小学生編最終回!
いや~~なんだかんだ書いてみると楽しくて続けられるものだとしみじみ思ってます。
完結まで、止まるんじゃねえぞ……。
「ん……あ~~~朝かぁ……」
窓から差し込む日差しの中、僕は目を覚ました。
「ここ……どこだろう?」
寝ぼけ眼のままに、奇妙なほどに気怠い体を起き上がらせて部屋を見渡す。
僕の部屋じゃない。
それにこんな広い部屋で眠った覚えもないなぁ……。
「昨日、なにがあったんだっけ……?」
僕は寝起きでうまく回らない頭を動かして何とか思い出そうとする。
確か、愛理ちゃんの家でデュエルして……それからなんでかガガギゴと命を賭けたデュエルをすることになって……。
「僕、何で生きてるんだ?」
僕はたしかにガガギゴに負けたはずなんだけどなぁ。
「あっ! 起きたのね。コナミ君」
「……愛理ちゃん?」
声がした方を見ると部屋の入り口に愛理ちゃんが立っていた。
「愛理ちゃんがいるってことは……ここは……」
「そっ! 私の家だよ? 君がガガギゴちゃんと帰ってきた後、よく眠ってたから泊まってもらったの」
「ガガギゴと……。そうか、帰ってきたのか。あのへんな場所から」
ガガギゴとのデュエルの後、どうやら僕はガガギゴに元の場所に戻されたらしい。
とりあえず愛理ちゃんに何があったのかとか、ガガギゴとデュエルすることは知っていたのかとか聞きたいことは山ほどあるけれど、今は……。
「あ~~~悔しぃいいい! 敗けたーー!!」
いくら普段使用しているデッキじゃないとはいえ、敗けは敗け!
生きているのはよかったけど、悔しさは多分にあって。
僕はベットの上に寝転がり悔しさを吐き出した。
「お疲れ様。敗けたのは残念だったけど、いいデュエルだったよ」
「……見てたの?」
「うん。皆でね」
どうやら愛理ちゃんたちは方法はわからないけれど僕のデュエルを見ていたらしい。
ってことは……僕が泣いてたところとか怖くてプレイミスしてたところとか愛理ちゃんに見られてたってこと!?
「うぁあああ。恥ずかしぃいい!」
僕はあまりの羞恥心に顔を覆い布団にくるまった。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに……。それに、怖くても最後までデュエルを諦めなかったところとかかっこよかったよ」
「ぬ~~それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんだ」
女の子に情けない部分を見られるのはきつい。
どうせ見せるならかっこいいところを見せたいのが男って生き物だろう。
「それじゃあ起きて! ご飯を食べましょ!」
愛理ちゃんとの会話でだいぶ目が覚めてきた僕は彼女に連れられてリビングまで連れて行ってもらった。
「おっ! 起きてきたか。コナミ君、昨日は大変だったね?」
「あ、おはようございます。愛理ちゃんのお父さんに、お母さん」
リビングでは愛理ちゃんのご両親がすでに食事をとっており、僕の分も机の上に広げられていた。
「まあ、その……大変なんてものじゃなかったんですが、皆さんああいう事態になるって知ってたんですか?」
僕は少し恨みがましく愛理ちゃんたちを見ながら席に着いた。
「うん。あっ、でもあんな命を賭けたデュエルとかダメージを受けたら痛い思いをするとかは聞いてなかったから、私たちも驚いちゃったわ!」
「そうだね。流石にあんな危険なデュエルをすると事前に聞いていたら私たちも止めていたよ」
ああ、流石に愛理ちゃんたちは知らなかったのか。
よかった。あんなデュエルをするのに嬉々として送り出されてたらちょっと怒ってたところだ。
「でも、僕敗けたんだけどなんで生きてるの……?」
「それだけど、本当に命を奪う気はなかったんだってさ。なんでも……『そう言っておけば張り合いがでるだろ?』って言ってたよ」
「ガガギゴーー!! あいつ絶対性格悪い!!」
なのが張り合いが出るだ!
ふざけやがって。確かにデュエルは新鮮で楽しかったけど、もう二度とごめんだ!
「それから……『デュエリストとして認めてはやるが、俺に負けるようでは話にならん。もっと強くなれ』だって。よかったねコナミ君。一応自分のマスターとして認めてくれたみたいだよ」
「それよかったって言っていいの? まあ言われずとも強くはなるけどさ。次やる機会があったらコテンパンにしてやる」
はぁ。結局なんでガガギゴが僕をあんな所に連れて行ったのか聞きそびれてしまった。
「ちなみに愛理ちゃんたちは知ってるんだよね? なんで僕があんな目にあったのか?」
「知ってる……けど、ごめんね? ガガギゴとの約束でデュエルで敗けた以上知る権利はないって言われてて。一応あのデュエルも形式上情報を賭けたルールだから、それに関わった私たちも詳しいことは教えることはできないの」
愛理ちゃんは申し訳なさそうに僕に謝罪しながら説明はできないと教えてくれた。
「デュエルで敗けたからかぁ。はぁー。なら、仕方ないのかなぁ?」
「ごめんね。でもそれ以外のことなら教えて上げれるから聞きたいことってある?」
聞きたいことか。
そりゃあいっぱいあるな。
だけど……何から聞いたらいいんだろう。
「う~ん何から聞いたものか。……まず愛理ちゃんってガガギゴのこと前から知ってたんだよね?」
詳しい時期を考えれば初めて会った時から気づいてたってことなのかな?
ガガギゴちゃんって呼んでたし、デュエルの後、僕と一緒に行動し始めたし。
「うん。とはいっても、私も最近気づいたんだけどね? 私も色々と忘れてて……」
「忘れてて? 何か思いだしたの?」
「うん、実はね。……私、体は人間なんだけど魂は精霊だったのよ!」
「え……な……何だってー!! え……えっと、愛理ちゃんは人間じゃなかったってこと!?」
今明かされる衝撃の真実!!
愛理ちゃんは人間ではなかった!?
なるほど~、愛理ちゃんが水霊使いエリアにそっくりなのは愛理ちゃんが精霊そのものだっからかあ。
納得だ。うんうん。
ガガギゴがいるんだから、エリアが人と一緒に生活しててもおかしくはないよな。
それが愛理ちゃんだってのは驚きだけど。
「そうじゃなくて、私の魂だけが精霊なの。わかりづらいだろうから1から説明するね」
いまいち理解できてなさそうな僕の様子に愛理ちゃんは困ったような顔をして、順序だてて教えることにしたようだ。
「まず私、水無月愛理は本来生きて生まれてくることはなかったの」
「生まれてくることはなかったって?」
「うん。通常通り生まれてくればこの体は死産で亡くなるはずだったの。だけど、色々あって精霊の世界から流れてきた水霊使いエリアの魂が宿ることで生きながらえたの。……あっ、色々あったって部分はガガギゴとの約束の部分に入るから話せないの。ごめんね」
「へーそんなことが……。あれ? そのことご両親に話してよかったの?」
結構、というかとんでもなく重大なことだと思うんだけど。
生まれてくることはなかったとか、精霊の魂が宿ったとか、親の前で話していい内容なの?
僕はチラリと親御さんの方を見てみる。
あっ、大丈夫っぽい。あらかじめ話は済んでいたのか普通にコーヒーを飲んでリラックスしてる。
「大丈夫。お父さんたちには記憶を取り戻してから伝えておいたから。それで、私が精霊の世界からこの世界に来た訳だけど……実は……世界に危機が迫っているの!」
「危機?」
「そう! 危機が迫っているの!!」
愛理ちゃんが迫真の表情で僕に世界の危機を告げてくる。
「危機って……どんな……?」
「それは……言えないっ! っていうか、わからないんだど……」
あっ、そこはわからないんだ。
何が起こって世界が危険なことになるのかはわからないけど、危険なことが起こることだけはわかってるってことなのかな?
しかし世界かあ。また突然スケールの大きい話になったなあ……。
そんな大事を解決しに来たって、もしかして愛理ちゃんってすごい精霊なのかな。
まあそれはいいとして……。
「なんだかよくわからないけど、愛理ちゃんが困ってるってことだけは伝わってきたよ」
「そう、困ってるの。それで……コナミ君。君に精霊の世界を守ってほしいの」
「……えっ、僕が!?」
「うん。助けてほしいの。それがいつ起こるのかとか、何が起こるのかはわからないから、詳しい話はできないけれど……」
僕の手を取って祈るように見てくる愛理ちゃんを見ながら思う。
世界を守るかぁ。
なんて……なんてナイスな展開なんだ!
こういうの憧れてたんだよ僕!
美少女に頼られて悪者から世界を守るなんて、アニメや映画で見るようなヒーローそのものじゃないか!
それで、世界を守った後はヒロインと結ばれたり……へへへ。
「任せてよ愛理ちゃん! 僕が悪者から世界を守ってあげるよ!」
「いいの? 結構無茶なお願いだと思うんだけど、引き受けてくれるの?」
「うん! でも……世界を守るって言っても僕、どうしたらいいの? 精霊の世界への行き方もわからないし」
「それは大丈夫。必要な時が来れば、おのずと私たちは精霊の世界へと招かれることになるって聞いてるから」
なるほど、方法はわからないけど、時間がくれば連れて行ってくれるのか。
そういえば手荒かったけど、ガガギゴも僕を変な場所に連れて行ってたもんな。あれと同じようなものか。
「コナミ君、私に力を貸してくれるならこれを肌身離さず身につけてほしいの」
僕が愛理ちゃんに力になることを告げたら、彼女は首からぶら下げていた先端に青いクリスタルがついたネックレスを僕に渡してきた。
「これは?」
「それは所謂発信機みたいなもので、世界を守るために力を貸してくれる人に渡すものなの。それを持っていれば、離れていても精霊の世界へ一緒に行くことができるわ」
「へ~、そんなのがあるのか~~」
僕は渡されたネックレスをまじまじと見る。
奇麗なクリスタルだなあ。これを身につけておけばいいのか。
男の自分がネックレスはちょっと気後れするけど、まあオシャレと思えば悪くはないかな。
僕は早速愛理ちゃんから貰ったネックレスを首に下げて、これで僕もヒーローになれるのかと感慨にふけった。
「おいおいコナミ君。そんなに安請け合いしちゃって大丈夫か? こちらとしては愛理の力になってくれるのはありがたいけれど、その方法は君も体験した命を賭けたデュエルなんだよ?」
「うぇええええ!? あれをやるの!!」
僕が身につけたネックレスを見て眺めていると、愛理ちゃんのお父さんから衝撃の事実を教えられた。
ガガギゴとやった命を賭けたデュエル。
それをするというのだ。
僕は愛理ちゃんの方を見て本当か確かめた。
「うん。ガガギゴちゃんも言っていたと思うけど、私たち精霊が行うデュエルは本来命がけのものなの。だからもし私たちの世界を滅ぼそうとする存在がいた場合……」
「その元凶とデュエルで勝利するしかないってことか……」
う~~~ん。デュエルはいいけど殺し合いはちょっとなあ。
でも世界は守らないといけないし、何より愛理ちゃんが困ってるのも本当だ。
でも万が一敗けちゃったら………………………………………………。
「……う、うぇえええい!! 細かいことは後回しだ! 愛理ちゃんッ!!」
「はっ、はいっ!?」
「助けて欲しいんだよね!!」
「う、うん。助けて……欲しい……けど。でも、コナミ君が嫌なら無理には……」
愛理ちゃんは俯いて、断ってもいいと言ってくれている。
だけどここで引いたら男が廃る! 男は度胸!! 好きな女の子のためなら命がけがなんぼのもんじゃ!!!
「愛理ちゃん!! 僕が君の世界を守るよ! 女の子が助けを求めてるんだ。それを怖いから断るなんて、男のすることじゃない!」
「……いいの? コナミ君には関係のないことだし、本当に危ないことだよ? 今ならまだ……」
「いい! 僕が君の力になる! 約束だ!」
「ッ! ……うん。ありがとう! コナミくん、大好きだよ!」
僕の言葉に感極まった愛理ちゃんに抱きつかれた僕はいきなりのことに固まってしまう。
やわらッ! 愛理ちゃんに抱きつかれッ!
あ、ダメだこれ。嬉しすぎてダメになる!
「あーあー。あんな約束しちゃって、もう愛理から逃げられんぞコナミ君は……」
「いいじゃない。愛理もまんざら悪くは思ってないみたいだし、今は信じましょう?」
「うーんコナミ君の将来が心配だ…」
机の向こうにある愛理ちゃんのお父さんとお母さんの会話を聞き流しながら僕は愛理ちゃんに抱きつかれたこの幸せな状況を目一杯満喫するのだった。
それからしばらくして、落ち着いた僕たちは今後のことについて話し合うことにした。
「それで、結局いつ精霊の世界にいくかはわからない以上、基本的に普段通り生活してたらいいんだよね?」
「うん。世界の危機がいつになるのか、1年後かもしれないし、10年後かもしれない。はたまた100年後かもしれから、普段通りしてくれたらいいよ」
100年後って。僕もう死んでるよその時。
精霊は基本的に人より遥かに長く生きるらしいから、時間の感覚がおかしいらしいけど、流石に僕が元気なうちにして欲しいなぁ。
お爺ちゃんになってから戦ってなんて言われてもやれる自信ないぞ?
「それじゃあ話もまとまったことだし、私はそろそろ仕事へ行ってくるよ。コナミ君もご家族が心配してるかもしれない。電話は入れてあるが、一応早めに帰った方がいいだろう」
「そうですね。泊めてもらってなんですが長居するのも悪いですし、僕もそろそろ御暇しようと思います」
思った以上に長話をしていたようだ。朝食を食べ終わった僕は帰宅することにした。
どうやら遊び疲れて眠ってしまったということで家には連絡をしてくれていたみたいだけど、流石に帰った方がいいだろう。
女の子の家ではしゃぎ過ぎて眠りこけたことを家族に色々と言われそうだけど、本当のことを言えない以上はもう諦めるしかない。
……いやだなあ、帰るの。
「あっ! それならちょっと待って。コナミ君、これデュエルに勝ったご褒美。渡してなかったよね」
帰り支度を始めた僕を見た愛理ちゃんがカードショップで購入してたパックを持ってきて渡してきた。
「……おお! 忘れてた! そうだ、そうだったよ! これを賭けてデュエルしてたんだった。いやーすっかり忘れてた」
「早ければ起きてすぐに言ってくると思ってたんだけど、コナミ君にしては全く話題にしてこないから忘れてると思って……ね!」
危ない危ない。色々ありすぎてうやむやになるところだった。
愛理ちゃんが律義に言ってくれなかったらそのまま帰るところだったよ。
「どうする? ここで開けていく?」
「うーん。よし、開けよう! 何が入ってるかなぁ?」
僕は自分が買ったパックも含めて開封していく。欲しいカードはいっぱいあるけど、僕のデッキ的に水属性をサポートしてくれるカードが入ってるといいなあ。
「ん? これ……憑依装着ーエリア? しかもウルトラレアだ!!」
僕は予想外のカードに思わず大声をあげて喜びながら眺めていると、モンスターが愛理ちゃんそっくりであることに気づく。
「あれ? これ、愛理ちゃんそっくりだ。名前もエリアだし、もしかして愛理ちゃん……仕込んだ?」
僕は愛理ちゃんが水霊使いエリアの精霊の魂を宿した少女であることを考えてニコニコと僕を見ている愛理ちゃんの方を向いた。
「昨日はクリスマスだったでしょ? レアカード欲しかったみたいだから、クリスマスプレゼントだよ!」
「えぇええ! どうやって!? 未開封だったよね!」
「そこはほら、私のカードが入ってるパックを引き当てたの。レアリティについては私自身だから、ちょちょいのちょいってね。喜んでくれた?」
「そ、それはまあ嬉しいけど」
なんだろう。嬉しいはずなんだけど、仕込まれていたことに釈然としない気持ちがある。
できれば偶然100%でレアカードが欲しかったなあ!
「私のこと、ちゃんと使ってね? デッキに入れなかったら怒るから」
「……うん。大丈夫、ちゃんとデッキに入れるから。そんな目で見ないでほしいな」
僕は笑顔なんだけど妙に圧を感じる愛理ちゃんから目を逸らしてデッキケースに入れてあるデッキを取り出す。
そう言えば僕のデッキ、ガガギゴに盗られてたんだけど戻ってるかな?
「……よかった。デッキ戻ってきてる」
僕はメインで使用していたデッキがちゃんとあることにほっと息を吐き安心する。
ガガギゴのやつ、俺に勝ったら返してやるとかぬかしてたから、もう帰ってこないかもと思って不安だった。
「これは、ゴギガ・ガガギゴ……」
僕がデッキの中身を確認していると中に持っていないはずのゴギガ・ガガギゴのカードが入っていた。
正義を成すために力を求めた先に辿り着いた悲しいモンスター。
「お前が何を僕に求めてるのかはわからないけど、僕はもっともっと強くなる。だからこれからもよろしくな、ガガギゴ」
精霊の存在を感じ取れない僕だけど、カードに語りかけた瞬間、イラストが光って答えてくれた感じがした。
『ふんッ! 強くなるなど当然だ。腑抜けたらすぐに見捨てるからな……ッ!』
「コナミ君、ガガギゴちゃんが頑張れだって。ガガギゴちゃんも応援してるみたいだよ」
「え~~~それ本当に言ってる? 愛理ちゃんの幻聴じゃない?」
あのガガギゴが僕を応援するとはとても思えない。
それでも愛理ちゃんの言葉を信じるなら、まあ……一緒に戦ってくれる気はあるのだろう。
「まあ色々とあったクリスマスだったけど。なにはともあれ、今日は帰るか!」
来年からは中学生。
きっと、楽しい3年間になる。
強いデュエリストも沢山いるだろう。
精霊のことや世界のことで不安はあるけれど、そんなの関係ないッ!
そのすべてに勝って、僕は強くなる!
僕の夢は、キング・オブ・デュエリストになることだ!!!
第1部完!
ここまで読んでくれてありがとうございました。
中学生編に到達するまで予想外に長くなりまして、24話もかかってしまいました。
たぶん中学生編はここまで長くはならないと思います。
あと自分でも書いててよくわからないなと思ったので補足。
コナミ君に伝えたらダメなのは人の世界に来た手段や過程、デュエルした詳しい場所のこと。大した内容のない目的はOKです。
最後に想定外のオリヒロインが出現したりしてどうしたものかと思ったりしましたが、この先もコナミ君のお話は続いていきますので、読んでいただけたら有難いです。