初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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 バターと塩コショウがあればパスタは美味しく食べれるよね。


学園祭

 学園祭。それは年に一度行われる学生による学生のためのイベントだ。

 

 デュエルアカデミアの学園祭は各寮で内容が異なる。中学や一般校なら各クラス単位でそれぞれ行われる内容は違うらしいが、この学園では寮単位で催し物が変わる。つまるところ、クラス単位ではないため規模が違うのだ。

 

 オベリスクブルーではカフェ。ラーイエローでは屋台といった具合だ。ただ、寮単位で行われるが、一般客はいない。流石に島の外から迎え入れられる場所ではないのが残念だ。

 故に、お客さんは皆学園の生徒と先生のみである。

 

 この学園祭のメリットは、普段交流の少ない他寮へと足を運ぶ機会になるというところだろう。他寮との生徒との交流の機会にもなる。

 ただ、そんな素晴らしい学園祭の日、天気は残念ながら曇り模様。あまり良いとは言えない天気であった。

 

 そんな中、僕は愛理ちゃんとブルー寮におけるカフェテリアで淹れてもらったカフェオレを飲んでいた。コーヒーを飲むと言う選択もあったが、まだ苦みを楽しめるほど慣れてはいなかったので、僕は多少甘さがあるカフェオレの方を頼んだ。

 味は、まあ、学生の学園祭だからそこまでである。とはいえ、まずいと言うことはなかった。普通と言う表現が相応しいだろう。

 

 愛理ちゃんはエスプレッソというコーヒーを飲んでいた。僕にはよくわからないが、コーヒーにも種類があるらしい。さっと注文できる愛理ちゃんもそれを当然と用意できるブルー寮のカフェもすごいなと感心したものだった。

 

 そうして互いに頼んだものをゆっくりと飲みながら様々な雑談をはさんでゆったりとそのカフェとデートを楽しんでいた。その中で愛理ちゃんが躊躇いがちに大徳寺先生について聞いてきた。

 

「大徳寺先生。どこへ行ったんだろうね。行方知れずって聞いてるけど」

「うん。そうだよねえ。他の先生も知らないっていうし、吹雪さんの件とか聞きたいこといっぱいあったんだけどなあ」

 

 僕は首元に下げている七星門の鍵を弄りながら言った。最近、アカデミアの講師であった大徳寺先生が行方知れずになっていた。

 大徳寺先生は数ある学問の中でも錬金術という何故そんな科目があるんだと言いたくなる科目の講師であり、吹雪さんの記憶喪失の原因である闇のゲームを行った先生でもあった。それゆえに、僕を含めた多くの人が探していた。

 

「でも、吹雪さんの記憶が戻ってよかったわ。明日香さんとの愛がそれを呼び起こしたって聞いてちょっと感動したもの」

「うん、本当によかったよね。僕のことを憶えてなかったのは残念だったけどさ」

 

 セブンスターズの一人、ダークネスを名乗り、十代君に敗れてから眠っていた吹雪さんだが少し前に目覚めでからは記憶を失った状態で目覚めていたため、明日香さんはすごく心配していた。

 しかし、最近明日香さんを狙った同じくセブンスターズの一人であるタイタンとやらとのデェエルをきっかけに思い出すことができたのだ。

 残念ながら、その後の様子から僕のことはほとんど覚えておらず、昔そんなこともあったなあと言った具合で、ぼんやりとしか覚えていてくれなかったのは仕方ないことと納得はしたが、少々ショックであった。

 

 やはり勝者と敗者では、そのデュエルにおける重要度も記憶も変わってしまうものなのだろう。仕方ないことではあったが、僕が吹雪さんへと向ける感謝の気持ちは本物だ。今度、お祝いついでに何かプレゼントを持っていくとしよう。

 リベンジは………まあ、機会があればっというところか。まだ吹雪さんも本調子とは言えないだろうし、しばらくは療養してほしいところだ。

 

「そう言えば、セブンスターズだっけ。それはあと何人いるの? 確かもう大分倒したって聞いたけど」

「えーと、たしか襲ってくる人数は7人だって聞いてるから…………」

 

 僕は指を折りながら、これまで対戦して倒してきた人数を思い出した。

 

 ダークネスこと吹雪さん。吸血鬼であるカミューラ。アマゾネスの戦士であり虎でもあったタニア。いつから潜入していたのか、アカデミアで様々な形で昔からいたらしい黒蠍盗掘団。遥か昔のファラオであり、無敗の歴史を残していたアビドス3世。そして、闇の世界から戻ってきたらしいタイタンの計6人だ。

 

 そのものたちとのデュエルでは敗北することもあったが、紆余曲折あれどそのすべてを返り討ちにしてきた。

 

「──だから、あと一人だね。聞いてる範囲ではさ」

「それじゃあ、もう少しで終わるのね。まだ油断はできないけれど、何事もなく終わりそうでよかったわ」

「そうだね。正直、僕の想像ではもっと悪辣な奴が来るのかと思ってたけれど、全体的に見ればそこまでではなかったなあ」

 

 最初聞いていた予想では、文字通り命を賭けたデュエルを全員が仕掛けてくるものかと思って戦々恐々としていたが、蓋を開けてみるとそうでもなかった。

 命やら魂やらと明らかに危険なことをしてきたのはダークネスにカミューラ。そしてタイタンの3人だ。他の3人は何と言うかコミカルと言うか悪意と言うものを感じられない人たちであった。

 

 約半数が危険なデェエルだったことを少ないと見るべきかこれだけで済んだと見るべきか悩むところではあるが、僕としては誰一人欠けることなく無事でいられたことに感謝してよいと思えた。

 無論、まだ何も終わっていない以上、最後の一人がどんなデュエルを仕掛けてくるか油断するわけにはいかないが………。

 

「それから、セブンスターズたちが持っていた闇のアイテムだけど、何かわかったことってある?」

 

 セブンスターズは全員と言うわけではないが、それぞれ闇のアイテムなるものを持っていた。そのアイテムを使い精霊が実体化していたり、虎であるタニアが人の形をとっていたりしていた。

 三幻魔を狙う黒幕がなぜそんなアイテムを持っているのか、そしてどこから集めたのか。それを愛理ちゃんがこっそりと調べていたのだ。

 

「ううん、まったくだめ。あのアイテムが強い力をもった道具であることはわかるんだけど、やっぱりどこからかき集めたのかまではわからなかったわ。ただ、精霊のことや冥界から死者を一時的にせよ呼び出したことから、相当な知識人がいると私は見ているわ。ただ持っているだけじゃそんな使い方できるはずがないもの」

 

 愛理ちゃんはどこか確信があるようで強く言い切った。

 

「そうだよね。意味が分かんないや、死者を呼び出したり魂を奪ったり。いやあ、すごいね闇のアイテムってさ」

「ええ。とても強力な力を持つアイテムよ。ほんと、どこからあんなの集めたのかしら。世界中から探し出して集めたのなら、相当なお金持ちね。それを研究する資産もあるってわけだから、校長先生とかだれか心当たりとかないのかしら」

「愛理ちゃんのお父さんとかは知らないの? ほら、お金持ちってことなら愛理ちゃんもそうじゃない」

「それ、聞いてみたけれどわからないって。仮に知り合いにいたとしても尻尾は出さないだろうってことらしいわ」

「ふーん。じゃあやっぱり気長に待つしかないかあ」

 

 この三幻魔を狙った事件を引き起こした大本。その人間を引きずり出すにはやはり、まずセブンスターズをすべて倒さないといけないのだろう。

 その上で、諦めて手を引くのか、それとも何らかの強硬手段に出てくるのか。校長先生も探しているだろうし、ただの学生でしかない僕たちにできることはあまりないようだ。

 

 僕は残念な気持ちを隠すつもりもなく、嘆息をもらしながらカップに注がれたカフェオレを一気に飲み干した。愛理ちゃんもまた、そんな僕を見ながら、そろそろ出ましょうとゆっくりと飲んでいたエスプレッソを飲み終えたようでカップを音を立てることなく机に置いた。その所作には品があり、僕とは育ちの差がまじまじと現れていた。

 

 時計を見るとまだ針は頂点には達しておらず、昼食には早い段階であった。曇天の空は現在時間への理解を遅らせるようで、お腹の具合とは関係なく時間を狂わせる作用があった。

 どうしたものか──と、僕は一考した。昼食には早い。しかしお腹は減り始めていた。今からラーイエローの縁日に行くのは少々早計な気がした。

 

「愛理ちゃん、今からだけど──」

「大変、大変、大変だ──!!!」

 

 僕が椅子から立ち上がり、いざカフェから出て行こうとした愛理ちゃんにこれからの予定を相談しようとしたところ、遠くから大声で走ってくる翔君の姿が見えた。

 よほど焦っているのか、あちこちを見回しながら落ち着かないよう様子で誰かを、あるいは何かを探しているようだった。

 

「どうしたんだろう翔君。あんなに慌てて………」

「とりあえず会いに行こうよ。聞いてみればわかるだろうからさ」

 

 何があってあんなに慌てているのか、加えて言うなら──恐らくオシリスレッドの出し物だと思うのだが──モンスターの仮装をしている理由を聞くために僕たちはカフェを出て翔君に話しかけに行った。

 

「翔君、そんなに慌ててどうしたのさ。それにその格好も、中々ユニークだね」

「あっ、コナミ君!! 君のことを探していたんだよ!」

 

 そう言って僕の手を離さないぞとでも言わんばかりに引いてレッド寮へと連れて行こうとする翔君に僕は少しばかりの驚きを感じていた。

 彼は普段ここまで押しの強い人間ではなかった。少なくとも僕の認識では常に臆病とまでは言わないが、少しばかり小心者と言った印象だったからだ。だから、このように強引に手を引いて連れて行こうとするのは僕の印象とは真逆の行動だった。

 

 彼が言うにはレッド寮でとてつもなく可愛らしい女の子が、僕のことをご指名で呼んでいるとのことだった。その言葉に僕は何故レッド寮にという疑問と、可愛い女の子かあとワクワクしていた。

 そんな僕の様子に愛理ちゃんは不満そうにしていたが、心当たりがあるのか、詳細を聞こうとはせずに引っ張られる僕と一緒にレッド寮へと後ろから付いてきていた。

 

「みんなー! 連れてきたよー!!」

 

 翔君がレッド寮の前、そこに辿り着く少し前に大きな声でレッド寮に大勢いる生徒たちへと声をかけた。果たしてそこには普段いるはずのない──恐らく去年も、その前年も含めていいだろう──ブルー寮、イエロー寮も含めた大勢の生徒たちがレッド寮には集まっていた。

 

 それは凡そ、ありえない光景だと、僕は驚愕していた。他寮の生徒が集まる。それは縁日をしているイエロー寮はわかる。カフェを開いているブルー寮も同様だろう。しかし、例年何をしているかわからない程に遠く隔絶されているレッド寮に他寮含めた多くの生徒が集まっているなど、信じられなかったからだ。

 

 見渡すと、男子の比率が高い感じがしたが、これがこの学園の男女比率によるものか、それとも少し離れたところで十代君たちと話しているらしき金髪で長い髪を垂らした女の子によるものかは判断がつかなかった。

 

 恐らくあの少女が僕を呼んだ娘なのだろうと僕はアタリをつけた。

 後姿しか見えないが、その女の子が明日香さんではないことはすぐにわかった。明日香さんはその女の子のすぐ近くでハーピィレディの仮装をして立っていたからだ。

 

 僕は待たせるのも悪いかとさっそくその仮装だろう、制服ではない恰好をしている女の子へと話しかけに近づいた。

 

「こんにちは。僕がコナミだけど、君は………?」

「あ、ふふ。ようやく来たのね。初めまして、私、ブラック・マジシャン・ガール。あなたとデュエルがしたくて呼んでもらったの!」

 

 振り向いた彼女に、僕は息をするのも忘れて見惚れてしまった。その容姿が、あまりにも人間とは隔絶した美しさを放っていたからだ。

 いや、正確には僕たちと同年代であろう幼さを感じるため、美しさよりも、かわいらしさと表現した方がいいだろう。

 ブラック・マジシャン・ガールと彼女自身が自己紹介しているように、まるで本当にカードの中から出てきたと言われても信じられる少女であった。

 

 ともかく、僕はその人間離れした少女に一瞬、心を奪われそうになってしまった。そんな僕の脇腹に肘鉄を加えた愛理ちゃんが、苦痛から体をよじる僕をよそにその子へと話しかけた。

 

「初めましてブラック・マジシャン・ガール。私は愛理よ、よろしくね」

「え? あーうん。そうだね。初めましてだね愛理」

「それで、コナミ君とデュエルしに来たの?」

「うん。彼のことは前から知ってたから来たの。ここにいるみんなも楽しそうにデュエルしてたから、私もしたくなったの」

 

 殴られた脇腹をさすっている僕の横で愛理ちゃんと、恐らく、と言うより十中八九仮装に合わせた偽名であろうが──ブラック・マジシャン・ガールは話していた。

 

 初めましてとお互い言っているように、初対面なのだろうが、愛理ちゃんにしては珍しく早々に打ち解けていた。いつもならこれほど美しい少女が僕に近づいてきたらまず警戒心がそこには含まれているはずなのに、その少女へはそのような様子は見られなかったのだ。

 

 そのことに対し僕は疑問を感じながらも、些細なことと気にせず会話に参加した。

 

「ブラック・マジシャン・ガールさん。デュエルだったね。もちろん大丈夫だよ。君のような女の子とできるのは大歓迎さ」

「本当! あなたとデュエルできるの楽しみだったの。楽しいデュエルをしましょう!!」

 

 っということで、デュエルすることに決めた僕とブラック・マジシャン・ガールさんはレッド寮の前の広場に引かれた白線でできたデュエル場に足を踏み入れた。

 そしてデュエルを開始しようと用意していた時、横から十代君から話しかけられた。

 

「コナミ、あのブラック・マジシャン・ガール、めっちゃ強えから油断しねえほうがいいぜ。俺もかなり追い込まれたからよ。あと周りは気にしねえ方がいいぜ」

「へぇー。十代君が強いっていうのか。それは楽しみだ。それなら、たしかに油断するわけにはいかないね。それで周りって?」

 

 可愛い女の子だからと言って手心を加える必要はないと言うことだろう。少なくとも、十代君を追い詰めるようなデュエリストに容赦する必要はない。

 僕は女の子の可愛さ故に、少しばかり緩んでいた気を引き締めてデェエルする準備を整えた。結局、十代君が最後に付け加えた周りの意味を知る前にデュエルの準備ができたから聞けずじまいだったが、まあ大丈夫だろうと僕は楽観視した。

 

「うふふ。それじゃあ準備はいいよね」

「うん、僕の方も問題ないよ。いいデュエルをしよう」

 

 僕と彼女は共に目を合わせてデュエルディスクを構えた。そして衆人環視の中、言いなれた言葉を合図にデュエルを開始した。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 




 はい、皆大好きブラック・マジシャン・ガールです。私も当然好きです。神がかったデザインしてますよ。

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