初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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最後まで突貫するために書いてるから頭がおかしくなりそう。


Stand by me ③

 

「私のターン、私は手札から暗黒界の取引を発動。お互いに手札を1枚引いて、1枚墓地へ送る」

 

 愛理ちゃんのターン。

 発動された暗黒界の取引により全員の手札が1枚交換される。

 

 戦況はあまり良いとは言えない。

 戦闘において無敵とも言える力を持つユベルの進化形態であるユベル-Das Abscheulich Ritter(ダス アブシェリッヒ リッター)が僕たちの攻撃を強く阻んでいた。

 

「私は暗黒の召来神を召喚。その効果でデッキから神炎皇ウリアを手札に加える!」

 

 

《暗黒の召来神》 攻撃力0 守備力0

 

 

 全体的に鈍い金色をした小さな翼竜が召喚される。

 翼竜は長い尾を霧の中に突き刺し、まるで釣り上げるように、新たな幻魔のカードを愛理ちゃんに渡していた。

 

「コナミ、ウリアはトラップカードを3枚墓地へ送ることで召喚される幻魔だ。一度召喚されると厄介だが、その召喚は難しいはずだ」

「わかった。ユベルもいる今、可能性は低いってことだね」

 

 進化したユベルは自分以外のモンスターを全て破壊する効果を持っている。それはある種諸刃の剣にもなりうる効果だ。

 自分のモンスターも巻き込むその効果で幻魔を破壊してしまっては意味がない。

 

 そのため、手札に幻魔を呼び込んでも、それを召喚してくる可能性は低い。そう僕らは睨んでいた。

 

「ふふふ。それはどうかしら。私は幻魔トークンをリリースすることで暗黒の召喚神をアドバンス召喚!!」

「バカな! 君はもう通常召喚を行なったはずっ!」

「暗黒の召来神がいる時、私は2度の召喚権を手に入れることができるのよ」

 

 

《暗黒の召喚神》 攻撃力0 守備力0

 

 

 召喚の神と呼び名がつけられたそのモンスターは竜のような頭部に赤い翼。下半身には足元まで隠れる腰巻きのような長く赤いローブを着ていた。

 

「あいつはッ!」

「十代くん、知っているの?」

「ああ。ヨハンと一緒にユベルとデュエルしたときに召喚されたモンスターだ。コナミ、気をつけろ、幻魔が来るぞ!」

「幻魔が!?」

 

 十代くんが過去の記憶を引き出すように険しい表情をしてそのモンスターを見ている。

 僕も彼からモンスターへと視線を切ったとき、召喚神からドス黒い闇が吹き荒れていた。

 

「暗黒の召喚神はこのターンの攻撃権を放棄することでデッキから無条件で幻魔を呼ぶことができる。私はデッキから降雷皇ハモンを特殊召喚!!」

 

 

《降雷皇ハモン》 攻撃力4000 守備力4000

 

 

 噴き上げられた召喚神の闇が幻魔の形を作り出す。

 雷を周囲に振り落としながらその黄金の幻魔は召喚された。

 

 その幻魔をぼんやりと見上げながら呟く。

 

「これがハモン……第二の幻魔……」

 

 進化したユベルがいる今、召喚したところでエンドフェイズがくれば破壊されるだけのはず。まして、ディメンション・ガーディアンで守られた幻魔トークンを犠牲にして何故召喚したのか。

 

 攻撃権を失った彼女の不合理とも言える行動に僕の頭の中ではなぜ……と疑問が駆け巡っていた──。

 

「当たり前だけど、ハモンはお飾りで召喚したわけじゃないわ。私は暗黒界の取引で墓地へ送られた幻魔の召喚神を除外。デッキから次元融合殺のカードを手札に加え、発動! フィールドのハモン、手札のウリア、墓地のラビエルを除外する!!」

「まさか、幻魔を融合するというのか!?」

 

 フィールドに3色の光の柱が立ち昇る。

 それはそれぞれの幻魔の色を表しているようで、ハモンの黄色、ウリアの赤、ラビエルの青を示しているようだった。

 

「おいで──混沌幻魔アーミタイルー虚無幻影羅生門!!」

 

 

《混沌幻魔アーミタイルー虚無幻影羅生門》 攻撃力0 守備力0

 

 

 光が閉じた先、現れたのは3体の幻魔の特徴をその体に備えた巨大な悪魔だった。その巨大さは見上げなければいけなかったハモンさえ凌ぎ、天にさえ届きかねないほど。

 

 星々が瞬くこの目で見つめると、3体の幻魔の融合体が内包する力の巨大さに呻きながら恐怖する。

 その力を全力で奮えば、世界は容易く壊される。それだけの暴威をその内部には秘められていた。

 

(──まるで嵐だ。奴の内部に地獄が見える。唸りを上げて吹き荒れる熱の海。雷豪渦巻く積乱雲。そして生命が育まれる余地のない荒れ果てた大地。これが幻魔……その真の力か……)

 

 この瞳に送られてくる情報に足がすくみそうになる。

 そんな僕の背を十代くんがポンと叩いた。

 

「大丈夫だコナミ。俺たちならやれるさ」

「……そうだね。恐れてなんかいられない。いられないよね!」

 

 気圧されそうになる自分を奮い立たせ、アーミタイルを睨みつける。

 清廉な青い瞳の奥に白く輝く凶悪な光を宿した愛理ちゃんがそんな僕を嬉しそうに見つめていた。

 

「愛理、そのアーミタイル、攻撃力がないみたいだがそれでいいのか? ユベルが出した時は1万はあったはずだが?」

「ええ、これでいいのよ十代くん。だって、通常のアーミタイルだと貴方たちにダメージは与えれても、テンペスターを倒せないじゃない。だから、アーミタイルは貴方たちにあげるわね」

「それはどういう……なにぃ!?」

「アーミタイルが、僕たちのフィールドにっ!?」

 

 1万!? と、内心十代くんと愛理ちゃんの会話に驚く僕に畳み掛けるようにアーミタイルが僕たちの場に移動する。愛理ちゃんがなにか特殊なカードを発動したわけではなかった。

 

「このアーミタイルは相手の場に移動することができる。そして私のエンドフェイズになると、自分の場のカード全てを除外するのよ」

「自分の場のカード?」

「そうか! アーミタイルが今いるのは僕たちのフィールド。除外じゃ、テンペスターは耐えられないっ!!」

 

 彼女の説明に、その意図を悟る。

 

 戦闘でも効果でも破壊されなくなっている十代くんのテンペスターだが、除外効果には耐性がない。守備表示で守りには入られないためにアーミタイルで排除するつもりのようだった。

 

「遍くすべてを消し去りなさいっ! ──虚無幻影羅生門!!」

 

 アーミタイルの口から闇色のガスが吐き出される。

 留まることなく溢れていくガスはフィールドを包み込み、僕たちのカードを瞬く間に覆い隠していく。

 

 そうして吐き出されたアーミタイルのガスが霧散したとき、僕たちの場にカードは消えており、アーミタイルもまた、愛理ちゃんたちのフィールドへと戻っていた。

 

「効果を使用したアーミタイルは私の場に戻ってくる。虚無幻影羅生門としてではなく、通常のアーミタイルとなってね」

 

 

《混沌幻魔アーミタイル》 攻撃力0 守備力0

 

 

「………だけど、君のエンドフェイズが来たということはユベルの効果も発動するということだ。いくらアーミタイルでもその効果の対象から外れることはできないはずだよ」

「いいえ、心配しなくても大丈夫よコナミくん。私はブービートラップEを発動させていたもの。これは手札を1枚捨てることで墓地のトラップカードを使用するカード。私はアーミタイルにディメンション・ガーディアンを装備させたわ。これによりユベルの効果で破壊されることはない」

 

 愛理ちゃんの説明にその視線を巨大なアーミタイルからそらす。通常のアーミタイルとやらの足元には、いつの間にやら発動していたディメンション・ガーディアンが存在しており、確かに守られているようだった。

 

 そのあまりのサイズ差に発動していたことに気づくことなく、見落としていた。変わらずそのステータスが0で保持されているアーミタイルはその威容にもかかわらず静かに出番を待っている。

 

 その暴威は彼女たちのターンが回ってきたときに振るわれるのだろう。ただし、その時は効果ではなく、十代くん曰く1万もの攻撃力で。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 強い……と、カードを引きながら考える。

 1ターン目で幻魔を、2ターン目でその融合体。さらにテンペスターを処理した。

 

 ユベルは恐ろしく強いと聞いていたから驚きは少ないが、愛理ちゃんの強さが僕の想定を遥かに超えていた。

 

 そのことに心底僕は驚いていた。

 

 ユベルと歩調を合わせ並び立たせた最高レベルのモンスターたちに驚嘆し褒め称えたいぐらいだ。これが通常のデュエルなら、素直にそうしていただろう。

 

 それを容易に成した今の彼女から感じられるこの力。これはもしかすると……。

 

「そうよコナミくん。貴方の感じているように今の私は、貴方よりも強い!」

「──ッ!?」

 

 僕の心情を察した愛理ちゃんが話しかけてくる。

 

「今の私に勝ちたいなら、奇跡の一つでも起こさないと無理だから。頑張ってね♪」

「それが必要だというのなら。幾度でも起こしてみせるよ。ただし、勝つためではなく、助けるために。僕は手札から──」

「待ってくれコナミ。このタイミングで俺は手札からNEXTを発動させてもらう。このカードは俺の場にカードがないとき、手札から発動できる。墓地からネオスとネオスペーシアン4体を特殊召喚する!!」

 

 

《E・HERO ネオス》 攻撃力2500 守備力2000

 

 

《N・ブラック・パンサー》 攻撃力1000 守備力500

 

 

《N・グラン・モール》 攻撃力900 守備力300

 

 

《N・グロー・モス》 攻撃力300 守備力900

 

 

《N・アクア・ドルフィン》 攻撃力600 守備力800

 

 

 僕がカードを発動しようとしたその時、それを手で止めた十代くんがネオスたちを召喚した。

 そのモンスターたちをじっと見つめ彼と視線を交わし、言葉なく意思を交わす。

 

(──十代くん、今ネオスたちを召喚したのは……)

(──ああ、頼むコナミ。こいつらを守ってくれ)

(──わかった。やってみる!)

 

 今、十代くんのモンスターたちは5体。全てのモンスターゾーンを使用している。それは彼らが次のターンに必要だから今このタイミングで召喚したのだろう。

 

 ならば、僕たちの作戦のために愛理ちゃんたちの目を僕に惹きつけておかなくては。

 

「妬けちゃうねえ。2人だけで通じ合って、ボクたちはのけものかい?」

「いいじゃない。仲がいいことは良いことよ?」

「………愛理は寛容だねえ。ボクは嫉妬でいっぱいだよ」

「2人にあるのは友情であってそこに愛情はないもの。異性なら許さないけどね」

 

 目で言葉を交える僕らの様子にユベルからピキリと圧の強い視線が突き刺さってくる。愛理ちゃんはなんとも思っていないようだが、ユベルはどうやら友情さえも独占したいようだった。

 

「僕はライフを500払うことで手札から二重融合を発動! 融合を2回行う。僕は手札のE・HERO オーシャンとゴラ・タートルを融合し、E・HERO アブソルートZeroを融合召喚──さらにアブソルートZeroとドリーム・シャークを融合することでマグナム・ザ・リリーバーを融合召喚する!!」

 

 

《コナミ&十代》 残 LP 8700

 

 

《マグナム・ザ・リリーバー》 攻撃力2800 守備力2000

 

 

 融合の渦が連続して起こる。

 1度目で生まれた氷結のHEROは背後で発生した新たな渦に呑まれてその姿を変質させていく。

 

 そうして召喚されたのは焔をスカーフのように首元に巻いた黒い悪魔。そして、フィールドに吹雪が吹き荒れ始めた。

 

「──これは、アブソルートZeroによるものね」

「そうだ。アブソルートZeroが墓地へ送られたことで効果発動! 相手モンスターをすべて破壊するっ!!」

 

 苛烈となっていく吹雪がユベルを凍り付かせていく。ディメンション・ガーディアンに守られたアーミタイルは、翡翠のバリアにより吹雪から遮断され、凍りつくことはない。

 

 しかし全身を氷に包まれたユベルは破壊から免れることはできず、ひび割れていく氷とともに破壊されていく。そして、進化したために大きくなったその巨体故、真っ白な霜が空気中に流れた。

 

「アーミタイルは破壊できない。だが、あくまで戦闘で無敵なだけであるユベルにはこれを耐えることはできない。あとはアーミタイルだけだ!」

「くくく。ボクの第2形態であるユベル-Das Abscheulich Ritterがフィールドから消えた時、ボクの究極の形態であるユベル-Das Extremer Traurig Drachen(ダス エクストリーム トラウリヒ ドラッヘ)が降臨する」

「なにっ!?」

「そんなバカな……まだ進化するというのか!?」

 

 

《ユベル-Das Extremer Traurig Drachen》 攻撃力0 守備力0

 

 

 ユベルを破壊した氷の霜が周囲に漂う霧と混ざり合いさらに巨大な姿を形成していく。

 2頭を持つ竜という形は変わっていない。しかし、その胸にあった大きな一つ目は恐ろしい形相の顔へと変化し、より凶悪となったそのプレッシャーは究極の形態と呼ぶに相応しい。

 

 隣に並ぶアーミタイルにも決して劣っていない恐るべきモンスターが彼女たちの場に召喚されていた。

 

「まだ、倒せないとは。ユベル、なんてモンスターだ」

「究極体となったボクには攻撃の制限はない。そしてボクと戦闘を行った相手モンスターは破壊される。次のターン、アーミタイルと共に攻撃してあげるよ」

「自分から攻撃できるのか!」

 

 ユベルの効果の特徴として、戦闘で発生したダメージはすべてこちらが受けることになる。究極体となったユベルもおそらく同じだろう。

 受動的であった前形態なら攻撃しなければ済んだが、それが能動的にできるようになったというのならその脅威は跳ね上がる。

 

 最終形態と呼ぶに相応しい効果と言えた。

 

「そして、3度目のボクの召喚だ。マチュア・クロニクルにカウンターが一つ乗る。これであと2つだね」

「あと2つ。だけど、その前に決めてしまえばいい! 僕はマグナム・ザ・リリーバーの効果を発動! 墓地の融合をデッキの1番下に戻すことでカードを1枚ドロー!!」

 

 そのカードを目にした瞬間『来た!』と、歓喜が全身を彩った。

 リリーバーの効果で引いたカードはこのデュエルで十代くんと相談した超融合に対抗するためのキーカードの一枚。

 

 彼と相談して決めた2つの作戦を成功させるため、決して欠かせないカードだった。

 

(──十代くん、君にこのカードを託す。発動するタイミングは任せるよ)

(──わかった。あと2回。俺の方もユベルがカウンターを貯める前になんとか引き当てる)

 

 コクリと互いに首を振り意識を合わせる。

 あともう少し。自分たちの方が強いと確信している彼女たちより先に盤面を完成させる。

 

 そのために残りの手札でできることは──。

 

「僕はライフを1000払うことで簡易融合を発動。EXデッキからレベル5以下のナイトメアを駆る死霊を特殊召喚──マグナム・ザ・リリーパーとリリースすることでThe tyrant NEPTUNEをアドバイス召喚する!!」

 

 

《コナミ&十代》 残 LP 7700

 

 

《The tyrant NEPTUNE》 攻撃力3600 守備力2600

 

 

 飛沫を上げるように巨大な大鎌を携えた上半身が人型の鰐であるNEPTUNEが召喚される。

 その大鎌は彼の効果でナイトメアを駆る死霊の力を受け継いでいるようで、青白い炎が纏われており、切れ味を増していた。

 

「バトルだ! The tyrant NEPTUNEでダイレクトアタック!!」

「ボクもアーミタイルも無視するだって!?」

「NEPTUNEはリリースしたモンスター1体の効果を受け継ぐことができる。今、NEPTUNEはナイトメアを駆る死霊でもあるのさ」

「!?」

「──Scythe of ruin(サイス・オブ・ルーイン)!!」

 

 噴き出す青白い大鎌を大きく振り上げたNEPTUNEが上体に捻りを加えて勢いを増させながら大鎌を振り下ろす。

 それと同時に飛び出した魂を切り裂くような青白い刃が彼女たちを襲う。

 

 苦痛に耐える声を上げた彼女たちの元で巨大な爆発が起こる。目に見えて減ったそのライフは、ようやく与えた僕たちのはじめてのダメージだった。

 

 

《ユベル&愛理》 残 LP 4400

 

 

「NEPTUNEが直接攻撃に成功したこの瞬間、ユベル、あなたの手札を1枚捨てさせてもらう」

「ダメージだけに飽き足らず、ボクの手札までっ!!」

「カードを2枚セット。これで僕のターンは終了だ!」

 

 恐らくはデュエリストとして最高峰の実力を有しているユベル。幻魔をその手に掌握し、僕以上とも言える力を手にしている愛理ちゃん。2人のタッグに食らいつき、チャンスを待つ僕たちのデュエルは続く。

 

 超融合──発動されればすべてが終わるカード。それが発動されるそのときは、着実に近づいていた────。

 

 




アーミタイルを原作寄りにするかOCG寄りにするかちょい悩みました。あと暗黒の召喚神の原作効果はやり過ぎなんで逆に使いたくすらありましたね。
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