初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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 信長協奏曲はいつ終わるんだろうなあ。


炎頂前線

 僕がガガギゴと戦ってから幾日かが経った。最後のセブンスターズであるアムナエル改め、錬金術の講師であり同時にオシリスレッド寮の管理人であった大徳寺先生は十代君によって倒され、学園は一先ずの平穏を手にしていた。

 七星門の鍵を守りぬいた十代君や僕たちはまるで英雄のように学園の生徒からは見られ持て囃されていた。

 

 そのため、陽光が照らす正門前の通り道を英雄視する生徒たちに向けて大きく手を振りながら歩く十代君たちのその姿を学園の2階の窓から溜め息を吐きながら僕は見下ろしていた。

 

「らしくない随分な溜め息だなコナミ。憂鬱そうだが、何かあったのか。十代たちはあんなに嬉しそうなのに」

 

 僕が憂いを帯びた顔で階下の光景を眺めていたら、横合いから機嫌の良さそうな三沢君が話しかけてきた。

 

「おはよう三沢君。僕はちょっと悩み事があってね。相談できるような内容ではないのが残念だよ。それで、気晴らし……にはならないのはわかってるんだけど、十代君たちを見てたんだ」

 

 僕は悩んでいた。VENUSが、そしてガガギゴが教えてくれた愛理ちゃんが将来的に敵となって立ちはだかると言うことについて、僕はどうするべきなのだろうと。

 本音を言うなら直接愛理ちゃんに相談して力になってあげたい。だけどそれができないのは愛理ちゃんの魂である精霊エリアになにがしかの細工が施されており、それを仕掛けた人物──ガガギゴが言うには大賢者というらしい──には逆らえない可能性があるからだった。

 

 もし、愛理ちゃんを通してその大賢者がよからぬことを企んでいた場合、今の僕にはそれに抵抗するすべが持ちえなかった。

 そもそもプラネットモンスターを集めたら何ができるのかもよく知らない以上、何をすればいいのかも判断できない状態だ。

 

 というわけで、僕は陰鬱な状態から脱却することもできずに呆然と頭を悩ませていたのだ。この件について愛理ちゃんや霊使い達と相談すべきなのか、付け加えるならこの恋心にこれからどう向き合うべきなのか不安が尽きなかった。

 

 そうやってうじうじと悩む様子を見せている僕をどう思ったのか、三沢君は僕の肩に手を置いて、十代君たちを見ながら言った。

 

「よくわからんが、気楽に考えていいんじゃないか。七星門の鍵は守り抜いたことだし、目下緊急性のある危機的事態は退けれたんだ。お前の悩みも俺が推測するに愛理君絡みのことなのだろう? なら、彼女と相談するのが一番だと思うがな」

「愛理ちゃん絡みって流石よくわかってるね三沢君。僕は何も言ってないのに」

「これでも6年近く付き合ってるからな。お前の悩みの傾向はわかっているつもりだ。流石に俺にも相談できない内容となるとその中身まではわからんが、お前の長所は女絡みだと当たって砕けろができるところだ。あまり考え込むなよ。いい結果には結びつかないのは目に見えているのだから」

「三沢君、それは長所と言っていいのかい?」

 

 三沢君が発した言葉は若干のからかいの意味を込められていて、どこまで素直に受け取っていいかはわからなかったが、それは僕には心地の良い言葉でもあった。

 

 今僕の心に雲泥と降り積もる不安の靄は恐らくどうやっても何かしらの行動をするか、起死回生の回答を得ない限り晴れることはない。

 なら、考えても無駄と言うことでもある。僕は口角の上がった口で三沢君に感謝を述べた。

 

「それはそうとだ、もう少ししたら期末試験があるわけだが、その準備はしているのか。1年次最後の試験、そこで粗末な結果を残したらブルーどころか、レッドに降格もありうるぞ」

「う”っ、イヤーなこと聞いてくるなあ三沢君は」

「いやだいやだと言っても、どうせ試験は受けざるを得んからな。これでも心配してやってるんだ。ブルーに上がるんだろ、なら、愛理君も待ってることだし頑張らないとな」

「それはわかってるよ。まあ、2年時にはブルーには上がりたいからね。今回は僕も頑張るよ」

 

 期末試験、それは1学年生徒の全員がその年の締めくくりとして行う最後の試験だ。そして最後故に、寮の昇格の最後のチャンスでもある。

 今年幾度かあった昇格のチャンスの全てを不意にしてしまった僕としては何としてもこの機会にブルーへと上がっておきたかった。

 

 なにせ、セブンスターズの件があったりしたとはいえ、一番楽であろうと考えていた寮の昇格と言う目標が一向に達成できていなかった。

 学園最強だったり、プロ資格取得だったりと、2年時、3年時に果たしたいことが溜まっているのだ。こんなことで躓いていたくはない。

 

「夢と言うものは一朝一夕で果たせるものではない。目標もまたしかり、一歩一歩着実に積み上げるしかないのだ」

「?」

「いやなに、一般論として、普段から勉強していないのにその時だけ頑張っても意味がないと言うことを思ってな。お前も、普段から地道に勉強しておけば………」

「うわっ、やめてよ三沢君。まるで親のような小言を言わないでよ」

 

 三沢君がやるぞーと気を張っている様子に何を思ったか、それを削ぐような嫌味を言って来たのに対して、当然のように僕は苦い表情をして耳を塞いだ。

 

「おいおい、まったくお前は、そういうところはまるで成長せんな」

「うるさいよ。ところで何しに来たのさ。まさか小言を言うためなんてのじゃないよね」

「特別な理由がなければ話しかけてはいけないのか? お前が珍しく黄昏ているようだから話し相手になりに来ただけだ。他意はないさ」

 

 肩を竦めながら三沢君はそう言って、僕同様再び外を眺めた。そこにはもう十代君たちはいない。僕が三沢君と話している間に学園内へと入って行ったのだろう。

 

「お気遣い感謝するよ。だけど、これは僕と愛理ちゃんの問題だからね。まあ、その内なんとかするさ。これまでも、喧嘩はしてもなんとかしてきたからね」

「ああ、あまり心配させないでくれよ。お前たちの友人として、不仲になっていると気を揉んでやりづらいからな」

 

 僕たちは互いにニカッと笑ってその場を後にした。三沢君のおかげで少しばかり僕の気が晴れていた。彼の言う通り、僕はあまり考えることが得意ではない。

 愛理ちゃんに対してとか、プラネットモンスターについてとか、そういう細々したことは当たって砕けていくのが性分に合っているのだろう。もしくは後回し後回しにするのも僕らしいことだ。

 

 

 

 そうしてセブンスターズ事件から数日後、全ての七星門の鍵が学園に返されほっと一息を突いていた僕たちのもとに、ある朝、とんでもない事態が舞い込んでいた。

 

 島の海に接している浜辺、そこで守り切った七星門の鍵の全てを持った万丈目君と明日香さんがデュエルしていた。

 そしてそれは万丈目君の恋のデュエルであったのだ。

 

 報告を聞いて急いで駆け付けた僕たちが2人のデュエルを見ながら話を聞いてみると、なんでも万丈目君は明日香さんと恋のデュエルをするのにただ誘いをかけるだけでは足りないと思ったらしい。

 それで、七星門の鍵を賭ければ、明日香さんもデュエルしてくれるはずと判断したとのことだ。

 

 なんとも馬鹿馬鹿しい、呆れるような理由であったが、その根幹が恋による衝動だったため僕は何も言えなかった。

 恋心は時に人を合理を超えた行動をとらせることを理解していたからだ。まあそれはそれとして、なんて馬鹿なことをと憤りも感じていたのはその場にいる全員の総意でもあったのだが………。

 

 さらに話を付け加えるならば、万丈目君を唆したのがあの吹雪さんらしいのが、話をさらに厄介にさせていた。

 吹雪さんは元気になったことは嬉しいことだが、生来のお祭り好きというか、愉快な性格も相まって面倒な事態を引き起こすらしい。

 それを知った明日香さんは呆れて何も言えないようだった。

 

 ともかくそういうわけで、僕たちは浜辺で2人のデュエルの、付随して万丈目君の恋の行方を見守っていた。

 

 そのデュエルの詳細については省こう。特別意味のあることでもない。強いて言えば、その勝利以上に相手の心を求めるデュエルは僕にとってそれなりに有意義な参考となる内容ではあったため、僕個人としてはそのデュエルは無駄ではなかった。

 

 問題は、デュエルの結果、鍵を持った万丈目君が敗れてしまったということだった。

 その結果何が起こるか。それは、せっかく守り抜いた封印が解かれてしまったということに他ならなかった。

 

 万丈目君と明日香さんのデュエルが終えた瞬間、時を置くことなく少し離れた森の方向に地響きを起こしながら、天を貫くような長く、大きな岩で形成されたようないくつもの柱が地中から這い上がってきた。

 

 それは離れた浜辺からですら、その大きさを把握できほどであった。柱の一本一本がちょっとしたビルくらいのサイズはしていただろう。

 そして、そこに意識を向けていたからだろう。突如として背後から肩に置かれた手とかけられた言葉に僕は反応することができなかった。

 

「──お前はこっちだ」

「──え?」

 

 僕の肩に置かれた手とその主の声と共に一瞬にして、僕の姿は浜辺から最初っから存在しなかったかのように消えていった。

 

 

 

 

 森の方角に巨大な柱が突き上がるとどのほぼ同時に、コナミ君が何者かの声と共に消えたことにその場にいた誰もが瞬時に反応することができずにいた。

 

「お、おい。コナミの奴が消えちまったぞ!? どこ行っちまったんだ!!?」

「それより、万丈目のバカのせいで封印が解けてしまっている。コナミも気になるが、彼方の方が問題だぞ!」

「えぇー!? 何がどうなってんすかー!!??」

 

 その場にいた誰もが一様に動揺を隠せずにいた。その中で誰よりもいち早く冷静さを取り戻したのは三沢君であった。

 

「みんな、一旦落ち着こう。コナミのことは気になるが、まず優先すべきは三幻魔の方だ。行方のわからないコナミは三幻魔を確保した後に探そう!」

「「おう!!」」

 

 三沢君の言葉に頷いた皆が一斉に森の方へと走り出したのを見た私は後ろから三沢君を呼び止めた。

 

「待って三沢君。私、たぶんコナミ君の居場所がわかるの。だから、コナミ君のことは私に任せて」

「愛理君……しかし一人で行かせるというのは。相手の目的もわからない以上危険だ。居場所がわかるというのなら尚更、ここはみんなで解決して行った方がいい」

「大丈夫、コナミ君を連れて行った相手には心当たりがあるの。だから、たぶんそう危険な目には合わないはずだわ」

 

 心配する三沢君に対して私は一人で行くと譲らなかった。一瞬だけど聞こえたあの声。そして一瞬で別の場所へと移動する力。

 

 私の知る人物の中で思い当たる相手は1人しかいない。なら、用があるのも危険な目に合わせるのもコナミ君だけのはず。少なくとも私にはそんなことはしないだろう。

 

 少しばかりの希望的観測も混じった考えのもと私は1人でも問題ないと判断していた。

 

「そんじゃあ愛理、コナミのことは任せたぜ。三幻魔の方は俺たちがなんとかすっからよ」

「十代! しかし……」

「愛理が大丈夫って言ってるんだ。コナミのことは任せようぜ三沢」

「──っ! ……わかった。だが、決して無理はするなよ愛理君。相手の目的がわからない以上、君にも何をしてくるかわからないのだから」

 

 十代君の言葉に渋々と言った表情で三沢君は折れてくれた。

 そうして走り去っていく皆んなの後ろ姿を目に収めながら私も恐らくいるであろう火山の方へと振り返った。

 

「ヒータ、コナミ君に危険なことをしないでいて欲しいけど。いいえ、とりあえず急ぎましょう!!」

 

 私はヒータが勇者として選ばれているコナミ君に手荒なことはしない。そんなことはあり得ないと自分で反して火山への道を急いだ。

 

 

 

 場所は変わり、そこは火山の火口。そこの端と端に突き出たように突起した岩に乗って僕と、霊使いの1人であるヒータは対峙するように立っていた。

 

 足下を見れば火山内に溜め込まれている灼熱の海がぐつぐつと煮えたぎっているのがわかる。

 そこから絶え間なく噴出している熱気は僕の全身から勢いよく発汗させ、熱された空気を吸い込むたびに喉が焼けるようだった。

 それは一秒でも早くここから離れろという危機感を僕の全身に伝えていた。

 しかし………。

 

「背後は絶壁。出るには壁をなんとかよじ登るしかない…か。もうちょっと手心を与えて欲しいね」

 

 僕は推定ヒータであろう人物に振り返りながら言った。燃えるように紅い長髪、着崩しながらも下品ではない服装に僕を射抜く鋭い眼光。そしてどことなくアウスや愛理ちゃんと同じ精霊の気配も感じる。

 その姿と気配からまず間違いなく霊使いヒータであろうと僕は判断していた。

 

「おいおい、勇者ともあろう者が情けない泣き言を言うなよ。せっかくお前のために拵えたデュエルフィールドなんだぜ。もっと喜んで欲しいなあ」

「それはごめん。人間にはちと辛い環境なものでね。ところで、僕をここに連れてきたのは君の力なのかい。要件の方は、まあ想像はついてるんだけど」

「アタシに空間を移動するようなバカげた力はねえよ。大方予想はついてるんだろ。その想像通りさ」

 

 まるで小馬鹿にしたように笑いながらヒータは手持ちのデッキから一枚のカードを僕に見せた。

 そこには「THE blazing MARS」の文字が書かれていた。

 

「プラネットシリーズ、愛理ちゃんから聞いていたけれど、やっぱり持っているんだね」

「ああ、あとは言わなくてもわかるだろ?」

 

 ヒータがデュエルディスクを構えるのを見て、僕も何をすべきなのかを察した。

 MARS──火星か。ヒータにピッタリの星だな。有している力は差し詰瞬間移動、いや空間の操作とかその辺りか。

 

 僕は少しだけ微笑んで、デュエルディスクを構えた。そしていざデュエルを開始しようとしたその時、ふと思ったことを彼女に聞いた。

 

「ヒータ、デュエルの前に一つだけ聞きたいんだけど、君は僕の敵かな」

「あー? なんだその質問は、わざわざすることかよ。わかりきってるだろ、アタシはお前の敵だよ」

「そっか、なら君に優しくする必要はないね。ここに長くいると死にそうだし、手早くやろうか!!」

 

 皆んなが対処しようとしているであろう三幻魔については気になるけれど、あっちには十代君や丸藤さんがいる。まあ大丈夫だろう。それよりも目下ヒータをなんとかしないとこの身が危ない。

 僕は一先ず三幻魔については頭の中から消して、目の前の相手に集中した。

 そして、その言葉を機に僕とヒータのデュエルが始まった。

 

「「デュエル!!」」

 

 

 




すみませんが3幻魔は残念ながら出ません。3期までさようならです。
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