる。

 

 もう長いこと言ってなかったデュエル後に口癖のように使っていた感謝と激励の言葉。いつ頃から使い始めたのかも覚えていないそれを俺は久々にもう1人の俺に告げた。

 

 ユベル……そして破滅の光という前世から続く因縁。

 俺という人間に与えられたその運命に立ち向かい決着をつけるため、元の場所へと帰ろうととする世界に抗うことなく光の中へと身を委ねていった──。

 

 

 

 

「──十代くん。準備はいいかい」

「おう。俺はいつでも大丈夫だ」

 

 十代くんの中に眠る魂の記憶から読み取って生まれた世界。その世界の底から突然現れた強大な闇に追い出され外に放り出されていた僕だったが、その後無事に記憶の世界から出てきた十代くんと最後の確認をしていた。

 

 あの闇がなんであったのか、凡その想像はついている。世界から追い出された当初は心配していたのだが、その後少しして目を覚ました彼を見ることでその心配は杞憂であったことを知った。

 

 どうやら十代くんは見事に自分の中に宿っていた闇を制したようだった。彼の魂からはこれまで以上に力強い波動と自信を宿しているのを感じ取れる。

 

 ユベルとの対決でも、闇に囚われる心配などもうないだろうと確信できるほどに。

 

「2人トーモ、この先は敵のフィールドなのーネ。十分に気をつけて行くノーネ」

「はい、クロノス先生。今までありがとうございました。ヨハンくんのことよろしくお願いします」

「それじゃあクロノス先生、翔、それからヨハン、コナミといってくる。心配すんな、俺たち2人でこの戦いにケリをつけてくるからよ」

 

 背後で見守る3人に2人で別れを告げる。これが最期になるかもしれない。その覚悟をした上での言葉であった。

 

 そしてユベルと愛理ちゃんの待つ場所へ向かう直前に一度だけ十代くんと視線を交わす。頷き合い、互いに戦う意思を通い合わせた僕たちは空を見上げる。

 

 空には巨大な暗雲が渦を巻いて僕たちの到来を待っている。

 その中心に位置する雲の中を目指し、一歩を踏み出す。するとまるで吸い込まれるように僕たちの身体は浮かび上がり、渦の中心目指し動き出した。

 

 熱くも寒くもない。荒々しい風が舞っているわけでもない暗雲の中を直進む僕たちに迷いも恐れもなく。ただその目には必ず2人を助け出すという決意だけが宿っていた。

 

 そうしてどれだけ昇っただろうか。

 

 周囲を取り巻く無数の巨大な泡に触れることで過去の自分を振り返りながら暗雲の終わりを求めて昇り続け、その雲から勢いよく飛び出した先に、ユベルであろう精霊と禍々しさを感じさせる白い光を纏う愛理ちゃんの元に辿り着いた。

 

「──ユベル!!」

「──愛理ちゃん!!」

 

 十代くんと2人で叫ぶ。

 僕は愛する人の姿を捉えたことによる安堵の声を、十代くんは多くの悲しみを生み出した元凶への闘志を込めた声を。

 

 雲の上に降り立った僕たちに2人は嬉しそうに微笑みを浮かべている。

 十代くんを待っていたユベルはともかく、愛理ちゃんもまた僕がやってくることを待っていたようである。

 

「あれがユベル……」

 

 愛理ちゃんの無事に喜びその姿に目を奪われていたが、視線を感じその隣に立つ精霊を見る。

 人型のようであったが、その姿は悪魔のようでもあった。

 

 左右で異なる色をした瞳に背中に広げられた翼は悪魔そのもの。額には三つ目の瞳が存在しており、僕たちを見つめている。

 

 そのユベルの視線は十代くんに強く向けられてこそいるものの、時折り向けられる僕への視線には興味深そうな感情が込められており、愛理ちゃんの想い人である僕に対しても一定の興味があるようだった。

 

「待っていたよ十代。そして君が愛理の待ち人……コナミだね」

「………愛理ちゃん、僕と一緒に帰ろう。もうこれ以上、悲しい結末を見なくていいんだ」

「ウフフ、それは冗談? それとも本気? いえ、どちらでもいいわよね。貴方の言葉なら全部素敵よ。受け入れてあげる」

「──」

 

 愛理ちゃんの状態を把握するために、目に力を込めて細める。

 

 目が据わっている愛理ちゃんの様子は尋常なものではない。真っ当な精神状態ではないことが見て取れる。やはり破滅の光の影響か。

 力を込めた僕の目には彼女の状態がよくわかった。悲しみ、苦しみ、そして逃避……。

 

 愛理ちゃんは自らの内に眠っていた愛理を自分の手で消す選択をしたためにもう戻れないと諦めている。

 さらにその後悔の気持ちに入り込むように破滅の光が影響を与え、僕への強すぎる執着へと発展してしまっているんだ。

 

 そしてそれはユベルもまた同じ。愛理ちゃんほどに詳細を把握することはできないが、その魂に破滅の光が干渉し歪められている。

 元から十代くんへの愛があったにしても、今はそれ以上のものになっているだろう。

 

「随分と不躾な目で見てくるんだねコナミは。マナーがなってないんじゃないかい?」

「ごめんなさいねユベル。コナミくんにはよく言って聞かせるわ」

 

 2人が居心地悪そうに僕を見てくる。正確には僕の目か。

 

 相手の魂の状態を観測している僕の目は星が瞬き極小の宇宙のようになっている。相手の了承もせずに魂を見通す僕の目が不快に写っているようだった。

 

「ユベル、俺は俺自身の前世を知った。そこでお前と交わしたお前だけを愛するという約束も! 約束をしたのは前世の俺だ。今の俺とは違う! だからお前と恋人になってやることはできないが、それでも仲間として一緒に戦うことは出来る! だからもうこんなことはやめるんだっ!!」

「ふふ、可笑しなことを言うんだね。キミとボクが恋人になれないなんて。でもいいよ、許してあげる。すぐにボクへの愛を思い出させてあげるから」

 

 十代くんの哀願にも似た訴えにユベルはまるで受け流すように首を傾げて不思議そうに答えている。

 

 言葉は通じるのに、会話が通じている気がしない。というより、こちらの伝えたいことが心に伝わっていない。そう感じる。

 やはり、破滅の光の影響下にある2人を会話で止めると言うのは難しいと言うことなのだろう。

 

 それを十代くんも悟ったのか、その目を黄金色に変えてユベルを睨みつけていた。

 

「──へえ! これは驚いた。十代、君はもう覇王の力を我が物にしているんだね。そこの君の力によるものかい?」

「ユベル、デュエルを始める前に貴方に一つ聞いておきたい。貴方の目的はなんだ。12の次元を一つにして、何をするつもりなんだ」

 

 僕もまた、半ば以上に会話で2人を止めることを諦めた上でデュエルの前に聞いておかなければならないことを聞く。

 

 超融合という次元違いの強力なカード。それを手に入れて何をしようと言うのか。12の次元を一つにして何がしたいのか。その内容次第では、最悪のところまでいった時、一切の容赦なく倒す必要がある。

 

 覇王と化した十代くんもそれは気になるのか静かにユベルを睨みながら聴き耳を立てている。それに答えたのは身体から光を漂わせている愛理ちゃんだった。

 

「コナミくん、私たちの目的は一つよ。たった一つ、永遠の愛を手に入れること。そのために世界を一つにするの」

「永遠の……愛?」

「そう、命には限りがある。生まれ変わればその魂に刻まれた記憶はなくなり愛すらも忘れ去られてしまう。そんなのボクたちは耐えられない。だから、超融合で12の次元を一つにすることでボクたちが離れ離れになることのない世界を作り出す。それがボクたちの夢なのさ」

 

 僕の疑問の声にユベルが続く。

 

 その目的は共通する目的として合致しているようで、それを話す2人はとても涼やかな顔をしており、その様子はまるで夢見る乙女のようでさえある。何も知らなければ愛らしい姿に見えていてもおかしくないほどに。

 

 だが、それを聞く十代くんが落ち着いていられるはずがない。拳を震わせながら怒りのままに十代くんは黄金色の目を輝かせながら怒気を解放した。

 

「永遠の愛……そんなことのために万丈目は、明日香はっ! 皆んなを巻き込んだのかッ!!」

「だってそれが愛だろう? 君を苦めることでボクの愛をわかって欲しかったのさ」

「巫山戯るなっ! そんなお前の理屈で仲間たちを苦しめられてたまるかっ!!」

 

 怒りに身を震わせる十代くんを他所に、何を言っているんだろうと僕はユベルの愛の理屈を聞いてて思っていた。

 

 意味がわからない。愛をわかってもらうために苦しめるとか、無茶苦茶な理屈だ。横で聞いてるだけでもユベルが僕たちの常識からかけ離れた思考をしていることが理解できる。

 

 なるほど、これは確かに十代くんがユベルのことがわからないと言うのも道理だ。こんな無茶苦茶な理屈を並び立てて友人たちを傷つけるユベルを受け入れられるわけがない。無理だ。

 

 逆の立場だったとしてもユベルを拒むだろう。愛してもらうために友達を傷つけるなんて、まともな思考で辿り着く考えではない。

 

 いや、ユベルのことはいい。

 僕が一番に助けなければならないのは愛理ちゃんだ。僕はまず愛理ちゃんを助けることを考えるんだ。

 

「愛理ちゃん、確かに僕は優柔不断で他の女の子に目を奪われることがあるくらい馬鹿な男だった。それで君を不安にさせてしまったことは謝る。だからもう、こんなことはやめよう。これからは君だけを見ているから」

「そんな口先だけの約束はいらないわ。私が欲しいのは永遠なの。永遠の愛なのよ!」

「その通り。それにさっきも言っただろう? 命は生まれ変わればその記憶を失ってしまう。紡いだ愛さえ消え去る。十代がそうであるようにね」

「くっ!」

 

 ユベルの指摘に十代くんが苦い表情を浮かべる。

 

 それは彼の前世のことを言っていることは明白で、今の十代くんと前世の彼が違う存在であるとはわかっていないと言う証明でもあった。

 

「聞きたいことはそれで全部かい? ふふ、なら、デュエルしようよ。お互いに苦しめ合い、愛を分かち合おうじゃないか」

「コナミくん、私はもう貴方が何を言おうと止まる気はないわ。そのために、愛理を殺したんだから」

 

 2人の腕のデュエルディスクが開く。これ以上の会話はできそうになかった。

 

「………十代くん、予想はしていたけどどうやら話し合いじゃあ止められそうにないね」

「ああ、仕方ねえ。デュエルで2人を助ける道を見つける! コナミ、やるぞ!!」

「うん! 僕たちが力を合わせれば不可能はないっ!! 行こうッ! 十代くんッ!!」

 

 デュエルが始まっていないと言うのに強大な力を感じさせる2人に立ち向かうために僕と十代くんの身体から闇が溢れ身を守るようにそれを纏う。

 

「さあ、共に愛を語り合おう!」

「優しくなんてしてあげないから、覚悟してね。コナミくんっ!!」

 

 それに抗うためか、それとも闇を打ち払うためか、暴虐を孕んだ光の波動がユベルと愛理ちゃんの身体からも溢れ出す。

 

 僕たちの闇と愛理ちゃんたちの破滅の光。

 2つは互いに反発し合い、火花を散らしながら互いを牽制している。

 

 勝利した側の勢力が、この先の世界の未来を決定づける。

 自分たちに訪れた因縁と運命に決着をつけるためのデュエルが今、始まった──。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 




王子の名前わかんないからそのままジュウダイ呼びにしました。
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