前話で週投稿といいながらなんですが、なんか書けちゃったので、そんな時は関係なく投稿しますね。
「いやー敗けた敗けた! コナミ、お前強えなあ!」
デュエルが終わり、僕たちは木の下でお互いのデュエルの感想を話していた。
「十代君も強かったよ。ギガ・ガガギゴにスパイラルドラゴンまで倒されるとは思わなかった」
実際、ギガ・ガガギゴもスパイラルドラゴンも使用して、あそこまでスムーズに倒されるとは思わなかった。
正直、今回は勝てたけど次も勝てるかどうかはわからない。
たった一度のデュエルだけど、そう思わせる可能性を僕は十代君に感じていた。
十代君はきっとすごく強くなるだろうな。
僕も追い抜かれないように頑張らないとッ!
「あーでもやっぱり負けると悔しいぜ! ライフも殆ど削れなかったしようッ!」
十代君が仰向けに寝転がって悔しがっている。
何というか、十代君は全身で感情を表現するな〜。
そばにいて元気を貰えそうな感じだ。
「ふふん。まっ今回は僕の方が上手だったってことだね。十代君も惜しかったけど、次頑張ってくれたまえ!」
「うぎぎ〜。くっそー! 負けたから言い返せねー! コナミ、もう一回デュエルだ!」
僕の言葉に歯軋りして悔しがりながら再戦すべくデュエルディスクを構えてきた。
僕もその意思に応えるべく、同じにようにデュエルディスクを構え、いざデュエルを始めようとした時──。
「ちょーっと待った! コナミ君デュエルはいいけど、もうお昼よ? デュエルの前にご飯にしましょ!」
僕と十代君がデュエルを始めようとしたら間に愛理ちゃんが大きく手を広げて入ってきて、僕たちを止めてきた。
腕時計で時間を見てみると確かに愛理ちゃんの言う通り時計の針は頂点を指していた。
デュエルに夢中で時間を忘れていたな。
それに今日はピクニックに来てたわけだし、デュエルはしたいけれど、愛理ちゃんを放っておくわけにもいかないや。
「そう言えば俺も腹減ってきてた〜。デュエルの前に腹ごしらえしてぇ〜」
「愛理ちゃん、ごめんけど……」
僕はお腹が減っている様子の十代君を見て、今日のピクニックに彼を混ぜてもらってもいいかと言う意味合いを込めて愛理ちゃんを見た。
「まあ、今日は仕方ないかな。十代君、私の手作りだから口に合うかわからないけど、よかったら一緒にお弁当食べる?」
「えっ、いいのか? お前たち2人で食べるつもりだったんだろ?」
愛理ちゃんが広げ始めたお弁当を見ながら十代君が僕たちを見ながら聞いてきた。
「大丈夫よ。コナミ君とはまた今度2人で来るし、2人ともまだまだデュエルしたいでしょ?」
「おう! それじゃあ悪いけど、俺もお弁当貰うぜ。愛理、コナミ、サンキューな!」
「うん。十代君、皆んなで食べよう」
僕たちは持ってきていたレジャーシートに並べられた愛理ちゃんのお弁当を前に手を合わせて「いただきます」と言って食べ始めた。
ちなみに予定外の十代君だけど、愛理ちゃんが余分に持ってきてくれていたお箸があったのでそれで食べることになった。
「おー! 愛理ちゃん、なんだか今日のお弁当は豪華だね」
「ええ、食堂の人に男の子とのデートでお弁当作りたいって伝えたら先日のパーティで余ってた食材を分けてくれたの。だから今日のおかずは豪華よ♪」
並べられたお弁当のおかずは本当に豪華で、中にはステーキやカニなど普段のお弁当ではあまり見ない高いとわかる食材が使用されていた。
「うんめえ! 俺こんなに美味い弁当食うの初めてだぜ! コナミ、お前いつもこんな美味い弁当食ってんのか!?」
「いや~、流石にいつもじゃないよ。ちょくちょくってくらいかな?」
十代君はよほど口に合ったのかバクバクと勢いよく食べて行ってる。
僕や愛理ちゃんの分まで食べてしまいそうな勢いだが、まあ大丈夫だろう。
いつものように愛理ちゃんはいっぱい作ってきてるし、3人で食べてお腹いっぱいになれるくらいはある。
「よかったわ口に合って。十代君はお弁当を作ってくれるようないい人はいないの?」
「いい人? あー母さんには前まで作ってくれてたけどさ」
「十代君、愛理ちゃんが言ってるいい人はお母さんのことじゃないよ。恋人とかそういう関係の人のことだよ」
「恋人~? いやーそういうのはいないかなあ。よくわかんねえし」
どうやら十代君には恋人はいないらしい。
結構モテそうな感じはするんだけど…………色気より食い気って感じなのかもしれない。
あんまり異性や恋というものに興味はなさそうな反応をしているし。
「コナミと愛理は恋人なのか? デートでここまで来て弁当まで作ってもらってるってことは」
十代君が「よくわかんねえけど」と言いながら僕たちを見て恋人なのか聞いてきた。
「うん? うーんまあそんなところかな。ね、愛理ちゃん」
「ええ。そう思ってもらって大丈夫よ十代君」
僕と愛理ちゃんは恋人…………ではない。
正確には違う。
なぜなら僕も愛理ちゃんも相手に付き合ってくださいと言ったことはないから。
お互いの想いはわかっているからか、わざわざ口に出して伝えると言うことはしてこなかった。
それに今の関係の方がいいと言う気持ちもある。
明確な恋人関係じゃないからこそ僕は愛理ちゃんを振り向かせようと男を上げようと努力をし続けていける。
もし恋人と呼べる関係になったからと言って努力をしなくなるわけではないけれど、モチベーションは揺らいでしまうかもしれない。
きっと愛理ちゃんも同じように思ってる。
だから、周囲へは恋人と聞かれたらそんなものだと答えるけれど、僕たちの内心では違うことになっているのだ。
もしかしたら、僕たちが恋人と胸を張って言えるのは僕がプロポーズでもした時かもしれない。
それまでは………僕たちは内心では友達という関係であり続けるのだろう。
恋人同士でやることをしていたとしてもその関係はきっと変わらない。
だから僕たちは面倒ごとを避ける意味で対外的には恋人で通すけれど、内心では友達であり続けているのだ。
「ふーん。こんな美味い弁当が食えるんなら恋人ってやつも悪くないのかもなー」
「いや十代君。恋人はそういうものじゃ──ぐぉッ!」
僕があんまりな理由で恋愛に軽く興味を持った十代君の勘違いを否定しようとした瞬間、横っ腹をひどい衝撃と苦痛が貫いてきた。
横を見ると愛理ちゃんがいい笑顔でお弁当を食べる十代君を見ており、どうやら愛理ちゃんが僕に肘打ちをしてきたようだ。
「な、なんで…………?」
「せっかく十代君が恋愛に興味を持ち始めたんだもの。理由が何であれ、ここで引き離してはいけないわ」
どうやら愛理ちゃんは十代君に恋愛について興味を持ち始めたことを歓迎しているらしい。
小声で僕を注意しながら恋愛のすばらしさを十代君に語っている。
「──だからね、恋をすると好きな人のためになんだってしてあげたくなるものなの。美味しいお弁当もその一つで、好きな人が喜んでほしいって思って作ってくれるからすっごい美味しいのよ!」
「…………へー。まあよくわかんねえけどさ、機会があったら恋人ってのを作ってみるぜ」
十代君は愛理ちゃんの言葉に首を傾げながら熱弁する愛理ちゃんに答えて食事に集中した。
うーん十代君、何だか美味しいご飯のために恋愛をしそうだけど、まあいいか。
理由が何であれ、きっかけって大事だしね。
3年間の高校生活、長い人生の青春のひと時、恋愛の一つもないというのは寂しいものだ。
十代君はデュエル一辺倒っぽいからそれでも気にはしないだろうけどさ。
「ところでよ。コナミはバブルマン使ってるようだけど、他のHEROは使ってないのか?」
十代君がご飯を口に含みながら、僕がバブルマン以外のHEROを使っていないことに対して疑問に思ったのか、デッキに入れていないのかと聞いてきた。
「う~ん、それ悩み中なんだよねえ。下手に入れるとHEROデッキに変わっちゃいそうでさ。融合は入ってるからどう組み合わせるかで…………」
「HEROは最高だぜ! 強いしカッコいいしでさ。コナミもバブルマン以外にも入れてみろよ」
「そうよねえ。バブルマンだけってのは寂しいからいいんじゃない。コナミ君なら多少HEROが入っても使いこなせると思うし、エクストラデッキは余ってるんでしょ?」
「愛理ちゃんまで…………」
HEROなあ…………。
やり過ぎると僕のデッキコンセプトが壊れてしまう。
だからバブルマンを中心としたHEROに限定するか、がらっとデッキ内容を変えちゃうかなんだけど…………。
たしかバブルマンを使用したHEROって3種類だったはず。
でも融合素材は全部他属性の効果なし、ステータスもクレイマン以外は有用とは言えない。
それぞれにサポートカードも必須となると~。
キッツいなあ!!
できないとは言わないけど、なんかピンとこないし要検討かな。
十代君にはわるいけどさ。
「まあちょっと考えてみるよ。現状で困ってるわけでもないからさ」
「おう! HERO使いの先達として何か聞きたいことあったらいつでも相談に乗るぜ!」
「HEROなら私も使ってないカードがあるから必要になったら言ってね」
十代君と愛理ちゃんに感謝の言葉を返し、その後はみんなで雑談をしながら美味しくお弁当を食べた。
そしてお弁当を食べ終えた後は約束通り、僕たちはデュエルを何度もしながらお互いのデュエルについて感想を伝え合うのだった。
そんなことを繰り返しながら日が暮れてきたころ、僕たちと十代君はレッド寮で別れ、お互いの寮へと向かっていた。
「十代君と仲良くできそうでよかったね」
「うん。予定外の出会いだったけど、会えてよかったよ。デュエルも楽しかった…………」
受験の時から気になっていた十代君と会えたのは僥倖だった。
その分愛理ちゃんとイチャつけなかったのは残念ではあったけど、デュエルは楽しかったからプラスの面が個人的には強い。
「でも、そのおかげで今日のデートが台無しになっちゃったわ」
僕は楽しかったけど、愛理ちゃん的には不満があったようだ。
ちょっとだけ拗ねたように口を窄めながら不満げにしている。
「今日は楽しくなかった?」
「そんなことはないけど………それとこれは別よ。新しい友達ができて嬉しいことと、デートが台無しになって不満に思うことは両立するものなのよ」
うーむ、十代君と会えたことは嬉しいけれど、そのおかげで愛理ちゃんのご機嫌を取らなくてはいけなくなったのは面倒だなあ。
今度、時間を取ってデートに誘わないとな…………。
「まあまあ、今度また一緒に行こうよ。それより、愛理ちゃんから見て十代君はどうだった?」
「うーん、それはデュエリストして? それとも男の子として?」
これは…………予想外の質問が返ってきたな。
愛理ちゃんは先ほどの不機嫌がどこへ行ったのか今はちょっと面白そうに口に笑みを浮かべながら僕の様子を見ている。
「うーんどっちも。………だけど強いて言えばデュエリストとしてかな」
「その返答は不正解よコナミ君。女の子としては異性への興味を聞かれた方が嬉しいわ」
「それはわかってるよ。それでもデュエリストとしての興味の方が勝るんだ」
「ふーん、まあいいわ。それならそっちを答えてあげる。十代君はねえ、あの子強くなるわね。もしかしたらコナミ君より強くなるかもしれないわ」
やっぱり愛理ちゃんから見ても十代君のデュエリストとしての評価はすごく高いか。
そうだよねえ。
僕自身彼には同じような印象を受けている。
僕より強くなるって部分以外は同じだ。
そこを認めるわけにはいかない。
ただ、愛理ちゃん曰く十代君は精霊を見る力を持っていたりデュエルに対してすごく真摯みたいだから、この学校で過ごしていくうちに自然と強くなるだろうとのことだ。
「十代君かあ。愛理ちゃんから見ても強くなるって思えるなら、僕ももっと頑張らないとな。負けられない!」
十代君に万丈目君。
この学園に入ってから僕の闘争心を掻き立ててくれるライバルがどんどん現れる。
それだけでもこの学園に入った甲斐があると言うものだし、まだ知らないデュエリストは沢山いる。
中には僕より強い人だっているかもしれない。
まだ入学して日は短いけれど、デュエリストを強くするために作られたこの学園を僕は好きなってきていた。
「意気込むのはいいけど、私のことを放っておいちゃダメだよ。他所にいっちゃうから」
イエロー寮の前、そう言って挑戦的に微笑む愛理ちゃんの目の奥には、色を宿した想いが見え隠れしていた。
「大丈夫、僕の目に映るのは君と同じ夢を追うライバルだけだからさ。他を見ている余裕はないよ」
僕はぎこちない動きで愛理ちゃんの頬に手を置いて、彼女の唇にそっと触れるだけのキスをして彼女から離れて明後日の方向に顔を向けた。
緊張と恥ずかしさで赤くなる顔を見られたくなくて…………。
「ふふ♪ もう少しスムーズにできるようになれるといいね。それじゃあまた明日ねコナミ君!」
「うん、また明日。愛理ちゃん」
僕たちはお互いに赤くなっている顔を悟られないように闇に隠れながらお別れを告げた。
「スムーズにできるといい………か。無茶言わないでほしいよまったく」
キスを初めてしたのは中学を卒業してから愛理ちゃんの受験が合格した時だ。
それからこれまで数えても数回程度。
慣れるなどできようはずがない。
「寮の前だけど、この顔で入ったら何か聞かれそうだし、少し冷ましてから入ろう」
僕は寮の前に置かれているベンチに座り、熱が冷めるまでしばらく夜風を楽しむのだった。
そうして僕が愛理ちゃんと別れた頃、レッド寮では十代が部屋で今日あったことを同室の翔たちと話していた。
「ええー!? アニキ、コナミ君とデュエルしたんすかぁ!」
「おう! 勝てなかったけど、超楽しかったぜ!」
「アニキでも勝てなかったって、やっぱり強いんすね」
「当たり前なんだな。コナミは全国大会で結果を残してるようなデュエリストなんだぞ。オシリスレッドに入るような俺たち落ちこぼれが勝てるわけないんだな」
翔が十代でも勝てなかった事実に驚愕していると、3段ベットの最上段から同じく同室の前田隼人がベットから顔だけ出して翔に答えた。
「でもめちゃくちゃ楽しかったぜ。勝てなかったのは悔しかったけどな」
「あれ? でもコナミ君、今日は愛理さんとデートだったと思うんすけど…………?」
翔はコナミ君と愛理さんがデートの途中に立ち寄ったと話していたのを思い出して疑問に思った。
「おう! 2人がいいって言うからよ。悪いかなって思ったけど、愛理の弁当分けてもらって食べたぜ。めっちゃ美味かった!」
「えーアニキ、人のデートにお邪魔したんすか。まあ確かにあの2人はいい人そうでしたけど…………」
翔は彼らが落ちこぼれである自分たちにも偏見を持たず話してくれた時のことを思い出しながら、いくら2人がいいと言ったからと言って人のデートに割り込めるアニキの図々しさに尊敬をしながらも少し引いた。
「コナミ君も愛理さんも優しい人たちでよかったっすねアニキ。普通無理っすよデートに混ぜてくれるなんて」
「ははは! まあな、次は流石に邪魔しねえさ」
「そりゃそうっすよ。でも、コナミ君が羨ましい。愛理さんみたいな可愛い彼女がいてデュエルまで強いなんて、それに比べて僕は…………」
「おいおい翔。他人と比べてもしょうがないぜ。これから強くなればいいんだからよ。恋人だって…………まあよくわかんねえけど、たぶんできるさ!」
十代は落ち込んだ様子の翔を励ますように肩を叩いて元気を出せと言った。
「俺たちの高校生活は始まったばかりなんだからよ。ガンガンデュエルして、コナミにも勝てるくらい強くなろうぜ!」
「アニキ…………そうっすね。僕も頑張って行けばきっと………!」
「そうそう。落ち込んでる暇はないぜ。時間は待ってくれねえんだからよ。強くなれば恋人もできて美味い弁当を食えるかもしれねえ。だからお互い頑張ろうぜ!」
レッド寮。
落ちこぼれと呼ばれる寮で、十代たちは恋にデュエルと始まったばかりの学生生活に胸躍らせ、3年間の貴重な1日は過ぎていくのだった。
十代の恋愛への理解や知識ってどの程度なのかよくわからんね。でもまあ明日香やレイちゃんがいるから十代の青春は約束されているようなものだな!