初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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もう1期の終盤に差し掛かったので、そろそろコナミのデッキを整理しようと思って書いた話です。


デッキ総評回

 デュエルの撮影も終わり、僕は堂本君、それ以外にも三沢くんを呼んでその映像を見直していた。録画されたビデオは藤次郎さんの元へと送られて、折を見てネット上へと挙げられるとのことだ。

 

 ちなみに愛理ちゃんはいない。彼女はブルー寮の自室で撮ったビデオをインターネットを介して藤次郎さんに送る作業をしてくれている。

 

「ほう、中々悪くないんじゃないか。ジ・アースやNEPTUNEと言ったよく使うプラネットモンスターも使えてるし」

「そうねぇ、強いてあげるならこの中にVENUSも入ってれば最上だったかもしれないけれど、それは望みすぎかしら」

「VENUSは流石に無理だよ。出すだけなら頑張れば行けるけど、出しても他のプラネットたちを弱くしちゃうから、宣伝にはちょっと向かないよ」

 

 ビデオを見ている皆んなの反応は上々、プラネットモンスターたちを、ひいては僕というデュエリストを宣伝する目的を果たすには十分な映像が撮れているという反応がもらえた。

 

 とはいえ、堂本君のいう気持ちもわかるのだ。僕としてもできればVENUSを召喚して活躍する場面を撮りたかった。だけどそれは他のカードとの相性の兼ね合いから難しいし、彼女用のデッキもまだ組み上がってはいない。それはまた今度撮る機会があったらということに決めていた。

 

「しかし、カイザーと吹雪さんとのデュエルを明日に控えておきながら宣伝のためのビデオ撮影とは、余裕だなコナミ」

「あら〜いいじゃない。変に気を張って当日に実力を発揮できないよりは、余裕を持てるに越したことはないわ」

 

 苦笑しながらビデオを巻き戻してデュエルを再生し直す三沢くんに堂本くんは肩を叩きながらビデオを見ていた。

 

「しかし、こうして見ていると、本当にお前のデッキからガガギゴたちはいなくなったんだなと実感できるな。デッキコンセプトは変えるのか? 今まではゴギガ・ガガギゴを中心に水属性のモンスターで回してただろ」

「うーん、そこまで大々的な変更をするつもりはないけどね。細かいところで、まあエースも変わるかな、プラネットモンスターたちに………」

 

 僕は三沢くんの言葉に取り出したデッキを机の上に広げてそれぞれのカードの立ち位置を説明した。

 

「まず、プラネットモンスターたち、このカードたちは今後の僕のメインエースだ。プロとして活動していくことを考えても、このカードたちがエースとして活躍していくと思う」

 

 机の上に並べたプラネットシリーズのカードたち。ジ・アースにNEPTUNE、MARSに少し離れた位置にVENUSを置いた。

 

「ガガギゴに変わる新たなるエースたちか。こう言っては失礼だが、レアリティや希少性という意味では比較にならないほどに錚々たる面々だな」

「まったくだわ。ただでさえ世界に一枚しか存在しないカードを4枚も独占してるんだもの。惑星の数から言ってもあと6枚も増えるわけだし………はて、この中に冥王星は入るのかしら。まあいいわ、コナミちゃん、VENUSは例外としても、今後も増えるとしてプラネットモンスターたちを全部デッキに入れるの?」

「いやー流石に全部は……融合モンスターのジ・アースはいいとして、メインデッキで使うとしたら3、4枚かな。これまでの傾向からして、恐らくプラネットシリーズは共通して最上級モンスターだろうし、それ以上はパンクしちゃうよ」

 

 最上級モンスターであるプラネットカードたちをフル投入したデッキかぁ。そりゃあそれができればメチャクチャ格好いいし、理想ではあるけど、今の僕じゃあとても扱いきれないだろうな。

 

 わかりやすく言えばデュエリストレベルが足りていない、そう感じる。だから恐らく今の僕が扱い切れるであろう3枚か4枚くらいまでをメインデッキに投入して扱う。

 それ以上入れると、たぶん事故る。それがなんとなくわかるのだ。

 

「まあ、そうだろうな。しかし、将来的にプロとして活動するとして、デッキはどうするんだ。やはりスポンサーの希望もあるだろうし、持っているVENUSを扱わないというわけには行かないだろう」

「そこはデッキを使い分ける予定だよ。プロとして活動する人の中でも複数のデッキを使う人はいるからね」

 

 プロリーグで活動している人の中には少数ではあるが複数のデッキを使い分ける人がいる。

 デッキを使い分けるというのはやはり難しいし、相応の実力も求められるが、その人たちにできて僕にできないなんて道理はないはずだ。

 それにVENUSだけ仲間外れは寂しいからね。今後に増える予定のプラネットモンスターの効果次第でデッキが増えそうなのが不安だけど、何とかなるだろうさ。

 

「エースはいいとして、下級モンスターはどうするの。特に変化はないのかしら」

「下級はまあ、あんまり変わらないかな。メインとしては攻めをHEROたちが担って、守りを亀系のモンスターが担うことになるね」

 

 エースとして机の上の方に並べられたプラネットモンスターの下側、左にHEROが、右に亀と名の付くカードたちが並んだ。

 

「ふむ、攻めをHEROが担うのか。しかし、攻めと言うには攻撃性能に不安があると思うのだが…………」

 

 三沢君が並べられたE・HERO ザ・ヒートを手に取って言った。ザ・ヒートは僕の持つ下級HEROの中でも比較的ステータスの高いモンスターだ。逆に言えば、それしかアタッカーとしての役割を果たせそうなカードがないと言いたいのだろう。

 

「あら、下級のアタッカーと言うなら憑依装着の霊使いもいるじゃない。何もHEROに拘ることはないわ」

「霊使い達は一応アイドルカード枠で入れるつもりなんだ。だから、役割的にはアタッカーにはならないかな」

 

 机の端の端、そこに置かれた霊使い達を見ながら僕は言った。彼女たちは僕のデッキの花。デュエルを華やかに盛り上げるためのカードたちであると。

 プロとして活動する中で、プラネットモンスターたちだけでも十分な特徴になるだろうけれど、そこに彼女たちがいればさらにデュエルを鮮やかに盛り上げてくれるだろう。

 特に子供や女性、そういうカードが好きな大人な人にとっては人気を博しやすいだろう。

 

「アイドルカード枠、あまり好かんな。そういう理由は」

「でもプロは人気商売よ。いくらデュエルが強くても人気が獲れなきゃ続かないわ。少しでも可能性があって邪魔にならないなら使うべきよ。だからあたしは賛成よ。この子たちを入れるのは」

「人気商売か、まあ、それはいいとして。守りは亀がモチーフのモンスターが担うのか。これは………何か理由があるのか?」

 

 脇に置かれた霊使い達を置いて、三沢君は亀たちの絵が描かれたカードを見た。そこにはゴラ・タートルや島亀と言った守りに強い効果やステータスをもったカードが並んでいた。例外的にカタパルト・タートルもいたが、そこはスルーされた。

 三沢君は何故亀に拘るんだと言いたげにカード見ながらお前はそんなに亀が好きだったかといった疑問を投げかけてきた。

 

「僕も別に特別亀が好きってわけじゃないんだけど、いやまあ可愛いとは思ってるけどね。その子たちはなんていうか、気が付いたら常連になってて、もうそういうものでいいかなって」

「そういうものでって。まあ、役割的には果たせるだろうからお前が構わんならそれでいいだろうが」

「マスコットとして、亀が好きな層には受けると思うわよ。テーマがわかりやすい方が受けもいいでしょう。苦手な人もいるかもしれないけど、そこはどんなデッキを使ってもいるでしょうから諦めるしかないわ。エースは惑星、メインアタッカーはHERO、守護兼マスコットとして亀、それからアイドルの霊使いちゃんたち。うん、それぞれ受ける層が違いそうでいいじゃない」

 

 その言葉を終えて、暫し全員が机の上に並べられたカードを前に沈黙が訪れた。誰もが何か改良の余地がないかしげしげと眺めていると、堂本君が机の端、霊使いよりもさらに端っこに置かれたダークソードを手に取ってこれはと呟いた。

 

「ん? ああ堂本、ダークソードはいいんだ。コナミにとって抜くことはないからな。特に役割とかがあるわけではない」

「うん、大切な友達に譲り受けたカードなんだ。僕の未来に連れて行って欲しいってね」

 

 ダークソードは中学生の時にコウキに譲り受けたカード。特別、何かの役割があって入れるカードではないが、だからと言ってデッキから抜くということは絶対にないカードだ。

 

「そう、大切なカードなのね」

 

 堂本君は神妙に呟いてカードを机の上に戻した。そして机の上を見渡して、コナミちゃんは愛理ちゃんのお父さんに頼んで借金をするつもりみたいだけど、何が欲しいのかと聞いてきた。

 

「ああそうだ。それは俺も聞きたかったことだ。細かい額は聞いていないが、相当な金額だと愛理君は言っていた。そこまでして何が欲しいのだ」

 

 疑問符を浮かべながら三沢君に僕は言うのを少しだけ躊躇いながら、携帯を取り出して画像を見せた。

 

「僕のデッキは現状ほぼ完成していると思う。だけど、これに拡張性があるとしたら、やっぱりHEROだと思うんだ。あの多種多様な融合を使いこなせれば、プラネットモンスターも合わせて死角はなくなると思うんだ」

「それはそうだろうが………お前が求めているHEROは………なるほど、これは個人ではとても買えんな」

「ええ、安い方でも数百万円はしてるわ。そりゃあ融資でもしてもらえないと手に入れられないでしょうね」

 

 僕が二人に見せたのは主に俗に属性HEROと呼ばれる分類のカードだ。そのお手軽な召喚素材の代わりに非常に希少なカードであり、安いものでも数百万円。高い方だともはや数えたくもない金額になる。

 一応、その中でも地属性のガイアだけはアウス経由で奇跡的に手に入れられたが、それ以外はさっぱりだった。

 だからこそ、藤次郎さんに頼んで、僕の将来性を買ってもらうことで手に入れられないか相談していたのだ。

 

「ふむ、目的もわかったしそのために自分の将来を切り売りするつもりなのはわかったが、やはりあまり感心しないな。たとえ親しい間柄の相手で夢とも合致するとはいえ、安易に借金をすると言うのは」

「あたしも、今からでも断りの電話を入れるべきだと思うわ。将来どんな道を行くかなんて、まだ決めるには早すぎるもの。お金を借りたなら、それに見合うものを返す義務が生じるわけだし」

 

 二人はやはり、僕が藤次郎さんにお金を融資してもらうことには反対らしい。当然と言えば当然なのだろうが、リスクが高すぎると言うことだろう。

 将来藤次郎さんの会社にスポンサーになってもらって、プロとして活躍したうえで、融資したお金に見合う結果を出さないといけない。そうでなければ、多額の借金を背負うことになる。

 それは学生のうちに決めるには軽々にすぎるということだ。

 

「愛理君は反対しなかったのか。撮影にも協力していたが」

「愛理ちゃんはまあ、割と気楽に考えてるみたいだよ。最悪自分が何とかすればいいって考えてるみたい。それに甘えるつもりはないけど、変に反対されるよりはよかったよ」

 

 僕と三沢君が愛理ちゃんについての話題をしていたからだろうか、ただの偶然にすぎないのだろうが、ちょうど僕が言いきった瞬間に、藤次郎さんからの返事を聞いた愛理ちゃんが部屋に戻ってきたところだった。

 

「お待たせみんな、お父さんからの返答がもらえたわ。コナミ君、カードは用意してくれるって、ただどうしても全部を用意するには時間がかかっちゃうから、試合までに間に合わせるのは無理だって」

「いや、ありがとう愛理ちゃん。用意してくれるだけありがたいよ。時間がかかっても欲しかったからさ。藤次郎さんには改めてお礼を言っておくね」

 

 部屋に戻ってきた愛理ちゃんは僕の隣に座って机の上に並べられていたカードを見渡した後、僕に一枚の封筒を渡してきた。

 僕が不思議そうに見る中、愛理ちゃんはにんまりとまるで悪戯を仕掛けてそれに引っかかるのを待っているような笑みを浮かべながら封筒を開けるように促してきた。

 そして、それに流されるように封筒を開けた僕はその中身に思わず驚愕をあらわにしながら愛理ちゃんを見た。

 

「こ、こここ、これって…………!!??」

「1枚だけだけどね。話を聞いたときからお父さんに話して予め用意しておいてもらってたんだ。それだけでも役に立つと思って」

「ありがとう。本当にありがとう愛理ちゃん! 君はやっぱり僕の天使だ!!」

 

 僕は愛理ちゃんが用意してくれたカードを大切にデッキに加えて彼女に強く頭を下げた。下がり過ぎて彼女の膝下に顔をうずめるようになっていたが、意図したことではなかった。

 そして、そんな僕の頭を撫でる愛理ちゃんを見た堂本君と三沢君は目を合わせそっと部屋を出て行くのがわかった。

 

「でも、愛理ちゃん、どうしてこれを用意してくれたの。藤次郎さんにお金を工面してもらうことにも反対はしなかったし、普通反対してしかるべきものだと思うんだけど」

「んー、お父さんが断るとも思えなかったのが一つ。それに、私は信じてるから、コナミ君なら期待通り必ずプロになって最良の未来をくれるって」

 

 顔をあげた僕を見る愛理ちゃんの顔には微塵も未来を疑っているようには見えなくて、僕は改めてここまで僕を信じてくれる彼女を好きになってよかったとこの出会いに感謝した。

 例え、VENUSやヒータが疑っているように愛理ちゃんとの出会いが仕組まれたものだったとして、その結果僕が傷つくとしても、僕は君と出会えた幸福を否定することはない。愛理ちゃん、僕は君が大好きだ!

 

「愛理ちゃん、僕は明日のデュエル、このカードを使って最高のデュエルにして見せるよ。絶対勝つって言える自信はないけど、最高のデュエルにして見せる」

「うん、楽しみにしてるわ。私も、学園の皆もそれを見たがっている。大丈夫、コナミ君ならできるわ。私が保証する。コナミ君なら絶対大丈夫」

「うん、ありがとう。それだけで僕は絶対の自信をもって戦えるよ」

 

──ああ、本当によかった。

 

 僕は心の底から彼女への感謝を述べて、そして心に誓った。いつか、プラネットモンスターがすべて集まって、その力で何かを起こすときはそれは必ず愛理ちゃんのためにその力を使おう。

 それが僕を愛し、信じてくれる彼女に報いる最良の道だと思うから。

 それまでは無理に疑うのはやめよう。きっと自分も愛理ちゃんも傷つくだけだ。

 

 その後、二人になった部屋で門限まで僕と愛理ちゃんは部屋でビデオやデッキを見ながらその日を過ごすのだった。

 

 




次話カイザーと吹雪さんとのデュエル………と、行きたいところですが、その前にまだ一つだけやることがあるのでそのお話です。

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