初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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 彩音さんメイン回。ノリと勢いで出来上がって、何の話を書いているんだとなったので投稿するか悩みました。
 正直ただのデート回なので苦手な方は読まなくても大丈夫だと思います。


僕と彼女の一夜の夢

 

 全国大会から1年が経ち、殆どの同級生が受験勉強に追われている中、クリスマスに僕は公園で彩音さんを待っていた。

 

「ごめーん! 待ったー?」

「彩音さん! …………いえ、今来たところですよ」

 

 そうして寒空の下ベンチに座って待っていると、約束していた待ち人が走りながら公園に入ってきた。

 

「いやー待たせたようでごめんね? ちょーっとお化粧に時間がかかってね」

 

 一応マナーとして待っていないアピールはしたが、彩音さんには普通に待ちぼうけをくらっていたことを見抜かれていたようだ。

 約束の時間を過ぎてしまっていることを申し訳なさそうに謝罪している。

 

「別にかまいませんよ。そこまで遅れたわけでもありませんし」

 

 実際遅れたと言っても10分かそこらだ、それくらい待つのは問題ない。

 

 それに、お化粧に時間がかかったと言っているように今日の彩音さんはいつも以上に奇麗だ。

 洋服なども今まで着てきたことのない服を着ているし、随分と念入りにオシャレをしてきてくれたのだろう。

 

 特に異性間の好意を持っているわけではないけれど、今日のために着てくれたものだと考えると、今日のデートにも気合いが出ると言うものだ。

 

「しかし彩音さん、今日はお化粧してきたとあって一段と奇麗ですね」

「そう? そう言ってもらえると頑張った甲斐もあるってものね」

 

「ええ。普段の彩音さんも奇麗ですけど、やっぱりオシャレした女の子は見惚れるほど美しくなりますから。男からすると嬉しいものですよ」

「あらま、口が達者だこと。嬉しいけれど、他の女の子に気安くそんなこと言っちゃだめよ? 勘違いする娘が現れちゃうから」

 

「あはは! 言うわけないじゃないですか。僕が褒めるのは愛理ちゃんを除けば彩音さんくらいなものですよ」

「それならよし。それじゃ、行きましょうか。クリスマスデートに!!」

 

 今日は彩音さんとのクリスマスデートだ。

 まあデートとは言っても、特に付き合ってるとか好きだからとかではなく、受験勉強の息抜きに付き合うと言うのが理由のなんちゃってデートなんだけど。

 僕としてはできれば愛理ちゃんも含めた3人か、愛理ちゃんと2人がよかったんだけど、残念ながら予定が入ってて来れなかったのだ。

 

 ちなみに今日のことは愛理ちゃんに了承済みだ。

 

 全国大会後、三沢君たちが受験対策で一緒に遊ぶことがめっきりなくなったため、暇することが多くなった僕は時々彩音さんと遊ぶようになっていた。

 

 その彩音さんも3年生になると受験勉強の苦行に時間を取られることになっていたが、元々勉強が嫌いだったせいもありストレスが溜まるらしく、その発散に時々付き合うようにしているのだ。

 

「それで、今日はどこへ行きます? どこへでも付き合いますけど」

「ふふふ~。あたしね、一度行ってみたいところがあったのよ。それがここ、諸星(もろぼし)水族館よ!」

 

 どやーっと自信にあふれた満面の笑みで見せてきたパンフレットを見ると大きな鯨が表紙を飾っている水族館の写真が載っていた。

 

 なるほど、彩音さんが行きたい場所は水族館かー。

 デートの場としては定番のスポットだな。

 

「わかりました。じゃあ行きましょうか。チケットは…………買ってないなら奢りますよ」

「えっ!? それは流石に悪いわよ。今日はあたしのわがままに付き合ってもらっていいるわけだし…………」

 

「だからですよ。今日は彩音さんのためのデートです。あなたのために僕は今日ここに来たんですから、デート代くらいは出しますよ」

 

 僕は彩音さんの頬に触れて、見つめながら少々気取った風に言った。

 

 今日は彩音さんの息抜きのためのデートだ。

 時々友達として遊ぶのでもなく、愛理ちゃんとのデートも違う。

 

 受験する必要がない自分と違って、彼女は大変なストレスと不安と戦っているわけで。

 だから今日の僕は1日限りの恋人として、彩音さんに最高の1日を送れるように頑張りたい。

 

 そのためならデート代くらい頑張って出すさ。

 

「…………いやーなんていうか。思った以上に…………まあ愛理と何度もデートしてるから当然か。これでコナミ君がイケメンだったら惚れてたかもしれないわ」

 

 彩音さんは僕から急いで離れた後、明後日の方向を向きながら何事かを呟いていた。

 

 ちょっと気取りすぎたかな。

 一応デートと言う形で行う以上、彩音さんに喜んでもらえるようにしてるつもりなんだけど…………。

 

 彩音さんがそっぽを向いてしまった。

 心なしか距離も離れている感じがする。

 

 どうしたものか、今からでも気安い友達モードに戻したほうがいいだろうか?

 それとも初志貫徹、雑誌で学んだ………カッコいい男子ムーブを貫くか…………。

 

 たしか…………以前、愛理ちゃんが彩音さんのタイプは俺様系だって言ってたな。

 だから僕みたいな素直なタイプを好きになることはないだろうとも…………。

 

「まあこうして話しているのも楽しいけれど、水族館を見る時間が減るのはもったいない。さあ、行きましょう!」

「きゃっ!」

 

 僕はちょっと強引にだが、彩音さんの肩を抱いて公園の外へと向かって歩き出した。

 

 肩を抱いたのはやりすぎたのかもしれない。

 彩音さんがすごい驚いた顔で僕を見ている。

 

 だけど俺様系ってたぶんこういう強引にでも引っ張っていくタイプだよね。

 さすがに口調を変えるのはボロが出そうで厳しいけれど、行動で示すくらいはできるし…………。

 

 僕は少し視線を落として彩音さんの反応を見てみる。

 彼女は肩を抱かれていることが恥ずかしいのか顔を赤くして俯きながら歩いている。

 

 …………うん。

 大丈夫そうだ。

 少なくとも嫌がってる感じはないな。嫌だったら引っ叩かれてるだろうし、このムーブで間違いはなさそうだ。

 

 もう彩音さんと遊べる機会も多くはないだろうから、受験勉強に頑張っている彩音さんに今日は目一杯楽しんでもらえるように努力しよう。

 

 僕は今日一日の彩音さんへの対応を頭の中でシミュレートしながら、彩音さんを連れて水族館へ向かって歩いて行った。

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

「いやー楽しかったあ! いいリフレッシュになったわ! 今日はありがとうねコナミ君」

「別にお礼なんていいよ。好きでやったことだからね。それに僕も楽しかったからさ」

 

 水族館で気が済むまで水槽の魚やイルカのショーを楽しんだ僕たちは日が暮れてきたということもあり、水族館から出てきた。

 

「それにしてもコナミ君があそこまで慣れてるとは思わなかったわ。なに? 普段から愛理に対してもあんな風にしてるの?」

 

 水族館にいる間、可能な限り僕は彼女をエスコートすることを心掛けていた。

 その結果、彩音さんから見ればらしくない行動を僕がしていたから不思議に思ったのだろう。

 

「いや? 愛理ちゃんとのデートはもっと自然というか、何も考えずにデートしてるよ。ただ今回は趣旨が違ったからね。こうした方がいいかなって思ったことをしてただけだよ」

 

「それを聞いて安心したわ。私の中のコナミ君象が崩れてたもの。こんなに女慣れしてるなんてってね」

「はは! 彩音さんは親しい友達だからね。流石にただの知り合いにここまではしないよ」

 

 実は結構無理をして頑張ってた。

 なんせ俺様系なんてよくわからないものが好みのタイプらしいから、想像でこんな感じかな? ってことをするしかなかったのだ。

 

 まあ無理した甲斐もあってか、彩音さんはかなり楽しんでもらえたようで満面の笑みで水族館を出ることができた。

 

 多少無茶でも頑張ってみるもんだ。

 おかげで随分と楽しんでもらえたようだし、よかったよかった。

 

「それで、どうしようか。もう日が暮れそうだから帰る?」

「うーんそうねえ。どうせなら最後の思い出が欲しいわね」

 

「それならあそこの観覧車はどう? デートの締めくくりに観覧車は結構悪くないと思うけど」

 

 僕は水族館から20分ほど歩いた先にある大きな観覧車を指差しながら彩音さんを誘った。

 

「観覧車……いいわね! 行きましょコナミ君!!」

「そんな急がなくても……歩いて行こうよ!」

 

 彩音さんは水族館で散々繋いでいたのでもう慣れたのだろう。

 僕の手を引っ張って観覧車へと向かった。

 

 そうして乗った観覧車、その中で僕たちは不思議と何も話すことなく観覧車から見える景色を眺めていた。

 

 彩音さん、どうしたんだろうか。

 観覧車に乗る前はあんなに楽しそうにはしゃいでいたのに、いざ乗ってみると黙りこくってしまった。

 

 僕は対面の窓際に座っている彩音さんを見てみる。

 どうにも外の景色を見て、物悲しげにしている様子だ。

 

 雰囲気に酔ってるって可能性もあるけれど、何か思うところがあるのかもしれない。

 

 …………今は、黙っていよう。

 僕が必要なら話してくれるだろう。

 

「ねえコナミ君、そっちに行ってもいい?」

 

 そうして2人で黙って景色を眺めていると、彩音さんが静かに声を掛けてきた。

 

「いいよ」

「……ありがとう」

 

 隣に座った彩音さんは僕の腕を抱いた後、肩に頭を置いて目を瞑った。

 

「彩音さん、どうかしたの?」

「……別に、ダメだった?」

 

「そんなことはないけど。ただ、彩音さんから近づいてきたのは意外だったから、理由があるんだろうなあって」

 

 今日一日、基本的に僕と彩音さんは手をつないだりして常に接触していたけれど、彼女の方からくっついてきたのはこれが初めてだ。

 

 正直、女の子に抱きつかれているのは悪い気はしないんだけど、今は心配の方が先立つな。

 彩音さんは明るい性格をしてるから、こうして静かに甘えられるとちょっと心配になる。

 

「………もう少ししたら卒業だなあって思ったら寂しくなっちゃってね。恋人代わりのコナミ君に慰めて欲しいなあって思ったの」

「……そっか。じゃあもう少し、こうしていようか」

 

 今日は中学3年のクリスマス。

 後数ヶ月もすれば僕たちは学校を卒業して、別々の高校へ進学することになる。

 

 僕と愛理ちゃん、そして三沢君はデュエルアカデミアへ行く。

 愛理ちゃんと三沢君はまだ合格するかはわからないけど、2人なら間違いなく受かるはずだ。

 

 そして、彩音さんだけは一般校へと進学することになる。

 だから、自分だけお別れすることになるのが寂しくて辛いのだろう。

 

「彩音さん。きっと大丈夫だよ。確かにお別れは寂しいけどさ、新しい学校へ行けば、新しい友達が沢山できる。寂しさなんて忘れるくらい素晴らしい出会いがきっとある」

「………」

 

 彩音さんは何も答えずに僕の言葉を聞いている。

 

「それに、もし辛いことがあったなら必ず駆けつけるよ。勿論愛理ちゃんや三沢君だって来てくれるさ」

 

 例え孤島に建てられたデュエルアカデミアにいたって、必要だと呼んでくれたなら必ず向かう。

 

 そばにいて欲しいと言うなら気が済むまでそばにいよう。

 僕たちは友達なんだから、遠慮する必要はないさ。

 

「……ちょっとだけ、愛理の気持ちがわかったかもしれないなあ」

「愛理ちゃんの気持ち?」

 

 なんでここで愛理ちゃんの気持ちが出てくるんだ?

 …………よくわからないけど、同性同士の友人だからわかることなのかもしれない。

 彩音さんとのデートである以上、あまり愛理ちゃんのことを話題にするのも失礼だし、ここはスルーしよう。

 

「コナミ君……愛理のこと、頼んだよ。あれで結構ダメなところもあるからさ」

「……うん、任せといて。大船に乗った気持ちで信じててよ」

 

 僕はまだ不安がありそうな彩音さんに安心して欲しくて自信一杯に答えた。

 

「ふふ! 他の女の子に抱きつかれながら言っても説得力ないんだけどね?」

「えー!? そこは信じてよ!」

 

 話していると元気が出て来たのか彩音さんがニヤけながら僕を見ていた。

  

 よかった。元気を取り戻したようだ。

 いつもの見慣れている笑顔がそこにあった。

 

「やっぱり彩音さんは笑顔の方がいいね。笑ってる方がずっと可愛い」

「あんたねえ………まあいっか。困るのは本人だし、なんかあっても愛理が何とかするでしょ」

 

「……ところで、いつまでこうしてたらいい?」

 

 僕は観覧車の中で腕に抱きつかれている体勢を見ながら聞いた。

 

 悪い気はしないけど、彩音さんも元気が出てきたのだから離れてもいいと思うんだ。

 今は友達の気持ちで接っしているからちょっと恥ずかしい。

 

「そんなのあたしが家に帰るまでよ。今日は最後まで離さないからね♪」

「えー! 家までこの体勢なのかあ」

 

 その後、観覧車を降りて彩音さんの家に着くまで本当に彩音さんは僕から離れることはなかった。

 

「それじゃあコナミ君、また明日ね!」

「うん。また明日」

 

 こうして僕と彩音さんのクリスマスデートは終わった。

 恐らく、もう2人で遊ぶ機会はないだろうなあと思いながら、僕は彩音さんに別れを告げて、また明日学校で会う約束をした。

 

「あっ! ちょっと待ってコナミ君!」

 

 僕が家に帰ろうとした瞬間、後ろから別れたはずの彩音さんの呼ぶ声がして僕は振り返った。

 振り返った先、家の玄関の前で彩音さんが何かを逡巡した様子で立っていた。

 

「どうしたの彩音さん。まだ何かあった?」

「あー、うーんちょっとね。お礼がしたいなあって思って」

「お礼?」

 

 そう言って彩音さんは僕に近づいた後、僕の首に手を回して抱きついて来た。

 

「えっと………どうしたのさ。また寂しくなったの?」

 

 僕に突然抱きついたまま、何も話さない彩音さんを見て、また別れるのが寂しくなったのかと心配になった。

 

「コナミ君、もう一度聞かせて欲しいの。もしあたしが来て欲しいって言ったら遠くからでも来てくれる?」

「勿論、どんなに離れていても必ず会いに行くよ。約束する」

 

 僕は彩音さんが安心できるように抱きしめ返して彼女に改めて約束した。

 

「そっか。じゃああたしも約束してあげる。今後……万が一愛理に振られたら……いえ、辛いことがあったらあたしのところに来たらいいわ。慰めてあげる」

 

「いやー辛いことがあったからって女の子に慰めてもらうのはちょっと。男として恥ずかしいんだけど」

「ダメよ。約束、辛いことがあったらあたしのところに来なさい。いいわね」

 

 彩音さんが有無を言わさないような口調で僕に囁いてくる。

 彼女がどういうつもりで言っているかはなんとなく察せれるけど、これを受け取るのは………いや、これ以上断るのも無粋だな。

 好意で言ってくれている以上、素直に受け取っておこう。

 

「わかった。何か耐えられないくらい辛いことがあったら彩音さんのところに来るよ」

「ええ。その時は、全部受け止めてあげるわ」

 

 僕たちはしばらく抱き合ったまま、少しでも顔を近づければ唇が触れ合いそうなほどの距離で見つめ合った。

 

「……したかったらしてもいいわよ。愛理には黙っといてあげるから」

「しないよ。僕たちは友達だからね」

「……そうね。友達だから……ここまでが限界ね」

 

 そう言って彩音さんは一呼吸した後、僕の頬にキスをして抱きしめていた手を解いて僕から離れた。

 

「コナミ君、今のがお礼。それじゃ、今度こそまた明日!」

「うんまた明日、学校で」

 

 そうして今度こそ本当に彩音さんが家の中に入って行ったのを見届けた後、僕は歩き始めた。

 

「……おっ! 雪だ!」

 

 夜、クリスマスらしいイルミネーションが照らす帰り道を歩いていると空からしんしんと雪が降り始めた。

 

 今日はクリスマス、特別な日に見る一夜限りの夢。

 明日になれば、彩音さんも僕も今日あったことなど忘れたように振る舞うだろう。

 

 僕たちは3年間を共に過ごした、ただの友達なのだから…………。

 

 僕は降りしきる雪の中、1日中感じていた温もりがないことにほんの少しの寂しさを感じながら帰路を歩み続けた。

 

 

 





 ………。
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