初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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 1ヶ月超、もう十分休んだろうということで連載再開します。正直、ここからは本当に不定期投稿になります。モチベの問題もありますが、少し前に始めたFGOが面白くて面白くて。そっち優先しちゃってますので。


4期
最終学期の始まり


 

 デュエルアカデミア。そこはデュエリストを育成するための教育機関の名称。そのアカデミアが建てられている小さな孤島があった。そこでは日夜、高校生の年頃となる少年少女が様々な目的のもと強いデュエリストを目指し勉学にデュエルにと励んでいる。

 

 その島の中を、一人の少女が歩いていた。

 腰まで伸ばした長い紺色の髪を揺らしながら赤い制服を着た少女の手には黄色い布に包まれた弁当箱が一つ。それは少女が想い人のために作ったもの。

 

 その少女──早乙女レイは島のはずれに建てられているレッド寮を目指していた。

 

「十代様ー! 起きてますかー!!」

 

 ノックを一つ。慣れたもので、他寮であるレッド寮に着いた彼女は物怖じすることなくその寮の部屋に真っ直ぐに向かい、その中へと声をかける。

 

「おー。入ってきていいぞ」

 

 返事はすぐに返ってきた。

 ドアを挟んでいるためにくぐもっているその声に、レイの心が弾む。彼女は部屋に入る前に一度だけ髪が乱れていないかを確認してから、ドアを開けた。

 

 ドアを開けた彼女の目に入ったのはまず乱雑にものが置かれた机が一つ。それからよい天気だというのにびっしりと閉められたカーテンによる薄暗い部屋。

 

 そして、部屋の壁側に置かれた2段ベットの上段から見える想い人である遊城十代の曲げられた膝であった。

 

「もう、十代様。もう朝なんですからカーテンぐらい開けましょうよ」

「ん? ああ、そうだな」

 

 生返事を返す十代に、レイはため息をひとつ吐いて部屋に入る。

 彼女はいつものように持ってきた弁当を机の上に置き、カーテンを開けた。

 

 それと同時に窓を貫き差し込んだ光に目を細める。一度に明るくなった部屋に彼女はベットの方を振り返り、起き上がる様子のない彼を見つめた。

 

「十代様、今日もそうして日がな一日ベットでゴロゴロとしているんですか? 卒業も近いんですから、私聞いてるんですよ? 十代様の成績がちょっとよくなくて卒業できるか危ないってこと……十代様、聞いてます?」

「ああ、聞こえてるよレイ。心配すんな、ちゃんと考えてるからよ」

「それならいいんですけど……あまり心配させないで下さいね。私も愛理先輩も、コナミ先輩だって心配してるんですから」

「おう」

 

 口を尖らせながら聞くレイに、十代はそっけない反応を返していた。

 異世界から返ってきてから、彼は以前までの明るさが消え果ててしまったように部屋に閉じこもるようになっていた。

 

 それに対し、彼と同じく卒業を間近に控えているコナミや愛理は今は様子を見ようと心配しながらも落ち着いた様子で彼を見守る姿勢をとっていた。

 

 しかしレイはそういうわけにはいかず、心配から毎日のようにレッド寮に通い、十代の様子を見にきていた。お弁当は放っておくと食事さえおざなりにしそうな彼のために日々用意したものだ。

 

 そこに含まれている思いは入学当初に作り始めたときのものとは少しだけ異にしている。愛情以上に心配が勝る彼女が作る弁当は美味しさ以上に栄養を重視されていた。

 

 彼女は今日もダメかと、変わりのない様子の十代に軽く気落ちしながら2段ベットの梯子に指をかける。

 梯子を登り見えた彼の端正な容姿に気落ちした気持ちが少し晴れたような気がした。

 

 ベットの上で寝転がる十代はそんなレイに一瞬だけ目をやり、すぐに天井へと視線を戻す。

 大人に近づいたことと、異世界での戦いを経たことで幼さが消え、精悍な顔立ちになった彼の手をレイが握った。

 

「十代様、そろそろ行きましょう。もうあまり時間もないですよ」

「行くって……どこへだよ」

「決まってます。学園にですよ。今日はコナミ先輩のブルー寮への入寮を賭けた昇級試験の日じゃないですか」

 

 自身の手を引くレイの言葉を聞いて、十代はそういえばそうだったなと、思い出していた。

 異世界、そして破滅の光との戦いから帰ってすぐ、試験を受けたコナミはラーイエローへと昇格し、寮を移っていた。そして、今日はオベリスクブルーに上がるための試験がある日だったのだ。

 

 十代は一瞬、応援などいかなくてもあいつなら大丈夫だろと、信頼からくる無関心な行動を選択しようとしたが、自身を見つめるレイの視線に気まずいものを感じ上体を起こした。

 

「わかった、行くよ。起きればいいんだろ?」

「はい! それじゃあ早く準備をしましょう。デュエルが始まっちゃったら勿体ないですから」

 

 頭をかきながらベットから降りる彼を満足そうにレイが見つめている。

 

 十代の扱いが上手くなってきているのか、それとも弁当を作ってきてもらったり身の回りの世話を焼こうとしてくるレイに頭が上がらなくなってきているためか、十代は気の乗らない体を動かし出立の準備を進めた。

 

「やれやれ。外に出かける気はなかったんだがなあ」

「一日中部屋に引きこもってるなんて健康に悪いんですから、元気が出なくても外に出ないと。こんなに晴れてるんですから」

「ああ──確かに、今日はいい天気みたいだな」

 

 弁当を片手に持ったレイに腕を引かれながら十代は外に出る。

 冬が近く、寒気が近づいているからか肌寒い空気が皮膚を刺してくる。しかし、降り注ぐ日差しは暖かく過ごしやすい。

 

 2人は十代以外、誰も過ごすことのなくなった寮を背後に学園への道を歩き出したのだった──。

 

 

 

 

 窓辺から見えた小鳥が一羽、飛び立つ。空へと羽ばたいていくそれを見送るコナミは、視線を学園の通路へと戻し欠伸をひとつした。比較的暖かな空気が漂う学園内に、眠気が誘われたのだ。

 

「随分と余裕ねコナミくん。いくら不合格でもペナルティはないからって気が緩みすぎじゃない?」

 

 それを窘めるような声が隣から聞こえた。

 そこに立っているのは水無月愛理。コナミの恋人である。オベリスクブルーの制服を着た彼女は半眼で彼を見ていた。

 

「いやー、なんていうか。ここのところ気の張り詰めたデュエルばかりだったでしょ。それがひと段落したからか、なんだか気持ちが浮ついててさ」

「寮の昇格を急いでるのも、そのため?」

「まあ、そうかな。卒業までに、目標を達成しときたかったのもあるけどね」

 

 気恥ずかしそうに頬を掻きながらコナミは昔を思い出すように、数ヶ月前までの出来事を思い起こしていく。

 

 異世界で行われた大賢者やユベル。そしてその後の破滅の光との戦い。僅か数ヶ月の間に行われたその戦いが遠く感じる。平穏で、穏やかな学園の日々が戻ってきたことで糸が切れたようにすら感じていた。

 

 実際、学園に戻ってきてから数日は部屋でじっと休んでいたのだ。しかし、将来のために頑張ると自身と霊使いの娘たちに誓いを立てた身であることを思い出し、残り短い卒業までの間にやるべきことをやろうと立ち上がったのだ。

 

 その一つがブルー寮への昇格であった。

 兼ねてより入学当初から目指すべき目標の一つと数え、その中でも1番簡単と見做していた目標。それを未だ達成できずにいたことを、当時書き込んだ目標リストのメモを見つけたことで思い出したのだ。

 

 その目標は、殆どは達成済みであった。プロ資格を取ることも、世界を救うことなど、やりたいことの大部分は達成できたと言っていい。

 できていないのは僅か2つ。アカデミアの上位成績者が入れるブルー寮への入寮と、学園一のデュエリストになることである。

 

 長かったなと、コナミは奇妙な感慨が湧き上がってきたことに不思議と笑みを溢していた。

 

「愛理ちゃん、今回の試験が合格したらさ……」

「うん。合格したら、なに?」

「……いや、なんでもない。合格したら言うよ。もうそろそろデュエル場に行かないといけないしね」

 

 コナミは喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。

 そして首を振り、訝しむ彼女を連れて試験が行われるデュエル場へと足を向ける。試験開始を告げる時刻はもう間近であることを、時計の針が表示てしていた。

 

 会場は賑やかであった。

 円状に広がり、中心のデュエル場を観戦しやすく構造されている観客席には学年、寮を問わず黄色と青の制服を着た生徒が多くいる。その中に、赤い制服を着た生徒は1人としていない。

 

 その環境や寮の痛み度合い。また、ここ数年アカデミアで起こった事件を機に安全確保の観点を鑑みてレッド寮の廃寮が決まっていたためであった。

 

 そのため、レッド寮に未だ在籍しているのは十代くんのみ。他の生徒は皆、ラーイエローへと昇格し、移り住んでいた。

 

「思ったよりも、観戦に来ている人が多いわね」

「うん。ただの試験なのにね」

 

 ただの一生徒の昇格試験であるために満席というわけではなかったが、それでも普段の3割り増しで会場にきている生徒は多かった。

 

「先輩は有名ですからね。卒業が近くなっていることもあって、皆んな気になってるんですよ」

 

 と、会場の入り口に立っている僕たちの後ろから話しかけてくる人がいた。振り返り、彼を見る。そこには、オベリスクブルーの青い制服を着た友人であり後輩でもある佐藤道長くんが立っていた。

 

 その隣には、彼と同じく後輩である永本春香ちゃんもいる。彼女は僕の隣の愛理ちゃんに向けて挨拶をしていた。

 

「道長くんたちも観戦に来てくれたの?」

「ええ。先輩のデュエルが間近で見れる機会も、もうあまりないでしょうから。頑張ってください。応援してますから」

「私は別に、そこまで興味があるわけではありませんでしたが、道長がどうしてもっていうので。まあ、頑張ってください」

「春香……お前もうちょっと……」

「はは。相変わらずだね春香ちゃんは。僕への当たりが強い。まあ、行ってくるよ」

 

 愛理ちゃんと一緒に観客席へと向かう彼らを見送りながら僕はデュエル場の中心へと踏み出す。そうして踏み入れた会場の反対側、通路の奥から歩いてくる人の影があった。

 

 その人は癖のついた長髪を青いコートの上から垂らし、ゆったりとした足取りで近づいてくる。左腕にはデュエルディスクが付けられており、眼鏡の奥から見える視線からは強い覇気が宿っているのがわかる。

 

 やがてデュエル場の中心のフィールドに立った眼前に立つ僕を見下ろしながら、その内から感じる覇気とは真逆の優しい口調で話しかけてきた。

 

「コナミくん、今日の試験官を務めるのは私だ。よろしく頼むよ」

「佐藤先生……! 驚きました、てっきりオベリスクブルーの生徒が相手をするかと思ってたんですが」

「それが当初の予定だったんだがね。卒業後、プロとして活動することが決まっている君だ。その相手に生徒がというのは不適格ではという意見もあり、プロとして活動していた経験もある私が相手をすることになったんだよ」

 

 そうしてデュエルディスクの調子を確かめながら話すのはアカデミアの教師陣の一人、佐藤先生であった。かつて、プロとしても活躍していた経歴を持つ人であり、その腕前は教師陣の中でも屈指のものだと聞いている。

 

 プロの世界へと入っていこうとする僕の相手としては、これ以上ない人選であった。

 

「それとも、十代くんと並びアカデミアの双璧とも言われている君の相手を私がすることになったことは君にとって不服だったかな?」

「まさか! 嬉しいですよ先生。まさか先生が相手してくれるなんて、光栄ですらあります」

「それはよかった。私も、君をただの一生徒だとは見做してはいない。これは試験だが、君ほどのデュエリストに手加減はむしろ無礼というもの。私の全力のデッキで相手をしよう」

 

 デュエル場で、互いに離れた先生と僕のデュエルディスクが開かれる。時計の針が示す時間はすでに試験時間の開始を通っている。

 向き合い、デュエルの準備を終えた僕たちを見た会場中の生徒たちからざわめきが消えていく。

 

 しんと静まり返ったデュエル場の中心で、僕と先生の声が響き渡った。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 





 4期はあまり描きたいことが思いつかないので短めになるかも。あとクロノス先生と悩んだけど、作品的に関わりがあるのは佐藤先生の方かなと思い、先生にしました。プロ経験もある人ですしね。

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