初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

241 / 246

ダークネス戦。これがこの小説最後のデュエルとなります。予め言っておきます。ここまで読んでいただきありがとうございました!


闇が星を覆うとき ①

 

「俺の先行、ドロー!!」

 

 世界の、人類の命運を賭けたダークネスとのデュエル。

 先行を制したのは十代くんだった。

 

「俺は手札からE・HERO クレイマンを守備表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 

《E・HERO クレイマン》 攻撃力800 守備力2000

 

 

 下級HEROのクレイマンに伏せカードが一枚。

 十代くんにしては大人しい、慎重な戦術だ。相手の動向を見るつもりだろうか。

 

 このデュエルは変則タッグデュエル。

 僕と十代くんがタッグを組み、ダークネスは1人で僕たちと戦うことになる。

 

 フィールド、及びライフは共有。だから通常の倍はライフはある。

 とはいえ、お互いに1ターン目は攻撃できないことを考えると、慎重にいくのは悪くはない。

 

 いや、寧ろその方がいい。

 これまで出会ってきたどんな存在をも超えた、圧倒的な威圧感、存在感を放つダークネスが相手なのだから。

 

 ならばあとはダークネスがどのような戦術を使ってくるかだ。

 

『我がターン、ドロー。我は彼岸の悪鬼 アリキーノを手札から特殊召喚する』

 

 

《彼岸の悪鬼 アリキーノ》 攻撃力1200 守備力0

 

 

 アスファルトの大地が裂ける。

 裂け目から覗く血の如き光は地獄の業火が齎すものか。

 その地の底から這い出てきたのは悪魔の翼を生やした邪悪なモンスターであった。

 

『彼岸モンスターは我がフィールドに魔法・罠が存在しない場合、特殊召喚できる。しかし、我がフィールドに彼岸モンスター以外が存在する場合、このモンスターは破壊される』

 

 なるほど、とダークネスの説明を聞いて納得する。

 

 無造作に、まるでなんの条件もなしに特殊召喚されたかのようなアリキーノに、戸惑いの目を向けたがそれが彼岸というモンスターたちの特徴だというなら納得できた。

 

 彼岸モンスター。

 僕も、そして見たところ十代くんも初めて見た様子のモンスター。

 

 世界の裏側。神とも言えるダークネスが使用してきただけあって、相当に特殊なモンスターのようだった。

 

「コナミ、あの彼岸とかいうモンスター。かなり危険だぜ」

「うん。それにあの効果。あれは……」

『さらに我が手札の彼岸の悪鬼 ファーファレルを特殊召喚。ファーファレルもまた、我がフィールドに魔法・罠が存在しないために特殊召喚できる』

 

 

《彼岸の悪鬼 ファーファレル》 攻撃力1000 守備力19000

 

 

 アリキーノに続いて召喚された新たな彼岸モンスター。

 悪魔の角を生やしたアリキーノ同様、翼持つ悪鬼。

 

 召喚権を使用することなく並べられた2体のモンスターに、彼岸というモンスターたちの厄介さを悟る。

 

(ステータスは低い。だけどその召喚は恐ろしいまでに容易い! 少ない手数で上級モンスターに繋げられる。これが彼岸モンスターの特徴かっ!!)

 

「2体のモンスターが並んだ。くるぞっ! コナミ!」

「──っ!」

『我は、我がフィールドのアリキーノとファーファレルをリリース。手札から堕天使ルシフェルをアドバイス召喚!!』

 

 

《堕天使ルシフェル》 攻撃力3000 守備力3000

 

 

「彼岸モンスターじゃない!?」

「堕天使ルシフェル……天使族かっ!!」

 

 彼岸の悪鬼たちを生贄として召喚されたのは最上級堕天使。

 キリスト教において、神に反逆した最高位の天使が堕ちた存在。

 

 その背に生やした黒き翼は堕天使に堕ちて尚その威光を示し、神が作った容貌は人が決して届くことのない美貌を備えている。

 神々しさと禍々しさが同居した、歪でありながらも完成された美を思わせるモンスターだった。

 

 上位の彼岸モンスターに繋げてくるかと身構えていた十代くんと僕は、予想外の堕天使の登場に意表を突かれたように声を上げた。

 

『ルシフェルはその召喚時、汝らの効果モンスターの数だけ我が堕天使を特殊召喚できる』

「残念だったなダークネス。俺の場にも、当然コナミの場にも効果モンスターはいないぜ」

『そう。それ故にその効果は発動されない。だが、ルシフェルにはもう一つの効果がある。我がフィールドの堕天使の数までデッキからカードを墓地へ送る。そのカードが堕天使ならば、我はライフを500回復させる』

 

 ダークネスの場の堕天使モンスターはルシフェルのみ。

 ならば、墓地へ送られるカードは1枚! 

 

『我がデッキから送られたのは……堕天使ネルガル。我はライフを500回復する。これで我がターンは終了。コナミ、汝のターンだ』

 

 

《ダークネス》 残 LP 8500

 

 

 天空から祝福が降りてきたように、ダークネスに光が当たりライフを回復させる。

 それは8000というライフを鑑みれば微々たる量。しかし、積み重なれば面倒なことになる効果である。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 堕天使ルシフェル。

 高い攻守を持っているようだけど、決して倒せないほどに強力なモンスターではない。

 

 問題は、これがまだ1ターン目であることか。

 十代くんもあのダークネスも、そして僕も始まりのターンは攻撃できない。

 

 そのためこのターンでルシフェルを倒す事は難しい。

 つまり、次はダークネスのターンが始まりルシフェルの攻撃が始まるということ。

 

 ならばここは……。

 

「少しでもライフアドバンテージを手に入れておく! 僕は手札を一枚捨てて精霊術の使い手を発動! デッキから永続魔法 憑依覚醒をセット、さらに憑依装着ーヒータを手札に加える。そしてそのままヒータを召喚。セットした憑依覚醒を発動!!」

 

 

《憑依装着ーヒータ》 攻撃力1850 守備力1500

 

 

「憑依覚醒は僕たちのモンスターの属性の数だけ、攻撃力を300ポイントアップさせる。僕たちの場にはクレイマンとヒータ。地属性と火属性。ヒータは600ポイントアップ!」

 

 

《E・HERO クレイマン》 攻撃力1400 守備力2000

 

 

《憑依装着ーヒータ》 攻撃力2450 守備力1500

 

 

「さらに、僕がヒータを召喚したことで憑依覚醒のもう一つの効果を発動! カードを一枚ドローする!」

 

 フィールドに召喚されたヒータ。その表情は常よりも硬く、険しい。

 強く、快活な彼女は燃えるような赤い瞳でダークネスを射抜きながらも、その存在を畏怖するように恐れも抱いていた。

 

『無意味。いくら攻撃力を上げようが、汝がこのターンにルシフェルを破壊する事はできない』

「言われずとも。僕の狙いはルシフェルを倒す事じゃない。僕は手札から稲荷火を特殊召喚! このモンスターは場に魔法使いがいれば特殊召喚できる。そして、稲荷火とヒータを墓地へ送る事でデッキから憑依覚醒ー大稲荷火を特殊召喚する!!」

『ヌゥ。これは──!』

 

 

《憑依覚醒ー大稲荷火》 攻撃力2600 守備力200

 

 

 ヒータと稲荷が炎の塊と化して一つになる。

 炎の中から現れたのは巨大な狐。

 鋭い牙と全身から迸る炎を武器とする上級モンスターだった。

 

「そうかコナミ。そいつが狙いだったか!」

「うん。このターン、僕はまだ攻撃できないからね。

 大稲荷火は召喚時、相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える。ルシフェルの攻撃力、3000ポイントのダメージだ!!」

『ナニィ──ヌゥッッッ!!』

 

 

《ダークネス》 残 LP 5500

 

 

 大稲荷火から灼熱の炎が吐き出される。炎はルシフェルを通り後ろに立つダークネスへと向かった。

 ルシフェルと同等のエネルギーを持つ炎は熱く、強い。それに包まれたダークネスは顔を守るように手を翳し、苦悶の声を上げていた。

 

「流石だなコナミ。1ターン目から大ダメージだ」

「お誂え向きに強いモンスターを出していてくれたからね。十代くんが守りに入ってたから、油断してくれたのかな」

「はは、そうかもな。なんにせよ、ナイスだぜ」

「うん。僕のターンはこれで終了だ」

 

 狙い通り、今のターン、ライフポイント差を大きく引き離すことができた。これは大きい。

 しかし反面、わかっていたことだがフィールドの不利は何も変わっていない。

 

 そしてこのターン、ダークネスの2ターン目が始まることを考えれば、この不利はさらに大きくなる可能性が高い。さあ、どう来る。

 

『我のターン、ドロー。いくらダメージを与えようが、それは無意味! 我は堕天使ルシフェルの効果を発動。デッキから2枚目の堕天使ルシフェルを墓地へ送ることでライフを500回復』

 

 

《ダークネス》 残 LP 6000

 

 

 ルシフェルの効果によりせっかく与えたダメージが縮まってしまった。

 わかっていたことではあるが、あのルシフェルがいる限りこの差はさらに縮まってしまう。

 

 早々に対処したいところだ。

 

『そして手札から儀式の下準備を発動。デッキから儀式魔法 善悪の彼岸を、そして彼岸の鬼神 ヘルレイカーを手札に加える!』

「彼岸モンスター専用の──」

「儀式魔法か!」

『我は手札に加えた善悪の彼岸を発動! 手札のダークネス・デストロイヤーを墓地へ送り、彼岸の鬼神 ヘルレイカーを儀式召喚!!』

 

 大地が裂ける。漏れ出る明かりは光と闇。善と悪とを分つ、心の情動を示す彼岸の明かり。

 善と悪に揺れる彼岸に、しかし捧げられたのは闇の力。

 闇の破壊者の命と魂により現れたのは青と赤。二刀の武器を手にした悪魔の姿であった。

 

 

《彼岸の鬼神 ヘルレイカー》 攻撃力2700 守備力2200

 

 

「「──ッ!」」

 

 現れた鬼神。その澱み、深い闇を宿した視線に僕と十代くんの背筋に冷たい風が吹き抜ける。

 視線に込められたのはこちらの真意を見抜かんとする冷酷な眼差し。僕たちの心の在処を探る彼岸の神。その朱い瞳だった。

 

『ヘルレイカーは汝らのモンスターの力を奪うことができる。が、汝らにその必要はない。我がヘルレイカーでコナミ、汝の大稲荷火を攻撃!!』

「──っ!」

 

 ヘルレイカーの二刀の刃が大稲荷火へと迫る。

 空気を切り裂き振り抜かれた刃は身を守ろうと伏せていた大稲荷火を容易く両断する。

 しかし、切り裂かれた瞬間実体のない炎へと化した大稲荷火は一枚のカードへとその姿を変化させていた。

 

「大稲荷火が破壊されたこの瞬間、効果発動! デッキから憑依解放を手札に加える!」

『なれば遊城十代、次は汝の番だ。我は堕天使ルシフェルでクレイマンを攻撃!!』

 

 鬼神の二刀の刃を追うように、12の黒き翼持つ堕天使がクレイマンへと迫る。右手には長剣が一本。目が眩むような光沢が鏡のように反射しHEROを映す。

 

 そして長剣が振り下ろされ──。

 

「トラップ発動──クレイチャージ!! クレイマンが攻撃対象に選ばれた時、お互いのモンスターを破壊。相手に800ポイントのダメージを与える!!」

『ナニィ?』

 

 攻撃は止まっていた。

 振り下ろされた長剣は時が止まったように停止し、クレイマンに届く事はなかった。

 

 硬直した敵にその隙を見逃すものかと、ルシフェルへと全身で体当たりするクレイマン。爆発し、破裂したお互いのモンスターの衝撃波はダークネスへと向けられていた。

 

 

《ダークネス》 残 LP 5200

 

 

『ヌォォォ。おのれ、我がルシフェルを倒すとは。だが汝らのモンスターも消えた。我にはヘルレイカーがいる。汝らが勝利する未来はない。我はカードを伏せる!』

「だが、確実にお前のライフは減っているぜ。このターンでそいつも倒してやる。俺のターン、ドロー!!」

 

 神への叛逆者、ルシフェルを倒しその勢いに乗るように十代くんはデッキに指を置いた──。

 

 





 ダークネスのデッキは悩みましたが、大幅に変更しました。ラストがギャンブルデッキはちょっとなあ。ダークネスに運命力あるイメージもないし。
 罠デッキはなんかダークネスのイメージと合わないなあとなり、光の世界への侵略的な感じで堕天使を、彼岸は心の光と闇を天国と地獄的な感じでダークネスのデッキにしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。