初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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闇が星を覆うとき ②

 

 光を失いつつある世界。そんな人類が積み上げてきた全てが失われつつある世界でダークネスと戦う僕たちの反撃となる十代くんのターンが始まった。

 

「俺のターン。手札から融合派兵を発動、デッキからE・HERO フェザーマンを手札に。そして融合を発動──フェザーマンとバーストレディを融合し、マイフェイバリットHERO フレイム・ウィングマンを融合召喚する!!」

 

 現れたのは融合の渦。

 異なる二つの存在を一つに、新たな存在を生み出す渦が風と火、2体のHEROを取り込んでいく。

 その渦から生まれたのは右手が竜の顎門となった風のHERO。十代くんにとって大切な、そしてフェイバリットと呼ぶ唯一のHEROだった。

 

 

《E・HERO フレイム・ウィングマン》 攻撃力2400 守備力1200

 

 

「フレイム・ウィングマンは風属性。攻撃力はコナミの憑依覚醒の効果で300ポイントアップする。さらに俺はこのカードを発動するぜ。摩天楼ースカイスクレイパーを発動!」

 

 十代くんが発動したフィールド魔法により、アカデミアの正面入り口に立つ僕たちを挟むように次々とビル群が建っていく。

 完成するは摩天楼。夜の街でHEROたちが悪を倒すために活躍する舞台が瞬く間に整っていく。

 

「バトル! 俺はフレイム・ウィングマンで彼岸の鬼神 ヘルレイカーを攻撃!!」

『愚かな。攻撃力は我がヘルレイカーの方が上。返り討ちだ』

「いいや、ダークネス。今ここはHEROの舞台だぜ。この瞬間、摩天楼ースカイスクレイパーの効果発動! フレイム・ウィングマンの攻撃力を1000ポイントアップさせる!!」

『ナニッ!?』

 

 摩天楼の一角。特に巨大なビルに乗ったフレイム・ウィングマンがトンと、階段を降りるような気軽さでビルから落ちる。

 落下先にいるのは鬼神 ヘルレイカー。フレイム・ウィングマンは二刀の武器を持つ悪魔に向かい──。

 

『クックック。甘い! 我はヘルレイカーの効果を発動。手札の彼岸の悪鬼 スカラマリオンを墓地へ送る事でフレイム・ウィングマンの攻守を下げる!』

「俺のターンに効果を!?」

 

 ヘルレイカーの竜の尾が動く。竜の尾は鞭のようなしなりと自由さで落下し向かってきたフレイム・ウィングマンを捉え、尾の口でその動きを止めた。

 

 牙を持つ竜の尾により、呻き声を上げるフレイム・ウィングマンの攻守が下がる。その攻撃力は2600。摩天楼の補助があってもヘルレイカーには足りない。

 

 そして、尾に捕らえられたフレイム・ウィングマンにヘルレイカーは二刀の剣を振り下ろそうと──。

 

「くっ、俺は融合解除を発動! フレイム・ウィングマンを融合解除する!」

 

 された寸前、剣を挟み込む形でフレイム・ウィングマンが融合前の2体のHEROへと分裂した。

 

 

《E・HERO フェザーマン》 攻撃力1600 守備力1000

 

 

《E・HERO バーストレディ》 攻撃力1800 守備力800

 

 

「まだだ。バーストレディならヘルレイカーを倒せる! バーストレディで攻撃!!」

『そうはさせぬ。我は速攻魔法 皆既日蝕の書を発動。汝がモンスターたちを裏側守備表示にする』

「チィッ!」

『そしてエンドフェイズ、裏側になったモンスターを表へ。汝は表となったモンスター2体分のカードをドローする」

 

 表裏が戻り、十代くんの手札が増える。

 ヘルレイカーを破壊できないかわりの2枚の手札増強。果たしてそれはどちらが多くの利を得ただろうか。

 

『汝がターン、反撃の一手は無駄に終わった。さらに汝のエンドフェイズへと移行したことで彼岸の効果も発動している。墓地送られたスカラマリオンの効果により、デッキから彼岸の悪鬼 ドラゴネルを手札に加える』

「すまないコナミ。ヘルレイカーを倒せなかった」

「いや、今のを避けれただけ十分だよ」

 

 歯噛みし、悔しがっている彼のいう通りヘルレイカーを倒せなかったことは確かに残念だった。だけどそれでも守るには十分。

 

 寧ろ2体のHEROを残せただけプラス。ダークネスからの攻撃にも耐えることができると考えるべき。少なくとも、融合解除で反撃を避けれたのは見事だったという他ないだろう。

 

『我のターン。手札の堕天使イシュタムの効果を発動。イシュタムと悦楽の堕天使を墓地へ送り、カードを2枚ドロー。そしてバトル。ヘルレイカーでバーストレディを攻撃』

 

 前のターンにフレイム・ウィングマンに向けられた凶刃がバーストレディを襲う。耐えるにはあまりにも凶悪なその攻撃により、切り裂かれた彼女は悲鳴をこぼしながら消えていく。その声が小さかったのはHEROとしての矜持だったのか。

 

 場には身を伏せて相方を斬り伏せたヘルレイカーを睨むフェザーマンが残されていた。

 

『我はカードを2枚伏せ、ターンエンド』

「よし。僕のターン。このターンでヘルレイカーは破壊してみせる! ドロー!!」

 

 バーストレディを倒したことで、フレイム・ウィングマンを切れなかった鬱憤を晴らせたのか、満足気にダークネスの場へと戻ったヘルレイカー。

 

 彼が自陣へと戻ると同時にターンを終えたダークネスに、間髪を入れずに僕はカードを引いた。

 

「僕は手札からHERO'Sボンドを発動。僕たちの場にHEROがいる時、手札からE・HEROを2体召喚できる。僕はシャドー・ミストとブレイズマンを召喚! その効果によりデッキからマスク・チェンジと融合を手札に加える!!」

 

 

《E・HERO シャドー・ミスト》 攻撃力1900 守備力1500

 

 

《E・HERO ブレイズマン》 攻撃力2100 守備力1800

 

 

 召喚された闇と炎のHERO。2体はそれぞれの力で僕にHEROたちの力を飛躍させるカードをもたらしてくれていた。

 

「そして融合を発動! ブレイズマンと十代くんのフェザーマンを融合──E・HERO Great TORNADOを融合召喚!!」

 

 

《E・HERO Great TORNADO》 攻撃力3400 守備力2200

 

 

 フィールドに激しい竜巻が吹き荒れる。

 竜巻の中心に召喚されたGreat TORNADOが巻き起こした風であった。

 

「Great TORNADOはその召喚時、相手フィールドのモンスターの攻撃力を半分にする!!」

『!?』

「つまり、ヘルレイカーの攻撃力は1350まで下がる!」

 

 Great TORNADOを中心に吹き荒れた突風がヘルレイカーが握る剣から力を奪っていく。

 蝋燭の火が強い風で揺らぐように、二本の剣もまた、その輝きを揺蕩い減衰させていた。

 

「バトルだ! Great TORNADOでヘルレイカーを攻撃!」

『なればこの瞬間、我はヘルレイカーの効果を発動! 手札の彼岸の悪鬼 ドラゴネルを墓地へ送りGreat TORNADOの攻撃力を1100ポイント下げる!!』

 

 赤と青。二本の剣を交差させたヘルレイカーから2色の炎がGreat TORNADOを襲う。

 その力に押されたGreat TORNADOの風が弱っていく。しかしその勢いは健在。ヘルレイカーを倒すには十分な力があった。

 

 

《ダークネス》 残 LP 4250

 

 

『ヌゥッ……だがッ! ヘルレイカーの第二の効果が発動! ヘルレイカーはその怒りにより、場のカード一枚を道連れにすることができる。我はコナミ、汝の憑依覚醒を墓地へ送る!』

「憑依覚醒がっ! だけど、攻撃力が元に戻ってもそんなの関係ない。ここで一気に攻める! Great TORNADOに続いてシャドー・ミストでダイレクトアタック!」

 

 Great TORNADOが開いた道を駆け抜け、細身の総身を黒い外装で覆った女性型のHEROーシャドー・ミストの手刀がダークネスへと向かう。

 

 憑依覚醒が消えたことでそのステータスも下級相応の1000に下がってしまっているシャドー・ミスト。しかしそれでもダークネスには相応の傷となってダメージを与えていた。

 

 

《ダークネス》 残 LP 3250

 

 

「この瞬間! 速攻魔法、マスクチェンジを発動! Great TORNADOを墓地へ送り、M・HERO カミカゼを変身召喚!!」

『ヌゥッ!?』

 

 

《M・HERO カミカゼ》 攻撃力2700 守備力1900

 

 

 追い詰めたダークネスにとどめを刺すべく、すかさず発動させたHERO専用の変身魔法、マスクチェンジ。

 最上級の風のHEROから引き継いだ新たな風のHERO カミカゼ。世界を涼やかに駆け抜ける新緑色のHEROはダークネスへと向かい、その腕を叩きつけようとし。

 

『させぬ! 我はリバースカード カウンター・ゲートを発動。カミカゼによる攻撃を無効にしする!』

 

 その攻撃は、直前で分厚い壁に阻まれたように弾かれた。

 

「防がれた……!」

『そして我はカードを一枚ドローする』

 

 ダークネスの手札が一枚増える。

 それを見ながら僕は内心でミスをしたと、自分を叱咤した。

 

(勝ち切れなかった時のためにシャドー・ミストを温存してGreat TORNADOを変身させたけど、間違えた。

 シャドー・ミストをダーク・ロウへと変身させておけば、ダークネスの手札を減らせたのに!)

 

 闇の変身HEROであるダーク・ロウ。相手のカードを墓地ではなく除外する効果と手札を増やした相手のカードを墓地へ送らせる2つの効果を持つ強力なHERO。

 

 純粋な力としてはカミカゼに劣るけど、強力な制圧効果を持つ彼を出しておけばカウンター・ゲートを発動されてもプラスを0にすることができていた。

 

 シャドー・ミストの第二の効果。彼女には墓地へ送られた際にHEROをサーチすることができる。

 次のターンに回らなければ発動できない彼女の効果のために後回しにしたことが裏目に出てしまった。

 

 ………などと後悔しても仕方のないこと。

 押されていた盤面を圧倒的に有利に戻せたのだ。今は……それでよしとしよう。

 

「僕はカードを伏せる。これでターンを終──」

『汝がエンドフェイズに突入したこの瞬間。我がカードが発動する!』

「なにっ!?」

「コナミのエンドフェイズに発動してくるだと!」

 

 まずい!

 

 このタイミングで発動されるカードなど、碌な結果を生むはずがない。きっと、エンドサイクロンのような無防備になった相手を倒すためのカード。

 そして僕は、エンドフェイズに入ってしまった以上ダークネスが発動するカードに何もできない!

 

『発動せよ。ネクロフュージョン!』

「ネクロフュージョン、墓地のモンスターで融合するトラップカード」

「今、ダークネスの墓地には大量の悪魔族と天使族がいる。何を召喚するつもりだ!」

『フッ。このカードが汝らに絶望を与える。我は墓地の堕天使たち、ルシフェル、イシュタム、ネルガルを融合──人類の真価を見定める時だ。現れよ黎明の堕天使ルシフェルよ!!』

 

 地が開かれる。

 地の底の底。さらにその先に幽閉された最高位の天使が夥しいほどの光と闇を放出させて召喚された。

 その力は強大。神への反逆の意思を胸に、彼に同意する同胞たちと共に戦い、敗した堕天使。

 

 先に召喚されたルシフェルと同様の、しかしその力をより力強く、冷酷なまでに研ぎ澄ました自身を生み出した神との決戦に向けた偉大なる堕天使の姿であった。

 

 

《黎明の堕天使ルシフェル》 攻撃力4000 守備力4000

 

 

「堕天使ルシフェル!?」

「いや、その融合形態か!」

 

 一度倒したはずのモンスターの登場に驚く僕と十代くん。そんな僕らを尻目にルシフェルが剣を振り抜いた。

 

「「──ッ!?」」

 

 緩慢な動き。吹き抜けたのは一迅の風の刃。

 無造作に剣を横に振る。

 ただそれだけのルシフェルの動きにより生まれた風圧に僕たちは体を持っていかれないように耐えなければならなかった。

 

『黎明の堕天使ルシフェルはその召喚時、汝らのフィールドを全て破壊する』

「なんだって!?」

「バカな! それじゃあ俺たちの場には!」

『そう。汝らを守るカードは全て消える。そして我のターンが始まるのだ』

 

 ルシフェルが起こした風は僕たちを威圧しながら僕たちのカードをも破壊していった。

 後に残されるものは何もない。

 一瞬にして破壊された惨状に、暗澹たる気持ちに陥る僕たちを超大な攻撃力を持つルシフェルが、静かに睥睨していた。

 

「ネクロフュージョンとルシフェルのコンボ。これはまずいぜコナミ」

「うん。ダークネスにとっては最高の、僕たちにとっては最悪の状況だ」

 

 まだ僕らのライフは削られていない。

 つまりルシフェルの攻撃に一度は耐えることができる。

 しかし………!

 

『我のターン、ドロー。我は魔法カード、終わりの始まりを発動。我が墓地には今、11体のモンスターがいる。そのうちの5体を除外し、3枚ドロー。

 そして旅人の結彼岸を発動! 我は手札の彼岸の悪鬼 ガトルホッグ、バルバリッチャ、ハロウハウンドの3体を融合──彼岸の巡礼者 ダンテを融合召喚!!』

 

 

《彼岸の巡礼者 ダンテ》 攻撃力2800 守備力2500

 

 

 男は厳かに、同時に泰然とした足取りでダークネスの影から現れた。

 黄金の装飾を施した白い神官服を着た男、巡礼者ダンテ。神曲で地獄を巡ったとされる存在。

 彼はルシフェルと同様、僕と十代くんを見定めるかのような視線を投げかけている。

 

 視線の奥に、攻め立てるような色はない。

 ただ静か、世界に残された最後の人類である僕たちのことを見ていた。

 

『汝らが勝利することはない。そして、勝利することに意味もない。

 我は墓地へ送られた彼岸の悪鬼 バルバリッチャの効果を発動。バルバリッチャ以外の彼岸モンスターを3体除外し、汝らに900ポイントのダメージを与える』

「ッ!」

 

 

《十代&コナミ》 残 LP 7100

 

 

 影から棘が生えた鉄球が僕たちを襲う。

 そのダメージはライフの総量から見れば低いが、無視できる量でもない。少なくとも、これから訪れる莫大な攻撃力を持つモンスターたちの攻撃が加われば、致命傷に等しいダメージに変わる。そしてその恐るべき攻撃はすぐに訪れた。

 

『バトル。我がモンスターたるルシフェル、ダンテよ。遊城十代とコナミにダイレクトアタックだ!!』

「来るかッ!!」

 

 ダークネスの命令を受けたルシフェルが左手に黒い盾を、右手に剣を携え攻撃の構えを見せる。

 それと同時に豪奢な杖を手にしたダンテも僕らへと攻撃の気配を見せた。

 

『汝らにこの攻撃を防ぐ手段などない! 受け入れよ、絶望し諦めるがいいっ!!』

 

 高々と紡がれたダークネスの言葉が真実とするために2体が本格的に動き出す。

 ルシフェルは剣を下段から勢いよく振り上げその剣から巨大な刃を、ダンテは天に掲げた杖からエネルギーを迸らせた。

 

「「うぁあああっっっ!!!」」

 

 

《十代&コナミ》 残 LP 300

 

 

『我がターンはこれで終了………まだ立つというのなら答えよ。汝らは何故我と戦う。すでに人類の未来は途絶えた。全ては我がダークネスの世界へと消えた。人類が、その総体が自らその道を選んだのだ』

「ぐっ──ふざけるなダークネス! たとえ人類の意思がお前という存在を呼び出したとしても」

「それを僕たちが認めることはないっ!」

『ならば答えよ。人類という種が求めた我を拒むのは汝らのみ。その我を倒し、人々の意思を踏み躙り、汝らは何を求める』

 

 その問いにどのような意図があるのか。

 世界そのものであるダークネスであるが故に、自らに抗う僕らの行動は理解できないのか。

 

 なんにしても、考えるまでもなく僕らの答えは決まっていた。

 

「たとえ人々が未来を恐れ、お前を望んだのだとしても」

「僕たちは信じている!」

『この闇に満ちた人類なき世界で、人のなにを信じるというのだ』

「人間の可能性と──」

「希望の未来だ!!」

 

 7000近くの甚大なダメージで倒れながらも、ここで折れるわけにはいかないと全身に喝を入れ立ち上がりダークネスを否定する。

 僕たちが、そして友や仲間たちが歩むはずだった未来。そして、無数の奪われた人々の未来を諦めてたまるかと。

 

『人の可能性、希望の未来、汝らはそれが齎す結末を知らず。光と闇は表裏一体。故に見せよう。可能性という名の願望が齎した希望の未来を!!』

 

 山羊の骸骨をしたダークネスの瞳が青く輝く。

 光は強く迸り、僕たちの視界を埋めていく。

 闇に閉ざされた世界を、ダークネスの瞳が満たしていった──。

 

 





 エクシーズもリンクもないからベアトリーチェもケルビーニも出番がないぜ!そして堕天使テーマ好き。ルシフェルカッコいい!イシュタムかわいい!!
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