1万字越えじゃ!!
かつてない文字数になりました。
余裕のある時に見てください。
「「デュエル!!」」
「私のターン、ドロー!」
照月君とのデュエル。
勝てば私は彼との縁を切れる。敗ければ彼とは婚約関係になる。
このデュエルで彼との縁を必ず断ち切って見せる!
「私は手札からマンジュ・ゴッドを召喚! 効果はデッキから儀式魔法か儀式モンスターを手札に加えることができる! 私はデッキからサクリファイスを手札に加える!」
《マンジュ・ゴッド》 攻撃力1400 守備力1000
「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」
出だしは良好。
小学生の頃には持ってなかったサクリファイスも手札に持ってこれた。
これで彼が強力なモンスターを召喚してきても対応できる。
あとは彼のデッキタイプ次第だけど…………どんなデッキ使ってたかしら?
かなり前のことだし、彼以外にも沢山の人がデュエルしてたからあまり印象に残ってないのよね。
でも強かったら印象に残っているはずだし、大した実力は持ってはいないはず。
それならどんなデッキでも問題ないわ。
「ふふ。それでは僕のターンだね。ドロー! 水無月君、君に僕のデュエルを見せてあげるよ!」
「僕は手札からゼラの戦士を攻撃表示で召喚!」
《ゼラの戦士》 攻撃力1600 守備力1600
「バトルだ! ゼラの戦士で君のマンジュ・ゴッドを攻撃! ジャスティス・ソード!」
「ッ!」
マンジュ・ゴッドがゼラの戦士に切り裂かれ破壊される。そして攻撃力の差分、200ポイントが私のライフから削られた。
《愛理》 残 LP 3800
「ふっ。どうだい? 僕の華麗な攻撃は。今ならー」
「私はマンジュ・ゴッドが破壊された瞬間! リバースカード 魂の綱を発動! 私は1000ライフポイントを払うことでデッキからレベル4モンスターを特殊召喚する! 私はデッキから踊る妖精を守備表示で召喚!」
《愛理》 残 LP 2800
《踊る妖精》 攻撃力1700 守備力1000
私のフィールドに可愛らしい三体の妖精が召喚された。
マンジュ・ゴッドが破壊されたけど、それは想定内。
おかげで後続のモンスターを召喚できた。
そのために払った1000ポイントも踊る妖精の効果で取り戻すことができる。
大丈夫、デュエルは私のペースで進めてる。これなら勝てるわ!
「ぬ、ライフを減らして後続を呼んできたか。やるじゃないか水無月君。いつもデュエルはコナミに任せていたから、てっきり弱いのかと思っていたよ」
「……御託はいいわ。まだあなたのターンよ。やることがあるのなら続けてくれない?」
確かにこの学校に編入してからはコナミ君がデュエルするところを見学することばかりで、私がデュエルする機会はあまりなかったけど、それで弱いと思われるのは心外ね。
このデュエルで私の強さを教えてあげるわ照月君。
「では僕は手札からフィールド魔法 天空の聖域を発動!」
「フィールド魔法!?」
彼が発動したフィールド魔法によって私たちの地面が雲に覆われ、彼の背後には神殿のようなものが現れた。
「このカードが発動している限り、僕の天使族モンスターの戦闘によって発生するダメージは0になる」
自らの天使族モンスターの戦闘ダメージの無効。
なるほど、このカードを発動してくるということは彼のデッキの多くは天使族で固められている可能性が高いということね。
「だけどあなたの場に召喚されているモンスターはゼラの戦士、戦士族よ。天空の聖域の加護は得られないわ」
「そうだね。しかしデュエルが続けば、このカードの意味がわかるさ。僕はこれでターンエンド」
「意味? ……私のターンドロー!」
ゼラの戦士に天空の聖域。
伏せカードで種族の変更を狙ってくる感じでもなさそうだけど、何の意味が…………?
まあいいわ。何を狙っているのかはわからないけれど、私は私のデュエルをするだけよ。
「私のターンになったことで踊る妖精の効果発動! 自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイント回復する!」
「ほう。魂の綱で減ったライフを即座に回復とは。これは思ったよりも…………」
《愛理》 残 LP 3800
私が魂の綱で1000ライフポイントを払ってまで召喚した狙いが分かったのだろう。
照月君が感心したような声を上げて踊る妖精を見ている。
「私は手札を1枚捨ててコストダウンを発動! 手札のモンスターのレベルを2つ下げる! そして踊る妖精をリリースしてストーム・シューターを攻撃表示で召喚!」
《ストーム・シューター》 攻撃力2300 守備力500
ストーム・シューター。
鳥獣族でレベル7の大型モンスター。
照月君がゼラの戦士で何を企んでいるかはわからないけれど、ストーム・シューターで一気に流れをこちらに呼び込む!
「ストーム・シューターの効果発動! このモンスターの正面に位置する相手のカード1枚を持ち主の手札に戻すことができる!」
「なにっ!?」
ストーム・シューターが翼から突風を巻き起こし、正面にいたゼラの戦士を吹き飛ばした。
「くっ、ゼラの戦士が手札に…………」
「これであなたの場はがら空きね。ストーム・シューターでダイレクトアタック!」
ストーム・シューターが翼から大量の羽根を照月君へ飛ばしてダメージを与えた。
「がぁあっ!? ぐっ、僕のライフを削るとはッ!」
《照月》 残 LP 1700
「私はカードを1枚伏せてターンエンド! さあ、あなたのターンよ!」
照月君の場に伏せカードがなかったおかげで、すんなり大ダメージを与えることができたわ。
たとえもう一度ゼラの戦士を召喚してきても、ストーム・シューターには及ばない。
たとえストーム・シューターを超えるモンスターを召喚されても伏せカードもあるし、問題なく対処できるわね。
「僕のターンドロー!! 水無月君、僕のライフを削った以上容赦はしない! 覚悟したまえ!」
「手加減なんて最初っから求めていないわ。全力のあなたを倒して、あなたの恋路を終わらせてあげる! 全力でかかって来なさい!」
私をコナミ君に頼って戦えない女の子だと侮っていたのだろう。
ストーム・シューターで大ダメージを与えたことで照月君の目が変わった。
ここからがこのデュエルの本番ッ!
「僕は手札から天使の施しを発動! デッキから3枚ドローし、2枚捨てる!」
「そして再びゼラの戦士を召喚!」
この盤面でゼラの戦士をストーム・シューターの前に召喚?
ストーム・シューターの効果は毎ターン使える。このまま何もなければ次のターンでフィニッシュに持って行けるけど…………そんなに甘くはないはず。
だとしたら恐らく天空の聖域に関係した何らかの打開策を打ってくる可能性が高い!
「見せてあげるよ。僕のデッキの切り札を………このモンスターは天空の聖域が場に存在し、ゼラの戦士を生贄に捧げた場合のみ手札から特殊召喚できる!」
「条件付きの特殊召喚モンスター!?」
「僕に栄光をもたらせ! ゼラの戦士を生贄に手札から大天使ゼラートを特殊召喚!!」
《大天使ゼラート》 攻撃力2800 守備2300
彼が大天使ゼラートの召喚を宣言した瞬間、天から降り注いだ光がゼラの戦士を包み込みその姿を神々しい天使へと変えた。
「これがあなたの狙い。ゼラの戦士を大天使へと進化させることが天空の聖域を使用した本当の狙いだったのね」
「そう! 大天使ゼラートこそ、この僕のエースカード! 僕に栄光をもたらし、未来を照らすカードだ!」
大天使ゼラート。
ゼラの戦士が美しい天使へと進化したモンスター。
なるほどね、照月君が気に入りそうなカードだわ。
だけど慢心が過ぎるわね。私の場には攻撃の無力化が伏せてある。
大天使ゼラートが召喚されている場はストーム・シューターの正面。次の私のターンで勝負は決まるわ!
「ふっ。水無月君、君の考えていることはわかる。僕が大天使ゼラートを君のストーム・シューターの前に召喚したことをプレイミスだと思っているのだろう? だが違う! これは信頼だよ! 大天使ゼラートへのね!」
彼は大きく手を広げ声高に叫びながらポーズを決めている。
「いちいち仰々しいわね。自分に酔いしれる暇があるのなら、デュエルを進めなさい!」
「ではそうさせてもらおう。僕は手札から光属性モンスターを墓地へ送ることで大天使ゼラートの効果発動! 相手の場のモンスター全てを………破壊する!」
「ッ! 私のモンスター全ての破壊!?」
大天使ゼラートが手に持つ剣から光が放たれ私のストーム・シューターが破壊された。
「ストーム・シューターがッ!」
手札のモンスター1枚を犠牲にするだけで相手モンスター全てを破壊するなんて、召喚するのに条件が必要とされるだけある強力な効果を持っているわね…………!
「水無月君、君にこんな乱暴な真似はしたくはないのだが、これも勝負。手加減はしないよ。大天使ゼラートで水無月君にダイレクトアタック! 聖なる波動!!」
大天使ゼラートの手に白い光が収束し、私へと放たれてくる。
「その攻撃は通さないわ! 私はリバースカード 攻撃の無力化を発動! 私はダメージを受けない!」
大天使ゼラートが放った光が私に届く直前、私の前の空間に穴が開き大天使ゼラートの攻撃をすべて吸い込んでいく。
「攻撃を防がれたか、まあ問題はない。僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
「くっ、私のターン、ドロー!」
照月君、思っていた以上に強い。
あまり記憶に残っていないから大して強いデュエリストではないと思っていたのだけれど、まさかここまで追い込まれるなんて。
「私は手札から強欲な壺を発動! カードを2枚ドロー!」
でも、このデュエルは絶対に勝たないといけない勝負。
私の夢のためにも、敗けるわけにはいかないの!
「私は手札からソニックバードを召喚! 効果でデッキから儀式魔法カードを1枚手札に加えるわ! 私はデッキからイリュージョンの儀式を手札に!」
《ソニックバード》 攻撃力1400 守備力1000
「儀式魔法を加えたか。ではこの先に君が行おうとすることはサクリファイスの召喚かな?」
「そうよ! 私はイリュージョンの儀式を発動! ソニックバードを生贄に手札からサクリファイスを儀式召喚!」
《サクリファイス》 攻撃力0 守備0
サクリファイス。
レベル1の儀式モンスター。
サクリファイスの効果はサウザンド・アイズ・サクリファイスの縮小版だけど、本質は一緒。相手モンスターを吸収して自らの力とする。
この効果で照月君の大天使ゼラートを吸収すれば一気に勝負を決めれる!
「私はサクリファイスの効果発動! あなたの大天使ゼラートを吸収!」
サクリファイスのお腹のくぼみが黒く染まりそこに大天使ゼラートを吸収せんと風が巻き起こる。
これが通れば私の勝ちッ!
「甘いなあ。水無月君、君は実に甘い。やはりデュエルはコナミの奴に任せるべきだったね。僕はサクリファイスの効果が発動した瞬間、リバースカード 天罰を発動! 手札を1枚捨てて効果モンスターの効果を無効にして破壊!」
彼が天罰を発動したことで天より雷がサクリファイスを貫き、破壊した。
「きゃあッ! そんな……サクリファイスが……!」
「君が1ターン目にサクリファイスを手札に加えた瞬間、僕の大天使ゼラート攻略のために召喚してくることは想像できたからね。あとは出してくるであろうタイミングを調整してやれば、この通りだ!」
そんな………照月君はこの状況を1ターン目に想像できていたというの…………?
そしてこれまでのデュエルの流れをすべて読み切っていたなんて。
サクリファイスも破壊されて、彼の場にはエースが健在。これじゃあ私は…………ッ!
「照月学…………! これほどのデュエリストだったとは…………!」
「ッ………愛理! まだ敗けたわけじゃないわ! 諦めないで!!」
立会人として見学してた三沢君と彩音が照月君の実力に驚愕しながらも声援を投げかけてくる。
「どうして…………コナミ君とのデュエルの時はこんなに強くは…………」
「それはそうさ。僕はね、強くなったのさ。君を賭けたデュエルでコナミに敗北した時からね」
コナミ君と戦った時から強くなった………?
「僕にとって、デュエルとは暇つぶし程度の存在でしかなかった。それ故本気になることはなかったし、アクセサリー感覚で君を手に入れようした時も当たり前のように勝てると思っていた…………」
「だが、結果は君が知っている通り僕はコナミに惨敗し、苦汁を舐める羽目になった。………屈辱だったよ。天に選ばれたと言っても過言ではない僕が、あのような凡夫に敗けるなど、あってはならないことだった!!」
「だから学んだ。デュエルを学び、カードを手に入れ強くなった! それでもコナミには何度デュエルしても勝てなかったが…………それはいいッ! いずれ勝つだけのこと………!」
「だが、君だけは別だ! 君が奴のものになるのだけは看過できないことだ! 水無月君、君だけは僕のものにする。そう決めたのだ! そのためなら恥も忍ぼう! 泥臭い努力もしよう! 人から何と言われようともかまわない!」
「どうして……そこまで私を…………?」
照月君は本気だわ。
本気で私を自分のものにしようとしている。
それも半端な覚悟ではなく、どんな恥を受けてでもという、とてもナルシストである彼が耐えれるものではない行為をしてでもと………。
「それは、このデュエルが終わったときに伝えよう。といっても次のターンで終わるかもしれないがね」
「くっ…………私は、カードを2枚伏せてターンエンドよ」
このカードが、私の最後の生命線。
このカードさえ読まれていたら、私の敗けは確実…………。
「僕のターンドロー! ふふふ。悪いけど、僕は最後まで油断はしないよ。僕は手札からゼラの戦士を召喚! そしてゼラの戦士を生贄に…………」
「まさか…………!?」
「2体目の大天使ゼラートを特殊召喚!」
《大天使ゼラート》 攻撃力2800 守備2300
「2体目の大天使ゼラート…………」
これで益々私の勝ち目がなくなった。
私は…………ッ。
「そんな辛い顔をしないでほしいな。君のそんな顔を見るのは忍びない。すぐに終わらせてあげよう。………バトルだ! 大天使ゼラートで君にダイレクトアタック!」
大天使ゼラートが手を私にかざして光を集めていく。
この攻撃を防ぐことはできる。
だけど、防いだところで勝ち目なんて…………。
私は勝ちの目が見えない未来から目を逸らすように顔を伏せて衝撃に備えた。
「愛理! 顔を上げなさい!!」
「彩音…………!」
彩音が顔を伏せて諦めた私を見て声を上げている。
「あなた敗けていいの!? 敗けたらあいつの婚約者なのよ!!」
「でも……私にはもう勝ち目が…………」
相手の場には大天使ゼラートが2体。
私の場にはモンスターはいない上、手札もない。奇跡的に大天使ゼラートを破壊できても、もう一体によって詰みに持っていかれる。
これでどうやって勝てというのか。
「だとしても、最後まで毅然と立ち向かいなさい! 叶えたい夢があるんでしょう!?」
「夢? ……夢……そうよ……私の夢!!」
大天使ゼラートの手に集めていた光が溜め終わったのか、一層輝いて光輝いている。
「さあこれでフィニッシュだ! 大天使ゼラートよ、僕たちの輝ける未来のために勝利をもたらせ! 聖なる波動!!」
大天使ゼラートの放つ光が私を襲いに来る。
「私は…………敗けられないッ! 私はリバースカード スケープゴートを発動! 私の場に4体の羊トークンを召喚する!」
「なに!? くっ、ならば2体目の大天使ゼラートでもう一体のトークンを破壊!」
私が発動したスケープゴートによって召喚されたトークンが大天使ゼラート2体の攻撃を防いでくれた。
そうよ。私は敗けられない。
夢のために、敗けるわけにはいかないの!!
…………彩音、ありがとう。あなたのおかげで、私は最後まで戦える!
「この攻撃を凌いでくるとは驚いたよ。まだ勝てると思うのかい?」
状況は最悪。
私に手札はないし、残されたリバースカードもこの状況では役に立たない。
それでもッ!
「照月君、あなたの気持ちは嬉しいけれど、私には夢があるわ。どうしても叶えたい夢が。だから、どれほど絶望的な状況でも諦めるわけにはいかないの!」
「………そうかい。そこまで僕を拒むというのなら実力で手に入れるまで! 僕は大天使ゼラートの効果を発動! 手札の光属性モンスターを墓地へ送り君のモンスター全てを破壊!」
大天使ゼラートの効果で残された私のスケープゴートたちがすべて破壊されていく。
「これで僕はターンエンド! さあ、君のラストターンだ!」
これが正真正銘最後のドローになる。
なんとなくそれがわかる。
この次のドローはないのだと。
私はデッキに指を置いて私の夢を想う。
この世界にやってくる前に与えられた使命を果たし、コナミ君と世界を救う。そして彼の夢への道を支えながら、大好きな彼とずっと一緒に生きていく。
それが私の夢!
だから、答えて! 私のカードたちッ!
「私のターン、ドローーーー!!!」
私の指が光ってカードが答えてくれたのを感じた。
「私は手札から契約の履行を発動! 800ライフポイントを払って墓地の儀式モンスターを特殊召喚する!」
「墓地の儀式モンスター? サクリファイスか!?」
これがデッキが答えてくれた勝利への道!
「私の場に戻ってきて! サクリファイスを召喚!」
《サクリファイス》 攻撃力0 守備0
「この土壇場でサクリファイスを召喚してくるとはッ! 大天使ゼラートと相打ちを狙うか!?」
「いいえ。それでは一時凌ぎにしかならないわ。さっきあなたが言った通り、このターンがラストターンよ!」
確かに、サクリファイスで大天使ゼラートを吸収することでもう一体のゼラートと相打ちにもっていけば一時的には対等な条件にもっていくことはできる。
でも、それをすればきっと私は敗ける。
だから、これがラストターン。次のドローはいらないッ!
「馬鹿な! 不可能だ! このターンで僕のライフを0にするなど…………!」
それを可能にするカードが私の場にはある。
そしてそのカードのためにサクリファイスが来てくれた!
「これが最後のカード! 私はリバースカード おジャマトリオを発動! あなたの場におジャマトークンを3体召喚するわ!」
「トークンを……僕のフィールドに?」
《おジャマトークン》 攻撃力0 守備1000 ×3
私の発動したおジャマトリオの効果によって照月君の場にブーメランパンツを履いた小さな人型のトークンが召喚される。
「なんだこの気色悪いモンスターたちは!? 水無月君、君が使うにはあまりにも似つかわしくない下劣なカードだ!」
確かに一般的に見て彼らは好意的には見られないデザインをしたモンスターたちだ。
それでも彼らが私に勝利をもたらしてくれる大切なカード。
馬鹿にすることは許さないわ!
「私はサクリファイスの効果を発動! あなたのモンスター1体を装備カードとして吸収する!」
「くっ、僕の大天使ゼラートを吸収するかッ!」
「いいえ! 私が吸収するのは、おジャマトークンよ!」
「なに!?」
私がおジャマトークンを選択したことで、サクリファイスがお腹にあるくぼみにトークンを吸収した。
《サクリファイス》 攻撃力0 守備1000
「馬鹿な。そんな弱小トークンを取り込んだところで……」
「これが私の勝利への道よ! バトル! サクリファイスで大天使ゼラートを攻撃!」
「血迷ったのか!? 返り討ちにしろ! 大天使ゼラート、聖なる波動!」
サクリファイスの攻撃に対して大天使ゼラートが集めた光で反撃することでサクリファイスが吸収していたトークンが破壊され、反射ダメージ2800ポイントが私に返ってきた。
「きゃあぁあ! くっ、サクリファイスは破壊される時、装備されたカードが身代わりになるわ!」
《サクリファイス》 攻撃力0 守備0
《愛理》 残 LP 1000
「だが、これで君の打てる手はなくなった。サクリファイスの効果は1ターンに2度は使えない。手札も魔法・罠もない君にできることはない!」
勝利を確信した笑みを浮かべた照月君を見ながら私は自身の目論見が通ったことを知った。
「いえ、これでいいの。サクリファイスのもう一つの効果! 私が受けた戦闘ダメージをあなたにも与える!」
「戦闘ダメージの共有!? …………だが、僕は天空の聖域で守られている。天使族の戦闘によるダメージは効かない!」
「サクリファイスが与えるダメージは戦闘ダメージではないわ。効果ダメージによる反撃。よって天空の聖域の対象外よ!」
「なんだと!? では…………僕は君が受けた2800ものダメージを…………ッ!」
サクリファイスが受けた攻撃を返すために発光を始め、大天使ゼラートが与えた光を照月君へと返した。
「ぐっ、この………僕がぁああああ!!」
《照月》 残 LP 0
「ぃやったああああ!! 愛理の勝ちよー!!」
「ああ! 一時はどうなるかと思ったが、愛理君が勝ってよかった…………!」
照月君のライフポイントが0になった瞬間、彩音と三沢君が喜びの声を上げ、そして私も大きく深呼吸して私が勝ったという事実を改めて受けとめた。
「すぅーーー。ふぅーーー。何とか勝てたわ。照月君、約束通り私のことは諦めてね」
「………ああ、わかっている。コナミに敗けて、君にも敗けたのだ。これ以上の醜態は晒さないさ」
照月君は地面に両手をついて項垂れている。
「照月君、力づくで愛を手に入れようとしても、相手は決してあなたを愛してくれないわ。ただ空しいだけなのよ」
「それでも僕は…………!」
照月君は私の言葉に何かを言おうとしたけれど、ぐっと言葉を堪えて再び俯いて黙り込んだ。
「照月学。なぜお前はここまで愛理君に執着したのだ。恋人などその気になればいくらでも作れただろう? お前のような男が愛理君相手にそこまでしたのだ。相応の理由があるはずだ………」
三沢君が照月君に私を求める理由を聞き始めた。
そうよね。確かにそこは私も気になるわ。
「照月君。私たち大して交流もなかったはずなのに、どうしてここまで私を欲しがったの?」
「…………別に、大した理由などないさ。ただ恋をしただけのこと。確かに始めは恋とは呼べないものだったが、今この胸にある想いは本物だ。嘘じゃない…………」
彼は立ち上がり、真剣な目で私を見つめて胸の内を話してくれた。
照月君は本気で私に恋をしてくれたのね。
その恋を叶えるために振られてもラブレターを送ってきたり、デュエルで私を手に入れようとしたことは許せないけど、その気持ちだけは嬉しいわ。
「…………私に恋してくれてありがとう。でも、ごめんなさい。あなたの気持ちは嬉しいけれど、私には好きな人がいるから。あなたの気持ちに答えてあげることはできないわ」
「わかってる。水無月君、君に執着するのはもうやめるよ。随分と迷惑をかけてしまい、すまなかった。…………僕はもう行くよ」
これ以上話すつもりはないのか、照月君は私たちに頭を下げて謝罪した後、背中を向けて去って行った。
「結局、なーんで照月君が愛理にご執心だったのかは恋心以外はわからなかったわねー」
「いいわよ彩音。何がキッカケだったにせよ。もう済んだことだし。諦めるって言ってくれたしね」
正直なところ。気にならないと言えば嘘になるけれど、あまり詮索しても意味のないこと。
諦めてくれたからよしとしましょう!
それに…………。
「今日は疲れたわ。三沢君もわざわざありがとうね」
「いや構わないさ。何事もなく終わってよかった。それでは今日はこれで解散としよう」
「そうね。それじゃあ彩音、三沢君。今日はありがとう。また明日ね」
「うん! 今日は楽しかったわ! 愛理、ありがとうね!」
「ああ。今日はいいデュエルを見せてもらった。愛理君、彩音君、それではまた」
そうして照月君との恋を賭けたデュエルが終わり解散してから少し経ち、私は教室で彩音から彼が転校したことを聞いた。
「いやーまさか失恋したショックで転校するとはね。あの性格だからすぐに立ち直るものだと思ってたのだけど、結構ナイーブな人だったみたい」
ちょっと意外という感じで話す彩音に同意しかけながら、私は今朝家のポストに照月君から投函されていた手紙を思い出し否定した。
「彩音、あまり面白がるのは性格悪いよ? それに彼はもうあまり気にしてはいないみたいよ」
私はそう言って照月君から送られた手紙を取り出して彩音に見せる。
「手紙? まさかまたラブレターってことはないわよね? どれどれ〜」
そこには私への感謝が書かれた用紙と1枚の写真が入っていた。
「これって……うぇえええええ!! これ、あんた子供の頃に照月君と知り合いだったの!?」
「そうなの。まったく覚えてなかったんだけど、子供の頃に会ってたみたい」
手紙と共に同封されていた写真。
そこにはどこかのパーティで撮ったのだろう、幼い私と今とは随分と雰囲気が違う照月君が正装をして並んだ姿で写っていた。
『初めは気づかなかったが、君は気弱かった僕に自分を信じ、変わるキッカケを与えてくれた。心から感謝している。そんな君と共に未来を歩めなかったのは残念だが、君が幸せであってくれることをずっと願っている。 by 照月』
「へぇー幸せを願っているだって。あんた本当に照月君に愛されてたのねぇ」
「そうみたい。でも、そうなるとちょっと彼には悪いことしちゃったわね。色々と酷いこと言っちゃったし」
それにこの写真を見てもなんとなくそんなことあったかなあ? 程度しか思い出せず、結局私が彼に何をしたのかは謎のままだ。
この手紙の通りなら私が何かを彼にしたみたいだけど、手紙には書かれていないし、きっと彼も話す気はないのだろう。
なら、無理に思い出すこともない。
そういうことがあったと思い出の中で眠ってくれていればそれでいい。
「いいんじゃない? もう終わったことだし、彼なら大丈夫でしよ! それより修学旅行よ! 愛理は行きたいところ決まった?」
「えー? そうねえ。一応いくつか候補は決まってるけど……」
こうして照月君と私の恋の話は終わった。
彼がどこへ転校して行ったのかわからない。あるいは私に恋したようにそこで出会った誰かを愛することもあるのかもしれない。
だから色々と思うところはあるけれど、彼が私の幸せを願ってくれたように、私も彼の行く道が幸せに満ちたものであるようにと願う。
そして次恋するときは、相手の気持ちを考えた恋愛をしてくれることを切に……切に! 願うのだった。
効果ダメージで勝つのは自重すると前書いていましたが、せっかくのサクリファイスの見せ場だったので今回は許して欲しい。
なんでこの話こんなに長くなったんだろう。