初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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 ほんのちょっと出るデュエルシーンですが、アニメを踏襲しているので表側守備表示を解禁しています。


最後の少年!

 

 実技試験を勝利で終えることができた私は2階の観客席に戻り、残りの受験生のデュエルを三沢君と見学していた。

 

「やっぱり、あまり試験で勝ってる受験生は見ないわね」

 

 階下で行われているデュエル。

 そこで順次行われているデュエルはほとんどの者が負けていた。

 

「ああ、いくつか見ていたが、試験官は何らかの状況を作り上げてそれをどう突破するかを見ている感じだ。思ったよりも試験難易度は高いのかも知れんな」

 

 実技試験。

 そこで行われているデュエルは三沢君が考察しているように想像していたよりも難易度は高く設定されているようで、最初こそデュエルに勝つ人もポツポツといたけれど、後半になってくると勝っている人は見なくなっていた。

 

「まあ、俺はともかく愛理君は合格間違い無いだろう。俺は負けた以上絶対とは言えんが」

 

 デュエルに負けた事実が悔しいのか、三沢君が苦笑しながら落ち込んでいる。

 

「そう? 三沢君のデュエルを負けにカウントしちゃダメじゃない? 明らかに他の受験生よりも難易度高かったわけだし」

 

 三沢君も実技試験に勝った私も、ほぼ十中八九合格だと私は思っている。

 と言うより、三沢君は受かっていなければおかしい。

 

 三沢君を担当した試験官は、合格だと判断したからあんな強力なモンスターを召喚したのだろうから。

 これで負けたから不合格ってなったらクレーム入れていいと思うわ。

 

「ふむ、ところで愛理君。君はコナミのところに行かなくてもいいのか?」

「コナミ君?」

 

 そう言って三沢君が見る方向、3階の立ち見席にコナミ君はいた。

 隣には全国大会で争った丸藤さんがいて、楽しそうに2人で談笑している。

 

 コナミ君、いつの間に来ていたのかしら。

 一応来るとは聞いていたけれど、来てたならまず私のところに来てもいいでしょうに………ッ!

 

 まあでも、丸藤さんがいるからきっとそっちに目が行っちゃったんでしょうね。

 ちょっと不満はあるけれど、いいわ許してあげましょう。

 

 男同士の間に割って入るつもりもないし、帰りは一緒でしょうからね。

 

「んー楽しそうに話してるし、邪魔するのも悪いかなーって……ん? あの娘、誰かしら」

 

 私が3階で丸藤さんと話しているコナミ君を見ていると通路の奥から丸藤さんに向かって金髪の綺麗な女性が近づいて来た。

 丸藤さんの知り合いなのか、コナミ君に紹介している風な感じだ。

 

「……三沢君。ちょっと行ってくるわ」

「あ、ああ。ほどほどにな? 俺はもう暫くここで試験を見ているよ」

 

 コナミ君と楽しそうに話している女性を見て私が不機嫌になっているのがわかったのか三沢君は引き気味に答え、そんな三沢君を置いて私は3階を目指して歩いて行った。

 

 三沢君と離れた後、私は階段を登りながらコナミ君と話していた金髪の女性について考えていた。

 

 遠目だったけど、あの髪色と綺麗な容姿。

 どこかで見たような気がするんだけど、いつだったかしら?

 

 あれだけ綺麗な娘なら覚えてそうなものなんだけど………ダメね。

 思い出せないわ…………。

 

「まあいいわ。とにかく会えばわかるでしょう」

 

 思い出せない以上考えても無駄と結論して兎にも角にも早く会いに行きましょうと早足で階段を上がった。

 

 そうして向かった先、3階の立ち見席で集まって話しているコナミ君たちに私は近づいて話しかけた。

 

「おはようコナミ君、私のデュエル見てくれた?」

「え? あっ愛理ちゃん! うん、デュエル見てたよ。おめでとう!」

 

 私は背を向けていたコナミ君の肩を叩いて話しかけた。

 

「ありがとうコナミ君。それで……そちらの方は……?」

「あっ! そうか、えっと丸藤さんのことは知ってるよね。僕と全国大会の決勝戦で戦ったから………」

 

「ええ。初めまして、水無月愛理です。コナミ君とは同級生で昔から仲良くしてるんです。それから2年前のことではありますけど、全国大会優勝おめでとうございます」

「ああ、ありがとう。丸藤亮だ。皆からはカイザーや亮と呼ばれている。好きに呼んでくれて構わない」

 

「……カイザー?」

 

「うん、丸藤さんはその立ち振る舞いや強さから帝王。つまりカイザーって呼ばれてるんだ」

「へー! さすがは………すごいのね。えっと………亮さんは」

 

 丸藤亮さん。カイザーと呼ばれているデュエリストか。

 強い人たちが沢山いるであろうデュエルアカデミアでそう呼ばれるなんて。

 流石、万全になったコナミ君に勝つだけあるわ。

 

 たぶん、私が戦っても勝てないでしょうね。

 全国大会の頃よりも強くなっていると想定して、果たして何ターンもつか。

 とても想像できないわ。

 

「それで、そちらの女性の方は…………」

 

 亮さんの紹介が終わり、私は一番気になっていた女性の方を見た。

 

「私は天上院明日香。明日香って呼んでくれたらいいわ。水無月さん」

「それなら私も愛理でいいわよ明日香さん。それにしても天上院、その名前どこかで…………?」

 

 天上院。

 その名前どこかで聞いた覚えがあるわ。

 やっぱり私と明日香、どこかで会ったことがあるのかしらね?

 

 私が聞き覚えのある名前に頭を捻らせていると私の様子を見て何を悩んでいるのか察したのかコナミ君が横から話してくれた。

 

「愛理ちゃん。ほら、僕たちが出会った6年前のデュエルディスク体験会の時だよ。あの時大会で僕が戦った吹雪さん。その吹雪さんと一緒に来ていた妹さんだよ」

「吹雪さん…………。ああ! あの時の奇麗な女の子!!」

 

 思い出したわ!

 そうね。確かにいたわ! 

 男の子に群がられてた金髪の女の子。

 

 なるほど、あの吹雪さんの妹さんだったのね。

 どうりで見目が優れているわけだわ。

 

 たしかコナミ君もお近づきになりたい的なこと言ってたし…………やっぱりあまり近づいてほしくはないわね。

 明日香さんにその気があるかは別として、私の知らないところで変に惹かれてほしくはないわ。

 

 少なくとも注意は払っておきましょう。

 まだ人となりはわからないし、2人っきりには絶対にしないようにしないと。

 

「明日香さん、まだ合格したわけではないけれど、デュエルアカデミアで一緒になったらよろしくね」

「ええ。あなたとデュエルできるのを楽しみにしているわ。その時はいいデュエルをしましょう」

 

 私たちは握手をして、その後は一緒に階下で行われているデュエルの見学をすることにした。

 

「…………次で最後かしらね。受験番号110番は来ていないみたいだし」

 

 実技試験が始まってから数時間。

 予め実技試験を受ける人数は公表されていたから、受験者数は110人いるはずだけど、どうやらまだ来ていないらしく109番までの受験生がデュエル場に立っていた。

 

「コナミ君、そろそろ受験も終わりだけど気になるデュエルはあった?」

「ん~まあちらほら楽しいデュエルになりそうだなあって人はいるかなあ。…………おっ! あの水色の髪の男の子。試験官に勝ったぞ!」

 

 そう言ってコナミ君が指さす先、小柄な男の子が試験官とデュエルしており、危機的状況であったけれど機械族のモンスターの直接攻撃で何とか勝利を飾ることができたようだ。

 よほど緊張していたのだろう。安堵でへたり込んでいる。

 

「…………フッ。翔……やったな」

 

 男の子が勝ったのを見た瞬間、一緒に見ていた亮さんが軽く微笑みながら賞賛したのが聞こえた。

 

「亮さんのお知り合いですか?」

「…………ああ。俺の弟でな、今年デェエルアカデミアに受験していたんだ」

 

 亮さんの弟さん。

 なんていうか、こう言っては失礼だけど、あまり似てないわね。

 

 髪色とか顔の造形とかそういう外見的なものではなく、内面的なものが似てないわ。

 なんていうか気弱というか、内向的な印象を受けるわね。

 

 会って話したわけじゃないから、正確にはわからないけれど堂々としている亮さんに比べて随分と自信がなさげな感じがするわ。

 

「へー! 丸藤さんの弟さんかあ。結構面白そうなデュエルしてるし、一回デュエルしてみたいな!」

「ああ、デュエルする機会があれば、よろしくしてやってくれ」

 

 面白いデュエル…………。

 できるのかしらあの子…………?

 

 そりゃあ試験官に勝っている以上弱くはないと思うけど、今のあの子から私はそこまで魅力は感じないわ。

 コナミ君は楽しみにしているけど、デュエルも運よく勝てたような感じだし………ちょっと共感は出来そうにない感じね。

 

 亮さんの弟だし、成長すれば…………ってところかな?

 

「まっ! それはともかく、これで実技試験は終了ね。この後だけど、コナミ君はどうする?」

「そうだなあ──」

 

『受験番号110番。遊城十代君』

 

 実技試験が終わったと思い、この後の予定について聞こうとしていたら、最後の受験生がいたようで呼び出しの放送が鳴った。

 

「あっどうやらまだいたみたいだね。愛理ちゃん、最後の一人だし見ていこうよ」

「そうね。あと一人だし、最後まで見ていきましょうか」

 

 そうして見下ろした先、デュエル場には茶髪の活発そうな印象を受ける男の子が立っていた。

 

 相手は…………誰かしら。

 今までの試験官とは違い青いコートを着た金髪の男性が受験生の相手をするようで、男の子に向かい合ってデュエルの準備をしていた。

 

「あれは…………クロノス教諭。なぜ受験生の相手を教諭が…………?」

「丸藤さん、何かおかしいんですか。たしかに他の受験生とは試験官が違うみたいですけど」

「コナミ、あの人はクロノス・デ・メディチ教諭。デュエルの実技担当最高責任者だ。通常、受験生の相手をすることはないはずなんだが…………」

 

 実技担当責任者。

 つまり一番偉くて強い人ってことかしら…………?

 

 いえ、地位の高さと強さは必ずしも比例するわけではないでしょうけど、亮さんの反応からして実力も相当な者なのだろう。

 恐らく私たちの対応をした試験官よりも強い可能性は十分にある。

 

 となると確かにあの受験生のみにそのクロノスって方が出てくるのはおかしいわね。

 あるとしたらあの受験生が相当な実力者で試験官では務まらないからなのか、それとも…………。

 

「へー! いいなあ、あの十代って子。実技の責任者ってことは強いんですよね丸藤さん」

「ああ、デュエルの腕もかなりのものだ。特に伝説のレアカードである古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)を使用して敗けたことがない」

 

「やっぱり羨ましい。僕も機会があれば一度デュエルしてみたいなクロノス先生と…………!」

「コナミ君、これ受験よ? 寧ろあの十代って子が可哀そうだと思うわ。よほど不興を買ったのかしら」

 

「いや~でも明日香さん。受験であっても強い人とやれる機会があるならしたくないですか?」

「そう? 自分の未来がかかっているデュエルだし、普通は安全に勝てる相手がいいと思うけど…………?」

 

 実技最高責任者と戦える十代君が羨ましいと見ているコナミ君を見て明日香が疑問符を浮かべた顔をしている。

 

「ねえ愛理、コナミ君ってもしかして、かなりあれな子?」

「ええまあ。デュエルは好きなんですけど………状況とか置かれた立場とか考えずにとりあえず強い人と戦いたいってタイプの人で、物事を深く考えない質なんです」

 

 コナミ君の様子を見た明日香が私に顔を寄せて小声でコナミ君がどういう人なのかを聞いてきたので、とりあえず私からみたコナミ君像を伝えた。

 

 まあ普通は大事な受験で強い人となんて当たりたくないのは当然。

 私も当たりたくはない。

 特に三沢君みたいな事故には絶対に遭いたくはない。

 

 だからコナミ君に軽く引いてる明日香は正常だと思うし、私も同意する。

 今回の場合は十代君の立場を羨んでいるコナミ君がおかしいのだ。

 

『E・HERO フェザーマンを守備表示で召喚!』

 

 話していると、どうやらデュエルが始まったようで十代君がモンスターを召喚していた。

 

「へぇ! HEROかあ。僕もバブルマンを使っているけど、中々それメインで使ってる人はいないテーマだ。珍しいね」

 

 十代君って子が使用しているのはHEROデッキか。

 中々難しいデッキを使うのね。

 

 HEROは融合を使うことで強力なモンスターに変化することができて、その種類も多様だから使いこなせれば強力だけど、数が多いからカードを集めるのがまず大変だ。

 

 その上状況に合わせた融合先やその素材となるモンスターを引いてこないといけないから、かなり上級者向けのデッキだと言える。

 

 コナミ君も、バブルマンをデッキに入れているけどその融合先までは使用しようとはしていない。

 コウキ君から託されたカードに融合が入るから検討はしているようだけど、実際に使うかは未定と言っていた。

 

 もしコナミ君が望むなら私もHEROモンスター持っているからあげようかしら。

 持っていれば戦術に幅ができるでしょうし、コナミ君なら専用デッキじゃなくてもそれなりに使いこなせると思うし…………。

 

「…………どうやらクロノス教諭は本気であの受験生の相手をするようだ。面白いものが見れるぞ」

 

 私がHEROについて考えている間にデュエルが進行していたようで、クロノス先生が大嵐で破壊した黄金の邪神像の効果で召喚したトークン2体を生贄に切り札を召喚しようとしていた。

 

『古代の機械巨人を召喚ーンヌ!』

 

「すごい…………あれが伝説のレアカード、古代の機械巨人か!!」

「これは…………クロノス先生の勝ちで決まりでしょうね。あの十代って子は可哀そうだけど、流石にHEROデッキで勝つのは厳しいわ」

 

 古代の機械巨人の登場にコナミ君は興奮しており、そんな様子を見ながら私は勝者はクロノス先生に決まったと確信した。

 

「ええ、あの十代って子。気の毒に、アカデミアの固い鉄の扉が閉じる音が私には聞こえたわ」

 

 なぜかポエムを交えて私に同意してくれているけど、好きなのかしら…………ポエム。

 

「そうかなあ? 十代君はまだ諦めてなさそうだし、まだ一波乱あるかもしれないよ?」

「お前はここから挽回できると思うのか…………?」

「うーんわからないですけど、最後までデュエルはわかりませんから。もしかしたらって思います」

 

 クロノス先生の場には攻撃力3000の大型モンスター。

 対する十代君が勝つにはステータスで劣るHEROでモンスターを倒した上でライフを削らないといけない。

 

 相当に厳しい状況なのは間違いない。

 さて、どうなるかしらね……。

 

『俺のターン! 俺は戦士の生還でフェザーマンを手札に戻し、融合を発動! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合して、マイフェイバリットモンスター E・HERO フレイム・ウィングマンを融合召喚!!」

 

 ここに来て融合召喚!?

 でもフレイム・ウィングマンの攻撃力は2100。

 ただ召喚するだけだと壁にしかならないけれど、どうするつもりかしら。

 

『ヒーローにはヒーローの戦う舞台があるんだぜ! フィールド魔法 スカイスクレイパーを発動! E・HEROがバトルする時攻撃力1000ポイントアップする! スカイスクレイパー・シュート!!』

 

「すごいわ。本当に勝っちゃったあの子」

 

 階下で行われたデュエルは受験生の勝利で終わった。

 

『ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ先生!!』

 

 受験生は先生に向けてガッチャと独特の言葉でデュエルを締めくくっている。

 

 ガッチャってなに?

 嫌な感じはしないから彼独自の感謝の言葉みたいなものかしら…………。

 

「やるなあ! あの十代君って子。きっと合格するだろうし、今からデュエルアカデミアが楽しみだ!」

「………ええ。本当に楽しくなりそうね」

 

 私はワクワクとしているコナミ君に笑顔で答えながら下で大喜びしている受験生について考える。

 

 あの受験生。

 十代って名前の子、覚えておきましょう。

 

 どうやら彼には精霊を見る力も持っていそうだし何かと縁がありそうな感じがするわ。

 

 ハネクリボーの精霊を連れたHEROのデュエリストか。

 

 今のデュエルが偶然ではないのならデュエルアカデミアでも頭角を現すでしょうから、私ともデュエルする時がきっとくる。

 その時に負けないように私も頑張らないと!

 

 私たちはこれから始まるであろうデュエルアカデミアの3年間の生活に胸を躍らせながら、階下にいる十代という少年に拍手を送り続けた。

 

 





 一応書いときますけど、翔のことは別に嫌いではありません。
 ただ、1期・2期の翔はちょっと褒められる要素が少なくて未熟な要素が強いので愛理ちゃんの評価が辛めになっているだけです。

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