「「デュエル!」」
「僕のターン、ドロー!」
いい手札がきてるなあ。モンスター・魔法・罠、バランスよく手札に来てくれている。
どうしようか、いきなり攻撃力の高いモンスターを出すのいいけど、店長さんの手を見てからでも遅くはないかな?
強いモンスターで先制したい気持ちもあるけれど、相手は長年デュエルしてきた先輩だ。
ここは慎重に行こう。
「僕はモンスターを守備表示で召喚して伏せカードを1枚セットしてターンエンド」
「ほう、守備表示モンスターに伏せカードか。堅実な手だね」
店長さんは思ったより慎重な僕に驚いたのか感心しているのか反応しカードを1枚引いた。
「私のターンドロー!…よく初心者の子はとにかく早いうちから強いカードを出したがるものだけど、いいね。よく考えている」
「では私もモンスターを守備表示で召喚し、伏せカードを2枚セットしてターンエンド」
君のターンだと店長さんは言って僕にターンを渡してきた。
…しまった。このパターンは考えてなかった。てっきりモンスターで攻撃してくるものだとばかり思ってた。
「僕のターンドロー! 守備モンスターに伏せカード2枚か。怖いなあ」
「ふむ、悩んでいるのかい? となるとコナミ君は私が攻撃してくると考えていたのかな? 君の新しいデッキタイプはわからないけれど、こういう状況の場合恐れず攻めるか、さらに守りを固めるかだ。なあに、何事も経験だ。君が一番したい戦術を選ぶといい」
手札とにらめっこしている僕の様子を見て店長さんは僕にアドバイスをしてくれた。
一番したい戦術か。だったら僕は恐れず攻める!
「僕はモンスターを一体リリースして暗黒大要塞鯱を召喚!」
《暗黒大要塞鯱》 攻撃力2100 守備力1200
「そしてそのまま守備表示モンスターを攻撃!」
「攻めを選んだんだね。その攻撃に対応できるカードは私のフィールドにはない。モンスターは破壊される」
「よし!」
攻撃が通ったことに喜び勇む僕に店長さんは裏側守備表示モンスターを表にした。
「破壊されるのは赤い忍者。暗黒要塞鯱には攻守ともに遠く及ばないがリバース効果は発動させてもらうよ」
「効果モンスター!」
僕は店長さんの許可をもらい赤い忍者の効果を確認させてもらった。
《赤い忍者》 攻撃力300 守備力300
このカードがリバースした場合、
フィールドの表側表示の罠カード1枚またはフィールドにセットされた魔法・罠カード1枚を対象として発動する。
その罠カードを破壊する(そのカードがフィールドにセットされている場合、めくって確認する)。
「相手の伏せカードを破壊する効果、ってことはこの場合は僕のカードが破壊されるってこと」
「そう、君の伏せカードを確認させてもらって罠カードだった場合、そのカードは破壊される」
僕の場に伏せていたカードはイタクァの暴風、罠カードだ。
相手のモンスターの表示形式を変えられる便利なカードだったんだけど赤い忍者の効果で使用できず破壊されちゃうな。
「イタクァの暴風かあ。相手の攻撃モンスターを守備に変えられる。攻守に使える優れたカードだね。いいカードを破壊できた」
「くっ。でもまだ僕の場には暗黒大要塞鯱がいますからね。問題はありません」
「そうなんだよねえ。どうしたものか」
そう店長さんは答えるとデッキからカードを1枚引いた。
「まあ引いてから考えるかな。私のターン、ドロー!」
「私は忍者マスター SASUKEを攻撃表示で召喚!」
《忍者マスター SASUKE》 攻撃力1800 守備力1000
忍者マスターか、下級モンスターだけど攻撃力は高いうえに守備表示モンスターを守備力を無視して倒せる強力なカード。だけど攻撃力では要塞鯱には届かない。
でも攻撃表示で出してきたということは…
「さらに、忍者マスターSASUKEに風魔手裏剣を装備する! このカードは忍者モンスター専用の魔法カードでね。装備したモンスターの攻撃力を700ポイントアップさせることができる」
「じゃあ忍者マスターの元々の攻撃力は1800。そこに700足すと…2500! 要塞鯱を上回る!」
店長さんが忍者マスターに装備カードを発動した瞬間、周囲で僕たちのデュエルを観戦していた数人の人たちがざわつき始めた。
「悪いけれどコナミ君、君の要塞鯱には退場していただこう。忍者マスターSASUKEで暗黒要塞鯱を攻撃!」
「あ~!!」
「攻撃力の差分、400のダメージを受けてもらうよ」
《コナミ》 残 LP 3600
<店長side>
私とデュエルしているコナミ君ががっくりと肩を落としながら私の忍者マスターの攻撃によって破壊された暗黒要塞鯱を墓地へと送っているところを見ながら、私は少々後悔していた。
ちょっとやりすぎたかなあ。数日前に始めたばかりの子に召喚できた上級モンスターを返しのターンで破壊される経験は早すぎたかもしれない。
というか周りで観戦してたお客さんたちからの目が痛い。
みんなの目が言っている。何をやっているんだと、手加減してやれと。
気持ちはわかる。立場が逆なら私も同じことを思っていただろう。要塞鯱を倒すにしてももう少し活躍させてからにすべきだろうと。
しかし、デュエルモンスターズを始めたばかりだというのにコナミ君は戦術というものをわかっている。
だからだろうか、なんとなくこの子には今打てる最善手を打ってあげるべきだとデュエリストとしての直感が言っている。
それがこの子をより強くするのだと。
「私はこれでターンエンド」
だから私は手を抜くべきデュエルであえて全力で行く!
「君のターンだ。コナミ君」
「はい。僕のターン…ドロー!」
コナミ君はまるで祈るような眼をしながらデッキからカードを引いた。
やはり彼の眼はまだ諦めてはいない。
勝利への可能性を信じている。
ならば、もしかしたら彼のデッキは答えてくれるかもしれないな。
「僕はガガギゴを攻撃表示で召喚!」
《ガガギゴ》 攻撃力1850 守備力1000
「さらにガガギゴにはがねの甲羅とドーピングの2枚を装備!」
「なに!」
まさか本当に引いたのか。忍者マスターを倒せるカードを、このターンに!
「はがねの甲羅は400ポイント、ドーピングは700ポイント攻撃力をアップさせることができる。これによってガガギゴの攻撃力は2950に変化する!」
《ガガギゴ》 攻撃力1850 → 2950
「これは驚いた。まさか装備カードを2枚とは」
周りの観客たちもコナミ君のまさかの反撃に驚いている。
装備カードが2枚。おそらく今引いたカードはドーピングの方だろう。そうでなければ要塞鯱が敗れた際、あれほど落ち込む必要はないのだから。
ならば、はがねの甲羅は手札で温存していたということになる。
要塞鯱に使うという選択肢もあっただろうに。
いや、この子の年なら普通はそうする。先のことなど考えずに。
だがコナミ君はそうはしなかった。
おそらく守備表示モンスターを攻撃するのに必要がなかったということと反撃を予想してのことだろうか。
すごいな。デュエルを初めて数日の子供がすることではない。
「僕はガガギゴで忍者マスターを攻撃! これでまた僕に有利な状況に…」
「残念だが、君が攻撃を選択した瞬間。私は罠カードを発動させる!」
「「「え?」」」
私が罠カードの発動を宣言した瞬間、コナミ君だけではなく観客たちも同様に困惑した声を上げて私を見た。
「砂塵の大竜巻を発動! このカードは相手の魔法・罠カードを1枚破壊することができる」
「そんな! じゃあ」
「私は君のドーピングの魔法カードを選択する。これによってガガギゴの攻撃力は700ポイントダウン!」
《ガガギゴ》 攻撃力2950 → 2250
「よってガガギゴは忍者マスターの反撃によって破壊され墓地へ送られる。そして君は攻撃力の差分250ポイントを受けてもらう」
《コナミ》 残 LP 3350
ーおいおいまじかよ。
ー大人気ねえ。子供相手にすることかこれが。
ーというよりカードショップの店員が初心者にすることじゃねえ。
ー花を持たせるって言葉を知らねえのか!
わかっていたことだが、砂塵の大竜巻を発動した瞬間すごいブーイングが来たな。
子供相手にすることではないから仕方ないけれど。
しかし私は手加減はしない。そう決めたのだから。
「僕は、これでターンエンドです」
コナミ君は伏せカードを出すことなく悔しそうにエンド宣言をした。
彼の場にはもうカードは存在しない。
私がモンスターをさらに召喚しなければ耐えられる可能性はあるのだろうが…。
「私のターン、ドロー」
私はドローしたカードを見る。
どうやら運命は私の勝利を選んだようだ。
私の引いたカードは忍者マスター SASUKE。このモンスターを召喚すればこのデュエルは終わる。
しかし、手加減しないと決めたがこれ以上は…。
「ん?」
私はふと手札から顔を上げてコナミ君を見る。
その顔は真剣そのもので、まっすぐ私を見つめている。私がモンスターを引かないことを祈っているようには見えなかった。おそらく、コナミ君は敗北を悟っている。そして手加減はいらないと言っているように感じた。
ならば私は。
「私は二枚目の忍者マスター SASUKEを召喚!」
「っ!」
「そして二枚の忍者マスターでダイレクトアタック!」
私はこのデュエルの閉幕を選んだ。
「これでコナミ君のライフポイントは0。私の勝利です」
「はい、ありがとうございました」
いいデュエルだった。
ー頑張ったな少年。
ーなあにまだまだこれから強くなればいいさ。
私たちのデュエルを見ていたお客さんたちが少年にいねぎらいの言葉と励ましをの言葉を送ってくれている。
そして私に突き刺さる視線が痛い
ー普通子供相手にここまでやるかね。
ーというか少年のデッキの試運転が目的だったはずなのになんで勝ちに行ってるんだろうねこの大人は。
ふう、デュエルはいつだって真剣勝負。手加減はできないものさ。
虚空を見つめ言い訳を心の中でささやき私は自分を慰めた。
<コナミside>
負けた。相手は格上の人、全力は出せたと思うし仕方かなかったと言えばそこまでではあるんだけど、やっぱり悔しいものは悔しい。
周りの人たちも気にすることはないと落ち込んでいる僕を慰めてくれている。
多分最初の暗黒要塞鯱が攻撃した際に、店長さんの伏せたカードが攻撃反応カードではなかった時点で魔法・罠に対処可能なカードの存在を考慮には入れるべきだったのかもしれない。
そうすれば風魔手裏剣を装備した忍者マスターを召喚されても落ち着いて待ちの姿勢でより確実なチャンスを待てたと思う。
それに要塞鯱を召喚できた際に、はがねの甲羅を装備しておけば忍者マスターと相打ちできる攻撃力まで上げることはできていた。
それでも同じように装備カードは破壊されていただろうけど、その後の展開は変わっていただろう。
「コナミ君」
僕がデッキの片づけと頭の中で反省会をしている中で店長さんが話しかけてきた。
「すべて結果論だよ」
「え?」
「きっと今君の頭の中では、ああすべきだったとか、こうすべきだったとか渦巻いているかもしれないが今回のデュエル、そこまで気にしなくてもいいんだからね」
店長さんは僕の心の中を読んでいるかのように言った。
「正直君の実力は想像以上だった。1ターン目で守備表示で相手の戦術を見ようとするところも要塞鯱を出した際に調子に乗らず装備カードをつけなかったこともだ。君の年齢や最近始めたことを考えればとてもすごいことなんだよ」
「でもデュエルには負けてしまいましたし、慎重に行った結果裏目に出てしまったことも」
「それでもだ。私が保証しよう。君には才能がある」
ただ今の君には経験も知識もカードさえも足りていなかっただけなんだと店長さんは言った。
「大丈夫だ。君は将来私よりずっと強いデュエリストになれる」
店長さんがかけてくれたその言葉はとても強い力を持つようで落ち込んでいた僕の心にすっと入ってきた。
「私が君くらいの年頃のころなんて上級モンスターを出して攻撃以外考えてなかったからね」
ー俺も俺も、子供のころなんて攻撃力以外なんも考えてなかったぜ
ー落ち込む必要ないぜ。これからどんどん強くなれるんだからな。
周りの人たちも店長さんの言葉に倣うように僕に強くなれると言ってくれた。
「はい! 元気が出てきました。そうですね1敗したくらいで落ち込んでちゃだめですね」
「うん、それでいい。それじゃあ私は仕事に戻ることにするよ。よかったら周りの人たちとも対戦を申し込んでみるといい。きっといい経験になるよ」
「はい! ありがとうございました!」
僕が元気を取り戻したところを見ると店長さんはカウンターに戻っていった。
「よっしゃあ! コナミ、できたぜ俺のデッキ!」
ちょうどコウキもデッキが組みあがったみたいだ。
僕は振り返って周りの人たちにお願いした。
「あの、よかったら僕たちとデュエルしてくれませんか?」
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その後僕とコウキはお店に来ていたお客さんたちとデュエルをしたりデッキ調整を手伝ってもらいながらお店を後にした。
「がー! 結局全然勝てなかったぜ」
「コウキは言われてたけどモンスターカードを入れすぎだよ。サポートカードも入れないと」
「そうは言ってもよう、やっぱ高い攻撃力でガツンッと相手を倒したいじゃないか」
「気持ちはわかるけど」
僕はコウキとふたりで夕日が照らす帰り道を歩きながら今日のことを振り返っていた。
「お店にいたお客さん。いい人たちだったね。何枚かもう使わないからってカードもくれたし」
「おう、また行こうぜ。デュエルするためによ」
うん、と僕は答えて夕日に誓う。
僕はもっともっと強くなる。そしていつか…キング・オブ・デュエリストになって見せる!
子供の頃の自分はどうだったかなあと思いながら書いてます。