初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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プリンって美味しいし好きだけどキャラメルはちょっと苦手なんだよね。


山頂の婚約決戦 ①

 

「先行は私がもらおうか。私のターン、ドロー!」

 

 愛理ちゃんとの結婚の許しをもらうために始まった藤次郎さんとのデュエル。山頂にて始まったこのデュエルの先行は藤次郎さん。

 

 この人とのデュエルをしたのはそう多くはないが、その実力がトップクラスに高いのを僕は知っている。一瞬の油断もならない人だ。

 

「私は手札から強欲で金満な壺を発動! 私はEXデッキから6枚のカードをランダムに裏側で除外することでデッキからカードを2枚ドローする!」

「いきなりドロー補助……」

 

 一瞬手札事故かという疑念がよぎり、眉を顰めたが、藤次郎さんほどの実力者がそうそう事故を起こすというのは想像できない。

 手札を増やせるというのは明確なメリットだ。とはいえEXデッキから6枚ものカードを裏側で除外するというのはとてつもなく重たい代償。

 

 試しに同じカードを使用したことがあるからわかる。EXデッキのカードを使用するつもりのあるデッキでそれを使うのは現実的ではない。

 

「つまり…藤次郎さんは融合を使うつもりが──」

「そして手札から儀式魔法──エンド・オブ・ザ・ワールドを発動! 手札の破滅の美神ルインを生贄に捧げる!!」

 

 考察を続けていた僕の目の前に天空に巨大な青白い炎の陣が開かれた。

 世界の全てを燃やし尽くすような青い炎は広く、大きく膨れ上がり、その奥から巨大で危険な力を持つモンスターの降臨を予感させていた。

 

「これは──儀式召喚かっ!!」

「そうだ。降臨せよっ! 終焉の覇王デミス!!」

 

 

《終焉の覇王デミス》 攻撃力3000 守備力3000

 

 

 青く、世界を焼こうとしている陣──炎が煌めく。

 

 その中から藤次郎さんの呼び声に応えて召喚されたのは黒い外装で全身を覆い、いかなる存在も一撃で打ち砕くという意思が垣間見える巨大な斧を持った巨躯の魔人であった。

 

「デミス……たしかライフポイントを代償に場のカード全てを破壊する効果を持つ儀式モンスターのはず。これが先行1ターン目であることを喜ぶべき……だけど、僕の知るデミスとは少し違うようですね」

 

 その名の通り、世界に終焉を齎す存在である覇王デミスは身に宿す危険な力を抑えることなく敵対者である僕を睨みつけている。

 

 その姿は僕の知るそれとは少しだけ違っていた。

 名も、レベルも、僕の記憶にあるデミスよりも強く大きくなっていた。

 

「終焉の覇王デミスはレベル10。その前身である終焉の王デミスの進化系のような存在だよ」

「進化系……なるほどそういうことですか。なら、その生贄となった破滅の美神ルインも……」

「ふっ、私はさらに儀式魔人ディザースを守備表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンド。さあ、君のターンだ。コナミくん」

 

 

《儀式魔人ディザース》 攻撃力200 守備力200

 

 

 僕の問いかけに微かに笑うだけの藤次郎さんの前に、中心に髑髏の紋様が描かれた盾持つモンスターがデミスの隣に召喚される。

 それは明らかな儀式モンスターをサポートする効果を持つモンスターだったが、そのステータスも、効果も今は驚異にならない。

 

 それを知る僕は序盤からデミスという超大型モンスターを召喚してくる容赦のない展開を見せてくれた藤次郎さんの戦法にどう対処するか。それに意識を割きながらカードを引いた。

 

「僕のターン、ドロー! 僕は手札からE・HERO バブルマンを守備表示で召喚! 僕の場に他のカードがないため、その効果によりカードを2枚──」

「おっと、その効果を使わせるわけにはいかないね。私はこの瞬間、リバースカードオープン! ドライトロン流星群を発動! 私の場に終焉の覇王デミスがいることでバブルマンの召喚を無効にし、デッキに戻す!」

「──!?」

 

 刹那──召喚されたバブルマンは次の瞬間には消失していた。

 天から降り注いだ無数の光刃によって消されたのだ。

 

「ドローはさせないよ。君に手数を増やされると面倒なことになりそうだからね」

「くっ」

 

 手札を増やさなかったことに歯噛みする。

 何もできなくなったわけではないが、召喚権を行使して召喚されたバブルマンの効果が失敗したことは苦々しかった。

 

「だったら、こうするまでだ! 僕は手札から融合を発動! 手札のE・HERO シャドーミストと憑依覚醒ーデーモン・リーパーを融合──E・HERO ガイアを融合召喚!!」

 

 

《E・HERO ガイア》 攻撃力2200 守備力2600

 

 

「融合召喚されたガイアは相手のモンスター1体の攻撃力を半減させ、その攻撃力を自身に加えることができる! 半減させるのは終焉の覇王デミスだ!!」

 

 融合の渦から召喚された黒鉄のHERO──ガイア。

 ガイアがその両腕で叩きつけた大地から発した衝撃波はデミスを打ちつけその力を半減させていた。

 

 

《E・HERO ガイア》 攻撃力3700 守備力2600

 

 

《終焉の覇王デミス》 攻撃力1500 守備力3000

 

 

「そして融合素材となったシャドーミストの効果を発動。デッキからE・HERO エアーマンを手札に加える。バブルマンを召喚しちゃったから追加召喚はできないけど……ガイアがいればデミスは倒せる。バトルだ! ガイアで終焉の覇王デミスを攻撃!!」

 

 僕の宣言を受けて飛び出したガイアが鋼鉄の腕を勢いつけてデミスへと叩きつける。轟音を響かせ、大地へと叩きつけられたデミスは消える。そう予測し、予想していたはずの光景は土煙を漂わせながらも力強く立ち上がったデミスの姿によって否定されていた。

 

「デミスが……破壊されていない──!?」

「ああ……残念ながらコナミくん、終焉の覇王デミスは終焉の王デミスと違い戦闘によって破壊されることはない。このモンスターがいる限り、私の儀式モンスターは戦闘では破壊されないんだよ」

 

 

《藤次郎》 残 LP 1800

 

 

 藤次郎さんが口端を上げ、こちらの目論見が外れたことを笑っている。

 こちらにデミスをもはや倒す手段がないことを察しているようであった。

 

「……なら、僕はターンエンドです」

「伏せカードはなしか。よし、私のターンドロー!」

 

 藤次郎さんのターンが始まってしまった。

 僕のターンが終わったことでデミスとガイアの攻撃力が元に戻り逆転している。

 

 ガイアを守るためのカードがない今、戦闘を行われれば足掻き用もなくガイアは破壊される。

 デミスの効果を思えば、ダメージ差を狙いモンスター同士の戦闘が行われることはおそらくないのだろうが……さて……。

 

「ふふ、コナミくん。説明するまでもないだろうがデミスには自分以外のカード全てを破壊する効果を持つ」

「知っています。ガイアは破壊されるのでしょうね。ですがそのためには多大なライフを払う必要があるはず」

 

 少なくとも、終焉の王デミスはそれが必要だった。そう……記憶している。

 だが、この覇王となったデミスは………。

 

「いや、覇王デミスの破壊効果にその制約はない。正確には条件を満たしたデミスはというべきだがね。ともかく、今のデミスにライフポイントは必要ないということだよ」

「制約なしで使える全除去効果!?」

「そう。デミスがいる限り何度でも、毎ターン発動できるんだ。戦闘でも破壊されない。相手にするには相当に驚異なモンスターだと思わないかい?」

「くっ!」

 

 戦闘では破壊できず、ライフという代償もなしで全てのカードを何度でも破壊できるモンスター!!

 終焉の覇王というだけあるということか!!

 

「まずはその効果で君を守るHEROを破壊させてもらおうか。ディザースも消えるが、まあ支障はない。デミスの効果発動! デミス以外の全てのカードを破壊する──終焉の嘆き!!」

 

 デミスが斧を──杖のように振り上げた。

 全身から青い火炎を噴き上げたデミスは斧を振り降ろす。斧の先から放射された炎は紙を燃やすようにガイアを包み込み、一瞬の抵抗も許さずに焼き尽くしていく。

 

 世界を焼く炎が過ぎ去ったあと、残された存在は覇王のみであった。

 

 

《コナミ》 残 LP 3800

 

 

「……僕のライフが減っている?」

「デミスの効果だよ。彼の効果で破壊した君のカードの枚数分、200ポイントのダメージを与える」

「そういうことですか」

「ああ。そして君を守るHEROはいなくなった。構えなさい、バトルだ。デミスでダイレクトアタック──エンド・オブ・フォース!!」

「──ぐぁあああっ!!」

 

 ガイアを破壊したときと同様。目前まで飛び込んできたデミスが再び斧を振り上げ──空を切り裂くように振り下ろされる。

 僕の肩から腰まで両断した斧によって僕のライフは大きく削られていた。

 

 

《コナミ》 残 LP 800

 

 

「ターン終了。まずまずのターンだった。倒しきれなかったことだけが、惜しいがね。まあ、それは次のターンを待つとしよう」

「ぐぅぅっ! まだデュエルは始まったばかり。勝ったつもりになるのは早いですよ! 僕のターン、ドロー!!」

 

 ライフは大幅に削られ状況は極めて不利。

 覇王デミスがいる限り、どんなカードを出しても壁にもなりはしない。だが、諦めるという選択肢はなく。

 終焉を齎す覇王に挑むために僕は祈りと覇気を込めてカードを引き抜き──。

 

「…………うん。これならなんとか…いける!」

「ほう? その様子。いいカードが引けたようだね。まだ、デュエルは終わらなそうだ」

「ええ。困った時に祈りに応えてくれるのはやっぱり、愛するカードですね」

 

 僕が引き抜いたカード。

 そこに描かれたカードは愛する女性の姿と魂を持つカードだった。しかし、彼女を活用するには少しだけ前準備が必要。

 

 彼女との未来を手にするまでにも、必要なカードは……。

 

「勝つ。そして輝かしい未来をっ! そのためのHEROはすでに──手札にある! 僕は手札からE・HERO エアーマンを召喚し、その効果によりデッキからE・HERO オーシャンを手札に加える!!」

 

 

《E・HERO エアーマン》 攻撃力1800 守備力300

 

 

「オーシャン……水属性のHEROを持ってきたということはアブソルートZeroを召喚するつもりかな? 確かに、デミスが耐性を持つのは戦闘のみだ。彼なら共倒れまで持っていけるだろう。些かつまらない方法だがね」

 

 快活とした気分でHEROを手にした僕に対し、先を見据えた藤次郎さんの口が憮然と引き結んでた。

 彼の脳裏で見た未来は彼の望むあり方ではないようで、少しだけ彼の気分を落とさせていたようである。

 

 それに、僕は笑みで返した。

 

「藤次郎さん、勝手にイメージして、勝手に不機嫌にならないでくださいよ」

「ふむ、それはそうだ。すまないね。しかし──」

「ええ。確かにアブソルートZeroは強力ですからよく助けられてますし頼ってます。今回もそれを使って窮地を脱すると思われても仕方ないですけど、今回は違います。今回のやり方はもっと迂遠なやり方ですから」

「ほう。それは?」

「ええ、僕が頼るのは最強のカードでも、最高のカードでもなく、最愛のカードです! 僕は手札の水霊媒師エリアの効果を発動! エリアとオーシャンを墓地へ送ることで海亀壊獣ガメシエルを手札に加える!!」

「そのモンスターは……壊獣だと!?」

 

 エリア──最愛の女性である愛理ちゃんの同一の存在であり魂を宿すカードが光り輝く。

 淡く光る青色の輝きはオーシャンの力を借りてより強い存在である壊獣を呼び寄せてくれていた。

 

「壊獣は僕のカードだけど、1体だけだと僕の場に召喚することはできない。その召喚をするには──」

「相手のモンスターを生贄にする必要がある。相手……つまり私のデミスだ」

「そうです。僕はあなたの終焉の覇王デミスを生贄に捧げることで海亀壊獣ガメシエルを藤次郎さんの場に特殊召喚する!!」

 

 僕の召喚宣言を機に、覇王デミスの足元から巨大な水柱が噴き上がる。

 デミスの姿を覆い隠し、その姿が見えなくなっているが水柱の中がどうなっているかを察することは容易である。

 

 カード効果によるモンスターの破壊、除去は防ぐことはそう難しいことではない。それを可能とするカードは世に多々ある。

 

 しかし──。

 

「モンスターをリリースすることで除去する方法を防ぐことは難しい。それ用のカードをデッキに入れていることは稀ですよね」

「ぬぅ……」

 

 かくして、水柱が解けた時、その壊獣は現れた。

 世界に終焉を齎す覇王は消え、そこに残されていたのは一体の巨大な亀型の怪獣……いや、壊獣。

 

 水棲故の滑らかな質感を思わせる表皮に、背中には亀であることを証明するような黒い硬い甲羅。

 壊獣故か、甲羅の隙間からは空を飛ぶための長い羽のような、触覚のようなものを生やした海に生息する亀の最上級モンスターであった。

 

 

《海亀壊獣ガメシエル》 攻撃力2200 守備力3000

 

 

「さあ、まだまだデュエルはこれからですよ藤次郎さんっ!」

「ふふ。そのようだ。ならば、さあ来なさい。デミスが消えても私の場には君が召喚したガメシエルがいるぞ! 君はこれをどう超えて見せる!!」

 

 山頂で始まった許しを求めて始めたデュエル。

 その序盤からの攻防は激流のように力強く、厳しい戦いであることを知らせる。

 

 僕はガメシエルを前に残された2枚の手札に手をかけたのだった──。

 

 

 





 ガメシエルとか相手の場に召喚されるモンスターってデュエルディスクだとどうやって出してるんだろう。相手にカード投げ渡して出してくださいしてるのだろうか。流石にそれはないか。

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