諸々用事は済みましたのでこれまで時間がかかってた分、頑張って投稿頻度をガンガン上げていこうと思います!
タッグデュエルも終わり、一息ついた僕たちは愛理ちゃんに悟られたくはないという僕の希望からイエロー寮の調理室を借りることで甘宮君からお菓子作りを教わっていた。
「それでコナミ。君が作りたいのはマカロンでいいんだな」
「うん。調べたらホワイトデーに送る菓子だと、マカロンは特別な相手に送るものみたいだったから。僕にとって一番大切な愛理ちゃんに送るお菓子はマカロンがいいんだ」
ホワイトデーのお返しに送るお菓子、そこにはお菓子の種類ごとに込められた意味が変わる。
友達に送る場合や恋愛の意味合いを込めて送るもので変わるから、変な誤解を生みたくなければ渡すお菓子は慎重に選ばないといけない。
その中でも恋愛の意味で好きという気持ちがあるキャンディーと特別な人という意味のマカロンで悩んだ。悩んだ末にマカロンの方が特別感が出ていいかと思い今回はマカロンにすることにしたのだ。
「マカロンか……教えれないことはないが、初心者なら既製品を溶かしたチョコレートやクッキーの方をおすすめするぞ。その方が価格も作業も簡単に済む。無難に行くならその方がよいと思うが?」
「まあそうかもしれないけれど、ホワイトデーのお返しとしてはよくないでしょ?」
「そこは誤解されないよう一言二言添えればいい。大切なのは気持ちなのだから、手作り菓子を頑張って作ってくれたと伝われば余程酷い出来でなければ喜んでもらえるだろう。そして、この私がついているのだからそんな菓子にはなることはない」
自信たっぷりに言う甘宮君は頼もしく、正鵠を得ていた。しかし、それでも僕が頭を縦に振ることはなかった。
何故なら、甘宮君の言うことは正論というか御もっともなんだけど、やっぱり送るなら多少材料費や労力がかかってもいい意味を持つお菓子を渡したい。
それに1人ならいざ知らず、今回は甘宮君という強力なコーチがいる。それなら初めてでも多少の無理をしてでも挑戦してみたくなるのが、人の心と言うものだ。
そう言った内容のことを甘宮君に僕は伝えたところ、「そうか。やるからには完璧に仕上げる。厳しく行くから覚悟しておけよ」と力強く答えてくれた。
「そうと決まったら、まずは練習からだ。100個作って一つまともなのができればいい方だと思えよ」
「わかった。トライアンドエラーってことだね。頑張る!」
「幸い、試食係は2人もいる。失敗しても材料は無駄にはならん」
甘宮君は調理室の奥で椅子に座って僕たちを見ている万丈目君と堂本君を見ながら言った。彼らは訝し気に僕たちの方を見ながらお菓子が出来上がるのを待っていた。
うん。2人には申し訳ないけど、失敗作の処理係になってもらおう。もちろん僕も食べるけど、失敗したからって捨てるのはもったいないしね。
「さあ、時間は限られている。やるぞ」
「うん。やろう……!」
そうして僕の初めての菓子作りの挑戦が始まった──。
そうして彼らがお菓子作りに精を出す姿を見ているあたしたちは何をするでもなく椅子に座ってお菓子が出来上がるのを待っていた。
「おいあいつら、まさか試食係とは俺たちのことじゃないだろうな」
「あら、いいじゃない別に……。甘宮ちゃんがついてるんだもの。失敗作でもきっと美味しいわよ」
「冗談言うな。美味かろうとなんだろうと、失敗作なぞ食ってたまるか」
そうぶっきらぼうに話しているが、万丈目ちゃんはそっぽを向きながらも調理室から出ていかず調理を見届けようとしているのは面倒見が良いのか、それともいじっぱりなだけなのか。
万丈目ちゃんの場合ちょっと判断に悩むわね。
「まあそれはそうと、万丈目ちゃん的には初めてのタッグデュエルはどうだった? あたしは新鮮で楽しかったけど」
「タッグデュエルか……肌に合わんな。他人と歩調を合わせたり協力などと言ったやり方はどうにも好かん。やりづらくてたまらなかった」
「そうよねー。とても我の強いあなたが他人に合わせる姿なんて、あたし想像できないわ」
実際、コナミちゃんとのタッグでもぜーんぜん息があってなかったし、タッグデュエルへの相性はかなり低いと見るわねあたしは。
というより万丈目ちゃんは息を合わせるつもりすらなかったでしょうから相性以前の問題ね。
「俺もそうだが、奴も己のデュエルを貫くタイプだ。余程のパートナーでなければタッグを組むのは難しいだろうよ」
「奴ってコナミちゃんのこと? そんなタイプには見えないけど……普通にあなたたちの相性が悪いだけじゃないの?」
「ふんっ。貴様の目は節穴のようだな。奴とデュエルをしていながらわかってないみたいだから教えてやる。奴と俺は同じだ。ただ勝つことなど望んではいない。俺たちは己の手で勝つことを望んでいるんだ」
そう言って眉間に皺を痩せながらも微かな笑みを浮かべる万丈目ちゃんは果たして喜んでいるのか同類であることを疎んじているのか、或いは両方か……。
自分の手でという決着の付け方に特にこだわりのないあたしにはきっと察し用のない気持ちなのでしょう。
「でも、そうね。その理屈ならまあ、あのデュエルにも納得がいくわ。あなたたち、タッグデュエルっていうより2対1のデュエルを別々にやっているような感じだったものね。我の強い人同士がタッグを組むとあーなるのね。よくわかったわ」
コナミちゃんと万丈目ちゃんのタッグデュエルは基本的に仲間であるはずの相手を敵以上に邪魔そうに見ていた。
相手に主導権を握らせたくないという気持ち故かしら。
万丈目ちゃんはともかくとして、コナミちゃんもそういう目で見てたから、内心驚いていたわ。
「──2人とも、第一陣ができたよー。一緒に食べてみようか」
そうこう話しているとどうやらコナミちゃんのマカロン第1作が完成したらしい。
大きな器に彩り豊かなマカロンを12個程乗せて持ってきた。
「12個3種ずつ作った。一人3個ずつ食べよう」
「美味しそうねー。コナミちゃん初めてなのによくできてるじゃない」
「甘宮君がいたからね。教えてくれる人がいるなら早々悪くはならないよ」
「ふん。よくできてるというが形は崩れとるし、味の方に至っては食ってみないとわからん。どうせお前たちはまだまだ作るのだろう。なら、さっさと食べるぞ」
器に盛られた3種類のマカロン。それぞれ茶色、赤色、白色をしており、色だけではなく味も違うのだろう。
形はお店で見るような奇麗な丸い形はできていなかったが、特に焦げていたりしなさそうだったので味には問題はなさそうだった。
そうして並べられたものをあたしたちは口に含んでみた。
「あたしマカロンって初めて食べるけど、結構ねっとりとした食感なのね。それに………かなり甘いわね。ちょっと好みは別れそうだけど、美味しいわよ。素人が作るなら十分なんじゃないかしら」
「そうか? ちょっと甘すぎるだろう。愛理君の好みは知らんが、もう少し甘さを控えてもいいだろう」
コナミちゃんが作ったマカロンを3つともバクバクと食べる万丈目ちゃんの姿は言葉とは裏腹に美味しそうに食べている。
甘すぎるのは本当かもしれないが、美味しいとは感じているのだろう。
「う~ん、僕はこれくらい甘い方が好きだけどなあ。ただ、愛理ちゃんは果物が好きだから、さっぱりしたものの方が好みなのかも。うん、しつこいかもしれないから甘さは少なくしてもいいかもしれないね」
「今回のはオーソドックスにチョコレートにストロベリー、バニラにしたが水無月君の好みが果物系なら、それに合わせた方がいいだろうな」
「うん。あっでもバニラとかは普通に好きだから単純に種類を増やす方向で──」
コナミちゃんと甘宮ちゃんはあたしたちの感想を聞き終えたらさっさと再び調理を続けるために戻っていった。
そうして幾度も失敗を繰り返しながらも味だけはまともなお菓子を4人で試食をしながら作り続けてそろそろ飽きてきたわあと思い始めた頃、ようやく慣れてきたのかいくつか満足の行くマカロンができたようで、あたしたちは試食係はお役御免となった。
「コナミちゃんのホワイトデー。上手くいくといいわねえ」
「ふん、そんなことどうでもいいわ。奴の結果がどうなろうと俺の知ったことではない」
あたしはぶっきらぼうに吐き捨てる万丈目ちゃんと帰り道の雑木林を歩いていた。
暮れ行く夕日は一日の終わりと明日に控えたホワイトデーへの時間のなさを物語るには十分すぎるほどに鮮明にあたしたちに示していた。
ホワイトデー、男性が愛を送ってくれた女性に愛を送り返すための日。
特別相手のいないあたしでも、友人が渡すとなると少しばかりドキドキとしてしまう。
「万丈目ちゃんは誰かお相手はいないの。好きな人でもいいわよ?」
「何故俺がお前にそんなことを言わなければいけないんだ。そういうお前はどうなのだ。というかお前は女が好きなのか?」
「よく誤解されるけど、あたしはちゃーんと女の子が好きよ。この性格や口調は…………まあ趣味みたいなものね」
「そうか。まあ深くは聞かないでおいてやる。興味もないしな」
一瞬だけど、口調がどもってしまったのがまずかったのでしょう。ちょっと感づかれちゃったかもしれない。今のあたしがあるのはまあ昔色々とあったからだけど、誰にも話すつもりのないこと。
あたしの胸の中に隠された秘密であり続けるのだ…………。
「万丈目ちゃん、そういう相手に深く突っ込んでいかないところ。あたしは好きよ。乙女の秘密は探らないのが紳士のマナーですものね」
「何が乙女だ気色悪い。さっさと寮へと帰れ。貴様はあっちだろ」
「そうね。それじゃあまた明日、朝にここに集合よ。遅れちゃやーよ」
「黙れオカマ。さっさと帰って寝ろ」
朱く照らされたブルー寮への道を歩いて去ってゆく彼の後ろ姿に明日の約束を取り付けてあたしも自分の寮への道を歩み始めた。
そして日が明けて翌朝、ホワイトデー本番。朝日が照らす女子寮の前であたしたち3人は木陰からコナミちゃんが愛理ちゃんへと渡すところを見守っていた。
「ったく、何故俺がこんなところで……」
「いいじゃない。最後まで見届けましょうよ。気になるでしょ、コナミちゃんのお菓子の行方」
「何度も言うがどうでもいいだろう。奴の恋路が失敗したところで俺には関係ないことだ」
「私としては指南したものとして、コナミの恋路はともかく、水無月君が気に入るかが気になるな」
指導したものとして、その結果を見届けようとしている甘宮ちゃんはともかくとして万丈目ちゃんはどうでもいいと言いながらちゃんと来るあたり、多少なりともコナミちゃんの恋路に関心を持っているとあたしは思っている。
そしてこれは勝手な想像だが、万丈目ちゃんは恋をしているわね。
お相手がだれかはわからないけれど、昨日聞いたときに否定をせず誤魔化したあたり、少なくとも気になる異性はいると思うのよね。
──お待たせコナミ君。渡したいものって何?
──あっ、愛理ちゃん。うん、実は…………。
「おい、来たようだぞ。…………なんだあのラッピングは。まさかあいつがやったのか?」
万丈目ちゃんに言われコナミちゃんがいる場所を見るとちょうど今来たであろう、愛理ちゃんにハート形のリボンが付いた奇麗な青色の包装紙に包まれた箱を渡しているところだった。
「可愛らしいリボンじゃない。コナミちゃんが用意したのかしらね」
「ああ。私と相談してな。水無月君の特徴である淡い海色の髪をイメージした袋とハートのリボンをつけたのだ。思いが伝わるようにな」
木陰の向こう側ではベンチに座った愛理ちゃんが丁寧に包装を解いて中のマカロンを見ながら喜んでいる様子が見てとれる。
「ふん、出張亀はもういいだろう。俺は帰るぞ」
「あら、もういいの? まだ愛理ちゃんは食べてないわよ…………?」
「あの反応を見ればわかる。あの菓子の出来が何であれ、喜んで食べるだろうさ。成功が見えた以上、見る必要はない」
「ふむ、それはまあそうかもしれんな。味がどうであれ、あの喜びようなら成功は間違いないだろう。だが、私は食べた反応も見ていくがな」
確かに愛理ちゃんの喜びようはすごい。
まさに言葉通り満面の笑みでコナミちゃんの手作りのマカロンを見ている。
あの喜びようはお菓子をくれたと言うよりも手作りで頑張ってくれたことに対する喜びの方が大きいと見える。
「万丈目、去るならこれを渡しておく。お礼だそうだ」
「礼? なんだそれは…………」
「コナミからの感謝の礼だ。貴様らが帰った後に私に教わりながら1人で頑張って作っていたぞ、渡してくれとな。ほれ、堂本にもだ」
甘宮ちゃんから渡された両手に収まるくらいの小さな箱。
愛理ちゃんに渡していたような奇麗な包装ではないし、ハード型のリボンもついてはいないが、精一杯包んでくれたのだろう。
手伝ってくれたことへの感謝の思いが伝わってくるプレゼントだった。
「………奴の手作りか、貧乏くさい礼だな。まあいいだろう。豪華なものなど特に期待はしていなかったからな」
「本当に素直じゃないわねえ。嬉しいなら嬉しいと言えばいいのに」
「誰が嬉しいなどと思うか」
そう言いながら包装紙を解いて中身を開けた万丈目ちゃんは中身をじっと見つめて食べようとせずにあたしたちを見た。
「おい、お前たちから食べろ。まずかったら一つだけ食ってやる」
「おいおい、私たちを毒見役にするつもりかまったく。私がついていたのだから安心して食べて欲しいのだがな」
「いいわよ甘宮ちゃん。万丈目ちゃんがそういう性格なのは知ってるでしょ。言うだけ無駄よ」
憮然としながら一向に食べようとしない万丈目ちゃんを無視して、あたしも自分の分の箱を開けて中身を見た。
箱の中にはチョコクッキーだろうか、濃い色をしたクッキーが敷き詰められていた。
「美味しそうじゃなあい。じゃあいただきます…………うん、とっても美味しいわよ!」
「うむ、初心者にしては十分すぎる出来だろう」
百貨店などで売っている市販品と比べるとどうしても劣ってしまっている部分もあるが、それでもサクサクと食べて行ける美味しいクッキーだった。
あたしたちを思って一生懸命作ってくれたこともあって美味しさ倍増であった。そういう意味では市販品では決して得られない値段をつけられないお礼であったと言える。
そんなあたしたちを見て食べるつもりになったのか万丈目ちゃんは自分の箱から一つだけ口に運んだ。それからすこしばかり思案するように甘宮ちゃんを見て聞いた。
「………おい、この菓子には意味があるのか? 愛理君に渡したマカロンのような………」
「勿論あるぞ。クッキーはこれからも友達でいようという意味がある。よかったな万丈目、お前のこと友達と思ってくれているようだぞ」
「友達だと? くだらんが、まあいい。もう一つくらいは食ってやる…………やはり甘すぎるな。おい、あそこで愛理君にデレデレしてるあいつに言っておけ、俺に渡すならもう少し甘さは控えろとな」
やはり甘いなと愚痴をこぼしながらも万丈目ちゃんは一つだけと言いながらもちゃんと全てのクッキーを持って帰っていった。
口ではなんだかんだと言いながらもやはり嬉しいのだろう。人前ではあれ以上食べないかもしれないが、きっと寮ですべて食べてくれる。あたしはそう思うわね。
ああいうのなんて言うのかしら、きっとツンデレってやつね。きっとそうだわ。
「ほんっと、素直じゃないわあ。嬉しいなら嬉しいと正直に言えばいいのにねえ」
「まったくだ。さて、私も帰るとするよ。マカロンの感想もわかったしな」
「ええ本当に、愛理ちゃん美味しそうに食べてるわ。今が幸せって伝わってくる。ホワイトデーは大成功ね」
私も甘宮ちゃんと覗き見はやめて同様に帰ることに決めた。
帰り際、コナミちゃんたちを見ると幸せそうな笑顔でベンチで座る二人はピッタリとくっついて仲睦まじくマカロンを食べさせあっている。
「万丈目ちゃんじゃないけど、ほんっとうに甘いわ。う〜〜ん! 恋って素敵………!!」
あたしは渡された甘すぎるくらいのクッキーを少しづつ食べながら身悶えするほどに幸福な気分で寮への道へと足を進めるのだった。
マカロンって中々手を出せないお菓子だよね。プレゼントで買った時は高っかッ!? と思いましたよ。