「僕のターン、ドロー!」
命の息吹を感じない湖畔の前で始まったガガギゴとのデュエル。僕はドローした手札を見て「やっぱりな」と思った。
そこにあった手札は僕の調整用のサブデッキの内容だったからだ。
同じようなシチュエーションで小学生の頃、ガガギゴと戦ったことがある。その時も僕は本意ではなかったけど本命のデッキではなくこのサブデッキで戦った。
メインデッキではなかったからなどと、情けない言い訳をするつもりはないが、僕はその時敗北を喫してしまった。
故にデュエルディスクを呼び出した時、もしかしたら無意識的にこのデッキを望んだのかもしれない。このデュエルでリベンジするために。
とはいえ、あの時のようにガガギゴが僕のメインデッキを使用しているかはわからない。もしかしたら違うデッキかもしれない。少なくとも、僕のデッキにはプラネットシリーズが入っているため、僕の敵だと言ったガガギゴに味方はしないだろう。
「僕はモンスターを守備表示で召喚。カードを2枚伏せてターンエンド!」
「俺のターン、ドロー!」
このターンのガガギゴの行動。それによって奴の使うデッキが僕のメインデッキか、それ以外かを判断する!
「俺は手札から首領亀を攻撃表示で召喚! その効果により、同名モンスターであるもう一枚の首領亀を召喚する!」
《首領亀》 攻撃力1100 守備力1200 ×2
首領亀か…………! これは………なんとも判断しづらいモンスターが出てきたな。首領亀はデッキに入れているときもあるが、外すときもまばらにあるカードだ。
これだけだと、まだ確信するには………。
「さらに手札から大波小波を発動! その効果により首領亀を2体破壊。その後手札から破壊したモンスターの分まで水属性モンスターを特殊召喚する!」
「このコンボは、いきなり使ってくるのか!?」
ガガギゴの背後から木々を縫うように首領亀を覆いつくす波が勢いよく流れてきた。それは僕の足元まで濡らしていき、水が流れた後、そこには2体の大型モンスターが立っていた。
「俺は手札からゴギガ・ガガギゴとスパイラルドラゴンを攻撃表示で特殊召喚!!」
《ゴギガ・ガガギゴ》 攻撃力2950 守備力2800
《スパイラルドラゴン》 攻撃力2900 守備力2900
召喚された2体のモンスターを見て、僕は自然と笑みがこぼれた。
ガガギゴの場に強大な存在へと進化したゴギガ・ガガギゴと古代の首長竜を模したモンスターが召喚された。それは僕にとって懐かしさを憶える光景であった。
「どうだ、ゴギガ・ガガギゴはともかく、スパイラルドラゴンは懐かしいだろう。プラネットたちやHEROを使うようになってから使用しなくなっていたからなあ」
「そうだね。懐かしいモンスターだよ。やっぱり、お前のデッキは僕が使っていたデッキを改造したものか」
「それはどうかな。或いは逆かもしれんぞ。お前が俺のデッキの真似をしていた、そう考えることもできるだろう?」
「言ってろ」
僕はニヒルに笑うガガギゴに不敵に笑いながら身構えた。この後はもう攻撃以外してこないだろうからだった。
「俺はスパイラルドラゴンでお前の守備表示モンスターを攻撃! スパイラルウェーブ!!」
「ふっ、僕はリバースカード発動! このターン、僕のモンスターは和睦の使者によって破壊されることはない!」
スパイラルドラゴンが湖を波打たせ打ち出された3mはあろう波が襲ってきたとき、その攻撃から僕とそのモンスターを守るようにドーム状の巨大なバリアが現れてその攻撃から守った。
「そしてこの攻撃によって暗黒のミミック LV1の効果発動! 僕はカードを1枚ドロー!」
「和睦の使者でモンスターを守ったか。まあいい。俺はこれでターンエンドだ」
「僕のターン、ドロー! この瞬間、暗黒のミミックはLV3へと進化する!」
《暗黒のミミック LV3》 攻撃力1000 守備力1000
僕はデッキから暗黒のミミックがLV1からLV3へと進化し、より毒々しい、しかし豪奢な形状の宝箱になったことを確認し、手札を見た。
状況は悪いな。僕の場にはミミックがいるとはいえ、ガガギゴの場には最上級モンスターが2体。2ターン目にして厳しすぎて笑うしかない状況だ。
とはいえ、丸藤さんとのデュエルを思い出せば、まあ、やってれないことはないさ。
「僕はモンスターを守備表示でセット。カードを伏せて、ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー! バトル。俺はスパイラルドラゴンで今お前が伏せたモンスターを攻撃! スパイラルウェーブ!!」
スパイラルドラゴンによる二度目の攻撃、ヒレから発せられた津波は今度は遮られることなく伏せられていた僕のモンスターを破壊した。
「この瞬間、破壊された共鳴虫の効果発動! デッキから攻撃力1500以下の昆虫族モンスターを特殊召喚できる。僕はデッキから代打バッターを守備表示で特殊召喚!!」
《代打バッター》 攻撃力1000 守備力1200
破壊された共鳴虫の後続として呼ばれたダジャレなのかその名の通り小さな子供くらいのサイズの若葉色をしたバッタを見て、ガガギゴは攻撃の手を止めた。
「代打バッターか。ふむ、破壊すると更なる後続を呼べる。いや、それが本命か。なら、攻撃するとしたらミミックの方。しかし…………」
ガガギゴは攻撃の手を緩めるつもりはないのだろう。ゴギガ・ガガギゴでどちらを攻撃するか迷うように代打バッターとミミックを交互に見ていた。
僕としては攻撃してくれるなら正直どちらでもよかった。代打バッターを破壊してくれるなら手札から本命を呼べる。そうでなくてもレベルの上がったミミックが破壊されれば手札が2枚引ける。
望みを言うなら代打バッターを狙ってほしいが、攻撃そのものをされないのが一番避けて欲しい選択だ。まあそれでも、僕の場に2体モンスターが残ると考えれば、際したる問題にはならないが。さて、ガガギゴはどうするのかな。
「………よし、俺はゴギガ・ガガギゴで代打バッターを攻撃! ジェノサイド・パワー・ボール!!」
「それを待っていた! 代打バッターが破壊されたことで手札からアルティメット・インセクト LV3を守備表示で特殊召喚! さらに、特殊召喚に成功したことで地獄の暴走召喚を発動! デッキから同名カードであるアルティメット・インセクト LV3を2体、攻撃表示で特殊召喚する!!」
「なにィ!?」
《アルティメット・インセクト LV3》 攻撃力1400 守備力900 ×3
ゴギガ・ガガギゴによる巨大なエネルギー弾。それが代打バッターを破壊した瞬間、文字通り代打としての役目を終えた代打バッターの代わりに僕の手札から本命であったアルティメット・インセクトの幼虫が召喚された。それは全身がいかにも毒を持ってますとこれでもかと主張している巨大な芋虫であった。
そしてそれは召喚されると同時に発動した地獄の暴走召喚により、仲間を呼ぶように3体に増えた。
「俺のターンに、3体のアルティメット・インセクトを召喚するとは、やるじゃあないか。だが、地獄の暴走召喚には相応のリスクがある」
「わかってる。僕が召喚できる代わりに、お前も自分のモンスターと同名カードをデッキから呼び出せる。だけど、ゴギガ・ガガギゴもスパイラルドラゴンも最上級モンスターだ。3枚も入れてはいないだろう」
流石に通常モンスターとはいえ、最上級モンスターであるゴギガ・ガガギゴとスパイラルドラゴンを3枚も投入しているとはとても考えられなかった。
最悪、どちらかのもう一体が召喚されても、破壊されるのは1体で済む。僕の狙いは次のターンに進化するアルティメット・インセクトで永続的な攻撃力のデバフ効果をガガギゴのモンスターに与えること。
それができれば僕の目的には適う。
「くく、そうだな。流石に3枚はいれていない。だが、もう1体くらいなら呼び出せるぞ。俺はゴギガ・ガガギゴをデッキから特殊召喚する!」
「2体目のゴギガ・ガガギゴか……」
僕がそうしたように、ガガギゴもまたデッキから同名モンスターであるゴギガ・ガガギゴを召喚してきた。これで、ガガギゴの場には最上級モンスターが3体も揃ったわけだ。予想していたこととはいえ、アルティメット・インセクトを揃えるには成功したけれど、かなり痛い出費になったな。
「バトルだ。俺はゴギガ・ガガギゴで召喚されたアルティメット・インセクトを攻撃。 ジェノサイド・パワー・ボール!!」
「ぐぅううう!!?」
《コナミ》 残 LP 2450
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
ゴギガ・ガガギゴがアルティメット・インセクトを攻撃した瞬間、そのダメージが痛みとなって僕の全身を駆け巡った。それは、僕が子供の頃。ガガギゴと戦った時の痛みと同一のものであった。
半ば予想していたこと故に、半ば予想で来ていたこと故に僕の動揺は少なく、変わらぬ様子でターンを回してきたガガギゴに僕も何も言わずにデッキからカードを引いた。
「僕のターン………ドロー! この瞬間、アルティメット・インセクトは僕のスタンバイフェイズに進化する! アルティメット・インセクト LV5を特殊召喚!!」
《アルティメット・インセクト LV5》 攻撃力2300 守備力900 ×2
進化したアルティメット・インセクト、その姿は幼虫がさなぎを経て進化するように、その身を固い金属のような光沢のある鎧に全身を纏った鋭利な蛹型モンスターであった。その鋭利な金属鎧は幼虫の頃の毒々しさは一切残されていないものの、鋭利な棘や刃物のごとく尖った手足によってその危険性をありありと示していた。
「進化したアルティメット・インセクトの効果により、相手モンスターは500ポイント攻撃力がダウンする。僕の場にアルティメット・インセクトは2体、よって1000ポイントの攻撃力のダウンだ!」
「ぬー、ゴギガ・ガガギゴでも、攻撃力は1950まで落とされるか」
僕の場に召喚された二体のアルティメット・インセクト。それによってガガギゴの場にいる3体の最上級モンスターは下級の強めのモンスターレベルの攻撃力まで下がっている。
あとは1体1体、適切に対処するだけでいい。
苦々しい表情をするガガギゴに僕は勝利への道が開けたと勝気に笑みを浮かべた。
「バトル、僕は2体のアルティメット・インセクトで2体のゴギガ・ガガギゴを攻撃!」
「ぬぐぅっ! この瞬間、リバースカード スネーク・ホイッスルを発動! 俺の場の爬虫類族モンスターが破壊された時、デッキからレベル4以下の爬虫類族を特殊召喚する! 俺はキラー・スネークを特殊召喚!」
《ガガギゴ》 残 LP 3300
《キラー・スネーク》 攻撃力300 守備力250
「キラー・スネークか。毎ターン墓地から手札に戻る効果。まあいい、これで残りはスパイラルドラゴンのみ。僕はこれでターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー! 強欲な壺を発動し、さらに2枚ドロー!」
流れるようにカードを補充するガガギゴは手札と場を往復するように見ながら、カードを発動させた。
「俺は手札からフィールド魔法 伝説の都 アトランティスを発動! 水属性のモンスターの攻守は200ポイントアップし、手札の水属性はレベルが一つダウンする」
後方からまるで津波のように押し寄せた波が森の中をすべて海中に覆っていく。その勢いはすさまじく、それはまるで映画のワンシーンのようで、極めて高い透明度の水中に覆われた木々はどこか幻想的ですらあった。
「さらにキラー・スネークをリリースして、手札から海竜ーダイダロスをアドバンス召喚する! その効果により、アトランティスを墓地へ送ることでダイダロス以外のフィールドのカードすべてを破壊する!!」
「なにッ、すべて破壊!?」
《海竜ーダイダロス》 攻撃力2600 守備力1500
ガガギゴのデストラクション・シーベリアルの効果名の発言に端を発した海中に覆われている全ての存在を巻き込むような大きな渦はダイダロスを中心にフィールド内の全てを破壊しつくしていった。
そして場にはウミヘビをずっと凶悪なデザインにしたと思わせるフォルムをしたダイダロスを除いたすべてのカードが存在しなかった。無論、僕が頑張って召喚したアルティメット・インセクトもいなくなっていた。
「これで終わりだ。ダイダロスでお前にダイレクトアタック、リヴァイア・ストリーム!!」
「うぁああああ!!?」
がら空きとなった僕に対してそれを防ぐ術はなく、無防備にダイダロスの砲弾のごとき水の爆弾をくらった。しかしその攻撃は僕のライフを減らしこそすれ0にすることはなかった。
《コナミ》 残 LP 2150
「──なに!? なぜライフが残っている。お前のライフは2450だったはず!」
「僕はダイダロスの効果が発動した瞬間、リバースカード 神秘の中華鍋を発動していた。それによってアルティメット・インセクトを墓地へ送ることでライフを回復していたのさ」
自らのスパイラルドラゴンさえ破壊に巻き込んだダイダロスの破壊効果。それに合わせて発動した神秘の中華鍋は僕のライフを2450から4750まで回復してくれていた。それによって僕は九死に一生を得ていたのだ。そして、デュエルを決めにかかったガガギゴにはもはや手札はなく、できることもまた存在しなかった。
「くっ、俺はこれでターンエンドだ」
「僕のターン、ドロー!!」
ガガギゴは僕のアルティメット・インセクトを含めた攻守揃った布陣を一挙に壊して見せた。それはすごいことだし、1ターン目に最上級モンスターを2体も召喚せしめたことは彼の確かな実力を証明するに十分な功績だった。
だが…………と、僕は思った。そしてこのデュエル、僕が勝つと…………確信した。
「ガガギゴ、お前は強いよ。大したものだと思う。僕が戦ってきたデュエリストの中でも上位に入ると思う。だけど、君は勝てない。僕にはわかる。1ターン目で勝負を決められず、そしてダイダロスを召喚して尚勝ちを決めれなかった。その時点で、互いの実力には明確な差があると僕は悟ったよ」
「ぐっ、貴様…………」
僕の言葉にしかめっ面をしながらもガガギゴは反する言葉を紡ぐことはできなかった。ガガギゴもわかっていたのだ。決して口に出すことはないにしても、僕と言う存在はもう、ガガギゴの実力を超えているということを…………。
「いくぞ! 僕は手札からレベル調整を発動! 相手にカードを2枚引かせる代わりに墓地から召喚条件を無視してレベルモンスターを蘇生する。僕は墓地からアルティメット・インセクト LV5を特殊召喚!!」
《アルティメット・インセクト LV5》 攻撃力2300 守備力900
「そして召喚されたアルティメット・インセクトに対してレベルアップ!を発動、アルティメット・インセクトを墓地へと送り、その進化先であるアルティメット・インセクトLV7をデッキから特殊召喚する!!」
レベルアップの効果により進化条件を無視した進化への道が開かれたアルティメット・インセクトがその蛹上の体を小刻みに震わせ、光沢のある硬い背中を縦に割ることで中から最終形態である進化先の姿を羽化させた。
《アルティメット・インセクト LV7》 攻撃力2600 守備力1200
それは甲虫であった。赤黒く物々しい腹部をしながら、巨大な羽根を広げて飛ぶ毒と3本の長く鋭く細い牙を持った究極の昆虫であった。
「遂に羽化したと言うわけだ。だが、レベルアップで進化したのではアルティメット・インセクトの真価である妨害効果は得られない。ましてや攻撃力はダイダロスと同じ、それでどうしようと言うのだ!」
「問題はない。そのためにこのカードがある! 僕はさらにアルティメット・インセクトに火器付機甲鎧を装備! 攻撃力を700ポイントアップ!」
昆虫族専用の装備魔法を装備したアルティメット・インセクトはその背中に巨大な砲身を身につけ、ダイダロスを一方的に屠れる力を手に入れていた。
「バトルだ! アルティメット・インセクトで海竜ーダイダロスを攻撃! アルティメット・ブラスター!!」
「──ッ!!?」
《ガガギゴ》 残 LP 2600
アルティメット・インセクトの背に装着された火器付機甲鎧から発せられた膨大な熱量を持つ炎、それが勢いよく発せられダイダロスを焼き払った。
「くっ、ダイダロスが破壊されたか。だが、これでお前のバトルは終了だ。レベル調整でカードも引けた、次のターンで──」
「僕は手札から速攻魔法 レベルダウン!?を発動! アルティメット・インセクトを墓地へ送り、墓地からアルティメット・インセクト LV5を特殊召喚!!」
「なに!?」
アルティメット・インセクトの攻撃も終わり、それに耐えたガガギゴがふっと安心したように息を吐いたのを咎めるように、僕は更なる追撃を行うためのカードを発動させた。
それは火器を身につけ羽化した蛾がまるで巻き戻しを行うように元の蛹の殻にこもっていくようであった。
「バトルだ! アルティメット・インセクトでダイレクトアタック!!」
「ガァアアア!」
《ガガギゴ》 残 LP 300
「ぐっ……うぉおおお!! まだだ、まだ俺のライフは残っている!」
アルティメット・インセクトの連続攻撃に倒れ伏し、息も絶え絶えになりながらもまだ戦えると、俺はやれると息を巻くガガギゴにみながら僕はどこか冷めた目で見つめ、彼に告げた。
「ガガギゴ、僕とずっと一緒に戦い続けてきたお前ならわかるはずだ。この状況で、ここまで来て、僕がこのターンでお前に次のチャンスを与えるほどやさしくはないことを」
「はっ、ならば、お前は…………!!」
「そうだ、これで終わらせる! 僕はもう一枚のレベルダウン!?を発動!! アルティメット・インセクトをさらに退化させる!」
「バカな、レベルダウン!?を二枚だと!」
蛹に戻ったアルティメット・インセクトがさらにその鎧を糸くずのように脱ぐことで芋虫時代までその姿を退化させた。
自らの敗北を悟りながら、それを否定するがごとく、自らの手札を見るガガギゴに僕は最後の攻撃を宣言した。
「バトルだ! アルティメット・インセクト LV3でダイレクトアタックだ!!」
「ぐ、ぐあああああ!!???」
《ガガギゴ》 残 LP 0
幼虫へと退化したアルティメット・インセクトの攻撃、それが最後の決め手となって、ガガギゴのライフを余すことなく削り取っていった。
アルティメット・インセクトって昆虫の分類だと何をモチーフにしてるんでしょうね。最初は蛾かなと思ったけど、羽根とか見るにカブトムシとかのほうが近いかと思いましたから甲虫の分類かなと思い、そう表現しました。