初心者粉眠くんのデュエル日誌   作:XX

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1期もこのお話を書ききったら終わりです。頑張ったなあ自分。


最高の卒業式を彼らに…

 月夜が照らす海辺の丘、誰もが寝静まった時間帯に島の端で行われた、僕と十代くんのデュエル。それは僕の初めての敗北という形で幕を閉じた。

 

 しかし、十代君とのデュエルが終わり、敗北したのにも関わらず、僕の心には爽やかな風が吹いていた。

 

「いよっしゃーッッ!!! コナミ、とうとうお前に勝てたぜーッ!!」

「ああ、十代くん、君の勝ちだ」

 

 今のデュエルは言い訳のしようのない僕の負けであった。強いてあげるならデッキがVENUSをメインとしたデッキであったことだが、そんなことは敗北を否定する材料にはならないし、何より格好悪い。僕は全力で戦ったのだ。

 

 そして、純然たる実力で僕は十代くんに負けたのだ。その事実を受け止めると同時に僕は肩をがっくしと落としながら喜び勇んでいる十代君を見て、まあいいかと思った。

 デュエルに負けたのは大変悔しいが、目的である十代君の強みを取り戻すことには成功した。これで、明日のデュエルを一切の不安なく迎えることができる

 

「コナミ、ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!!」

「ああ、ガッチャ、僕も楽しかったよ。今日は無理だけど、またデュエルしよう。今度はもう一つのデッキも使ってさ」

「おう! 俺もそっちともデュエルがしたいぜ!」

 

 デュエル後の十代君十八番のガッチャのポーズを僕も返しながら僕たちは明日のために互いの寮へと戻ることに決めた。

 そうして寮への帰り道を共に歩いている中で、十代君がふと気づいたように僕に精霊について聞いてきた。

 

「そういえばコナミ、ハネクリボーがお前を呼んだみたいだけど、コナミも精霊が見えるようになったのか?」

「えっ? あーいやそれがまだなんだ。そう言えば十代君にこのクリスタルのことを話したことはなかったよね。実はこのクリスタルには僕のカードに宿る霊使いの力を宿す力を持っていてね。それの恩恵で僕は精霊の姿はまだ見れないけれど、声や気配を感じ取ることができるようになっているんだ」

 

 僕は首からかけていたクリスタルのネックレスを外して十代君に見せた。彼は物珍しそうにクリスタルを見つめながら感心するような声を上げた。

 

「へースッゲーんだなこのクリスタル。あっ、だからヒータが俺の部屋に入ってきたのか」

「うん、ヒータ以外にもアウスとエリアの力がこのクリスタルには宿っているんだけど、今回はその中でもアウスが君のハネクリボーの意思を読み取ってくれたね、彼女のおかげで君とデュエルすることができたんだよ」

「へー、じゃあ礼を言っとかないとな。ありがとうなアウス、ハネクリボーの意思を伝えてくれて」

『いいさ、大したことはしていないからね』

 

 僕には見ることができないが、アウスがそこにいるのだろう。十代君が何もない僕の隣の方を向いてそこにいるであろうアウスにお礼を言っている。

 それを羨ましく思いため息を吐くが、今後も霊使いの子たちの力が集まるのを待つしかないと気持ちを切り替えた。

 

「えーっと、霊使いって確か6人だよな。それで今コナミがエリアとアウスとヒータを持ってるってことは……」

「うん、あと3人だね。ちょっと訳があって時間はかかるかもしれないけれど、いずれ霊使いの子たちがやってくることになってるんだ。だから、いずれは僕も十代君みたいにその姿を見ることができるようになるよ」

 

 そうして精霊やクリスタル、また明日のデュエルについて話しているうちに僕たちはオシリスレッドの寮まで着いていた。あとはお別れして明日のために英気を養うのみだった。

 

「コナミ、明日のデュエル、カイザーと吹雪さんの記憶に残るような最高のデュエルで送り出してやろうぜ」

「勿論だよ十代君。僕のプラネットモンスターたちと君のHEROがいれば出来ないことなんかないさ」

「おう! そんじゃまた明日な、タッグデュエル、楽しみにしてるぜ!!」

 

 寮の2階にある自室へと戻っていく十代君に手を振りながら僕もラーイエローへと道を歩き始めた。

 明日のデュエルのための準備は万端だ。十代くんの調子も取り戻せたし、愛理ちゃんから一枚とはいえ新しいHEROも手に入った。

 加えて強力なプラネットモンスターたちもいる。現状用意できるものでこれ以上はないと言っていい。

 

 それでも、心のどこかで不安を消せずにいるのは、恐らくそれだけ丸藤さんと吹雪さんの影が大きいからだろう。彼らとのデュエルで敗北した事実は記憶の中で傷として残り、心に不安の種を残し続けている。

 

「それでも、今の僕の全力をぶつけるしかないんだ。明日のデュエル、今度こそ勝って見せる!」

 

 そう意気込む僕の左右からヒータとアウスの声が聞こえてきた。

 

『アタシたちのことも忘れるんじゃないよ』

『そうだね、それに意気込むのはいいけれど、それで硬くなっちゃいけない。リラックスしないと、本当の力は出せないものだよ』

「うん、そうだね。2人のことも頼りにしてるよ。一緒に戦おう」

 

 僕の言葉に満足げに応じる2人の言葉を聞き安心感を覚えた僕は一度気を抜くために深く深呼吸をして肩の力を抜いた。そうして気楽になった僕は安心したようにリラックスして寮への道を急ぐのだった。

 

 そして日は開けて太陽が昇り空の真上に近づいてから、卒業模範デュエルの日がやってきたのだった。

 

 卒業模範デュエル、その舞台となるデュエル場には全校生徒や先生方が詰めかけ客席に座っており、一席たりとも空き席は存在しなかった。中には椅子が空いてないために立ち見で見守ろうする生徒もいる。まさに満員御礼、盛大な卒業デュエルになること間違いなしだった。

 

 そんなデュエル場の中心に今回の主役である僕たちは立っていた。デュエル場の中心では僕と吹雪さん、十代君と丸藤さんが向かい合うように立っており、その時が来るまでの間、お互い話をしていた。

 

「十代、正直俺はお前が変にプレッシャーを感じて向いてないデュエルをしないか不安だったが、どうやら杞憂で済みそうだな」

「任せろカイザー、俺の全身全霊をあんたにぶつけて、最高の卒業プレゼントを届けてやるぜ!」

「ん〜〜〜いい気迫だねえ十代君。僕の方が気負されそうなくらいだよ。コナミくんはどう思う」

「絶好調ですね。十代君も僕もまったく問題はないです」

 

 僕の見る限り、十代くんに気負った様子は見受けられない。昨日のデュエルで完全に吹っ切れている様子だ。

 それを見る丸藤さんは安心したように小さく笑い、吹雪さんはその様子を見て面白そうにしている。僕もまた、二人と同じように安心していた。一夜明けてまたぶり返していたらどうしようかとほんのちょっぴり不安だったからだ。

 

「吹雪さん、丸藤さん、このデュエルはあなた方を送るためのデュエルです。ですが、僕にとってはあなた方へのリベンジの意味もこもったデュエルでもあります。今日のデュエル、忖度はしません、全力であなた方を倒します!!」

「ああ、お前とやるのは全国大会以来か、あの時からさらに成長し、今ではプラネットモンスターも使いこなすお前の力楽しみにしているぞ」

「あーはっはっは! 十代君同様、君も熱いデュエリストだねーコナミくん。君のその熱い想い、僕の全力で迎え撃たせてもらうよ」

 

 強く手を突き出しながら容赦なく倒すと宣言する僕に丸藤さんも吹雪さんも嬉しそうにしながら答えてくれた。

 そして、デュエルの予定時刻が迫ってきたのだろう。デュエル場にクロノス先生が上がってきて、僕たちと丸藤さんたちを挟むように間に入ってきた。

 

「シニョール、シニョーラ、お集まりの生徒、先生方、只今ヨーリ、卒業模範タッグデュエルを開催いたしますーノ!!」

 

 お馴染みの青い教員服を着たクロノス先生の少々大袈裟にも感じる手振りと共に発せられた卒業模範タッグデュエルの開催宣言。その言葉と共に会場内を爆弾でも落ちたかと思えるような会場を震わせるほどの喝采の声が響き渡った。

 

「本日デュエルします〜のは、卒業生代表、オベリスクブルーの丸藤亮〜、アーンド天上院フブーキ!! それに対しますのは在校生代表、ラーイエローのコナーミ&オシリスレッドのドロップアウトボーイ、遊城十代ですーノ」

 

 クロノス先生が代表選手を読み上げた時、会場内を先ほどにも負けないほどの声援が駆け抜けた。

 特に丸藤さんと吹雪さんへの声援は凄まじいもので、2人への声援は僅かながらにいる僕と十代くんへの声援を軽く打ち消してあまりあるほどだった。

 その中でも際立っていたのが吹雪さんへの女生徒からの黄色い声援であり僕や十代君は言うに及ばず、丸藤さんでさえ届き得ないと思わせるアイドルとしての側面を持つ彼の人気を物語っていた。

 

「いやはや、吹雪さんへの声援はすごいなあ。デュエリストとしての実力では負けるつもりはないけど、こういう人気という面ではとても敵う気がしないよ」

「なーんかクロノス先生の俺への紹介の仕方おかしくないかあー。明らかに力が入ってなかったんだけど」

「まあ、クロノス先生はいつもああだし、今更言ってもそうそう変わらないよ」

 

 僕は吹雪さんのあまりの人気っぷりに若干の憧れと羨望が困った目を向け、十代君はきちんと紹介してくれないクロノス先生に対して非常に不満そうにしながら愚痴をこぼしていた。

 

「フッ、まあそういうな十代。クロノス先生はあれで生徒思いの尊敬に値するよい先生だ。少々オシリスレッドのお前に当たりは強いが、あれでもお前の実力は認めているはずだ」

「えー本当か〜それ。とてもそうは見えないんだけどなあ。まあ、カイザーがそう言うなら一応信じておくよ」

「ああ、それに不満があるのならデュエルで証明すればいい。お前は強いデュエリストなのだとな」

 

 ほへーと僕は丸藤さんの意外な一面を見た気がして口を開けた。丸藤さんは大概誰にでも公平な評価をしているという認識だったから、エリート意識や実力主義という考えの強いだろうクロノス先生のことはあまりいい評価をしていないと思っていたんだけど、これは認識を改めないといけないかもしれない。

 

 クロノス先生は僕が高く評価している十代君に対してあまり良い対応をしていない、というかもう確実に見下したような態度をとっているから良い先生という認識をしていなかった。

 しかし丸藤さんからすればそう悪い先生ではないらしい。丸藤さんが尊敬に値するとまで言うのだ。僕や十代君が知らないだけで、もしかしたら生徒思いのあるいい先生なのかもしれない。

 

「それで〜わ。ただ今より卒業模範デュエルを始めますーノ。4人とも、準備はよろしいですーネ」

 

 模範デュエルの開会式というか、形式として行うオープニングが終わり、観客席が静かになってきた辺りでクロノス先生は僕たちを見ながらデュエルを開始しても良いかの確認をとってきた。

 それに対して僕たち4人は1人として欠けることなく「応」の意味合いの返事をすることで先生と観客に答えた。

 

「ライフポイントはパートナーと2人で8000。フィールド、墓地はパートナーと共有ですーノ。ルールを守って、素晴らしいデュエルになることを期待してますーノ!!」

 

 そして、先生の振り下ろされた手の合図とともに先輩方が学園で行う、最後のデュエルを開始した。

 

「「「「デュエル!!!!」」」」

 

 

 




さて、もうひと踏ん張り頑張りましょう!
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