最近SF映画に夢中になってる。インタ-ステラーとか宇宙の話っていいね!
イエロー寮。
入学してから少し経ち、新入生の皆が学園での世界に慣れてきた頃。
食堂で昼食を済ませた僕は部屋で一人、腕を組んである事に頭を悩ませていた。
「うーんやっぱり現状以上のデッキ改造はピンとこないなあ」
以前十代君とのデュエルでおすすめされたバブルマンを活かしたHEROモンスターの追加。
僕の机の上には何枚か持っていたE・HEROのカードが並べられており、僕はカードたちを見つめながら考えていた。
僕がデッキにカードを追加するときはいつも必要だから入れるか、もしくは心に訴えかけるものがあるから入れるかだ。
今回の場合は入れる理由としては後者になるわけなんだけど………なんか違うんだよなあ。
入れると強くなれるとは思うんだけど…………何がダメなんだろうか。
「先ほどから何を悩んでいるのかと思えば…………ほう、E・HEROか」
「三沢君!? また勝手に部屋に入ってきてたの?」
僕がうんうんとカードたちを前に悩んでいると後ろから三沢君が覗き込んで話しかけてきた。
「勝手ではない。ちゃんとノックはしたぞ。返事はないし鍵もかかっていなかったから入ったまでだ。それよりデッキの改造を考えているのか?」
「うん、この前十代君とデュエルしてね。その時にバブルマンを使ったんだけど他のHEROは使わないのかって聞かれて悩んでいたんだ」
僕は愛理ちゃんとのデートで十代君とデュエルした時のことを話して、悩んでいたことを相談した。
「なるほど、十代と…………しかしHEROか。ふむ、俺はあまりお前のデッキ構築に対して口出す気はないが、必要か?」
「必要かと聞かれたらそうでもないんだけどねー」
必要かと改めて聞かれたら必要はないと答えれる。
入れたら強くなるかもなあって思ってるが、デッキにも相性があるから、逆に合わなければ弱くなる可能性もある。
わかりやすく言うなら事故りやすくなるんだよなあ。
どんな無茶な構築をしていても、結局は相性がよければ事故はほぼ起こらない。
カード同士の相性とそれを使用するデュエリスト。
それらが噛み合うかが重要なんだと僕は考えている。
三沢君のような理論でデッキを構築するタイプは僕の考えは否定的なんだけどね。
なんだったか、たしか………「お前のドロー力に依存しているだけ」だったかな。
「まあ、お前が悩んでいるのなら入れるべきではないカードと見ていいと思うがな」
「あっ、やっぱりそう思う? そうだよねえ、悩むぐらいならそもそも入れないか。うん、ありがとう三沢君。結論が出たよ」
バブルマン以外のHEROは現状必要ない。
その判断で問題ないだろう。
きっと、もっと僕のデッキに合う相応しいカードがあるはず。
デッキの改造はその時まで待つとしよう。
「別に大したことはしていないがな。それより、お前に手紙だ。可愛い女生徒からだったぞ」
「僕に手紙? 誰からだろう」
どうやら三沢君は女の子からの手紙を預かって届けに来てくれたようだ。
しかし手紙って…………PDAにはメール機能もあるのに、随分と古風なやり方で連絡してきたなあ。
その女の子がまだPDAに慣れていないだけかもしれないけど…………。
「お前、もう女生徒と知り合ったのか? 愛理君というものがいながら相変わらず手が早いというか。その内本当に振られるぞ」
「いや、流石に僕でもこんなに早く女の子と知り合うことはできないよ。生活に慣れることの方が優先だし、それに愛理ちゃん意外に手を出した覚えもないよ」
出しかけたことはあるけれど…………。
流石に三沢君にもそれは言えない。
「どうだか。まあラブレターにせよ、そうでないにせよ。わざわざ手紙で送ってきたんだ。彼女の要件を聞いてやれ。俺の要件はそれだけだ。じゃあなコナミ」
「うん、ありがとう三沢君。手紙を届けてくれて」
三沢君は僕が手紙を受け取ったことを見ると廊下で待っていたらしいラーイエローの生徒と歩いて行った。
どうやら三沢君も新しい友達ができたらしい。
最近は彼らのデッキ相談などに乗っているらしく、以前と比べて一緒に行動する機会は減っている。
まあだからと言って寂しいとか感じるほど子供であるつもりはないので特に引き留めるつもりもない。
僕には僕の新しい友達がいるように三沢君にもいると言うだけの話だ。
「さて、手紙だけど何が書かれているのかなあ…………?」
三沢君のいう通りラブレターだったらどうしようかなあと思いながら僕は丁寧に綴じられた手紙を開いた。
「何々~コナミさんへ。貴方に大事なお話があります。2人っきりで会いたいので18時に地図にかかれた場所に来てくださいっか」
手紙は2枚あり、そちらはこの学園の地図だった。
地図に記されている場所は森の奥にある滝が流れている場所のようだ。
差出人の名前は書かれていない。
だから誰が手紙を出してきたかはわからない。
ただ、三沢君が言うには可愛い女の子だっていうし、理由が何であれちょっと楽しみではある。
2人っきりでの密会。
仲良くなるには絶好のチャンスだろう。
できれば友達に…………友達になれなくても次につなげられる関係を築きたい。
可愛い女の子……仲良くなりたいね!
「はは! 2人っきりでお話かあ。本当にラブレターみたいな内容だ。まあ流石にラブレターはないにしても内密に会いたいってのは本当なんだろうなあ。理由はわからないけどさ。いずれにせよ行ってみればわかるか。時間はまだあるし、どう時間を潰そうかなあ」
僕は約束の時間までの暇つぶし方法を考えながら仲良くなれたらいいなあと思いながらウキウキとした気分で部屋から出ていくのだった。
そして時は過ぎて夕方。
僕は女の子を待たせるわけにもいかないと約束の時間より少しだけ早く着くように寮を出て森へと向かった。
時期はもう秋だからだろう。
夕方とはいえもう空はほとんど暗い。
昼間に照らしてくれていた太陽の光も射さない森は少々不気味で、1人で歩いていることに気後れしてしまいそうになる。
「とはいえ、だからこそ行かないとな。こんな森の中で女の子を待たせるわけにはいかない。何かあってからでは遅いんだから」
僕は少し早足気味に歩いて約束の場所へ向かって森の中を歩いて行った。
それからしばらく歩いて日が完全に落ちて月が昇ってきている中、目的地にたどり着いた。
約束の場所は森の中でも開けた場所であり、目の前で流れる滝からは流れ落ちる水音が大きな音を立てている。
「意外と…………暗くはないなあ。月明かりのおかげか」
木々に光を遮られていた時とは違い、開けた場所であるためか思っていたよりもそこは明るかった。
少なくとも、周りが見えない程に暗闇に支配されているわけではないようだった。
「さて、約束の時間よりも早く着いたわけだけど、僕を呼んだ娘はまだ来ていないのかなあ」
周りを見渡してもそれらしき人物はいない。
もしかして悪戯だったとも一瞬思ったけれど、そう決めつけるのは早計だと思い約束の時間までまだあることを確認した僕は近くにある岩場に座って月を眺めながら待つことにした。
それからどれくらい時間が経ったのか、周りの自然が奏でる音楽を楽しみながらぼんやりと月を眺めていると、ふと隣に誰かがいる気配がして僕は振り向いた。
「あっ、ごめん! 気づかなかった。君が僕を呼んだ人?」
「そう。声を掛けようと思ったんだけど、心地よさそうにしてたから…………」
どうやら僕が涼んでいる間に来ていたらしい。
隣に短く切りそろえられた茶髪の女の子が座っていた。
「あはは、ごめんね気づかなくて。えっと、初めましてだよね。知ってるだろうけど僕はコナミ。ラーイエローの1年生だよ」
「ボクはアウス。今日は君に話が合って来たんだ」
アウスと名乗った女の子はどこか既視感を感じる容姿をしており、どこかであっただろうかと僕は思い出そうとしていた。
茶髪で眼鏡をかけており、少々ボーイッシュな印象を受ける髪形…………。
服装はアカデミアの生徒だから当然女子ブルー寮の制服をしている。
そして三沢君が可愛いと表現していた通り、とてもきれいな容姿をしていた。
それからこれはどうでもいいことだけど、胸が大きかった。
いや、本当にどうでもいいんだけど、推定だと愛理ちゃんより大きいんじゃないかなと思えるほどだった。
愛理ちゃんもかなり大きい方のはずなんだけど、このアウスって娘の胸はそれ以上のように見える。
一人称がボクなことも合わせて、そのスタイルとのギャップは………すごかった。
「君、ちょっとボクの胸を見過ぎだよ」
「はっ! ご、ごめん! いや本当に申し訳ない」
アウスという少女はジトっとした目で僕を睨みながら両腕で胸を隠した。
しまった……ッ。
いくら特徴的だったとは言え、初対面の女の子の身体を不躾に見つめるなんて第一印象としては最悪だ。
心なしか、彼女の目に嫌悪のような感情が宿っているように見える。
彼女との心の距離が開いてしまっているのがわかる!
急いで印象を好転させないと…………手遅れになる!
初めに受けた印象は後々の関係に響きやすい。
➖の方向に偏った印象を➕に変える!!
まだ間に合う!
僕ならできるはずだ。やってみせろよコナミ!!
「は、はは。ごめんね……えーとアウス…ちゃん」
「ちゃんはいらない。僕のことはアウスでいい」
くっ、やはり印象は悪い方へ行っている。
言葉のトーンが冷たい。
だけど……僕の経験が言っている。
まだ挽回は効く範囲の距離であると…………!
「はぁ。いいよ慣れてるから。それで、僕が君を呼んだ理由だけどーー」
「アウス! 本ッ当にごめん! 女の子をジロジロと見るなんて紳士にあるまじき行為だった!」
僕はアウスが本題の話に入ろうとしたところを見て、全力で土下座をしながら謝罪することで彼女の言葉を遮った。
本題に入らせてはいけないッ!
話題が別のものになってしまったら、挽回するのは難しくなる!
次にいつ会えるかわからない以上、親しくなるためには今この瞬間に距離を詰めれなくてはならないんだ!!
「い、いいよ。そんな土下座までしなくても……別に怒ってはいないし」
「そんなことはないッ! 1人の男として、女の子を不快にさせるなど万死に値する!」
「いやいいってば! そんなに謝らなくても、こんな見苦しいもの見られたところで気にしないから……!」
見苦しいもの……?
今、確かにアウスは自分の胸が見苦しいと言ったな。
間違いない、彼女は自分の胸にコンプレックスを抱いている!
ここだッ!
ここを攻めるんだ!
上手くいけば一気に距離を縮めることができるッ!!
「アウス、君は美しい!」
「……へ?」
僕は土下座の態勢をやめて、彼女の前にひざまづきながら言葉を重ねた。
「君の愛らしい瞳も、整えられた髪も君が見苦しいと言った胸さえも、僕には美しく魅力的に映る!」
褒めるんだ。
褒めちぎるんだ!
僕がこれまでの経験で学んだこと、それは褒められて喜ばない人はいないということ。
多少過剰であれど、真摯に思いを込めて重ねれば相応の結果は返ってくる。
「月夜に照らされた君は女神のように美しい!!」
「………」
アウスは呆然としながら僕を見ている。
どうだ……?
褒めちぎる行為は上手くいけば好感触。失敗すればより引かれる言わば諸刃の剣。
僕でも、こう言う次の機会があるかわからない相手にしかやらない。
頼む……上手く行ってくれッ!
「……あ…あはは。あー女神って、僕…そんな風に褒められたのは初めてだなあ」
アウスは顔をほんのり赤くして、頭を照れくさそうに掻いて明後日の方向に目を向けている。
いよしッ!
この反応は……上手く行った時の反応だ!
僕は内心でガッツポーズをしながら喜んだ。
「アウス、君は本当に美しい女の子だよ。嘘でもお世辞でもない。君ほど美しい女の子はそうはいない」
僕はアウスの前でひざまづいたまま、優しく彼女の手を取って真剣に告げた。
「何度でも言うよ。君は女神のように美しい女の子だ」
「ああもう! わかったから、もうそれ以上言わなくていい! 話が進まないから!」
「うん、ごめんね」
「ぬ〜……はぁ。もういいよ。とりあえず座って、そんな地面に座られてたら話しずらいから」
アウスは恨めしそうに僕を見た後、諦めたようにため息を吐いて隣の岩場を叩いて座るよう促した。
何とか挽回できたな。
少なくとも、これでアウスの胸にくぎ付けになっていた悪印象は拭えたはずだ。
「それで、話したいことって?」
「まず、そうだね。君はエリアから水の……青いクリスタルのネックレスを貰っているよね」
クリスタルのネックレス…………?
それは、普段僕が身につけている物のことだろうか。
「たしかにネックレスは持っているけど、エリア…………愛理ちゃんのこと………で、いいんだよね」
「水無月愛理。あの子はこの世界では人間として生きてるんだったね。うん、その愛理のことで大丈夫」
ネックレスのことを知っている。
それにこの世界という言い方に、エリア…………か。
アウスにどこか既視感を感じていたけれど、その理由が見えてきたな。
「アウス、君は愛理ちゃんと同じカードの精霊なのかい?」
「エリアと同じではない。ボクは純粋なカードの精霊としてここにいる。人間として生まれ変わったエリアとは事情が違う」
「愛理ちゃんみたいに人の体じゃないのか。でも、その格好はブルー女子の制服だよね。それに………僕はカードの精霊は見えないはずだよ?」
「それは僕が実体を持つ形で顕現しているからだ。通常はできないが、今回は知り合いの精霊の力を借りることでそれを可能にしている。ちなみに服装は顕現する際に拝借した。その方が動きやすかったからね」
なるほど、アウス…………彼女は地霊使いアウスの精霊だったのか。
僕と同じくらいの年齢に見えるから正確には憑依装着なのかもしれないけれど、精霊だから見た目の年齢などあてにはならない。
彼女が霊使いで愛理ちゃんの事情も知っているあたり、恐らく世界の危機とやらに関係することで会いに来たんだろう。
僕と友達になるためではないのが残念だが、彼女が精霊であった以上は、まあ仕方ないか。
「君が考えている通り、僕は君と会うためにこの世界に来た」
「その目的は…………?」
「コナミ、ボクとデュエルしよう。エリアが選んだ勇者。君が真にそれに相応しいか確かめてやる!」
「デェエルか…………それはもちろん構わない。だけど、もし僕が相応しくないと判断した時はどうなるの」
「その時は君が持つクリスタルを回収させてもらう。そして新たに相応しい人物を探す。お誂え向きに、この学園はデュエリストは沢山いる。それほど苦労はしないだろう」
なるほど、つまりこれは試験というわけだ。
愛理ちゃんが選んだ世界を救う存在、彼女が言うには勇者か。
それに相応しいかを見極めに来たってわけだな。
正直、内心ラブレターじゃないことを残念に思う気持ちがあるけれど、そういうことなら断る理由はない。
それにデュエルでと言うのはわかりやすい。
「いいよ。デュエルしようか。デュエルは大好きだ」
「了承ということだね。君が敗けたらエリアが渡したクリスタルは返してもらう。その代わり、ボクが敗けたらこの地のクリスタルを君にあげるよ」
アウスは予め首にかけていたのだろう、服の内側に隠していたクリスタルの付いたネックレスを出してきた。
それは僕が愛理ちゃんから貰った青いクリスタルとは違い、茶色のクリスタルだった。
「愛理ちゃんから貰ったものとは色違いのネックレス」
「これには僕たち霊使いの力が込められている。君が持つクリスタルは水のクリスタル。そしてこれは地のクリスタルだ」
アウスが持っているのは地のクリスタル。
そして今僕が持っているのは水のクリスタルってことか。
だとすると、他の属性のクリスタルもあるのだろうか…………?
「愛理ちゃんはこれは発信機のようなものだと言っていた。時が来れば精霊の世界へと連れていくためのものだと…………」
「そう。それは間違ってはいない。だけど、そのクリスタルの役目はそれだけじゃない。そのクリスタルは資格のある持ち主に私たちの力の恩恵を与えることができる」
「………恩恵?」
「例えば、精霊を見る力のない人がそれを手に入れれば、見えたり触れたりできると言った具合だ」
「精霊が見える!?」
愛理ちゃんから貰ったクリスタルにそんな力があったのか…………!
そうか…………だから美寿知さんと戦った時、僕には精霊の声を聞く力がないのに愛理ちゃんの声を聞くことができたのか。
「だけど、そのクリスタルは一種類だけだと、力が弱い。君の場合は精霊の方から相当頑張らないと少しの声も届けられず、姿も見えないようだね」
逆に言えば、アウスの地のクリスタルを手に入れれば僕も精霊が見えるようになるかもしれないってこと!
「アウス、それを聞いて僕は俄然やる気が出てきたよ! 一瞬で終わっても文句は言わないでね!」
「一瞬で終わらせれるほど強いなら文句はないよ。エリアが選んだ人、失望させないでよね」
僕たちは手持ちのデュエルディスクを起動させて、デュエル開始の宣言をした。
「「デュエル!!」」
愛理ちゃんと同じで人間として出すとストーリー上の扱いが難しくなりそうだったので、霊使いの皆は純精霊として登場してもらう予定です。