初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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何度見ても言えることだけど、バトルシティの遊戯vs海馬が面白すぎてヤバい。


創世の坩堝 ①

 

「先行は私からにさせてもらおうか。私のターンドロー! 手札からダーク・アーキタイプを攻撃表示で召喚。カードを1枚伏せてターンを終了だ」

 

 

《ダーク・アーキタイプ》 攻撃力1400 守備力400

 

 

 僕と藤次郎さんの前に現れた謎の男──ミスターT。

 先行をとった彼のデュエルの立ち上がりはとても静かなものだった。少し拍子抜けするぐらいには。

 

 彼の前に召喚されたのは四つ足をした蜘蛛のような不気味なモンスター。見たことのないモンスターだが、それほど強そうには感じない。

 

 モンスターの強さや脅威度を見た目や攻撃力で判断するなど愚の骨頂、無意味な行為だが、一見してそれは奇妙なモンスターを使ってきた程度の印象しか受けない。

 

 あのとてつもない、闇の広大さと深淵さを兼ね備えた存在が出してきた一手にしては……という意味でのことではあったが。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 なんにせよ、どのような意図で出してきたかは突いてみなければわからないというもの。

 相手の正体を探る意味でも、僕も序盤は攻勢に出ながらも様子見気味で行かせてもらうことに決めた。

 

「僕は手札からテイ・キューピットを守備表示で召喚! さらに、僕の場に守備力が600のモンスターのみが存在するため、コウ・キューピットを攻撃表示で特殊召喚する!!」

 

 

《テイ・キューピット》 攻撃力1000 守備力600

 

 

《コウ・キューピット》 攻撃力2200 守備力600

 

 

 不気味な四つ足のモンスターの前に2体の可愛い天使が召喚される。

 

 キューピットらしく、2体ともに弓矢を手に持っており、特に上級モンスターでありながら仲間のキューピットがいることで召喚できるコウ・キューピットは先発としては十分すぎるステータスを持っていた。

 

「ほう、1ターン目から下級と上級のモンスターを並べてきたか。やはり、あの遊城十代と同じ異端者。それなりの実力を有していそうだな」

「これであなたの狙いを確かめさせてもらう! いけっ! コウ・キューピットでダーク・アーキタイプを攻撃──スピニング・アロー!!」

 

 雪空のような鈍い輝きを見せる天使が手持ちの弓から矢を放つ。

 空気を裂いて真っ直ぐに突き進む弓矢に邪魔する存在はない。

 

 威力で勝るその矢は当然のこととして四つ足の怪物を破壊せしめるであろう。これを使役するミスターTもまた、その破壊を邪魔するつもりはない。

 

 寧ろ破壊されることが彼の狙いでもあるのだから。

 

 ただし──。

 その破壊を、ただ傍観しておくつもりも彼にはなかった。

 

「ではこの瞬間、私はリバースカード アルケミー・サイクルを発動。ダーク・アーキタイプの攻撃力を0にさせてもらう」

「? 攻撃力を0にするだって?」

 

 なんのために──コナミがそう問いかける前にキューピットの矢はダーク・アーキタイプを射抜いていた。

 アルケミー・サイクルによってその力を消失していたダーク・アーキタイプは小規模な爆発を残しながら消えた。

 

 

《ミスターT》 残 LP 1800

 

 

「ダーク・アーキタイプが戦闘で破壊されたことで効果発動! 私が受けたダメージと同じ攻撃力を持つモンスターをデッキから選び、そのレベルと同じになるように手札のモンスターを墓地へ送る。そして選んだモンスターを特殊召喚する!」

「わざわざステータスを下げたのはそれが狙いか!!」

「フッ、私が受けたダメージは2200。よって攻撃力2200の聖刻龍ーシユウドラゴンを選択。手札の龍王の刻印を墓地へ送ることで特殊召喚!!」

 

 

《聖刻龍ーシユウドラゴン》 攻撃力2200 守備力1000

 

 

 破壊されたことで闇色の泥のようになっていたダーク・アーキタイプの死骸から飛び出てきた1体の龍。

 青い身体に黄金の鎧を纏う聖なる龍であった。

 

「さらにアルケミー・サイクルの効果を受けたモンスターが破壊されたことで私はカードを1枚ドロー………何か言いいたげだが、遠慮することはない。なにかな?」

 

 アルケミー・サイクルの効果によりカードを引くミスターTを見つめる僕を彼は愉快な視線で返していた。僕の疑念が生んだ胡乱な視線を察したようだった。

 

「いえ、随分と変わったデュエルをするなと思ってね。いくらその龍を召喚するためとはいえ敢えて攻撃力を0にするのは中々余人に真似できることではない。大した度胸ですよ」

「常識に囚われないのが私のデュエルでね。お気に召さないかな?」

「………」

 

 常識に囚われない……か。

 確かに非常識な闇を持つ存在だ。そんな存在のデュエルを人の尺度で図るべきではなかった。

 

 まあ、だとしても下手をすれば致命傷クラスのダメージを負いかねないやり方はやはり理解できないが。

 

「コナミ、常識とは常に更新されるものだよ。今はライフに重きが置かれているだけのこと。そのライフもいずれは空に浮かぶあの雲のようになるだろう」

「何を馬鹿な。ライフとはデュエリストにとっての命のようなもの。それを軽視するようなことが──」

「はっはっは! 時代の潮流というものだ。今は理解できないというだけのこと。精霊との結びつきの強いこの世界ではどうなるかわからないがね」

「──………いや、いい。考えるだけ無駄だな。僕はターンエンドだ」

 

 価値観の乖離か、或いは見ている視点の違いか。このミスターTという男との問答に無意味さを感じた僕は吐き捨てるようにターンを終えた。

 

 ミスターTの思わぬ戦術に面食らったが、大きく減ったライフの分、こちらが有利なのは変わらない。彼の言動に惑わされ、デュエルの調子を落とすわけには行かないのだ。

 

 彼が何者なのかを探るためにも、今は集中して勝たねば。

 

「ふむ、相互理解を拒むかね。それならばそれでいいとも。私としても、デュエルで君を倒すほうが手早く済むのでね。

 私のターン、ドロー。私は聖刻龍ーシユウドラゴンをリリース、聖刻龍ーアセトドラゴンをアドバンス召喚!」

 

 

《聖刻龍ーアセトドラゴン》 攻撃力1900 守備力1200

 

 

 多くのライフを失いながらも召喚した青き黄金の龍ーシユウドラゴンが生贄に消えていくのを見た僕は警戒を持って新しく召喚された龍を見ていた。

 

 召喚された龍は紫色の聖なる龍であった。

 聖なる龍。そこは気にすべき点ではない。名前から同じテーマ性を持つモンスターであることは明白だからだ。

 見るべきは、シユウドラゴンよりもレベルも攻撃力も低いことであった。

 

「なぜわざわざ攻撃力の劣るモンスターを……」

「疑問かな。そうだろうとも。そんな君に教えよう。シユウドラゴンは生贄とされることで手札・デッキ・墓地のいずれかから、ドラゴン族の通常モンスターを特殊召喚することができるのだよ」

「! モンスターを場に増やすことが目的か!」

「そう。そして私のデッキにはお誂え向きにそのドラゴンがいる。私はデッキから龍王の聖刻印を特殊召喚する!」

 

 

《神龍の聖刻印》 攻撃力0 守備力0

 

 

 それは──巨大な黄金の卵のようであった。

 

 攻撃力はなく、守備力もない。卵のよう…と表現したのは姿形がそのように見えるからでありながら、その身を護る殻としての防御力を有していないからである。

 

(上級モンスターが2体並んだ。だけど、2体ともにそのステータスは低い。脅威とは呼べない。召喚権も使用してしまった。狙いはいったいなんだ?)

 

「疑問に思うことはない。それはすぐにわかること。私は手札から融合を発動! 聖刻龍ーアセトドラゴン、神龍の聖刻印、そして手札の聖刻龍ーネフテドラゴンを融合!!」

「融合が狙いだったか!」

「──3体の龍を素材とし、氷獄龍 トリシューラを融合召喚!!」

 

 山頂に身体の芯を凍えさせるような寒気が吹き荒れた。

 融合の渦に吸い込まれた3体のドラゴン。その奥から現れんとする新たなモンスターによるものである。

 

 その龍は極寒の世界で生きる三つ首のドラゴン。

 世界の全てをやがて氷の世界へと変えてしまい、生命を絶滅させてしまう古の龍であった。

 

 

《氷獄龍 トリシューラ》 攻撃力2700 守備力2000

 

 

「3体のドラゴンを素材とされたトリシューラは君のデッキの一番上のカードと君のEXデッキのカード一枚、そして私自身のデッキから1枚のカードを除外することができる。さあ、除外してもらおうか」

「くっ!」

 

 トリシューラの背後から吹き荒れてくる吹雪に強制されるように、僕のデッキから2枚のカードが除外されていく。

 

 一枚はこの天使賊デッキでは使用する可能性の低いEXデッキのカード。だがもう一枚、メインデッキから消えたのはゼラディアス。

 天使族ポートの『天空の聖域』をサーチできる優秀なモンスターだった。

 

 しかし、フィールドの盤面に変化はない。除外されたことによる損害はあるけれど3体のドラゴンを素材としてまで召喚されたモンスターにしては安堵が勝る状況であった。

 

「ではバトル! 氷獄龍 トリシューラでコウ・キューピットを攻撃!!」

「──っ!!」

 

 トリシューラの大口が開かれ、瞬く間に巨大な氷柱が作られた。

 人1人を軽く凌駕する大きさのその鋭い氷柱は驚き目を見張るコウ・キューピットを容易く貫き破壊する。

 

 決してダメージは大きくはない。

 しかしその衝撃は大きく苦悶する僕に対し、満足したように口元をニヤけさせながらミスターTはそのターンを終えた。

 

 

《コナミ》 残 LP 3500

 

 

「僕のターン、ドロー! 手札から永続魔法 冥界の宝札を発動! 僕が2体以上をリリースしてアドバンス召喚したとき、カードを2枚ドローする!

 さらに手札のレベル8である『The splendid VENUS』を見せることでエンジェルO1を特殊召喚する!」

 

 

《エンジェルO1》 攻撃力200 守備力300

 

 

 召喚された小さな、機械のような丸みを帯びた白い天使。

 彼は隣に立っている花冠を被る天使であるテイ・キューピットに同調するように、光の粒子となっていく。

 

 その光が形作る存在はもう決まっている。

 世界を凍てつかせる三つ首のドラゴン。それを打ち倒すべく僕が呼ぶのは当然──。

 

「現れろっ! 僕のエース──美しき金星の女神!! The splendid VENUS!!!」

 

 

《The splendid VENUS》 攻撃力2800 守備力2400

 

 

 召喚されたのは極光照らす黄金の女神。2対の白い翼を背に生やした最上級クラスの天使である。

 天使は一振り杖を振る。するとフィールドの地面を這うように光が流れでいった。

 

「──これは?」

「VENUSは自身が場にいる時、天使族以外のモンスターの攻守を500ポイント下がる。その効果によるものさ」

 

 フィールドの端まで走った光は厳粛たる法を敷くように破滅の竜であるトリシューラの力を縛り上げ、彼を苦しめていた。

 

 

《氷獄龍 トリシューラ》 攻撃力2200 守備力1500

 

 

「バトルだ! The splendid VENUSで氷獄龍 トリシューラを攻撃──ホーリー・フェザー・シャワー!!」

「──グ……ヌゥッ!!」

 

 

《ミスターT》 残 LP 1200

 

 

 フワリと、羽根が宙に飛ぶように黄金の天使が背中の両羽を羽ばたくことなく物理法則に反するように浮かび上がる。

 

 光を纏い始めたVENUSからトリシューラへと放たれたのは無数の羽の刃。

 百を超える羽の刃は三つ首の竜の全身を打ちつけ、切り裂き、雄叫びを上げるトリシューラを瞬く間に破壊した。

 

「よし! 僕は最後にカードを一枚伏せて、ターンエンドだ!!」

「くっ………いや……ふむ、トリシューラでは君の相手をするのは不足だったようだ。君への警戒度を上げるとしよう。私のターン、ドロー!」

 

 ミスターTがカードを引く。

 トリシューラが破壊されたことでより鋭い闘志を見せ始めた彼のターンが始まろうとしていた──。

 

 





ミスターTと言えば、やっぱドラゴンデッキかなあと。たぶんどんなデッキでも使いこなせるんだろうけどさ。

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